魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

すいませんまた書き方変えました。気に入らないようでしたら言ってもらえると助かります。

ではよろしくお願いします。


第43話《筆箱と過去の真実》

カナル達が襲撃を受けてから一週間が過ぎ、カナルの怪我はすっかり良くなった。しかし重傷を負ったコウは未だ入院中だ。どこで筆箱のメンバーは仲間の様子を見にコウのいる病院へと赴いた。でも何故かカナルの姿が見えなかった為にカナルを除くメンバーとなっている。そんなリン達がコウの病室の前まで来た時、中からコウ以外の声が聞こえた。聞き覚えのある声なのでリン達は誰かすぐに分かったが入れなかった。何故ならその聞き覚えのある声の主が本当にその者なのか信じられなかった為である。

 

「コウ……くぅん? 早く……入れてぇ? 私早く入れて欲しいよぉ〜? コウ君のそれ……」

 

「あはは……しょうがないなぁ〜」

 

(な、ななな何してるですですかぁ〜!? )

 

リン以外の後ろの男子二人は特に何の反応も示さず何故無表情だがリンは一人顔を真っ赤にしてドアを開けるのを躊躇っている。声の主は間違いなくカナルだ。しかしその言葉遣いや彼女が出している甘える様な声は普段の彼女からは想像もつかない。リンは中で行われてるであろう行為に赤面している訳だが、後ろの二人はカナルの変わりように固まっているのだ。三人はそのまま動けずその場で静止する。驚き故に動けないのだ。

 

「お、おい……カ、カナルそんなに速く回さないでくれよ」

 

「だってぇ〜気持ちんだもん」

 

(あわわぁぁ……回す? い、一体どんな激しい事してるです? というか二人はいつの間にそんな関係になっていたですですかぁぁ!? こ、これは入らないで帰ったほうが……い、いやでも、気になるですぅ…………)

 

リンの妄想は止まらない、段々と挙動不審になりアタフタし始めた。これは帰ったほうがいいのではないだろうか? しかし彼女は中で行われている事に興味深々な為なかなか帰る決断を下せない。こうして聞き耳を立ててる事がいい事だとは思っていないがリンはそれが出来ないのだ。だがその刹那、一人のバカが空気を読まずに突き進む。そう、カストだ。彼は何も分からずにリンを押し退け扉を開ける。

 

「てめぇらさっきから何してやが……る………… 」

「ば、バカですですか!? カスト一体何てこと……し、て…………」

 

「……なるほど」

 

「みんな……いらっしゃい」

「何よ来たの? みんな」

 

陸飛を除いてみんなカナル達を見て固まった。陸飛は納得したようにスッキリした顔をしていたが他の二人はワナワナと震えだす。それもその筈、カナル達がやっていたのはただ鉛筆を削っていただけ。実はカナルは鉛筆削りで何かを削る事に快感を覚えているのだ。少し変わった趣味だがカナルが鉛筆削りを武器に選んでいるのはその為である。そしてコウは鉛筆を武器にしている鉛筆使いだ。その為コウに惚れてしまったカナルはコウの持っている鉛筆を削るという行為が今までで最高の快感である事に気付いてしまったのである。だからこうしていつもカナルは場所を選ばずにコウに鉛筆削りをせがみ出したという訳だ。しかし外から声だけ聞いている人はたまったものではない。

 

「コウくぅん? 早く続き……しよ? 」

「う〜ん……しょうがないなぁ〜」

 

「「「するな!? 」」」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ふざけるな!!! 」

 

その声と共にドンっ!? という机を叩く音がその部屋に響き渡る。そこは旧チェッカーズの隊舎だ。実は当時筆箱を管理していたのはチェッカーズの部隊長なのである。それもこの時、チェッカーズの部隊長とは提督でもあった。名をライ・クロニクル。彼は40歳過ぎの管理局員で下衆な事で有名であった。

 

「フフフ、何を興奮しておるのだグラン。落ち着け、俺は何も筆箱を潰そうとしている訳じゃない。ただ使えないようならと言っているだけだ」

 

さっき大声を出したのはグランだ。先日筆箱が狙われていると言う情報を聞いたグランはそれを管理しているライの元に抗議にいった。しかしライは筆箱を守るどころか使えないなら切り捨てるとまで言い出したのだ。グランからしてみればそんな事を黙っていられる訳もなくライにくってかかる。だがライは余裕な表情でグランを挑発する。

 

「くっ……貴様ぁ……」

 

「ははは! 階級の高い俺に向かって貴様呼ばわりとはな? だがお前は私がどうこう出来る立場の人間じゃない。階級は低いがある意味私より特別な人間だ。そうだろ? 残業部部隊長、グラン・ハワード」

 

「っ!? 何故それを……貴様どうやってそれを調べ上げた、それはお前程度が知っていい情報じゃないぞ! 」

 

当時残業部を任されていたグランはやり手だった為に上層部の中でも一部しかその情報を知らない。にも関わらずライはグランの所属部隊までも調べ上げたのである。

 

「おかしいと思ったんだよ。共通書類をまとめて処理するチェッカーズが何故そこから各部隊の稼働率何てものを出して上に提出しなきゃならんのかなんてな? それと……かつて筆箱にいたお前の事が俺は大嫌いだった、俺より下の分際で生意気なことばかり言ってきおるお前がな? だからこれは私のささやかな復讐と思ってくれ。お前の大事な筆箱は近いうち壊滅する。筆箱のメンバーは……フフフ」

 

「……ま、まさか……先日の襲撃は……ぐっ……失礼する! 」

 

「あ! おい待て、グラン。言い忘れた、急いだ方がいいぞ? そろそろ葬式の準備をな? フフフ……あっははははは!!! っ!? な、なんだその目は…………」

 

ギリっという歯を食いしばる音と共にグランはライを睨みつけた。ライは既に動き始めていたのだ。筆箱を潰す為に。それもただ潰すなら解散させればいい。しかしライはメンバーを皆殺しにする気なのだ。グランはそれに気づかされ焦る。恐らく先日の襲撃者もライの差し金なのだろうと。そして一度部屋を出る為にドアに近づいたグランだったがゆっくりとライの方に戻り懐からボールペンを取り出した。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「スキル……イレイサー!!! 」

 

「ぐふぁ!? 」

 

カストは目の前の男に向かい消しゴムを投げ、大量に撃ち出す。消しゴムが当たった箇所は徐々に消えていき、やがてその存在は跡形もなく消滅した。そして男のいた場所にはホチキスだけが残った。

 

「《神隠し》」

 

「フフフ、やるわね? 私の部下をこうもあっさり」

 

「デス……ペーパー」

 

カナルが近くの家の屋根の上から自分達を見下ろしている女の子の名前を呟く。今カナル達が相手にいているのは文房具だ。コウのお見舞いの帰り、カナル達は突然襲撃され戦闘になってしまったのだ。しかし不意をついたはずの敵の一人はカストにあっさり返り討ちにされ、この世から消えた。

 

「いいわ〜? お前達相手をしてやりな。私は筆箱最強の部隊長と遊ぶから」

 

「……一体何の恨みがあってこんな事するですですか? 今ならまだ争わずとも」

「あはは! くだらないわ。話し合いなどする事はない。何故なら貴方達は私達文房具に殺される運命なのだから。……紙技……《龍紙斬!!!》」

 

その瞬間戦闘が始まった。カストが一人の倒した分敵の数が減りコウがいなくても互いに一対一という状況になった。そしてデス・ペーパーの周りを長い細い紙が舞い物凄いスピードでリンの周りを囲い、その姿は龍がリンは捉え締め上げるような感じに見える。しかしリンはその紙を全て斬り裂いた。

 

「ナメるなですですよ……僕は瞬殺の物差し! デス・ペーパーだかなんだか知りませんですですが……僕の仲間を殺すと言うのなら容赦はしませんですですよ。……殺しますです」

 

「フフフ、いいわ〜。流石は筆箱最強……でも、私も最強なのよ? あ〜けど貴方は殺さないわ。貴方は私の物にしてあげる。可愛いから。痛めつけて痛めつけて……その口からご主人様って言わせてあげるの」

 

リン達はぶつかり合いそこは近づく事も許されない戦場と化した。しかし戦闘が激しかったのはリン達だけで他はすんなりと終わってしまった。何故ならデス・ペーパー以外の刺客はみんなただの寄せ集めだった為だ。そんな寄せ集めが普段殺しをしてきている筆箱を墜とす事など出来るわけない。だがデス・ペーパーだけは違ったのだ。彼女は確実にリンと同等、それ以上の実力を持っていた。その証拠にリンは段々と押され始めている。

 

「ぐっ!? 何て手数ですですか……っ!? ごふっ!? あ……がはっ!? 」

 

「ほら、ほら!! もうへばったのか、よ!!! 」

 

「うわぁぁぁああああああああああ!!! 」

 

リンは紙の連撃を受け後ろへと吹き飛ぶ。しかしリンもまた筆箱の中で一番の実力者だ。簡単には負けない。リンは壁に足をつきそこを踏み台にしてデス・ペーパーに突っ込んだ。そのスピードはデス・ペーパーの目で捉えられる速度を超えた為に紙で張っていた防御は簡単に突破されデス・ペーパーはその顔を切り裂かれる。

 

「三十センチ……定技!!! 」

 

「っ!? え……い、いぎゃぁぁぁああああああああああああああ!? 」

 

「《切り計り》……」

 

顔を斬られたデス・ペーパーは顔を両手で覆い痛みに悶える。そしてリンから段々と後退りし始めた。その手の隙間からは血が滴りその状態からもう戦うのが困難だと伺えた。

 

「顔が!? わたぢの顔がぁぁああああ!? ぐっ……よぐも……よぐも゛わだぢの顔を……瞬殺の物差し、覚えてなさい。絶対に私は貴方を許さない。いつか……いつか絶対に復讐してやる。絶対にだ!!! うぐっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 」

 

その叫びと共にデス・ペーパーは消え、メンバーは取り敢えず安心したように思われた。しかしここでリン達にある連絡が入りそれを聞いたメンバーは顔を青くしていく。それはチェッカーズが壊滅したと言う情報だった。リン達は急いで隊舎へと向かう。だがそこで見たのは火の海になったチェッカーズの隊舎の中で部隊長であるライを殺し、眺めているグランの姿だった。他にもチェッカーズのメンバーはみんな死んでおり。そこにある書類は全て灰となっていた。

 

「し、師匠……一体……何を…………」

 

「しょ、少尉……どうして……どうしてこんな事したですですか!? 」

 

「守りたかった……守りたかったんだ。ただ、それだけだ。もう管理局には愛想が尽きた。こんな仲間を踏みにじるような場所……私が壊してやる」

 

その瞬間グランはリン達に向け攻撃を放った。リン達はそれを躱すがそれもいつまでも続けることはできない。しかしかと言って反撃も出来なかった。相手は自分達の大切な人だ。今まで自分達の世話をし自分達を自分の子供のように扱ってくれた父親のような存在なのだから。

 

「やめてよ……やめてよクソ少尉! 私は……私は貴方と戦いたくない!? 」

 

「うおぉぉぉおおおおおおおおおお!!! 」

 

誰も手を出せずにいた時だった。グランの攻撃を掻い潜りグランの喉元に自分の得物を突きつけた人物がいた。そう、陸飛だ。彼は止めたかった、そしてやり直して貰いたかったのだ。自分に多くの理想を教えてくれた男に。陸飛は知っていた。グランは陸飛だけに教えていたのだ、自分の本来の仕事と自分の夢を。

 

「師匠……お願いです。自首してください。俺は貴方を殺したくない」

 

「陸飛……我が弟子よ。私は……間違えた。だが……お前は間違えるな。自分を信じ、己の信念の為に戦え! さらばだ、はぁぁぁああああああああああああ!!! 」

 

「っ!? うわぁぁぁあああああああああああ!? 師匠ぉぉぉおおおおおおおおお!!! 」

 

グランはそう言った刹那陸飛に殺気を感じさせた。そして弟子に自分を殺させたのだ。陸飛は自分で殺した師匠を抱え誰に見せたことのない涙をその時メンバー全員に見せる。そこにいる者は誰一人として動く事が出来なくなった。自分達の仲間が、家族が、自分達の仲間によって殺されたのだから。

 

「少尉……陸……ちゃん……うっ、ひぐっ……ぞんな゛……どう゛じで……ごん゛な゛ごどに゛……うわぁぁああああああああああ!!! 」

 

リンは泣き叫びそれにつられるように他の二人も涙を流す。こうしてこの事件はグランの反逆という不名誉な称号によって幕を閉じた。その真実を知る者のいないまま。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「うっ……ん? なんだか懐かしい……夢を見た……っ!? ここは!? どこ……だ? 俺は確かゆりかごと……でもこの景色見覚えがある……ここは、まさか「お主、やっと起きたか!」っ!? 」

 

「 我を待たせるとは無礼な奴よ」

 

「まぁ良いではありませんか、それともこの方が心配だったのですか? 」

 

「な!? ち、違う!? 我はただこやつに『砕け得ぬ闇』の場所を聞き出そうと」

 

突然目覚めた陸飛はそこが公園だと分かった。しかしどうして自分がここにいるのか分からない。そう思っていた時だ、少女の声が聞こえた。だがその言葉遣いは少女とは思えない物だった。そして陸飛は目の前の少女を確認した瞬間驚き固まった。少女達はバリアジャケットと思わしき者を身に纏いその姿が自分の知っている隊長達のバリアジャケットに似ていると気付いたのだ。

 

「君達……誰だ? 」

 

「ん?やっと言葉を発したと思ったらそれか、いいだろう。教えてやる。我の名はロード・ディアーチェ! この世を統べる王の名よ」

 

「ん? はい? 」

 

陸飛はもう訳が分からなかった。目の前の人物の言ってる事が名前以外分からないのだ。そしてその近くにはもう二人の仲間と思わしき人間がいる。しかしもしこの場所が陸飛の知っている場所ならば目の前の魔導師三人は何者なのか。これほどの魔力を持っている者がフラフラとバリアジャケットを着て出歩いているなどあり得ない。何故ならこの場所は陸飛の故郷である海鳴市なのだから…………

 

 

 




次回もよろしくお願いします。

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