魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

遅くなりました。

ではよろしくお願いします。


第57話《退院報告》

「はい、陸飛さん。あ〜ん? 」

 

「え、えっとん……それ何かなん? 」

 

「ん? 何って……梅干ですよ? 陸飛さん好きだったじゃないですか? あ! すいません……もしかしてそれも忘れているんですか? 」

 

「あ、その……謝らなくてもいい……よん? 」

 

「あ……ふふ、ありがとうございます。それじゃ、あ〜ん」

 

今日は入院している陸飛さんにじっくり寝かせてある梅干を持ってきた。私は陸飛さんにこれを食べて貰いたい。私が初めて梅干を作り、そこから四年。とうとう四年物の梅干が出来上がった。だから毎年陸飛さんには食べて貰いたいのだ。私の愛のこもった梅干を。

 

「むぐむぐ……うっ、すっぱいよん……でも……なんか懐かしい」

 

「あはは、まだありますからどうぞ? 」

「ありがとん……でもいいのん? 最近よく来てくれるけど……仕事は? 」

 

「え? ふふ、大丈夫ですよ? 今頃……やってるんじゃないかな? エリオ君……ふふふ」

 

「あやや……大変だねん…………」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「お兄さん! 一緒に行こ? 」

 

「え? どこにん? 」

「合宿! ちなみに明日からだよ? 」

 

「明日ん!? 急過ぎない!? もう……何それん? と言うか僕まだ入院中だよん? 」

 

「え? 明日退院だよ? 」

「え!? 新事実が次々と!? どうして僕の所に連絡一つないのん!? 」

 

「ちなみにお兄さんは私と結婚します! 」

 

「……それはないでしょん」

「酷い!? 」

 

私、ヴィヴィオはお兄さんをみんなで行く合宿に誘う為、お兄さんのいる病院へと足を運んだ。確かに急な誘いだが他のみんなも何か思い出すきっかけになればいいと満場一致の意見だったのだ。しかしお兄さんは自分が退院する事も知らなかったようでこの病院は大丈夫なのかと心配になる。するとお兄さんは私にバツの悪そうな顔をし始め、私は首をかしげた。

 

「ごめん高町さん……僕家族いるし……そんな所いけないよん。みんなに悪いし」

 

「う〜ん、あ! それじゃそのお兄さんの家族も一緒の連れてきたら? 」

 

「え!? そんなにいいのん? 僕含めて5人だよ? 」

 

「大丈夫だと思うよ? ただでさえ人数多いから5人増えても変わらないよ」

 

私がそう言うとお兄さんは考え込む。私の独断で何を勝手にと思うかもしれない。だが実際大丈夫なのだ。こんな事もあろうかとお兄さんの家族は人数にカウントしておいてある。私に抜かりはない。そう、ここでお兄さんのポイントを稼ぐと言う目的が私にはあるのだ。

 

「それじゃん……行かせて貰おうかなん? 」

「本当!? じゃ〜明日お兄さんの所に迎えに行くから準備しておいてね! 」

 

「ああちょっとん!? 行っちゃちゃ……と言うか準備って……何のん? 」

 

私は一方的に約束をし、病室から出て行く。きっとお兄さんは困った顔をしているに違いない。だがそんな事構わないのだ。何故なら今私は明日が楽しみです仕方ないのだから。

 

 

◇◆◇◆

 

 

ミッドチルダ、その外れにある小さな廃墟。そこでクラン・ペーパーは跪き、目に前の男への忠誠を表していた。そしてその男、高い背に右手を指ぬきのグローブ。髪はクルクルと癖がありパープルの色。体型は格闘技選手のようにガッチリとし、それでいて細い。かなり絞り込まれた筋肉だ。

 

「計画は順調なのか? クラン」

 

「勿論滞りなく我が君……貴方様のご命令とあらば時だって何度だって越えて見せます!! 」

 

「……なら良い。だが忘れるな? これに失敗すればお前の命はないぞ? 」

「我が命など謹んで貴方様に捧げます」

 

「相変わらずの忠誠心、感服する」

「勿体無いお言葉。はぁ〜もう少しお待ちください我が君! もうすぐもうすぐでリン・ストーンの首を貴方様の前に差し出します! 」

 

「期待している! まぁ〜あの女に怨みのあるお前の事だ。失敗など考えられん事だな? フフ、全てはお前に任せる。どんな事があってもリン・ストーンの遺体を持ってこい。あの身体は奇跡の器。我らの戦争に必要な物」

 

「Yes My master! 必ずやリン・ストーンの遺体を御身の前に。我ら覇道の船団……『ファラス』。その名の下に」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「で? 言い訳を聞こうか? 何故……何故合宿などと言う物に行く事になった事を当日に言うのだこのたわけ!! なんの支度も出来てないではないか!? 」

 

「ごめんなさいん……うっかり……てへっ! 」

「こぉぉぉぉのぉぉぉぉぉおおおおたぁぁぁぁぁわぁぁぁぁあああああけぇぇえええええええええ!!! 」

 

「お、およよ…………」

 

私達は陸飛の退院当日、全員で見送りに行った。でもディアーチェは陸飛の突然のサプライズにガチギレし始め、陸飛は小さくなり怯える。私は慣れているので大丈夫だが隣にいるレヴィとユーリは互いに抱き合いながら震えて怯えていた。私達家族の中で一番優しいのはディアーチェだが一番怖いのもディアーチェだなのだ。

そしてこんな雰囲気の最中、私達は決して避けられない再会を果たす。本来なら起こるはずのない再会を。

 

「リッ君、ヴィヴィオに頼まれたから迎えに来たよ? 退院おめ……で……と…………」

 

「……お、お主……」

 

「ナ、ナノハ…………」

 

病院室に入って来たのはナノハだった。私は驚きその名前を言ったその先の言葉が出ない。元々私達はこの時代の人間ではない。だからナノハが私達を知らない可能性もあった。だがナノハの顔を見れば私達をしている事が分かる。しかし私は腑に落ちない事があった。それは陸飛の生徒である金髪の女の子が私達を知らなかった以上、記憶は消えている物だと思っていたからだ。けどそれは間違いだ。もし消えているのだとしたら私達の記憶も消えている筈だ。勿論目の前のナノハも。

 

「う、う〜と……久しぶりでいいのかな?シュテル? 」

 

「え、ええ。ナノハ」

 

「今度は何を企んでるの? 」

《セットアップ》

 

「「「っ!? 」」」

 

ナノハは突然デバイスを起動した。そして私達に相棒であるレイジングハートを向ける。私とユーリ、ディアーチェ以外はこの状況に危機感を覚えていない。レヴィは不味いという考えには至っていらず、陸飛はナノハを知っているためか首を傾げているだけだ。しかしナノハの行動は正しいと言えば正しい。二度にわたり私達は出会い、敵となった。わかり合っていたと言えばそうかもしれないが敵だった事にかわりはない。警戒して当然なのだ。

 

「ちょっとお話し、聞かせて貰えるかな? 」

 

「わ、我らはもう何も企んでなどいない。だがそれでも信じられないと言うのであれば……抵抗はするぞ? 」

 

「企んでない? そうなの? でも「僕戦う! 」っ!? 」

 

「馬鹿レヴィ!? 今おまりそうだった物を!? 」

「最悪です…………」

「レヴィ空気を読んでください!? 」

 

せっかくナノハがデバイスを下げたと言うのにレヴィはデバイスを起動しナノハへと突っ込んだ。だがここは病室。当然の事ながら病院の壁は吹き飛び2人は屋上へと飛び上がった。そして決して軽くとは言えない戦闘音が鳴り響く。

 

「終わった……我らの平和な日々が…………」

「ディアーチェしっかりして下さい!? 気を確かに、まだ何かある筈ですよぉ!? 」

 

「ディアーチェ……不味いです」

「今度は……何なのだ」

 

「フェイトが来ました」

 

「フ……フハハハハ!! もういい! 知った事か!? 我は上にいる馬鹿どもを全員叩きのめして来る」

「待って下さいディアーチェ!? 喧嘩はいけないですよぉ〜!? 」

 

屋上へ行こうとするディアーチェをユーリが抱きついて止める。いくらレヴィでもナノハとフェイトが相手ではやられてしまう。でもナノハ達の事だ、レヴィを殺すような真似はしない筈だと私は思った。しかし状況は思わぬ方向へ転がった。上でレヴィがやられたのだろう。レヴィの悲鳴が聞こえたのだ。するとその時だ。病室のベットが弾け飛びその瞬間陸飛が消えた。

 

「り、陸……飛? 」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「うわぁぁぁあああああああ!? 」

 

「もう……レヴィ少し話聞いてよ」

「なんだよオリジナル! 今いいところじゃないか! 」

 

「オリジナルじゃなくてフェイトだよ? と言うかレヴィは相変わらずだね? はぁ……これじゃノックアウトさせないとおさまりつかないかな? 」

 

なのはが遅いので私は病室へと向かおうとした。しかしその瞬間陸飛のいる筈の病室が弾け飛び、そこからなのはと水色の髪をした見た事ある顔が飛び出す。私は驚いたが急いで屋上へと飛んだ。そしてその見た事ある顔はやはりレヴィだった。だがレヴィは興奮していて全然話を聞いてくれず、仕方なくレヴィと戦う事となってしまったのだ。

 

「よし! それじゃ〜つっ!? あれ? ああ、擦り剥いちゃった…………」

「大丈夫レヴィ? 早く消毒しないと……っ!? 」

 

「何してるのん……どうしてレヴィに怪我させたの? 」

 

「り、リッ君……」

「陸飛ち、違うんだよ? これはレヴィが」

 

どこから現れたのか私達には見えなかったが、陸飛はレヴィと私達の間に現れた。そして見るからに怒っている。その証拠に屋上の床はミシミシとひび割れ始め、陸飛は私達に向かい構えた。

 

「っ!? フェイトちゃん! 」

「う、うん! バルディッシュ! 」

 

《イエッサー! 》

 

「レヴィに……謝れ……フンっ!! 」

 

「「え…………」」

 

陸飛が襲いかかってきた直後、その拳を避けその後を見た私達は目を丸くした。何故なら私達がいた所は陸飛を中心にクレーターが出来ていたからだ。この威力の拳、しかも生身での威力。こんな拳はギンガ以外私達は知らない。しかしギンガにしても魔力を使っている為、生身でこの威力は出ないだろう。

 

「な、なのは? 」

 

「な、何かなフェイトちゃん? 」

 

「私思うんだけど……陸飛4年前より筋力上がってないかな? 」

 

「そ、そう……だね。うん……ごめんフェイトちゃん、私リッ君1番戦いたくないタイプかも。近接戦闘はフェイトちゃんに任せたよ? 」

 

「え!? そんなのズルいよなのは!? 」

「フェイトちゃん危ない!? 」

 

「え? っ!? しまっ!? うっ…………あれ? え!? カスト!? 」

 

私が少しよそ見をした瞬間、陸飛は私に殴りかかってきた。もうどう足掻いても避けられるタイミングではない。私は諦めて目を瞑る。しかし攻撃は私をいつまでたっても襲わない。私はゆっくりと目を開けた。するとそこには陸飛の拳をその顔に受けたカストがいた。

 

「ガボっ……へ……はは、ははは! 生きてた! 生きてたぜこいつは!!! 陸飛、生きてやがって! 俺は嬉しいぜぶはっ!? 」

「カスト!? 」

 

「邪魔……するな…………」

 

陸飛はカストが誰だかわかっていない為、陸飛が生きているという喜びに浸ってる間に陸飛に殴り飛ばされる。せっかく私を守ってくれたカストだが陸飛の拳は効いたらしくそのまま屋上から真っ逆さまに転落した。

 

「嘘……カスト…………」

「フェイトちゃんしっかりしてよ!? そんな場合じゃないから! 彼の犠牲は報われるよ多分」

 

「縁起悪い事言わないでよなのは!? まだ私達始まってもいなかったのに!? 」

「フェイトちゃん前!? 前!? よそ見し過ぎだよ!? 」

 

「あ…………あれ? また来ない? え!? キャロ!? 」

 

もはや私は冷静になれず普段なら絶対にやらないミスをやってしまった。それは二度にわたるよそ見。私は再び陸飛の拳を前に目を閉じる。しかしどういう訳かまたその拳は私に届かない。私は目を開けた。すると今度はキャロが陸飛の拳を受け止めていた。しかもカストの時とは違い陸飛の拳を素手で完全に無効化している。

 

「陸飛さん落ち着いて下さい。そんな事しても何にもなりません。陸飛さんが生き遅れなんかの為に傷つく必要なんかないですよ」

「「それどういう意味!? 」」

 

「うるさい……僕は僕の家族を傷つける奴を絶対に許さない。だから……だから邪魔するな!!! ……っ!? え……」

 

陸飛は再び右拳を握るとキャロに振り下ろした。しかしそれは簡単に小さなキャロの手へと吸い込まれる。一体どういう技術を使っているのか分からないが、側から見ると陸飛の拳をキャロが右手の人差し指一本で受け止めているようにしか見えなかった。

 

「陸飛さんダメですよ。それをやって後で傷つくのは陸飛さんですよ? 私はそんな陸飛さんの姿なんか見たくありません。私に免じて許して頂けませんか? もし足りないなら……殴るのは私だけにして下さい。ダメですか? 」

 

「……そんな事ん……できないよん…………」

 

「陸飛さん」

 

「分かった。もう何もしないよん。もうやめる」

 

「ふふ、ありがとうございます。陸飛さん」

 

キャロは陸飛に向け満面の笑みで御礼を言う。正直な所、キャロのおかげで助かったと思ったのは事実だ。キャロは本当に頼もしくなった。同時に本気で怒ったらどうなるのだろうと私は不安になる。もう子供扱いなんてとてもじゃないができない。私は陸飛の手に抱きついて笑うキャロを見てそう思ったのだった。

 

 




《短編・キャロ様劇場》

【第2話 いいよね?】

「エリオ君? 陸飛さんの病院行ってくるね? 」
「ちょっとキャロ!? 今日休みじゃないよね!? それに今日は忙しいんだから!? 」

キャロはエリオに仕事を押し付けて陸飛のお見舞いに行こうとしたが、それをエリオが止める。実は今日は仕事がたんまりとあり、エリオだけでは手に負えないのだ。

「エリオ君? 」
「な、何? 」

「いいよね? 」
「え? 」

「いいよね? 」
「いや、だから今日は「いいよね? 」……え、その……」

「何? 私にこれ以上の言葉を使わせるのエリオ君は? 」

「え、えっと……あの……」
「い・い・よ・ね? 」

「……はい」


エリオはキャロには勝てない。口でも腕っぷしでも…………


次回もよろしくお願いします。

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