魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

ここから3章に入っていきますがお付き合い頂けるならよろしくお願いします。

ではよろしくお願いします。


第3章《失われた記憶》
第48話《終わりのその後》


「おい陸、起きろ! さっさと起きぬか! ぐっ、このぉぉ…………さっさと起きろと何度言わせるんだこの筋肉馬鹿!!! 」

 

「んん……およよ〜? ディアち……そんな怒っても可愛いから怖くないよん? だから後一年…………」

「な!? 何を言っているのだお主は!? い、いきなり可愛いなどど……そ、その……ん? って!?どんだけ寝たいのだお主は!? 早く起きろ!? 全く毎日毎日わ、我をからかいおって!? 早く起きぬとバイトに遅刻するだろうが!!! 」

 

我はディアーチェという者だが、あれからどうなったかという話をしなければならない。まず我らの恩人でもある目の前の寝坊助は鈴木陸飛という男だ。最初にあった時と比べれば比較にならない程ダメダメ男。満足に一人で起きる事すら難しい、少し精神年齢の低い奴だ。しかしこれもしょうがない事だと我は思っている。何故なら陸には自分の事はおろか、自分の友人、我らの事まで全ての記憶を失っている。

幸いな事に陸の名前だけは我も本人から聞いて知っていた、だから教える事ができる。だがそれ以上の素性がまるで分からない為教えてやる事ができない。

我々にしてもそうだ、気がついて二年経つ。そしてここはミッドチルダと呼ばれる場所で我々が元々いた場所ではない。だから帰る場所もなければ住む場所もなかった。しかし今は陸も含め全員でバイトに出て生活資金を稼いでいる。一応全員で住めるアパートくらいは借りられるだけの余裕はできたがそれでもバイトだけに厳しいと言わざるおえない。この場所、ミッドチルダは家賃が高すぎる。正直困っているのだ。でもそれが楽しいというのも確かだった。全員で協力して生活する。我らはもう家族なのだ。一緒に生活する事が楽しいと感じる。

 

「うう〜眠い…………」

 

「あ、おはようございます陸飛」

 

「お? あいあい〜シュテち、おはよん! それより聞いてよシュテち〜? ディアちが朝から人が寝てるのに騒ぐんだよん? 全く、ディアちは真面目だよね〜? あんなに変な喋り方なのに真面目だよね? そのくせ優しいし、面倒見いいし、お礼言うとあたふたして照れるから可愛いし…………あれ? 問題なくね? 」

「な、何なのだお主は!? それでは怒るに怒れんではないか!? 人を貶すのか、褒めるのかどっかにしろ!? 大体、喋り方に関してお主には絶対に言われたくなどないわ!!! 」

 

「朝から仲のよろしい事で……羨ましい限りです。しかし、朝ご飯が冷めてしまいます。早く食べて下さい」

 

シュテルがムスッとして言うので我と陸はすぐにテーブルヘと腰を下ろす。五人用のテーブルの為少し大きい。値段としては決して安くないだろうと思うのだが、実は手作りだ。作ったのは陸。こやつは何故か何でもできてしまう。それ故に覚えていないこやつの素性が気になるところだ。しかし、何でもできると油断しているとこやつはとんでもない事をやらかす。最初は工事現場のバイトの時だ。現場の監督に力があって凄いと褒められ、冗談まじりに「これを持ち上げてみろ! 」などと言われ、現場で組み立てている作りかけのビルを持ち上げてしまった時は本当に冷や汗が止まらなかった。お陰でバイトをクビになったし…………

 

「そう言えばレヴィちとユリちは? 」

 

「たわけ、もうバイトに出かけたわ! お主も少しはユーリ達を見習ったらどうなのだ? レヴィも大概起きぬがお主はそれ以上だ。もう少し年上らしく我らを引っ張ってみせろ……何をしておるのだお主は……我の手なんか握って、おぎゃっ!? 」

 

「およ? 言われた通り引っ張ったよ? これでいいん? 」

「な、なななな何をするのだたわけ!? 馬鹿かお主は!? 意味が違うわ意味が!? と言うか早く離せ!? いつまで抱きついているつもりだ!? 」

 

「二人とも……すいません…………」

「「っ!? 」」

 

我の言った事をそのままの意味でとらえた陸は我を引っ張り自分へと引き寄せる。そしてあろうことかそのまま抱き締めて来た。別に嫌なわけではないがこの状況は恥ずかしい。しかし我が必死で陸を引き離そうとしている時だ。我らは逆に抱き締め合う状況になってしまった。シュテルが怒っているからだ。シュテルは怖い、怒ると手がつけられない。

 

「ご飯早く食べて貰えませんか? 殺しますよ? 」

「「は、はい!! 」」

 

その瞬間シュテルの後ろに何かが見えた。この世のものではない悪魔のような物。しかし恐らく我が恐怖のあまり見た幻覚だろうと思う……思いたい。

 

「陸飛、今日のバイトは何ですか? 今までのところはクビになったのですよね? 」

 

「うむ? うう〜と……なんか簡単な仕事って言ってただけで内容は聞いてないよん? ただ……人を殺した事あるかって聞かれたようなん? バイト代も数百万単位だったようだしん? 一体何するんだろんねん? 」

 

「「…………」」

 

我らは固まってしまった。それは明らかにやばいバイトだ。というか何故一欠片も怪しいと思っていないのか……こやつの頭には疑うと言う文字は入っていないのだろうか、そうとしか思えなかった。

このまま行かす訳にもいかないので我らはやめるように言ったがこやつは聞こうとしない。だた「大丈夫ん? 大丈夫んだよん? 」とだけ言ってバイトに出て行ってしまったのだ。

 

「な、なぁ〜シュテル? 」

 

「何でしょうかディアーチェ? 」

 

「あれ……間違いなくロクな事にならぬと思わぬか? 」

「奇遇ですね、私もです」

 

我らの意見はこの瞬間に決まった。我らは急いで支度をし、バイトを休んだ。陸を尾行する為に…………

 

 

◇◆◇◆

 

 

「すまないな、遅くなった。それで、バイトの件なのだが……こいつを殺して欲しい」

 

「……殺しは犯罪だよん? 」

「ふふふ、何を当たり前の事を。お前のその身体つき、間違いなく腕の立つヒットマンではないか! それじゃ、頼んだぞ? 」

 

「ほれ見たことか!? 殺しの依頼だぞ!? 」

「うるさいですディアーチェ! 大声を出すとバレます」

 

私は陸飛を尾行し、ある街外れの公園へとやって来た。そこで見たのはやはり誰かを殺すと言う依頼だったのだ。当然陸飛なら断る筈、そう思っていた。しかし陸飛は呑気に「お任せあれ〜? 」なんて言ってしまったのだ。私もディアーチェも冷や汗が止まらなくなった。

これで本当に陸飛が誰かを殺せば陸飛は管理局に逮捕されてしまう。

 

「あ! 動きましたよディアーチェ! 後をつけましょう」

 

「って!? 我を置いて行くでない!? 」

 

陸飛はそのままミッドチルダの街へと戻り駅の方へと歩いて行く。どこに行くのかと思えば大きなデパートだ。もしやここに陸飛のターゲットがいるのかと私達は少し緊張しながら後をつけた。しかし陸飛はそこの休憩所のベンチの腰掛け、突然頭を抱え始める。私達は心配しながら後ろから陸飛のつぶやく言葉を聞いていた。

 

「どうしよん……人なんか殺したらディアち達に怒られる…………」

「「なら何故受けたのだ!?(たんですか!? )」」

 

「ん? ……気のせいん? 」

 

「あ、危なかった…………」

「ええ、もう少しでバレる所でした」

 

あまりにもトンチンカンな陸飛の行動に私達は思わずツッコンでしまった。すぐに隠れたからバレなかったが今のは危なかった。私もディアーチェも安堵の溜息をつく。するとやっとの事で陸飛は重い足取りで何処かへ行き始めた。だから私達もさらに後をつける。

 

「ディアーチェ、ここは………」

「う、うむ…………」

 

次に陸飛が訪れたのは何かの工場……見た所食品関連の場所みたいだがどうしてこんな所に入れるのだろう……そう思いながらも後をつける。すると陸飛はそこの工場長と思わしき人と話をしていた。まさかこの方がターゲットなのか。そうディアーチェと思った。

しかし陸飛は工場長から何かを受け取るとすぐに工場を出た。陸飛がここで受け取ったのは廃棄で処分される筈のパン屑。そう言えばよく何処からかパン屑を大量に持って帰ってくる事があるのはここから持って来ているのだと私は今知った。あれは結構食費が浮いて助かるのだ。もしかしたら私がそれを言ったから貰って来てくれるのかな? とも思えて少し嬉しくなった。

 

「はっ!? ディアーチェ!? 陸飛がいません!? 」

「何だと!? くそっ!? 見失った!? 」

 

 

◇◆◇◆

 

 

俺はバイトを使い人を殺すヒットマンだ。今日もバイトを差し向けターゲットを殺そうとしたのだがそいつはどういう訳かいつまでたってもターゲットの元へ行かない。しびれを切らした俺はそいつを呼び出し。どうしたのかを訪ねたのだが帰ってきた答えは俺を驚かせる。

 

「いい加減仕事をしてくれないか? 」

 

「え〜だって殺しは犯罪だよん? 」

「お前さっきお任せあれとか言ってただろ!? 」

 

「う〜ん……やっぱりやめるよん? じゃないとディアち達に怒られるからん」

 

「誰だよそれ!? つーかお前は何なんだ!? それにその喋り方!? それで社会通用すると思うなよ!? 全く、お前いくつだよ……もういいや。帰っていいよ? なんかお前を選んだ俺が馬鹿だったみたいだから。でもおかしいな? 間違いなく腕の立つ奴だと思ったんだが…………」

 

「およ? それじゃまたねん? おじさん! 」

「俺はまだ27だ!? ……いや、27ってもうおじさんなのか? いやしかし…………」

 

俺はこの男に仕事をさせるのは無理だと判断してさっさと帰した。何故か同情してしまったのだ。あれではロクな働き口がないだろうと…………

その時だった俺は突然誰かに後ろから押さえ込まれ地面に押し付けられる。

 

「時空管理局執務官、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです! 貴方を殺人及び無断次元航行の容疑で逮捕します! さっきまでここにいたのは誰ですか? 」

 

「あ、あれはただの迷子だ!? 俺とは関係ない!? 」

 

最後の最後で庇ってしまった。俺は捕まるがあいつは何もしていない。だから捕まる必要もない。俺はロクな人間じゃないがあいつには立派に更生して欲しいと思ったのだ。こんな俺にも小さな正義感があったのに驚きだ。俺にそれを思わせるくらい……あいつはダメ人間なのだから…………

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ただいまん…………」

「陸ぅ〜!? 」

 

「おっとと!? ……ど、どうしたのんユリち? 」

 

「心配しましたぁ!? ダメですよ……人なんか殺したらダメですぅ!!! 」

 

「あやや〜大丈夫だよんユルち? まだ誰も殺してないよん? 」

 

 

◇◆◇◆

 

 

今、私は三人で御墓参りに訪れている。誰のと言われれば陸飛さんのだ。JS事件から早二年……最初は絶対に戻って来てくれる、そう信じていた。でも流石に二年だ。諦めるしかない。私達は墓を立てることを決めたのだ。残念な事に陸飛さんの家族は既に他界しており、墓を立ててくれる人がいない。だから私達が代わりに立てた。今日来ているのはギンガさんとヴィヴィオ、そして私だ。他の人達は仕事の関係で来られなかったが近いうちに行くとの事。

みんな悲しいというより笑って陸飛さんを見送れる。それが一番だと思っているからだ。

 

「キャロさんはお兄さんの事好きだったんですよね? 」

 

「うん、勿論大好きだよ? そう言うヴィヴィオも好きなんでしょ? 兄のようにとかじゃなくて。私もギンガさんも知ってるんだよ? 」

 

「い、いやそんな事ない!? 絶対ない!? お兄さんなんか嫌いだよ!? あ! 違くてその……嫌いじゃなくて……好きです…………」

 

「うん! 素直でよろしい! 今もし嫌いのまま通してたら……ところでギンガさん? 」

「え!? なになに!? 何で途中で言うのやめたんですか!? キャロさん何かここ二年で性格歪みましたよね!? 私怖いんですけど!? 」

 

私は少しヴィヴィオに意地悪をした。確かにここ二年で私は少し性格が悪くなったかもしれない。この間もエリオ君が何もしてないと思うんだけど涙目で謝ってきたし…………

というかエリオ君は最近ルーちゃんと通信し過ぎだと思う。私はもう陸飛さんとイチャイチャできないのに休憩の度に見せつけて来るのは喧嘩を売っているのだろうかと思う。

 

「わ、私……キャロさんに逆らう気がなくなりました」

 

「それは酷いよヴィヴィオ!? 私そんな怖くない!? 」

 

「ふふ。二人共本当に陸さん好きよね? 」

「「ギンガさんがそれを言わないで下さい!!! 」」

 

実のところ本当にそう思う。陸飛さんについて話してる時だってそんな事まで!? というところまで知っている。それにこの間も陸飛さんを語らせたら私の休日が終わった。でも私達はこうしていつまでも陸飛さんを忘れないように語らっている。しかしそれは他のみんなにしてもそうだ。何故なら私達の中では陸飛さんはまだ死んでいないのだから。

 




次回もよろしくお願いします。

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