魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

ではでは〜よろしくお願いします!


第50話《面接》

「なん……だと……い、今……なんと言ったのだ…………」

 

「そ、そうです……きっと聞き間違えか……何かです…………」

「何が? え? どういう事? 」

 

「ほ、本当なんですか陸ぅ…………」

 

我らは陸と生活を共にし始めて早四年のある日、陸が話があると言い出したので全員で陸を囲い話を聞く事にした。しかしその内容は恐ろしくも我らの心を不安にさせる。心配……それが我らの思っている確かな感情だ。

だがそれは陸が自分で決めてやると言い出した事の為、我らが止める訳のもいかない。

そして一番心配しているのはユーリだ。陸を心配過ぎて泣きべそをかきはじめている。

 

「い、今一度確認するぞ陸? お、お主は……何をやると言ったのだ? 」

「陸飛……嘘だと……何かの冗談だと言って下さい!? 」

 

「もうん……みんなどうしてそんなに反対なのん? さっきも言ったよん? 僕は……学校の先生になるん!! 」

 

「「「っ!? 」」」

「陸飛学校の先生になるの!? 凄い!! 」

 

我とシュテルは聞き間違えじゃない事が分かると両手両膝を地面につき、うなだれた。我らの聞き間違えと言う希望は儚くも砕け散ったのだ。

ユーリは両手で顔を隠し号泣し始め、レヴィは事の重大さが分かっていないのかバンザイをしながら凄いと喜んでいる。

陸が学校の先生になるという事はすなわち、生徒の見本になるという事、生徒を導く事。そんな事が陸に出来るとは到底思えない。

我は思うのだ。陸が学校の先生になんてなれば必ず秩序が崩壊し、学級崩壊を起こすのではないかと…………

 

「うっ、ひぐっ!? ぞ、ぞんな゛……り゛ぐが……り゛ぐが……り゛ぐが私だち゛のり゛ぐがみんなの゛り゛ぐになっでっつ!? 私……わ゛だち゛、わ゛だち゛ぞんな゛の゛だえ゛ら゛れ゛な゛い゛でずぅ…………」

「「問題はそこじゃないわ(ありません)!!! 」」

 

「およよ〜? ユリち泣かないでよん? 」

 

陸は大泣きをするユーリの頭を撫でながら慰める。一体誰の所為でこんなカオスな状況になっているのは当の本人はまるで自覚がない。

我々も泣きたいぐらいだがそんな場合ではない。陸の件をなんとかする前に今のユーリを何とかしなければ話が進まない。

ユーリは頭を撫でられているうちに悲しい気持ちに拍車がかかったのか陸に抱きついてさらに泣き始める。このままでは学級崩壊の前に家族崩壊だ。

レヴィはレヴィで陸と抱き合っているユーリを見ながら羨ましそうに見つめているし、シュテルもシュテルでさっきまで我と同じ立場でいた筈だがユーリと陸を見て何やら黒いオーラを昇らせていじけ始めてしまった為我だけしかこの状況を打開する戦士はしない。

 

「り゛ぐはわ゛だち゛達の゛がぞぐでず!? 他の゛ひどにな゛ん゛で……うっ、うっ……い゛や゛ぁぁぁぁ…………」

 

「あやや……別にユリち達の家族やめる訳じゃないのにん…………」

 

「はぁ……おい陸! どうして学校の先生になどなりたいと思ったのだ? それにそう簡単に先生になれるとは思わんのだが? 」

 

我は確かめる所を聞いていないと思い、まずこれを確かめた。まさか内定も決まっていないのにこんな事を言う筈がないだろうと思ったからだ。よもや考えなしで学校の先生になりたいと思った筈もないだろうと。

 

「う〜ん……このチラシ見つけたん? 」

 

「ん? 何々……って!? まだ採用になったわけじゃないのか!? お主はぁぁ……決まってもいない事で家族を崩壊させるな、このたぁぁぁぁわぁぁぁぁけぇぇえええええええええええ!!! 」

 

「へ? ディアち……ご、ごめ……別にそんなつもりわん……ひっ!? ぎゃぁぁああああああああああああああ!!! 」

 

我は陸に対して死なぬ程度の魔法の雨を降らせた。こやつは決まってもいない教師募集のチラシを見て先生になるなどと言ったにすぎなかったのだ。

しかもこのチラシ……初等部講師の募集だ。確かに子供には人気が出そうだがある意味いい影響になるとは思えない。それにこの馬鹿がその面接を受けて合格する筈もない。必ずはねられる筈だ。

 

「フフ……いいだろう! 陸よ! その面接受けてみるが良い! 」

「え!? ディアーチェ何を!? 」

 

「な〜に、安心しろユーリ。考えてもみろ、陸の奴が学校の先生になる面接を受けて合格する訳がないだろうが。だからここは無理だという事を本人に認めさせる為にも受けさせてやるべきだ」

 

「た、確かに陸が受かるとは思えないです。なら……陸! 頑張って下さい! 陸なら全力で落ちる筈です!!! 」

 

「えぇ……ユリち……酷いん…………」

 

 

◇◆◇◆

 

 

私はカリム……カリム・グラシア。今日は前から募集していたSt.ヒルデ魔法学院の教師を採用する為の面接をする日。中々募集をかけても是非と言う人が現れない為にずっと困っていたのだ。しかし今日、やっとやりたいと言う人が現れた。だから私はすぐにでも面接の場を用意し、どんな人か見極める事にした。そしてもうすぐシャッハがその人をこの部屋に連れて来る筈。

するとシャッハが突然、らしくなくドアを物凄い勢いで叩くように開けると私の所へ走って来たのだ。何やら焦っている様子で。

 

「シャッハ、そんなに慌てて「大変です!? 」え? 」

 

「い、いいいい今面接をう、ううう受けに来てるひひひひ、人が!? 」

「どうしたの!? まさかトラブルにでも巻き込まれて」

 

「失礼しますん? 」

「「っ!? 」」

 

「嘘……そんな……馬鹿な……陸君………… 」

 

シャッハが開けたドアから挨拶と共に入って来たのは四年前、JS事件の最中、ゆりかごと運命共にした鈴木陸飛その人だったのだ。私は驚き、目を見開く。これならばシャッハが取り乱した理由も分からなくはない。いや、彼を知っている誰であっても同じような反応をする筈だ。

面接云々の前に彼の生存を喜びたい所だ、しかしここで違和感があった。彼の雰囲気がおかしかった。確かに言葉遣いやだらしのない雰囲気は彼が残業部隊で仕事をする時のキャラだが、今それをする必要はない。ましてや私達はそれが演技だと知っているのだ。だがそれだけじゃない。彼はまるで私達が初対面であるかのような反応だ。私は意味が分からなかった、ここにきてこんな反応をする意味がどこにあるのだろうと。

 

「あ、あの陸君? 私の事分かりますよね? 」

 

「およ? いいやん? 知らないよん? 」

 

別人……最初はそう考えたがここまで似ている人はそうはいない。それに名前だ。鈴木陸飛などと言う名前は他にいるわけがない。何故なら彼ははやてと同じ世界の出身だ。にも関わらずこの世界で同じ名前を得るなど考えにくい。となれば考えられる事は二つだ。なんらかの理由で私達に他人を演じているか記憶喪失であるかだ。しかし前者はない。理由が思い至らないからだ。そんな事をするメリットもない。それにこの四年、生きていたのにも関わらず姿を現さなかった事にも後者ならば説明がつく。

 

「陸君……失礼ですけど……貴方は記憶喪失ではありませんか? 」

 

「よよ!? どうしてわかったのん!? 確かに前の事は何も覚えてないよん? と言うかそれよりん、面接を始めてくださいん? 」

「え? あ、はい。そうですね…………」

 

やはり彼は私の予想通り記憶喪失だったようで私達の事はおろか名前以外の素性など全てを忘れてしまっているようだった。こんな状態でよくこの四年間生活できていたと思うがここにいるという事が何よりの証だ。

そしてこの後一応面接をしたが正直な所私自身が冷静な精神状態にあらず、陸君が生きていたと言う事実が嬉しかった為に彼をまともに適正であるか審議する事が出来なかった。なのでつい……合格にしてしまったのだ。

私情を挟んでしまったというのが正しいだろう。もう彼は管理局には属していない。ならば働き口に困っているはずだ。ならばと……採用してしまったのだ。

 

「その……よろしかったのですか? 見た所……なんと言うか……ダメ人間にしか見えないのですが…………」

 

「言わないで……今本当に良かったのか後悔してるところなんだから…………」

 

はっきり言えば彼は昔とは比べ物にならない程ダメ人間になっている。言葉遣いを知らず、きちんとした挨拶もしない。そして何よりやる気が感じられない。

正直な所、学校の教員となろう者には相応しくないのかもしれない。だから私はダメ元である事を決めた。それは彼を体育の教師にしようと決めたのだ。これならば少し言葉遣いが悪くても生徒はそこまで気にしない筈だと無理矢理自分に言い聞かせた。だが私は忘れていたのだ。この採用募集は初等部……先生が担当するのは新しいクラスの担任だ。という事は特殊な部門以外の教科は全て彼が担当する。礼儀の正しいSt.ヒルデ魔法学院の校風であの様な態度の者が入れば最悪学級崩壊になりかねない。しかし私がそれに気づいたのは新学期の始まった直後……彼の今の態度故にやらかした事件が起きてからになるとはこの時は思いもよらなかったのだった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ただいま〜ん」

 

「陸〜おかえなさい! で、どうでしたか? 勿論落ちましたよね? 言うまでもありませんよね? 大丈夫です、今日は私が元気付けに一緒に寝てあげますよ? 」

 

「ユリち……酷いよん…………。ぶぅ〜。まぁ〜いいや。結果はねぇ〜ん? 合格したよん!! ……あれれん!? ど、どうしたのユリち!? そんなこの世の終わりみたいな顔してん? 」

「うっ……ひぐっ、ひぐっ……うわぁぁあああああああああああん!? ディアーチェぇぇええええええ!!! 」

 

「およよ……また泣かれたん……流石にショックだよん…………」

 

突然の事だ、夕御飯を作っている我の所に大泣きをしたユーリが駆け込んできたのだ。何事かと思えば陸の奴が面接に合格したと言うのだ。我は何かの冗談だと思い陸の奴に詰め寄るが事実だと採用通知を見せつけられた。これを見せられては信用せざるおえない。

この事実に我は手の施しようがなかった。ユーリは押し入れで毛布に包まって塞ぎこんでしまい、我とシュテルは頭を抱えてどうにか出来ないものかと頭を悩ませる。そしてレヴィはと言えば陸を褒めて凄いと言っているだけ…………

 

「陸……お主……教師をするのだぞ? 本当にちゃんと出来るのか? 生徒達を導いて行けるのか? 」

 

「フフ、大丈夫だよん〜要するにん〜いい大人を演じればいいんでしょん? 」

「演じるってなんだ、演じるって!? それは演じる物ではないわ、たわけ!!! 」

 

ダメだと思った。陸と話していると心配に心配が重なっていく。生徒がグレなければいいのだが、こいつを見ているととんでも無いことになりそうだから怖い。しかし合格してしまった物を今更辞退しろとは我は言えなかった。何故なら面接の前に陸がぼそりと言っているのを我は聞いてしまったからだ。自分が安定して稼げるようになれば我らをもっと楽に、笑顔にできる筈だと……それを聞いてしまった我は今陸の奴を無理矢理止める事が出来ない。陸はいつだってそうなのだ。出来る出来ないに関わらず、やる事は決まって我らの為。自分の為になど欲は出さない。そんな奴だからこそ我らは家族になれた、好きになれた、そして心配するのだ。

 

「ま、まぁ〜ディアーチェ? 合格したのは喜ばしい事です。取り敢えず今日の所はお祝いしましょう。でもユーリは受け入れるのに少し時間がかかるかもしれませんが…………」

 

「そう……だな。ユーリは陸が大好きだからな。今はそっとしておこう」

 

「ユリちどうしてそんなに嫌がるのん?」

「「お前(貴方)は少し人の気持ちを察しろ(て下さい)!!! 」」

 

 

◇◆◇◆

 

 

私は高町ヴィヴィオ。今年で初等部四年生、そして今日が新学期だ。友達であるコロナやリオとも同じクラス。さらには新しい先生が私達の担任になるという事もあってこの新学期、私は凄く楽しみなのだ。

自分の教室へ行き、席についてコロナ達と話していると誰かが先生が来たと言ったのだ。だから私も含めて全員がそれを大人しく待つ。

しかし教室へ入って来た先生を見て私は心臓が高鳴った。止まってもおかしくない程に高鳴ったのだ。

 

「皆さんさん! おはよよ〜ございま〜す! 初めましてん? 今日からこのクラスの担任なんかになっちゃっちゃ……すず、ん? 突然立ち上がってどうかしましたか? え〜と……ふむ、高町ヴィヴィオさん? 」

 

「嘘……。ぉ……ぃさん…………」

 

生きていた。今、目の前にはお兄さんがいる。そればかりがその時の私の頭を支配する。私はこれ以上ない程の驚きと喜びに浸っていた。しかし私はこの時、まだ知らなかったのだ……今目の前にいるお兄さんが記憶喪失で……私やなのはママ、キャロさんの事も全て忘れてしまっているという事を…………

 




次回もよろしくお願いします!

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