魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

51 / 76
ども〜

ではよろしくお願いします!


第51話《始まりの激突》

「およ? ……フフ、どうしましたかん? 高町さん? 」

 

「お……お、お…………」

「お? おって何ん? うむむ……立っていたいなら止めないけどん……座って「おに゛ぃぃぃざぁぁああああああああん!!!」ええっ!? 何ん!? て言うか君早っ、おぶっ!? 」

 

『お、おおぉぉ…………』

 

私、高町ヴィヴィオはクラスのみんながいる前で大胆にも新任の先生を押し倒した。みんなも私が先生を押し倒した瞬間、声を揃えて驚く。しかし私はそんな事を気にしている余裕などない。何故なら目の前に……いや、私が押し倒したのは誰でもない、死んだ筈のお兄さんだからだ。涙は止まらず溢れお兄さんだろうその人の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。

お兄さんが生きていたと言う喜びが私に元気を、お兄さんへの想いを呼び起こす。でも次の瞬間私は何を言われているのか分からず、お兄さんの胸に埋めていた顔を上げた。

 

「え、え〜とん……君……僕の事知ってるのん? どっかで会ったっけん? 」

「え……お兄さん私だよ? ヴィヴィオだよ? 忘れちゃったの? 4年前、私にいっぱい飴くれたよね? 優しくしてくれたよね? 私を助けて……くれたよね? 」

 

「……ごめん……覚えてないよん…………と言うかん、君と会うの初めてだしん…………」

 

「そん……な…………」

 

私はショックだった。覚えてない、会うのが初めてだと言われて。という事は全くの別人なのか。しかしそんな筈はない。間違いなくお兄さんなのだ。声も、顔も。そっくりさんなどではない。正真正銘、鈴木陸飛……私の大好きなお兄さんの筈。でも何故だろうか……私の事を知らない事や言葉遣いや雰囲気がまるで違うのは…………

そして私はゆっくりとお兄さんの上から退き、自分の席に戻った。みんなも私の心中を察したのか何も言わない。そして教室は静寂に包まれる。私はと言えば顔を机に伏せて静かにすすり泣く。

 

「あやや〜なんか雰囲気悪くなっちゃ、ちゃ…………では皆さん、以上でホームルームを終わりまする! さいなら〜」

 

『…………』

 

教室全体がなんとも言えない空気になり始め、ある一人のクラスメイトがふと……言葉を発した。そしてその言葉はまるで伝染するようにクラス中に広がり始める。

一体そのクラスメイトが何を言ったのか……それは「ホームルーム何もしてないよね? 」である。確かに先生が教室に入って来てから挨拶した以外何もしていない。こう言ってはなんだが、この学校にはマナーの悪い生徒や不真面目な生徒は滅多にいない。その為、今の先生の行動は理解出来ないのだ。一体何をしに教室に現れ、自己紹介もせず、言葉遣いも悪い。正直な話、あり得ないとしか言えない。

 

「ねぇ〜あれが先生なの? あり得ないんだけど…………」

「そうだよね、不真面目と言うかなんと言うか…………」

 

「そう言えば高町さんがお兄さんとか言ってなかった? 」

「ええっ!? あれが兄なの!? 嘘〜それってなんか可哀想…………」

 

お兄さんと思われる人は言いたい放題言われていた。リオとコロナは私を慰めてくれているが周りの文句や悪口は全て私の耳に入ってきている為、私はあまり聞こえていない。悲しかったのだ。お兄さんかもしれない人がクラスのみんなに言いたい放題言われているのが。

お兄さんは本当は真面目だ。普通の人より遥かにと言えるほど。しかしあのお兄さんは違う。真面目どころか不真面目、いい加減。ちゃらんぽらんなのだ。

そして放課後、私はリオ、コロナと一緒にノーヴェとの訓練へと赴いた。いつも通りのスパーリング。でもどこかで私はお兄さんの事を考えていた為中々集中出来ない。ノーヴェにも心配されたが確証もない事を言いふらす訳にもいかず、私はお兄さんの事は言わなかった。でも夕方の事だ。家に帰るとなのはママだけじゃなく、私の為にフェイトママもお出迎えしてくれた。そして食事をしている最中、普段通り振舞っていた筈の私になのはママは「何かあった? 」と聞いてきた。フェイトママもそう思っていたようで、結局隠している事が出来なかったのだ。

 

「ねぇ〜なのはママ? フェイトママ? もし……今もお兄さんが生きてたら……驚く? 」

 

「リッ君が? う〜ん。そうだね、もしそんな奇跡があったら驚くよ」

「うん、陸飛が生きてるなんて……ある訳ないけど。もし生きてたら私も驚くかな? どうしたの? 突然そんな事? 」

 

「その……あのね! 今日学校に新しい先生が来たの! それで……それでそれがお兄さんだったんだよ!? 性格も雰囲気も全然違うんだけど、間違いなくお兄さんだと思う! けど……わ、私の事……ぉ……ぼえ゛でぇ……な゛ぐて……ぅっ、ひぐぅっ…………」

 

「え!? ヴィヴィオ!? 」

 

「ヴィヴィ……オ? 」

 

教室での出来事を話していた私はあの時の悲しさを思い出してしまい、なのはママ達の前で泣いてしまった。けどすぐになのはママが私を抱きしめてくれる。それで少しは落ち着いたのだが私はまだ少しだけ泣き続けていた。

なのはママとフェイトママは何やら難しい顔をしながらも私の言っている事を信じようとしてくれた。しかしあの先生が本当にお兄さんだと言う確信が顔と声以外今判断する事が私には出来ない。その為、私は一人で抱えてしまったのだ。下手に周りを騒がすのも迷惑になる。それ程、家族や知り合いの間でお兄さんの存在は大きいのだ。

 

【フェイトちゃん今のヴィヴィオの話どう思う? 】

 

【ヴィヴィオがここまでになるくらいだから多分本当の事だとは思うけど……陸飛が生きてるなんてそんな事ある訳ないと思う。勿論生きていればそれは嬉しい事だよ? でも…………】

 

【フェイトちゃんの言いたい事は分かるよ。もしリッ君が生きていたなら何故この4年間、私達の前に姿を現さなかったのか……だよね?

【うん。それもあるけど、ゆりかご消滅の際、周りの状況は嫌という程調べた筈なんだ。しかもあの時は上空に沢山の船がアルカンシェル発射の為に待機してたし。実際、アルカンシェルの射程圏内に陸飛がいたのは確実。どう考えても生きてるなんて考えにくい】

 

【そうだよね……でも! ヴィヴィオがここまで言うんだから私は明日確認してみるよ! 】

 

【うん! 分かった】

 

その後の事。私はなのはママとフェイトママからもう四年生になったからとインテリジェントデバイスをプレゼントして貰った。そしてもうすっかり泣き止んだ私はなのはママと魔法の練習に出掛けたのだった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト。覇王を名乗らせて頂いてます」

 

「噂の通り魔か……で、何を聞きたいって? 」

「貴方の知己である王達、聖王オリヴィエと冥王のイクスヴェリアについてです」

 

私の名はアインハルト・ストラトス。St.ヒルデ魔法学院中等科の1年生。私には果たしたい目的、悲願がある。その為に私はこうして学校帰りに強い相手を見つけては決闘を挑んでいる。迷惑だとは思うがそれが私のなすべき事。そして今はノーヴェ・ナカジマさんに手合わせをお願いしているところだ。

 

「知らねーな。あたしが知ってんのは一生懸命生きてるだけの普通の子供達だけだ」

 

「ではもう一つ確かめたいことが。貴方の拳と私の拳、一体どちらが強いのかです」

 

私がそう言うとノーヴェさんはつまらなそうに、呆れたような表情をみせる。しかしそんな時どこからか声が聞こえた気がした。別に私やノーヴェさんに向けて放たれた言葉ではない。誰かと会話をしているようなそんな言葉だ。しかし周りには誰もいない。

 

「……来いよ」

「防護服と武装をお願いします」

 

「いらねーよ。よく見りゃまだガキじゃねーか。なんでこんなことしてるんだ? 」

 

「……強さを知りたいんです」

「ハンッ……馬鹿馬鹿しい! 」

 

「陸飛陸飛〜! 見て見て〜僕のスーパージャンプ!……へ? 」

「っ!? お、おい!? お前どっから現れて!?(ダメだ……もう止められない)」

 

ノーヴェさんが先に攻撃を仕掛けて来たところ、どこから割り込んできたのか青い髪でツインテールの子が私とノーヴェさんの間に入ってきた。その子はたまたまそこに入ってきたようで、防御も受身も取る体制ではない。ただ目を丸くしてノーヴェさんの方を見ている。このままではノーヴェさんの攻撃はその子に直撃し、怪我では済まない。しかしノーヴェさんの攻撃がヒットする瞬間、何かが私の横を突き抜けるように通り過ぎた。速過ぎて何が通ったのかは分からなかった。でも次の瞬間、ドスッという鈍い音が聞こえ、ノーヴェさんのいる方に視線を戻すとノーヴェさんの拳は一人の男性に受け止められていた。

私は驚き固まる。一瞬だ。あの子が割り込んでから攻撃を受けるまで一秒もなかった筈。にも関わらず、この男性はその僅かな間に私の後ろからノーヴェさんの拳を受け止められる位置まで移動したという事。速い、あまりにも速すぎるのだ。見た所、スピード系の魔法を使った形跡もない。

 

「お、お前……は…………」

 

「およよ!? レヴィち大丈夫!? 怪我ないかなん!? 」

 

「う、うん……ありがとう陸飛。僕は何ともない」

 

青い髪の子を見事にキャッチし、攻撃を防いだその男性は地面に着地するとその子を心配していた。そしてノーヴェさんだが、攻撃を受け止められた事よりもその男性を見て驚いている。しかし驚き方が普通じゃなかった。まるであり得ないものを見るかのような顔で固まっている。

 

「嘘だろ……な、なぁお前鈴木 陸飛じゃないのか!? 私の事は知らないかもしれないが元機動六課の連中は知ってるだろ? 」

 

「……い〜やん、知らないよん? と言うかさぁ〜ん、危なくレヴィちが怪我する所だったんだけどん? レヴィちに何か言う事ないのん? 」

「え!? あ、その……すまん!? 君もごめんな? 怪我なかったか? 」

 

「うん! 陸飛のお陰で怪我ないから大丈夫! 問題なし! 」

 

「レヴィちがいいならいっか。レヴィち〜そろそろ帰ろうよん? いつまでも遊んでるとディアちに怒られるからん…………」

 

「そうだね……王様怖いもんね…………」

「あ! ま、待って下さい!? ……貴方が何者か知りませんが、かなりの手練れとお見受けします! だから私と……私と手合わせして下さい!! 」

 

私はこの人の動きを見て感じた。失礼な話だがノーヴェさんよりもさらに格上の相手、このチャンスを逃す理由はない。だから私は彼へと挑む。私が強いのか彼が強いのか、それが知りたいのだ。でも何故だろうか、彼からはまるで覇気が感じられない。それどころか戦う意思すら感じられないのだ。あれだけの動きが出来る手練れならば多少なりとも戦わずに威圧されるもの、しかし彼からはそれを感じない。

 

「お前なぁ〜? こいつは私みたいなのとは違うってのに…………」

 

「どうでしょう? 受けて「嫌だよん」っ!? な、何故ですか? 」

 

「え〜だって戦うって……痛いしん。それに早く帰らないとディアちが怒るんだよん? 」

 

「くっ……ならば……失礼を承知で、こちらから行かせて頂きます!!! 」

「ばっ、馬鹿よせ!? そいつはお前みたいな奴が敵う相手じゃ!? 」

 

私は無理矢理戦いに持ち込む為に、彼に襲いかかる。こうすれば嫌でも戦う筈だ。しかし彼は私の攻撃を簡単にいなした。そしてすかさず攻撃を繰り出す私をまるで子供扱いするように攻撃をかわす。しかもあちらは一切攻撃してこない。私はこのようなナメた戦い方は好きじゃない。だから彼に対し理不尽な怒りを覚える。

 

「ふざけないで下さい!? 私をナメているんですか!? 攻撃できる隙があるのに何故攻撃してこないのです!? 」

 

「だって……戦うの好きじゃないよん? それに痛いよん? 死にたくないしん、殺したくもないよ〜ん。もうさぁ〜こんなつまらない事やめようよん? いくらやっても何も変わらないよん? 」

 

「つっ!? わ、私では……貴方には……及ばないと言うのですか……役不足だと…… 」

 

「あ〜いやや、そういう意味じゃ「覇王……」へ? 」

「断・空・拳!!! 」

 

私を甘く見てよそ見をしている彼に私は必殺の一撃を放った。私が目の前にいるこの状態ではこれを防ぐ事は不可能。しかしそう思っていた私をあざ笑うように、目の前の彼は何事もないかのように、普通に私の覇王断空拳を右手で掴んだ。そして私はこの時理解した。防ぐ防がないの問題ではない。彼にとってこの程度の攻撃はもう攻撃ではないのだ。私とはまるで別の次元にいるかのような強さ。彼は私の遥か高みにいる。

そんな事を思っていた矢先、彼は私の手を掴んだまま私の手を掴んでいない方の手で私のおでこにデコピンをするような構えを取る。

 

「少しお仕置きだよん? 頭冷やしなぁ……ちゃい! 」

「がぼっ!? 」

 

私はその瞬間デコピンを喰らい、その衝撃で後ろに100メートル近くぶっ飛んで気を失った。そして私が最後に見たのはデコピンを打ち放ったままの姿でこちらを見ている彼の姿だった。

 

 

 




次回もよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。