魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

いつも読んでいただいてありがとうございます。

ではよろしくお願いします。




第44話《逃亡》

「で? 君らは一体何者なんだ? それにあれだけ無茶やらかしたのに俺の身体の具合が良くなってるのも君らのお陰か? 」

 

「ええ、王が治してやれと言うので」

「こ、これシュテル!? わ、我は別に」

 

「そっか……ありがとう、世話になった」

 

自分の事をディアーチェと名乗るその少女は少し照れながらアタフタし陸飛の身体を治療したと思われる少女に詰め寄る。陸飛は彼女達に対して警戒したり疑ったりといった行為は一切行わなかった。陸飛の感性が確実に悪い子達じゃないと告げているのだ。そしてその内もう一人の子が陸飛に興味深々のようで、身を乗り出して陸飛に迫る。

 

「ねぇねぇねぇ!? その身体中に巻き付けてあるの何!? なんか良い! カッコいいよそれ、なになに? 」

 

「え? あ〜その……ただのボールペンだけど……いる? 」

 

「え!? くれるの? やったぁ〜! ありがとう!! 」

 

青い髪でツインテールの彼女は陸飛の身体に巻き付けてあるホルダーの中身が気になったようで目をキラキラさせていた。陸飛もそんな無邪気な彼女を見て誰かを思い出したのかボールペンを一つ彼女に渡す、すると彼女は大喜びし、はしゃぐ。しかし流石にボールペン一本でそこまで喜ばれると陸飛もなんとも言えない気持ちになった。

 

「このたわけ!? 話が進まんではないかレヴィ! おい、お主! 砕け得ぬ闇を知らぬか? お主を助けたのもそれを聞けるかもと思ったに過ぎん。だから変な勘違いをするでないぞ? 」

 

「砕け得ぬ闇? いや……知らないけど。そもそもどうして海鳴市に飛ばされたのかすら分からないんだが…………」

 

「ちっ! ハズレの様だな、使えぬ奴じゃ」

 

「何もしてないのに使えない扱いされても困るんだが? はぁ〜。まぁ〜いいや、取り敢えず助けてくれてありがとう。助かった、え〜と……ディアーチェさん? 」

「た、たたたたわけ!? だからそうじゃないと言っておるだろ!? 我は別にお主を助けようと思って助けた訳じゃ、と言うかお主! 我は王だぞ!? 気安くディアーチェなどと呼ぶでないわ!! 」

 

陸飛は困っていた、何を言ってもこの子はアタフタし始めると。ここまで傲慢な少女を見るのは陸飛は初めてだった。一人はあまり喋らず、もう一人は純粋で無邪気。そしてこの王様と言うに相応しい傲慢な子である。さらには陸飛が自分達の知りたい情報を知らないと分かるとディアーチェは二人に「行くぞ! 」と言いその場を去っていった。陸飛は別に追いかけなかったが嵐のように去っていったディアーチェ達に唖然としていた。しかし、ここでもう一つ……別の嵐がやってきた。

 

「あの〜? 」

 

「ん? っ!?……ば、馬鹿な……どう言うことだ……なのは……隊長? 」

 

「隊長? それは何の事だか分かりませんけど……確かに私の名前は高町なのはですよ? どうして私の名前知ってるんですか? 」

 

陸飛は新たにやってきた人物、高町なのはを見て目を大きく開いて驚いていた。なのはが来て何故驚くのか、なのはも海鳴市の出身だ。いてもおかしいことじゃない。しかし驚かざるおえないのだ。何故なら今の高町なのはは小さい。外見で言えば小学生ぐらいの子供だ。だから陸飛は信じられずに驚いていた。さらになのはは陸飛の事を知らない様子。何かがおかしい、陸飛はそう思っていた。

 

「で〜そろそろ貴方が誰だか教えて欲しんですけど? さっき飛んで行った子達の仲間ですか? そうならあの子達がどこに行ったのか教えて貰いたいんです、お願いします! 」

 

「なら何故デバイスをこちらに向けるんだ? 別にさっきの子達が仲間って訳じゃないんだけど……俺もどうしてここにいるのか分からない訳で? 色々混乱中なんですよ? 」

 

「どうしてここにいるのか分からない? なら貴方は闇の欠片ですね。ごめんなさい、申し訳ないけど倒させてもらいます! 」

 

なのはは自分の周りに魔力スフィアを複数展開し陸飛に向けて放とうとする。陸飛は勘違いされてしまった。何故だか分からないが敵と認識されたようだ。陸飛は構えてそれに対処するべくなのはから距離をとる。

 

「アクセルシューター!! 」

 

「ペン技遠式……一の型……《赤花》!!! 」

 

陸飛は複数のペンに赤い魔力を灯しなのはの魔力スフィアに当て相殺する。しかしなのははいつの間にか陸飛の上へと上がっておりすかさず砲撃の為の準備を開始していた。

 

「ディバイィィィィン、バスタァぁぁぁぁ!!! 」

 

「ちっ! 全く……子供でも隊長は隊長ってか! ペン技近式……五の型……《黒絶》!!! 」

 

今度はボールペンに黒い魔力を灯しなのはの砲撃を弾く。流石にこれを防がれたなのはは驚き、少し悔しいようだった。するとなのはは陸飛にバインドをかけ、陸飛からさらには距離をとった。そしてこんな所でぶっ放すのかと言いたくなるような物をチャージし始めた。

 

「おいおい……その歳でバインドかけて収束砲撃って……どんだけだよ…………」

 

「スターライトぉぉぉ」

 

周囲の魔力をかき集め自分の前に巨大な魔力スフィアを形成させる。しかし何を放つか分かっている陸飛はそれを黙って待っているわけはない。バインドを力尽くで破壊し、陸飛もボールペンをもう一本取り出し技を放つ準備をし始めた。

 

「な!? くっ……ブレイカぁぁぁぁぁああああああああ!!! 」

 

「2ペン流ペン技……双式……一の型……」

 

陸飛は迫る収束砲を待ち構え、赤く光るボールペンを左右反対の腰へと添える。丁度両腕が陸飛の前でクロスする感じだ。

 

「《双赤破》!!! 」

 

「え!? う、嘘!? 」

 

なのはの誇るスターライトブレイカー。それを陸飛はクロスしたボールペンを抜き放ちそれを打ち破った。正確にはぶっ飛ばして破壊したと言った方が正しいのかもしれない。切り札を真っ向から砕かれたなのははしばらく固まってしまった。

 

「はぁ……はぁ……これもあまり連発できないな。取り敢えず逃げるか」

 

「はっ!? 待って! 貴方は誰ですか!? 何者ですか!? ……行っちゃった…………」

 

陸飛は逃げ、なのはは呆然と立ち尽くす。なのははまだ自分の技を破られた悔しさが残ってしまっており、心の中で次は負けないとリベンジに燃えていたのだった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……こ、ここまで来れば大丈夫だと思うけど……参った。ここは海鳴市で間違えない。だが隊長が子供なのはどういう訳なんだ? それに周りの建物も俺の知ってる物と同じだけど知ってる物より新しいような気がするし。ん? これは……新聞か。っ!? じょ、冗談だろ? 」

 

住宅の密集地帯に逃げ込んだ陸飛はそこに捨ててある新聞を手にした。そしてそれを見たとたんまた驚きで顔が引きつる。何故ならその新聞の日付が丁度10年前だったからだ。捨ててあった新聞が古いのではないかと陸飛は思ったがそれは割と真新しい為、その線はない。そんな古い新聞がこんなに状態の良い事があるわけないからだ。つまり陸飛はタイムスリップしたのだ。10年前に。しかしそんな事をすぐに受け入れられる訳もなく陸飛はその場に座り込んだ。

 

「こんな事あるか? それじゃ……俺もう元の時間に戻れないのか? ……参ったな。ははは、キャロ……今頃どうしてるかな? キャロの梅干し、食べたいよ。あ! フフフ……本当に参ったな、もうすっかり虜じゃないかよ…………」

 

「こんな暗闇で何を黄昏ているのですか? 」

「君は……さっきの…………」

 

「シュテルです、シュテル・ザ・デストラクター。どうぞシュテルと呼んでくれて構いません」

 

突然話しかけてきたのは先程三人でどこかに飛び去った無口な子だった。名前をシュテルと名乗り何故か一人でいるようだ。少し落ち込んでいた陸飛だったが、彼女が座り込んだ陸飛と同じ目線になりどういう訳か陸飛の頭を撫で始めた事で陸飛はなんだか暖かい気持ちになれた。陸飛は慰められたのである。

 

「ありがと……な? 」

 

「いえ、なんだか落ち込んでいたようだったので。それでは」

「あ〜ちょっと待ってくれ」

 

「何か? 」

 

たまたま陸飛を見かけたシュテルが陸飛に話しかけたに過ぎなかったのでシュテルはまた何処かへと行こうとした。しかし陸飛はそれを止める。止められたシュテルは首を傾げ、不思議そうな顔をするが陸飛は話を続けた。

 

「さっきも聞いた気がするが君達は何者なんだ? ついさっき魔導師一人が君達を探していたが、君達は何を企んでいる? さっき言っていたその砕け得ぬ闇とやらが目的なのか? 」

 

「私達は何者でもありません。それにそれを聞いてどうするつもりですか? 確かに私達の目的は砕け得ぬ闇ですが貴方には何ら関係のない事ですよ? それとも……私達の邪魔をしますか? 」

 

「フフフ、もしそうならどうする? ここでやり合うか? 」

 

陸飛はそう言い身体に巻き付けてあるホルダーからボールペンを一本取り出す。そしてシュテルに対してそれをチラつかせた。シュテルもデバイスを構え、互いにこれから戦闘を始めるような素振りを見せるしかしそれは起こらなかった。シュテルデバイスを下げたのだ。

 

「いえ、止めておきましょう。さっきの公園で貴方はその魔導師と少しやり合いましたよね? 多分その魔導師はナノハだとは思いますけど。あれだけの魔力の激突、恐らく砲撃も果ては収束砲撃まで使った筈です。そこまでしたナノハをあしらって逃げてきたのですから私がまともにやり合った所でこちらもタダでは済まないでしょう」

 

「そうかい、助かるよ。俺もそんなに万全じゃないし。君達とは戦いたくない」

 

「はい? 何故ですか? ナノハ達と私達、どちらが悪い事をしているかなんて貴方には分かっている筈と思いますけど」

「だって君達悪意なんて持ってないだろう? 」

 

陸飛がそう言うとシュテルは面を食ったような顔をした。彼女達は無意識的にでもあやふやである自分達の存在を今いる訳を求めている。だから彼女達に悪意などあり訳がない。ただその今分かる目的の為に動いている。自分が自分と証明する為に。

 

「そうですか……なら私達を助けてくれますか? 」

「え? なんで? 」

 

「貴方の言う通り私達には少なくとも私には悪意はない。それに貴方は私達と戦いたくないと言う。正直私も貴方とは戦いたくない。なら、貴方が私達の味方になってくれれば良いと思っただけです。いけませんか? 」

 

「……いや。けど……そうだな、協力はできないな」

 

シュテルはそう言われ「そうですか……」と言い少し気を落とした。しかしシュテルはすぐに顔を上げる。陸飛が「でも」と付け加えたからだ。

 

「君達が……君達がピンチの時は助けてあげなくもない。助けてくれたお礼もまだだから」

 

「……では、期待しておきます」

 

そう言いシュテルは少し微笑む。彼女が笑うのを想像できなかった陸飛は不覚にも少し赤くなりその笑顔に見惚れた。しかしすぐに顔を逸らし片手で頭を抱える。何故ならこの時陸飛はキャロに対して罪悪感を抱いていたからだ。陸飛は目覚めてからキャロの事が気になってしょうがない。今の陸飛はキャロに惚れているのだ。つまりは会えないと思うと恋しい。

 

「ではそろそろ失礼します。王とレヴィも待っていますので」

 

「ああ、気をつけてな」

 

シュテルは陸飛とそう言葉を交わしその場を去って行った。しかし偶然か、必然か……陸飛がシュテル達と会い別れると陸飛は次なる嵐に出会う。これはもう陸飛の不幸が原因なのかシュテル達が疫病神なのか分からない。

 

「あ、あの? 貴方がなのはの言っていた闇の欠片ですね? 申し訳ありませんけど、貴方を速やかに倒します! バルディッシュ! 」

 

《イエッサー》

 

「……勘弁してくれ……なのは隊長の次はフェイト隊長かよ…………」

 

新たに現れたのはフェイトだった。フェイトは陸飛を見つけるなりバルディッシュを構え戦闘態勢になる。フェイト達の中ではもう陸飛は完全に敵として認識されているようで見つけ次第倒す気のようだ。しかし陸飛はもうまともに戦う気はない。いい加減うんざりしていたのだ。戦いたくもないのに出会い頭に襲われる今の状態に。

 

「ああ!? 」

 

「え!? な、なに? 何もないよ? え……いない 」

 

陸飛はフェイトの後ろを指差し驚いたように見せる。フェイトは純粋な為それだけで簡単に騙されて後ろを振り返った。しかしフェイトが陸飛に視線を戻すと陸飛は既にそこにおらず、フェイトが後ろを向いているうちに全速力で逃げており、フェイトにその痕跡すら悟られていない。対してフェイトは一瞬振り返っただけで消えてしまった陸飛に驚いて何が起こったかも分からず唖然としていた。

 

「逃げられ……ちゃった…………」

 

 




次回もよろしくお願いします。

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