魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

ではよろしくお願いします。


第53話《帰ってきた襲撃者》

「陸ぅぅぅぅううううううううう!? 」

「ちょっ、ユリち!? どはっ!? 」

 

「陸〜おかえりなさい! 遅いですよ? 一体何してたんですか? 」

 

「遅いって……まだ7時だよん? バイトやってた時の方が遅かった気がするしん…………」

「ダメです!? 遅くても3時までには帰ってきてください! できないなら学校の先生なんてやめてください! 陸は私だけの物です!!! 」

 

「ユリち……メチャクチャだよん…………」

 

いつもの平穏な風景、しかし最近はユーリの奴が陸に対して異常と言っていい程独占欲を丸出しにしている。最初は私達と言っていたのを今では私だけになっているし、寝る時もいつもは我と一緒に寝ていたのだが夜中に布団から抜け出し陸の布団へと潜り込むようになった。どうやらユーリは陸の奴が先生になった事で生徒に陸を取られると思っているようだった。そしてそんなユーリに感化されるように……シュテルの奴も陸に対する接し方が前よりも積極的になった。デレデレといってもいいかもしれない。レヴィの奴は何の危機感もないのか何も変わらないが、ユーリとシュテルが陸の取り合いをしているといつも「僕もー! 」と言ってそれに乱入する。どうしてどいつもこいつも陸、陸なのか。我も、と思わなくはないがあんな真似できるわけがない。

 

「陸飛……今日こそ私とお風呂に入ってください! 」

 

「い、いや……それは勘弁してほしんだけどん……それにシュテちそんな子供じゃないでしょん? 」

「それでは何故この間はユーリと入ったのですか!? 」

 

「え? あ、あれはユリちがお風呂に乱入してきただけでん……僕の意思で入った訳じゃないしん…………」

 

「分かりました……なら私も乱入します! だから早くお風呂に入ってください!! 」

「何言ってるのシュテち!? シュテち最近おかしいよん!? 」

 

たかだか風呂に入るだけでこの有様だ。と言うか……そのやりとりを隣の部屋の襖から覗いて嫉妬するのをやめて貰いたい。頬を膨らませて「うーうー」と言ってるユーリは可愛いのだがどうにも後ろからだと黒いオーラが見えて困るのだ。レヴィは「何々? 」と言いながらユーリと並んで襖から覗き始めるし。それ以前に何故襖から覗くのだ。特にレヴィだ。あやつは覗く必要がないだろうと思う。どうしてこやつらはどいつもこいつも素直なのか。我はそれが少し羨ましかった。

 

「そぉ〜と……陸ぅ〜「何をしとるか」はっ!? 離してくださいディアーチェ!? 私は陸と寝たいのですよ!? 」

 

「ダメだ!? 今布団に潜り込む動作じゃなかっただろうが!? 寝たいだけなら布団に入れば良かろう? なのに寝ている陸に接吻をしようとする奴があるか! 今日は我と寝ろ! 」

「ううぅぅ〜。りぐぅぅぅぅ…………」

 

そう言って我はユーリの襟を掴み自分の布団へと引きずる。そんな状況でも両手を陸に伸ばして涙を流すユーリは可愛いの一言だ。そしてシクシクと我の隣で寝たユーリだが、こっちが大人しくなると新たな輩が動き出した。明日も早いのだから大人しくして欲しいものだ。じゃないと我の睡眠時間がなくなってしまう。

 

「陸飛寝てますか? ……寝ていますね。そ、それでは……「やめんか、たわけ!? 」はうっ!? な、何をするのですかディアーチェ!? 」

「やかましい!? お主らは揃いも揃ってなんだ!? 寝ておる陸に接吻などしようとするでないわ!? 抜け駆けは許さん! お主も我と寝ろ! 」

 

「あ! そんな!? 離してくださいディアーチェ!? と言うか……今抜け駆けって言いませんでしたか? へぶしっ!? 」

「い、言っとらんわ!? お、おおお主らと一緒にするでない!? わ、我は陸の事など好きじゃないわ!? 」

 

「およよ……嫌われてたのん? ディアち……僕の事嫌いなんだん…………」

 

そう聞こえた瞬間、我は固まった。陸の奴がいつの間にか起きていたのだ。いつもはいくら起こしても中々起きない癖に何故こういう時だけ起きるのか。全く間の悪い男である。しかしそんな事は今の我にはどうでもよかった。今重要なのは陸に誤解されてしまったという事。こやつはふて寝するようにまた眠ってしまい。我は何とも言えない気持ちになる。

 

「なんで……こうなる…………」

「まぁ〜ディアーチェ。陸飛の事です、明日には忘れますよ? 」

 

「シュテル……」

 

「ふふ、これでディアーチェは脱落です」

「なっ!? シュテルぅぅぅぅううううう!!! 」

 

こうして我と陸は喧嘩じゃないが雰囲気が悪くなった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「お兄さん聞いてる? 一回みんなと会ってみようよ! そしたら何か思い出すかもしれないし」

 

「嫌だよん。面倒くさいしん……と言うか授業中だよん高町さん? 」

『やってねぇだろ!!!』

 

クラスメイトの声が私の後ろから一斉に放たれる。お兄さんはまた授業をしていない。だから今はまるで自由時間と化しているのだ。良くないとは思うがどんな手段を使ってもお兄さんには勝てない為クラスメイトも半分諦め始めている。今日1日でどれだけ私達のクラスで革命活動が行われたか分からない。サボるお兄さんに対して朝教室に入った瞬間、一斉に待機させていた魔力スフィアを放った。しかし何事もなかったかのようにお兄さんは無傷。さらにはクラスの半分がバインドを使い、お兄さんをぐるぐる巻きにして固定し、残った半分が砲撃を放つと言うやり過ぎとも言える行為も行ったが、これも失敗。お兄さんはバインドを力尽くで破壊し、何をしたのか分からないが砲撃を全て消滅させた。こうまでして凌がれてはクラスメイトも諦める他ない。

 

「お兄さん? もう少し真面目に授業しようよ…………」

 

「え〜疲れるよん? でもそうだねん……やろっか? 」

 

『本当ですか!? 』

 

「本当このクラス息が合ってるよねん? それじゃ〜授業を始めますよん? 教科書「陸さん!!! 」……だ、誰ん? 」

 

「え!? ギ、ギギギンガさん!? 」

 

やっと授業が始まるという時、またしても授業は止まった。理由は教室に勢いよくギンガさんが飛び込んできたからである。でもおかしかった、ギンガさんにはお兄さんが生きていると言う事実を話していない。変に話すと大変な事になりそうだからだ。

そして突然の来訪者にクラスメイトも騒ついている。

 

「陸さん……生きて……私……嬉しくて…………」

 

「い、いやあの……授業中ですので……またの機会にしてくださいよん? 」

 

「授業?……ふふ、そんな物で私の愛は止まりませんよ陸さん! 取り敢えずこれまで蓄積してきた私の愛の拳! 存分に味わって下さい!! 愛してます陸さん!!! 」

「ギンガさんダメ!? 今のお兄さんは!? 」

 

「ちょっ!? いきなり何々!? 」

「愛・殺・拳……《私の愛(拳)!! 覚えていますか? 》」

 

「どぅほっ!? 」

「お兄さぁぁああああああん!? 」

 

突然だった。ギンガさんは構えを取り、お兄さんに拳を放つ。流石は四年前のギンガさんとは似ても似つかない拳の威力。お兄さんはうけとめたがその圧倒的な拳圧に押され真横に吹き飛びガラスを突き破って外へと飛び出した。

クラスのみんなは言葉が出ず、教室に静寂が流れる。当然だ。これまでみんなが何をやっても微動だにしなかったお兄さんがたかが拳一つでぶっ飛ばされてしまったのだから。

それにしてもお兄さんは大丈夫なのだろうか……何故ならお兄さんが落ちたのは三階だ。普通なら怪我では済まない。

 

「ねぇ〜先生……死んだんじゃないの? 」

「う、うん…………」

 

「あ、あれ? 陸さん……これに耐えられないの!? 」

「何してるんですかギンガさん!? お兄さん殺す気ですか!? ギンガさんはもう少し自分のスペック把握してください!? お兄さぁぁぁああああああん!? 」

 

最近知り合ったアインハルトさんとの再戦も控えてる中、心中穏やかじゃない事ばかり起こる。今年の学校生活は波乱万丈、悪い意味でだ。

私は外へ飛び出したお兄さんを探して校舎を出た。私のクラスのある位置を計算に入れてお兄さんが落ちたであろう場所を探す。すると膝を抱えシクシクと泣くお兄さんを見つけた。と言うか……いい大人の体育座りは痛々しいものがある。

 

「お、お兄さん? 大丈夫? 怪我とか……してない? 」

 

「うっ、うっ……授業サボったからって……うっ……殴る事ないじゃないかん…………」

 

「……それは関係ないよお兄さん……事ギンガさんに限っては…………」

「え? そうなのん? じゃ〜どうしてん? 」

 

「え、え〜と……お兄さんが好きだから殴ったん……だよ? 」

 

「好かれてるのに……殴られるのん? そうなんだ……でも痛いの嫌だよん……もう関わりたくない…………」

 

「あはは…………」

 

もう乾いた笑いしか出ない。記憶があるならまだしも、何も覚えていないお兄さんにはただの危険人物にしか見えないようだ。でも実際クラスメイトもそう映っているだろう。決して悪い人じゃないのだがお兄さん相手だと壊れてしまう。

すると私達の元にギンガさんが歩いてきた。お兄さんはギンガさんを見ただけで恐怖し顔を強張らせている。

 

「ヴィヴィオ? どうなってるの? 陸さん……なんかおかしい」

 

「お兄さんは記憶喪失なんです! だからあまり過激な事しないでくださいギンガさん! 」

 

「記憶……喪失? ふふ……ふふふ。そうですか……陸さん私の事覚えてないんだ……ふふふ。じゃ〜キャロの事も覚えてない? ふふふ……そしたら……あの宣言も無効になる訳よね? と言う事は……陸さんの一番に返り咲く事がまだ私にも出来るって事よね? 愛人から本妻へ……ふふふ、キャロ? 何も知らない貴方は負け犬よ! 陸さんは私が貰ったわ! はぁぁ〜それにしてもその情けない表情……言葉遣い……まさに私が一番愛してた頃の陸さんだわぁ〜!ダメでダメでダメ、ダメダメな陸さん……また陸さんのお世話が出来る……ふふふ、ふふふ……えへへ……こんなにゾクゾクする事ない! もういっその事私の部屋に監禁しようかしら? 今のダメな陸さんを私の好きに……ふふふ、つま先から髪の毛一本まで私の物ぉ〜」

 

「ギ、ギンガ……さん? 」

 

ギンガさんは俯きながらブツブツと何かを永遠と呟いている。そしてその背中からは黒いオーラが立ち昇ったように見える。

私は怖かった……ギンガさんは完全に昔の状態に戻ってしまったのだ。お兄さんが亡くなったとされてから四年、ギンガさんは大分丸くなったのだ。でも今日本日をもって……お帰りなさいと言わなければならない。

 

「はぁ〜はぁ〜陸さん大好き〜。私は愛してます。死んでも愛してました。もう離しません。どこへも行かせません。ずっと私の物です。陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん」

 

「ひっ!? こ、怖いよん!? 」

「え!? ひゃうっ!? ちょっ!? お兄さんそんな急に抱きつかなで!? う、嬉しいけど恥ずかしい!? ……っ!? あ、ああ……ち、違うんですよギンガさん? 別にお兄さん横取りしようとかそんなんじゃ…………」

 

「ヴィヴィオ……私を出し抜いたの? 貴方……知ってたんでしょ? 陸さん生てるの……それなのに私にもキャロにも知らせずに……その間に陸さんを奪うつもりだったの? だとしたら……許すわけにはいかない。今から道場行きましょうか? 一対一で……スパーリングでもしましょうか? 勿論手加減なんていらないわよ? 全力全開で来てね?私も『全力全壊』でやるから。ああ〜でも……まだ貴方程度の拳じゃ……一撃で存在が消えちゃうかしら? でも大丈夫。痛みなんて感じない……一瞬で……逝けるから。……あら? どうして震えてるの? 怯えているのかしら? フフフ……涙まで流して、可愛いわね? だけど許さない。さぁ〜行くよ? ヴィヴィオ? 」

 

「ひぐっ……うっ、うっ……ゆ゛る゛じで……ひぐっ……わだぢは……うっ……ぞんな゛だい゛ぞれだごどじでま゛ぜん…………」

 

怖かった。ただひたすらに怖かった。この状態のギンガさんを見るのは私は初めてだ。しかしそれを目の当たりにして初めて分かる。この人は敵に回してはいけない。もし敵に回せば、自分の存在など簡単に消されてしまう。

そしてギンガさんは怖い顔でゆっくりと私とお兄さんの方へ歩いてくる。手を私の方へと伸ばし、このままでは確実に連れて行かれる。いや……連れて逝かれる。

 

「ひっ!? お゛に゛ざん゛だずげで!? 」

 

「っ!? 陸さん? どうして邪魔するの? この手を離して? 殴りますよ? ふんっ!!! ……え……どうして……陸さんがこの威力の拳を受け止められる筈は…………」

 

お兄さんはギンガさんが私に伸ばした手を掴み私を守ってくれた。しかしギンガさんも邪魔を許すまいとかなりの力を入れて拳を放った。だがその拳は軽々とお兄さんの左手に吸い込まれる。

そしてお兄さんの様子もどこかおかしい。少し怒っているようだ。すると……固まっているギンガさんの手を離し、右手をギンガさんのおデコへ近づける。

 

「僕の生徒を泣かせるな……お仕置きだ……よん!!! 」

「ほぶしっ!? 」

 

デコピンだ。お兄さんはギンガさんにデコピンを放った。たかがデコピン……しかしギンガさんはぶっ飛んだ。そして倒れずに着地したが、おデコをおさえている。すると急に私達に背を向け、泣きながら逃げ出した。その捨て台詞に私は開いた口が塞がらない。

 

「りぐざんがぶったぁぁぁあああああぁぁぁ……うわぁぁぁああああああん!? 」

 

これから先……私は不安でしょうがない…………

 

 




次回もよろしくお願いします。

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