魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
ではよろしくお願いします。
「みんな〜いらっしゃい」
「こんにちは」
「お世話になります」
「みんな来てくれて嬉しいわ〜。食事もいっぱい用意した……か……ら……陸飛君? よね? 」
「およ? はい、そうで「陸兄だぁ〜! 陸兄〜」どふぁっ!? 」
「はは、あはは〜陸兄本当に生きてる、良かったぁ〜ふふ」
「ちょ、ちょっとルールー!? お兄さんから離れてよー! 」
「え? ふふ、何ヴィヴィオ? もしかしてやきもち? 」
「ふぇ!? そ、そんなんじゃないよ!? 」
「顔が真っ赤よ? ふふ、可愛んだ」
「ひうぅ……」
私は顔を真っ赤にして恥ずかしがった。ルールーはいつもそうだ。お兄さんの話になると私をからかう。すると、疲れた顔をしたエリオさんが真木を持って私達の所に現れた。
「あ! エリオ〜お疲れ様」
「ちょ、ちょっとルーテシア!? 」
「もう〜違うでしょ? ル〜って呼んでよ〜」
ルールーはエリオさんが帰って来るなりその腕に抱きつく。実を言えばこの二人は付き合っている。だがエリオさんは仕事が忙しい為中々会えないようだ。だがここで一体なんの恨みがあるのかキャロさんが余計なチャチャをルールーに吹き込み始めた。
「ん? どうしたの? キャロ? 」
「ルーちゃん実はエリオ君ーーだよ? 」
「なっ!? ……エリオ? どういう事? 」
「え!? な、何が? 」
「誰? 浮気の相手は誰!! 」
「はぁ!? いやいやいや!? って言うかキャロ、またロクでもない事言ったでしょ!? 違うからね? ぼ、僕そんな事してないからね! 」
「ルーちゃんそれは嘘だよ? ほら、口紅ついてる」
「キャロ!? もう根も葉もない事言わないで!? そんな物ある……わけ…………え!? 」
「エぇぇぇリぃぃぃオぉぉぉおおおおお!!! 」
「僕知らない!? ひっ、ぎゃぁぁぁあああああああああああ!? 」
エリオさんは首筋についた不自然な口紅を発見され、それにキレたルールーにボコボコにされた。そしてルールーに最低と一言言われ、流石のエリオさんも泣きながら地面に横たわっている。あまりに不憫なのでみんなは凄く可哀想な目でエリオさんを見ていたのだった。
「お兄さん。お兄さんってば〜」
「んん〜何ん? 高町さん。僕眠いんだけどん…………」
「もう、そんな所で寝てないで一緒に水切りしようよー! 私お兄さんの水切り見たい」
「あ! 私も私も! ねぇ〜陸飛先生、水切り見せて下さいよ」
「私も見たいです」
「わ、私も……貴方の腕を拝見したいです」
私達はトレーニング組と分かれた後、河原で遊ぶ事にした。そこで私とリオ、コロナは日影で寝ているお兄さんを起こし今やっている水切りに誘ったのだが、なんだかアインハルトさんも興味があるようで一緒になってお願いしている。しかしお兄さんはやる気がない。眠そうにとぼけている。他のお兄さんの家族はレヴィさんの要望で森の中へと探索へ出かけ、ルールーも面白そうだからと「最初だけ抜けるね? 」と言い行ってしまった。だから今はお兄さんしかいない。
「おいおい、無理やり誘ってもしょうがないだろ? せっかくグダグダしてるんだ、そっとしといてやれよ」
「ええ〜だってノーヴェ…… 」
「そ、そうです!? せっかくと言うのであれば見せて貰いたいです! 」
ノーヴェまでお兄さんの味方につき始めた為、私達は最後の手段に出た。みんなに耳打ちをし、お兄さんの前に身を乗り出す。そして両手を顔の下に持っていきウルウルと嘘泣きを行使する。正直アインハルトさんが協力してくれたのには驚いたが、それでもお兄さんがこれで無視をする筈はない。
「およよ……それは汚いよん。分かった、やるよん」
「「「やったー! 」」」
「ありがとうございます! 」
「なんか悪いな? こいつらのわがままで」
「別にいいよん。この子達僕の生徒だしん……と言うか水切りって何? 」
「なんだ、知らないのか。いいか? こうやるんだ……よ! 」
まずノーヴェがお手本を見せ、お兄さんが「なるほどん」といい、水の中に入る。だが私達は最初、やった事ないなら一発、二発は不発になるものだと思っていた。しかしそこはお兄さんの非常識な所。私達は一撃で腰を抜かす事になった。
「ふむふむ……こうか……なん!!! 」
「「「「「え…………」」」」」
お兄さんが水切りの動作をした瞬間、物凄い轟音と共にそこにあった水は蒸発した。これには私達どころかノーヴェまで目を丸くしている。ここはいったいどこなのか……楽園は砂漠と成り果てた。
「ヴィ、ヴィヴィ……オ? 」
「な、ななな何リオ? 」
「ここは……か、川だよね? 」
「そ、その筈だよ……え、えっと……やっぱ砂漠かな? さっきまでの水は蜃気楼だよ多分」
「す、凄いです…………」
「う、うん…………」
「やらせるんじゃなかった…………」
「およ? 何か……違ったかなん? もう一回……でも水がないねん? 地面でやる? 」
「「「「「ダメ(です)(に決まってんだろ)!? 」」」」」
「よよよ…………」
お兄さんは突然大声をあげた私達に驚き怯えて見せる。するとアインハルトさんがお兄さんに近づき唐突に頭を下げた。一体何故と私は思ったがアインハルトさんの言葉を聞いて納得した。むしろ、私も少しそれには興味があるのだ。
「お願いします! 私と手合わせして下さい! 今度は本気で! 」
「そ、その……困るよん」
「この間の事なら謝ります! ですから……私と戦って下さい! 」
「い、いや……別にそういう事じゃないんだよん」
「なら何故なのですか? 」
「……僕……別に強くないしん…………」
「……強く……ない? これだけの力がありながら……自分は強くないとおっしゃるのですか……なら……なら私はどうなるのですか? 貴方が強くないなら私は何ですか!? 貴方に負けた私は雑魚とでも言いたいんですか!? ふざけないで……下さい!!! 」
「っ!? ちょっ!? 危ないよん!? 」
「アインハルトさん!? 」
それは突然始まった。アインハルトさんはお兄さんにキレ、大人モードに変わると殴りかかったのだ。こうして2人の唐突な戦いが始まった。だがお兄さんにやる気はない。アインハルトさんの攻撃を躱しながら逃げ回る。しかしそうされたアインハルトさんには火に油だ。
「逃げないでください! 」
「そ、そんなの無理だよん!? あっと……」
「もう……逃がしません!!! 」
「ぐはっ!? 」
一瞬バランスを崩したお兄さんをアインハルトさんは見逃さなかった。そして上から強烈な一撃を叩き込む。油断していたお兄さんはそれをまともにくらい土煙と共に倒れ伏せる。さらにそこはクレーターになっていた。
「はぁ……はぁ……やり……過ぎました。……え…………」
「アインハルトさん!? 逃げて!? 」
「っ!? ……がっ!? ……さ、さっきより……速くなってる」
その瞬間、倒れていた筈のお兄さんは立ち上がりアインハルトさんを蹴り飛ばす。私が叫んだが間に合わなかった。お兄さんの雰囲気がガラリと変わっていたのだ。さっきまでの不真面目なお兄さんではない。言うならば記憶がなくなる前の……元のお兄さんのような雰囲気。
◇◆◇◆
そこは真っ暗な暗闇の世界。そこに陸飛はいた。眠っているわけではない。意識もはっきりしている。陸飛自身も今の状態がどういう状態なのか分からない。
「ここは……どこん? 僕さっきまで高町さんの友達に襲われていたようなん? 」
「今の俺はこんなにも呑気なのか」
「っ!? だ、誰ん!? ……え…………」
「何て顔をしてるんだ? フフ、こういう時は何て言えばいいだろうな? 初めましてか? いや、久しぶりか? 」
「き、君は……誰ん? 」
「誰? フフ、分からないはずないだろ? 俺が誰かなんてお前なら言わなくても分かることだ」
「……僕? 」
「ああ。俺はお前。お前は俺だ。お前は俺が記憶をなくした事で生まれた俺の仕事モードだった時の人格。だからこんなにもやる気がないし言葉遣いもいい加減」
陸飛の前に現れたのは自分と同じ顔の人間。ただ違うのは雰囲気。そして言葉遣い。人としての人格が違うのだ。しかし陸飛は目の前の男が自分だとは信じられなかった。こんなにも鋭く自分を見つめている目の前の自分が。
「もう時間がないぞ? 」
「時……間? 」
「そうだ。その時までにお前が俺を取り戻せなければ……お前と俺の大事な者はみんないなくなる」
「みん……なん? ど、どうして!? 」
「忘れるな。お前には時間がない。呑気なのも結構だが、守るべき者を見失うな。ま! お前はその点問題なさそうだが……」
「僕はどう知ればいいのん? 何も分からないよん!? 」
「己の心にペン有れど、他人の心にペンは無い。他人の心にインク有れど、己の心にインクは無い。それが俺達を支えてきた絶対なる教えと言葉。師の言葉。お前は……気づけるか? フフ、愚問だな。早く行け、ヴィヴィオ達が困ってるぞ」
「あ! 待ってよん!? うっ!? 」
陸飛は自分を追いかけ、光に包まれた。そしてその空間からはじき出される。
「忘れるな、お前は俺だが俺じゃない。お前にはお前の在り方がある。それを……忘れるな」
◇◆◇◆
「くっ!? ああっ!? 」
「アインハルトさん!? お兄さんどうしたの……やめて!? 」
お兄さんは無言のままアインハルトさんに反撃を始めた。ただアインハルトさんから手を出した手前、お兄さんの行動も分からなくは無いがお兄さんらしく無い行動だ。しかし今もお兄さんを見れば普通じゃ無いと分かる。だから私はお兄さんとアインハルトさんの間に入りお兄さんに立ちはだかる。お兄さんは拳を構えて殴りかかってきていると言うのに。
「お兄さん…………」
「ヴィヴィオさん避けて下さい!? 」
私は目を閉じ覚悟したがお兄さんは私を殴らないと信じていた。そして私の思いに応えるかのように拳は私を襲わず、代わりに頭に手が置かれた。
「お、お兄……さん? 」
「俺が迷惑かけたなヴィヴィオ。ごめんな……もう少し待っててくれ」
「え……お兄さん記憶」
「およ? 戻って来たん? あれ……僕何してたんだっけ? 」
「戻ってない……よね? それじゃ……今のは? あれ? 」
私は困惑した。今のは間違いなく昔のお兄さん。私の事をヴィヴィオと呼んでくれたお兄さんだった。私の気のせいという事もあるが、今は分からない。
「あ、あの……すいませんでした……私はまた……」
「別にいいよん。僕も悪かった……かなん? それに君も僕の生徒だしん 」
「生徒? いえ、私は中等科ですから貴方の生徒ではありませんが」
「ん? あの学校にいるんだからみんな僕の生徒でしょん? 中等科でも……初等科でも」
お兄さんがそう言うとアインハルトさんはポカーンとした顔をし、その後私達もまだ見た事なかった満面の笑みをお兄さんに見せる。私はそれが何だか羨ましかった。
「あ、ありがとうございます! その……陸飛……先生」
「「「「あ……堕ちた」」」」
「え? お、堕ちたって何ですか皆さん!? や、やめて下さい!? 」
私も含めて全員が同じ反応をした。何故ならアインハルトさんは少し顔を赤らめ、恥ずかしそうにしていたからだ。この光景を見ているとアインハルトさんがお兄さんを意識したようにしか見えなかったのだ。
「おちた? 何がおちたの? およ? 」
「「「「鈍感…………」」」」
「土管? ないよん……そんなの…………」
「はぁ……違うよお兄さん。土管じゃなくて、ど・ん・か・ん。つまりアインハルトさんは「うわぁぁぁああああああ!? 」ちょっ、アインハルトさんむっ!? むー!? 」
ついつい暴露させようと思った言葉はアインハルトさんに塞がれ、私はキリっと睨まれる。でもアインハルトさんは可愛いだけで怖くない。
「何ん? 」
「何でもないです何でも」
「で、でもん」
「何でもありません!! 」
「うっ……わ、わかったよん」
こうしてこの場のよく分からない騒動はおさまった。それと同時に森に探索に出かけたグループが戻って来る。だがそこには最初にいなかった人物がいた。一体どこで合流したのか不明だがいるのだ。かつて……最強と言われた空戦魔導師であるリンさんが。
「ヴィヴィオ久しぶりですですよ! 」
「り、リンさん!? で、でもどうして……」
「私が呼んだのよ? 」
「そうですです。ルーテシアが僕が会ったら喜ぶよ? って言うもんですですから。で〜一体誰なんですですか? それ……は!? 」
リンさんはお兄さんを見つけた瞬間目を大きく開けて固まった。当然だ。なんだかんだでリンさんはお兄さんが生きていた事を知らない。理由は簡単だ。中々リンさんを捕まえられないからだ。何故ならリンさんは現在、放浪ニートである。
「陸……ちゃん? 本当に……陸ちゃん……ですです? 」
「よよ? 君……だれ? 」
「……ガーン!? 」
「あ!? リンさんしっかり!? 違いますよリンさん、お兄さんはリンさんが嫌いになったとかそんなんじゃ……」
「ぐすっ……別に……ひぐっ……陸ちゃんに嫌われだっで……うっ、うっ……僕は別に泣いてなんかいないですです!? 」
「メチャメチャ泣いてますよリンさん!? 」
リンさんは私の話を聞いてくれず、ただお兄さんに嫌われた物だと思い子供のように泣きじゃくり始めてしまった。ただ、リンさんの背丈的に全く違和感のない光景だという事は、本人には黙っておくべきだろう。
「ひぐっ……ひぐっ……うわぁぁああああああああん」
「リンさんダメ!? そんなに暴れたらここ平地になっちゃいますから!? 」
《短編・キャロ様劇場》
第3話《キャロが言っていた事》
「ん? どうしたの? キャロ? 」
「ルーちゃん実はエリオ君ね二股かけてるんだよ? 」
「なっ!? エリオ……どういう事? 」
ルーテシアにそう言ったキャロは静かにエリオの後ろに回るとコソコソ何かをしていた。そしてエリオの口紅が見つかった後の事。
「キャ、キャロさん? そ、その口紅……な、何ですか? 」
「……どうしたのヴィヴィオ? 何か見た? 」
「え…………」
「これがヴィヴィオには何に見えるかな? 」
そう言いキャロはヴィヴィオに口紅にしか見えない筒を見せる。そしてそうされたヴィヴィオはガクガクと震え、どう答えたらいいかを模索した。もし答えを間違えればヴィヴィオに明日はないからだ。
「り、リップクリーム……かな〜」
「いい子だねヴィヴィオは」
「エぇぇぇリぃぃぃオぉぉぉおおおおお!!! 」
エリオの災難は続く。
to be continued…………
次回もよろしくお願いします。