魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

すいません、遅くなりました。

ではよろしくお願いします。


第45話《微かな希望》

「もう逃がさんぞ! 紫電……一閃!!! 」

 

「だぁぁぁああああ!? 一番会いたくない人に見つかった!? 」

 

陸飛はいまだ逃げ続けていた。しかしいつまでもそんな事が出来るわけもなく、陸飛は見つかり襲われていた。しかも相手はシグナムだ、フェイトのようにはいかない。シグナムは炎の纏ったレヴァンティンを振り下ろし陸飛はそれを躱しながら全力疾走で逃げ続ける。だが思うように逃げられなかった。何故なら前方から新手がやってきた為である。丁度陸飛は挟み撃ちにされ足を止めざるおえなくなってしまった。

 

「てめぇ、いい加減に観念しろ!! 」

 

「ヴィータ副隊長……くっ、断る!! 」

 

新手はヴィータだった。クラーフアイゼンを振りかぶり陸飛へと迫る。だが陸飛がそんな攻撃をまともに受けるはずがなかった。元の時間軸のヴィータ達ならともかく今のヴィータ達が陸飛についていけるはずもなく全ての攻撃をいなされる。

さらにはカウンターで反撃を受けてしまう始末だ。しかも明らかに怪我をしないように手加減されているのがヴィータ達には伝わってきている為に彼女達のプライドを逆なでしてしまっている。

 

「てめぇ本気で戦いやがれ!!! 」

 

「私達二人を相手に加減するなど、馬鹿にするにも程がある!!! 」

 

「無茶言うな!? もう勘弁してくれぇぇぇぇ!? 」

 

陸飛はもう仕方ないと言わんばかりの顔をし二人に向き直った。そして二人ともう一度打ち合う瞬間シグナムの首に手刀を、ヴィータのお腹に拳をそれぞれ打ち込んだ。当然陸飛は加減はしたが二人はそれで気絶し陸飛は力の抜けた二人を抱えて近くのビルの屋上に降り立つ。陸飛は二人を寝かせた後その場を去った。

しかしその途中、とある二人組と鉢合わせになった陸飛はそのうちの一人を見て驚き警戒して構えた両手を下げた。

 

「ヴィヴィ……オ? 」

 

「え!? お兄さん!? 」

 

「陸飛先生……」

 

陸飛が出会ったのはヴィヴィオだ。しかし陸飛が知っている彼女より成長して大きくなってる。そう、今陸飛が見ているヴィヴィオは小学四年生。陸飛が知っている彼女より大きい。

そして最初唖然としてた陸飛だがヴィヴィオが両手を広げて陸飛に飛び込んで来たことで我に帰る。だが彼女はもう陸飛の知っている彼女じゃなかった。

 

「お兄さ〜ん! 」

 

「ヴィヴィオ! お前どうしっごふ!? 」

「ふんっ!!!」

 

陸飛のすぐ手前まで満面の笑みでいたヴィヴィオだったが突然真剣な顔になり広げていた両手を拳に替え陸飛のお腹へと叩き込む。

陸飛の知っているヴィヴィオからは考えられない行為だった為に反応できずまともに受けてしまった。しかしこの時陸飛はある人物の姿を思い浮かべた、いや……思い浮かべずにはいられなかった。

 

「こ、この拳のキレと抉るような痛み……間違えない、ギンガ? ば、馬鹿な……お前は時代を超えてなお俺を殴ると言うのか!? 」

 

「はい、確かに私の拳の師匠はギンガさんです! たくさん教えて貰いました! 愛する人への気持ちは拳で語るのだと!! 」

 

「だからヴィヴィオさん、私はそれはおかしいと思いますよ? 」

 

ヴィヴィオの拳はギンガの投影。まさにギンガに殴られたのと同じ感覚を陸飛は味わった。その後ヴィヴィオは普通に陸飛へと抱きつく。しかしこれも陸飛の知ってるヴィヴィオではなかった。「お兄さ〜ん」と言いながら陸飛のお腹に顔をすりすりしているのだから。

 

「ところでお兄さんこんな所でどうしたの? お兄さんも過去に? というか……なんでそんな格好してるの? 」

 

「いや……俺ももう何が何だか…………」

 

「ヴィヴィオさん、ヴィヴィオさん? 陸飛先生の様子がおかしいです。普通に喋ってますし。もしかして私達と同じ時間から来たのではないのでは? それにヴィヴィオさんの事ヴィヴィオって呼んでる辺りに変ですよ」

 

「う〜ん、確かにアインハルトさんの言う通り今のお兄さんが私の事呼び捨てなの変ですよね? いつも呼んでくれないのに……。それにあの格好……昔の見た事あるし…………」

 

ヴィヴィオ達が何やらコソコソと話をし始め陸飛を疑念の眼差しで見始めた。何を言われているか分からない陸飛は首をかしげる。しかしその時だった、後ろから追っ手がやって来たのは。

 

「見つけた。今度こそ貴方を倒させて貰います! 」

 

「はぁ…………」

 

「ヴィヴィオさん逃げましょう! 」

「え!? ちょっ!? アインハルトさん!? あ! お兄さぁぁぁん!? 」

 

もう一人の少女がヴィヴィオの手を取り無理やりその場を離脱した。理由はその場に来たのがフェイトだった為である。デバイスを構えジッと陸飛を見つめている。一方、フェイトに背を向け片手で頭を抱えている陸飛はやっとフェイトに向き直った。

 

「もういい……どうなっても知ったことかぁぁぁぁ!! ペン技近式……二の型……」

 

「バルディッシュ! 」

《イエッサー! 》

 

 

◇◆◇◆

 

 

「どこに行ったのでしょうか? 王達とはぐれてしまいました」

 

「見つけた! シュテル! 」

 

「……ナノハですか…………」

 

ディアーチェ達とはぐれたシュテルはなのはに見つかってしまった。別に隠れていたわけじゃないがこうなると戦闘をせざるおえない。

しかしシュテルはこれに笑みを浮かべ喜んでいるようにも見える。

 

「再び貴方と戦える事を嬉しく思います」

 

「そうだね。私も少し嬉しいかな」

 

「ところでナノハ、貴方は普通の善良な市民に対して砲撃を果ては収束砲撃まで使ったようですが……少し見ない間に随分加減をしなくなりましたね? 悪魔のようです」

 

「にゃっ!? ち、違うもん! あれは善良な市民なんかじゃないもん! あの人は……そう! 闇の欠片だし、なんかムカつくし!!! 」

 

何を言われているのか理解したなのはは慌てふためき、シュテルはそれを見て含みのある笑みを浮かべている。なのはは完全にからかわれているのだ。

 

「しかしナノハ……あの人は闇の欠片ではありませんよ? 私がこの目で確認したのですから間違いありません。とても不思議な人でしたが悪い人ではありませんでした」

 

「で、でも今度会ったら砲撃を一発お見舞いしてやらなきゃ私の

気が済まないの! 」

「ふ、やはり悪魔に成り下がったのですね。残念です」

 

「にゃぁぁぁぁぁ!? 違うよ!? 私悪魔じゃないもん!! シュテルのばかぁぁぁぁぁ!!! 」

《ディバインバスター! 》

 

なのはは突然癇癪を起こしたようにシュテルに砲撃を放つ。だがそれが分かっていたシュテルはそれを避け、なのはに向け砲撃を撃ち返す。なのはも直撃はしなかったものの少しかすり、我にかえった。

激しい魔力スフィアと砲撃の攻撃の応酬、夜の海鳴市上空は明るく照らされる。そして二人はボロボロになりながら戦っていた。

しかしその時、なのは達の間を何かが横切った。猛スピードでビルの屋上に墜落したそれはすぐに起き上がると今飛んできた方向に大量のボールペンを放つ。そう……陸飛だ

 

「うおぉぉぉぁぁぁぁあああああああああ!!! 何が楽しくてフルドライブ状態のフェイト隊長を相手しないといけないんだぁぁぁぁぁあああああああ!!! 」

 

「ぐっ!? ……うっ……っ!? きゃぁぁぁああああ!? 」

「フェイトちゃん!? 」

 

陸飛のボールペンの嵐にフェイトのシールドは耐えきれずに砕けた。そして吹き飛ぶ、それを見ていたなのはは急いでフェイトの元へと駆けつけフェイトを抱えた。この状況だけ見れば陸飛は完全に悪役になってしまっている。

そんな陸飛の今の精神と身体のコンディションは最悪。もはや不気味な笑みすら浮かべる程だ。

 

「フフフ……あっははははは!!! もういい知らん! 全員殺して俺も死ぬ!!! おごっ!? 」

「少し落ち着いてください。そんな事したら一大事です」

 

もうヤケになっている陸飛をシュテルは見かねて陸飛の頭をルシフェリオンでぶっ叩いた。そうされた陸飛は少し正気に戻ったようでシュテルを見るなり「また会ったな? 」などと呑気なことを言い始めた。

 

「貴方は意外と抜けているのですね? 少し安心しました」

 

「何に安心されたのかはよく分からないけど……取り合いず逃げない? 」

「賛成です! 」

 

「よし、目を閉じてろ! ペン技近式……零の型……《白光》!!! 」

 

両者見事な合致をした後、陸飛は師匠の最終奥義である白光を放った。別にどこを狙った訳でもない。ただただ目くらましに使ったのだ。

当然これをなのは達が攻略できるわけもなく陸飛達にはまんまと逃げられてしまった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「どこまで行くつもりですか? もう追って来てませんよ? 」

 

「ん? それも……そうだな? はぁ……もう嫌だ…………? どうして頭を撫でる? 」

「いえ、少し元気が出ればなぁ〜と思いまして。いけませんか? 」

 

「いや、ありがとう」

 

精神的に参ってしまった陸飛は逃げ込んだ森林の中で大人の癖に体育座りをしていた。シュテルはそんな陸飛の頭を撫で始める。

陸飛は今彼女に救われていたのだ。突然過去に放り投げられ一人になってしまった陸飛はもう戻れないんじゃないかと思い始めてしまってる為元気が出せないでいたのだ。

 

「では、私はこれで」

「またどこかに行くのか? 」

 

「ええ、王達を探さなくてはいけませんので」

 

そう言ってシュテルはまたどこかへと行ってしまう。しかしその直後、陸飛は突然後ろから誰かに抱きつかれた。最初は驚いた陸飛だが抱きついた犯人を確認するとため息をつき安堵した。

 

「お兄さ〜ん? 」

 

「脅かすなよヴィヴィオ……あれ? もう一人は? 」

 

「ん? アインハルトさんですか? それならなのはママのところにいますよ? 」

 

ヴィヴィオは笑顔でそう言う。だが陸飛は釈然としなかった。なのはと接触し追いかけられていないのなら何故ヴィヴィオは一人でこんなところにいるのか。今のヴィヴィオの行動は何一つ読めない為、陸飛は困惑していた。

 

「ヴィヴィオはここで何してるんだ? 俺と一緒にいたら勘違いされるぞ? 」

「勘違い? っ!? それいい!! 勘違いされましょう! いや、しましょう! それでそれで二人で駆け落ちしよ? 」

 

「……ヴィ、ヴィヴィオ? お前……何言って…………」

 

「え? 何って? だってお兄さんと駆け落ちだよ? 駆け落ちは素晴らしいことだよ? どうせなのはママもフェイトママも許してくれないし、なら方法は一つしかないよ!駆け落ちだ! うん、それがいい! 」

 

目を輝かせヴィヴィオは妄想にふけるだけふけっている。そんなヴィヴィオを見ていた陸飛はもう夢なら覚めてくれと言わんばかりの顔をし始める。どういう訳か未来のヴィヴィオは色々いけない染まり方をしているようで陸飛はもうついていけてない。

そしてヴィヴィオは陸飛の手を掴むと無理矢理引っ張りどこかへと行こうとする。

 

「お、おいヴィヴィオ? どこ行くんだよ!? 」

「誰にも邪魔されないどこかだよ! よく考えたらこの世界、過去ならお兄さんと私の邪魔する人なんていないし、もうパラダイスだよ! さぁ〜お兄さん行こ行こ? 」

 

「お前大分性格変わってるから!? 一体誰に染められた!? って!? おい!? 引っ張るな!? 」

 

陸飛はそれはいけないと抵抗するがヴィヴィオは腕と足にかなりの魔力を注いでいるため陸飛は強引に引っ張られていた。しかし陸飛なら簡単にヴィヴィオを止める事はできる。だが陸飛はそれができないでいた。

強引に力を入れれば確かにヴィヴィオを止められるかもしれない。でもそれをすればヴィヴィオは悲しい顔をしそうだったのだ。今のヴィヴィオの顔は物凄く幸せそうな顔で陸飛はそれを壊したくないと思ってた。だから陸飛はなされるがまま言葉だけで抗うしかない。

 

「なぁ〜ヴィヴィオ? 一つ聞きたいんだけどさ? お前が未来から来たなら俺はヴィヴィオ達と一緒にいるのか? 俺は……帰れるのか? 」

 

陸飛がそう言った瞬間、ヴィヴィオの足取りはだんだん重くなり、とうとう止まってしまった。さらには俯いて表情も見えない。

 

「帰れると思うよ? それにお兄さんは……私達と一緒にいるよ? だけど……だけどね……うっ……うっ……ひぐっ…………」

 

「お、おいヴィヴィオ? どうしたんだよ? 」

「うわぁぁぁぁあああああああああん!? お兄さん、お゛に゛い゛ざん゛!? わ゛だじの事忘れちゃ嫌だよぉぉぉ!? 」

 

「ヴィヴィオを忘れる!? い、いや意味が分からないぞ!? お、おい!? 落ち着けって、俺はヴィヴィオの事忘れたりしてないから! ほら、現に覚えてるだろ? 」

 

ヴィヴィオは大泣きして陸飛に抱きついて離れなくなってしまった。陸飛も訳が分からず取り敢えずヴィヴィオを落ち着かせる為にヴィヴィオを撫でながら抱きしめる。しかしヴィヴィオはなかなか泣き止んではくれなかった。

ヴィヴィオが知ってる未来、この先に待ってる結末を陸飛はまだ知らない…………

 




次回もよろしくお願いします。

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