魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
すいません遅れまして…………
ではよろしくお願いします。
ある日の朝、私高町なのはは朝ごはんを作るために起きた。ヴィヴィオも今年で初等部三年生。JS事件からもう三年が過ぎ、私とフェイトちゃん、そしてヴィヴィオは三人で一つの家で暮らしている。
しかし最近、フェイトちゃんがおかしい。一体何がおかしいかと言えば朝帰りが多いのだ。しかも決まってベロンベロンに酔っ払って帰ってくる。
今日もまだ帰ってない。おそらくそろそろ帰ってくるかと思うのだがどうせ酔っ払って来るだろう。フェイトちゃんがこうなってから日がまだ浅い、だから何かあったのだろうかと心配になる。けどフェイトちゃんは何でもないと言って教えてくれない。
「なのはママ!? フェイトママが帰って来た!? と言うかまたタコママモードになってる!? 」
「うん、今行くからフェイトママお願いヴィヴィオ! 」
「うん!! 」
ヴィヴィオが言っているタコママモードとは泥酔状態のフェイトちゃんの事をさす、真っ赤になり私やヴィヴィオにタコのように抱きついて離れない事からヴィヴィオが名付けた。
「フェイトちゃん……あまり飲み過ぎたらダメだよってこの間言ったばかりだよね? 」
「あ〜ののは〜?たらいまぁ〜? 」
「はぁ……おかえりフェイトちゃん? と言うか私はののはじゃなくてなのはだからね? 大丈夫? 」
こんな状態でどうやって帰って来ているのかフェイトちゃんは一人ではまともに歩く事も出来ていない。私が肩を貸し、取り敢えずリビングのソファーへとフェイトちゃんを運ぶ。
ヴィヴィオもすっかりこうなった時の対処に慣れている為、すぐに水と冷たい濡らしたタオルを持って来てくれる。するとフェイトちゃんは決まってヴィヴィオに絡み始めるのだ。
「ヴィヒオー? ありがほぉ〜大しゅき〜! 」
「ちょっ!? フェイトママそんなに器用に絡みつかないで!? 苦しいから!? 私死ぬぅぅ!? 」
「フェ、フェイトちゃん止めなって!? ちょっ!? 何で余計締めてるの!? ヴィヴィオ堕ちちゃうから!? 首にしっかりフェイトちゃんの腕絡まってるから!? 」
このように週三回はこんな感じなのだ。フェイトちゃんは一回誰かに絡みつくと中々離れない。今回はヴィヴィオだったが前は私が絡みつかれた。ヴィヴィオは丁度学校へ行ってしまい、私とフェイトちゃんだけ。流石にあの時は自分の貞操に危機を覚えた。ヴィヴィオには絡まるだけで何もしないが私には色々イタズラしてくる。正直困っているのだ。
「ののは〜聞いれよ〜? わらひがねぇ〜? こんらに積極的にあらっクしても〜あいつは〜全れんわらしの気持ちに気付いれくれないんらよぉ〜? 」
「フェ、フェイトちゃん? それってどういう事!? 男!? 男なの!? 私と言うものがありながら男と会ってるの!? って!? 何寝てるのフェイトちゃん!? 」
「わぁ……衝撃の新事実だ……フェイトママの酔いが冷めたら修羅場になりそうだよ…………」
その後、すっかり酔いの冷めたフェイトちゃんに私は8時間に及ぶOHANASIを執行したがとうとうフェイトちゃんは喋らなかった。
◇◆◇◆
「です〜……カストぉ〜もっと強いお酒ないですですですですかぁです〜? 」
「いや……もうやめとけって。飲み過ぎだぜ? あいつがいなくなって寂しいのは分かるけどよ? もう三年も経ってるんだ、いい加減吹っ切っていこうぜ。こうも毎週酒に溺れてるお前を見てると心配になる。まぁ〜その度にうちの店に飲みに来てくれるのはありがたいんだけどよ? 」
「ぬわぁに言ってるですですですですかぁ? 万年恋もした事もない消しゴム野郎には僕の気持ちなんて分かるわけねぇ〜ですですですですぅ〜。陸ちゃんが亡くなって……ですです、ですですからですです何ですです…………」
「もうですですしか分かんねぇ〜し。はぁ……しょうがねぇ〜なぁ、ほれ? 最後だぞ? 奢りだ」
そう言ってカストは僕の前にグラス一杯のお酒を差し出す。僕は陸ちゃんが亡くなってからすっかりダメになってしまった。ただひたすら訓練を重ね、自分を鍛え抜き、こうしてカストのBARでお酒に呑まれる毎日。
管理局の仕事はあの事件を機に退職した。もう嫌になったのだ。誰かを失う事でしか守れない自分に。
だから僕は強くなりたかった、もう陸ちゃんや少尉のような犠牲は出したくないからだ。しかし、こう自分を追い詰めているとどこかでガタがきてしまう。今の自分がいい例だ。
そして僕がカストから出されたグラスに手をかけた時、店にお客が入ってきた。
「いっらっしゃいませ! ってなんだ、あんたか。また一人で飲みに来たのか? 俺の目の前で飲んだくれてるこいつもこいつだがここんとこ週三回ペースで来てくれるあんたもあんただぜ? 少し飲み過ぎじゃないのか? 」
「リンも飲みに来てたんだ。と、と言うか私は別に一人で飲みに来るのが好きな訳じゃなくて、き、君のいるこの店が好きだから来てるんだけど」
「そうかい、そりゃ〜嬉しい限りだ」
「もう……鈍感…………」
店に来たのはフェイトだった、入り口の前で立ったまま少し話をした後、僕の座っている横へと座る。僕はすっかり酔っていてまともな理性を持ち合わせていないがフェイトだと言うのは分かった。
「ほれ、いつものやつだ」
「ありがとう。きょ、今日もその服似合ってるよ? カッコいい」
「ん? ああ、それはどうも! 」
カストは少し赤くなっているフェイトからそう言われて特に何も思っていないのか普通にスルーした。フェイトはこの店にここ数日よく来ている。僕も何回か今日みたいに会っているのだが、その度に思うのだ。フェイトは不憫だと。何故ならカストに対して普通のアプローチは普通でしかない。どういう経緯でフェイトがカストと知り合って好きになったかは知らないがそれでは一生成就しない恋だ。
この鈍感男を振り向かせたいなら無理矢理押し倒す位の強引さがなければ話にならない。
「ですです〜。二人ともぉ〜僕はお邪魔だからもう帰りますです〜です〜よぉ〜です〜」
「あ、おい! そんなフラフラで!? 」
「大丈夫ですです〜? いつもの事ですですですで〜す! それじゃ〜おやすみです〜? 」
僕は酔ってフラフラとしながらの足取りでカストの店を後にした。
◇◆◇◆
リンが出て行った後私は目の前のマスターと話をしながらお酒を口へと運ぶ。
私が彼とあったのはJS事件の時、敵か味方かも分からず、ただ突然現れてその場を混沌にした後すぐにどこかへと行ってしまった男だ。しかし、その時助かったのも事実。だから私は今度会ったらお礼くらいしないとと思っていた。そしてそれから三年後のここ数ヶ月前なのだが私が仕事帰り、偶然目に付いたお店。それがこのBARだ。店の名前に消しゴムなんて使っているものだからつい気になってしまい、軽い気持ちで店の中へと入った。するとそこには一人のマスターがBARカウンターで私を迎えてくれたのだ。それが目の前の男、名前をカスト・ゴルドッセルと言うらしい。
「あ、あの……や、休みとかないのかな? 」
「ん? そうだな……うちは年中無休だからな。こんな小さい店だが好きで来てくれる人もいる。だからなるべくなら休まず営業したい」
「そ、そっか…………」
私は彼に恋をした。陸飛の時と違い明確に気づいた恋。何故彼を好きになったか、昔助けてもらったからというわけじゃない。この店で彼と話をしながらお酒を飲み、接しているうちに私は凄く癒されたのだ。
彼は少し声はデカイがとても優しい。私がどんな話をしても面倒くさがらず、ちゃんと聞いて相談とかものってくれたりする。そんな事を数ヶ月続けるうちに彼が好きになった。しかし私が彼が好きだと気づいてからが私にとって、もどかしい日々の始まりだった。なんというか彼は鈍感だ…………
私がいくらアプローチしても普通の会話にしかならない。褒めればお礼を言うだけ、デートに誘おうとすれば今のような反応だ。極め付けは彼に好きと言った時のことだ。在ろう事か「隙? 悪いがそんなものはない! 」と返してきやがったのだ。どうやら自分に隙があると言われたのだと勘違いしたようだった。
こうなると私も飲まずにはいられなくなる。次々とお酒を口へと運び一人で歩けなくなるくらい飲んでしまう。これがダメだと分かっていながら、やめることができないのだ。しかしそんな私を彼はいつもお店が終わった後家まで送ってくれる。そんなところにも私は魅力を感じるのだ。
「マスター? お代わり貰えるかな? 」
「はいよ。だが飲み過ぎるなよ? また帰れなくなるぞ? 」
「そしたら……また送ってくれる? 」
「……はぁ……しょうがねぇ〜。ああ、送ってやるよ! 」
◇◆◇◆
「さぁ〜ヴィヴィオ、もう一回! 」
「はい、ギンガさん! スゥゥ……やぁぁぁああああああああ!!! 」
私、高町ヴィヴィオはギンガさんの所へ稽古をして貰いに訪れている。訓練所は管理局の施設を借り、ギンガさん直々に拳を鍛えて貰っているのだ。
きっかけはギンガさんから本物の愛を教えてあげると言われたのがきっかけだった。愛する人への想いは拳に乗せて放ち、それを相手に当てることで伝える物なのだとギンガさんは教えてくれた。
愛は力、拳は手段、想いは重さ、愛する人の為に放つ拳に限界はない。全てを砕き、粉砕する一撃必殺の拳となる。それがギンガさんの教えだ。
「良いわよヴィヴィオ! じゃ〜このサンドバックに愛をイメージしながら後1000本、拳を叩き込んで終わりにしましょう! 」
「はい、ギンガさん!! 」
ギンガさんの稽古はキツイかキツくないかと言えばキツイ。でも確実にギンガさんの拳に近づいて来ている手応えがある。この稽古を始めて一年が経つが本気で拳を放てばその辺の石ころぐらいなら軽く砕けるようにはなった。
だがギンガさんの拳はそれでも遥か上。何故ならギンガさんの拳は簡単にコンクリートを砕き、丁度一年前に砲撃や収束砲撃をも拳一つで消し飛ばす程にまでなってしまっているのだ。正直、そこまで行くと人としてどうかと思うのだが師匠がそこまで行くのなら私もついていかなければならない。
「はぁ……はぁ……はぁ……ぐっ、これで……ラスト!はぁぁぁああああ!!! 」
「はい、そこまで! お疲れ様ヴィヴィオ? 良かったわよ? 」
「は、はい! ありがとうございます! 」
ギンガさんから言われた課題を全て終え、今日の稽古は終了した。私はこれで家に帰るつもりなのだがギンガさんは自主練をしてから行くと言うので私は先に訓練所を出る事にした。しかし私が訓練所を出る時、私はふと、後ろを振り返った。するとギンガさんが構えを取りながら大きく深呼吸した。そしてサンドバックに向けて拳をゆっくりと突き出しサンドバックにトンっと当てたのだ。一見、何も起きていないように思える。だが私の角度から見ればそれは違った。サンドバックは一ミリも揺れていない。にも関わらず、拳を当てた裏側は弾け飛びそこからサンドバックに入っている砂が噴き出した。
それを見た私は見てはいけない物を見たと思い、ギンガさんだからしょうがないと自分に言い聞かせ、訓練所から飛び出るように出た。
「ギンガさん……凄いな〜。ん? あ! ヴィータさんが好きな呪いのうさぎ!? 」
帰り道、私はヴィータさんが好きな呪いのうさぎの着ぐるみを来て看板を持っている人を見かけた。どうやら新しくできた新築の宣伝のようだ。
私はその人へと近づき話しかけた。呪いのうさぎの着ぐるみなんて中々見れないからだ。
「こんにちは! 珍しい着ぐるみ来てますね 」
「およ? う〜ん、僕はそんなに気にしてなかったけどん……これ珍しいのん? 」
「うん、私の知り合いが大好きで見つけるのが大変だって言ってましたから! 」
「そうなんだ〜? お! そうだ! 帰ったらユリちに教えてあげよん! 」
着ぐるみの人は言葉遣いはおかしいがいい人っぽかった。そして本当は貰えないが私の知り合いにあげなと呪いのうさぎのストラップをくれた。それも私の分と合わせて二つだ。だから私はお礼を言って呪いのうさぎと分かれ、家に帰ろうとしたがその直後、怒鳴り声がしたので振り返ると着ぐるみの人が何故か怒られているようだった。私の所為かもと思い戻ろうとしたが、それに気づいた着ぐるみの人が来なくていいと手でジェスチャーをしてくれたので私は大人しく帰る事にした。
◇◆◇◆
「うっ……ううっ……ぐすっ、あんなに怒ることないんじゃないかん…………」
「な、なぁ〜シュテル? あれはどういう訳なのだ? 」
「それが何でも子供に普通にあげてはいけないストラップをあげてしまったらしくてバイトをクビになったようです」
「そ、そうか……にしてもいい歳した大人が膝を抱えてすすり泣く姿は言葉にならない物があるな…………」
「わ、私もそう思います…………」
次回もよろしくお願いします。