魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

この話から過去編に入ります。

ではよろしくお願いします。


第2章《筆箱の絆》
第41話《無口な新人》


〜リンサイド〜

 

これは……JS事件から約10年前、僕が初めて陸ちゃんと出会い、僕達『筆箱』が何故解散する事になったのか……僕達の解散するまでの物語。

 

「少尉ぃ〜?最近何を隠しているですですか? 最近いつもにやにやして気持ち悪いですですよ? 」

 

「ストーンよ、仮にも私はお前の上司なんだが? 気持ち悪いってなんだよ……気持ち悪いって…………」

 

「気持ち悪いもんは気持ち悪いじゃん? クソ少尉ももうそろそろ墓に入ったらどう? 生き過ぎだよ、つ〜かいい加減しつこいですけどぉ〜? いらないからそう言うの」

「おい!? 私はまだ30代だぞ!? て言うかいじめすぎだろ、もうやめてくれよ! 上司いじめる部下多過ぎ!? 私のハートは限界だよ!!! 」

 

僕が少尉を弄るのに対して筆箱メンバーの一人である彼女は普通に暴言を吐いている。彼女の名はカナル・バンデッド。筆箱の中で一番口が悪い人だ。歳は僕より一つ上。でも口調の所為で全然そうは見えないのが事実。

 

「おい、その辺にしたらどうだカナル? 少尉は歳上だぞ? 歳上」

「うっせ〜なぁ〜? 消しゴムヤロ〜は黙ってろよ! 」

 

「はっはー! カナル、消しゴムに罪はない。訂正しろ。今なら許してや「あ゛あ゛〜? 」す、すいませんでした!? 調子こいてました、ごめんなさい!! え!? い、いや……来ないで……グフっ!? 」

 

「ケッ! 消しゴム如きが図にのるなや? 次は私の鉛筆削りがお前の指を一本ずつ削るぞ、あ゛あ゛〜? 」

 

この部隊でカナルに喧嘩を売る奴はいない、怒らせると怖いからだ。しかし今みたいに決まってカナルを怒らせボコボコにされる男がいる。それがカスト・ゴルドッセル、彼も僕達と同い歳。そしてなんと言うか彼は馬鹿なのだ。何度ボコボコにされても懲りずにこうしてボコられる。

 

「はぁ〜。おいバンデッド、いい加減にしろ全く……」

「ハゲは黙ってろ!! 」

 

「私はまだハゲてない!? ちょっとは上司をたてて!? 」

 

僕達が所蔵している部隊……それは管理局にある部隊の中でも汚れ仕事を扱う特殊な部隊だ。話し合いにもならず放っておけば罪もない人を殺し続ける。そんな人間や組織を鎮圧し逮捕する部隊……時空管理局特殊鎮圧部隊、通称『筆箱』。何故こんな名前が付いているかと言えばこの部隊のメンバー全てが筆箱に入っている普段誰もが使ってるような物を武器として使用している為である。側から見ればふざけているのだろうと思われるかとは思うがそのメンバーの使う技のほとんどが殺戮を目的として作られた技だ。この部隊に呼ばれた理由もそこにあるのだろう。そしてそんな僕達を纏め面倒を見ているのが少尉、名をグラン・ハワード。ちょっと年寄り臭いが優しい僕達の上司だ、みんなには弄られているけど…………

 

「冗談は置いといて少尉、本当にどうしたんですか? 最近機嫌がいいですよ? 俺が言うのも何なんですが……気持ち悪い」

「だから何なんだよお前らは!? 私をいじめて何が楽しんだ!? もうあれだからな? ジュース奢ってやらないからな!!! 」

 

今喋ったいかにも普通な少年、名はコウ・ランドール。カナルと同い年で彼は筆箱の中で一番真面目だ。そして誰にでも優しい。だから結構モテる方なのだ。けど僕は別にタイプじゃない。

 

「いや、いらねぇ〜し。つーかまだ生きてたんですかクソ少尉殿? 葬式いつにします? まぁ〜私行きませんけど」

 

「もうやだ…………」

 

カナルの言動がますますエスカレートし少尉はいじけてしまった。でもこれはいつもの事で次の日には全て元通り、後腐れがない。良く言えばこれが筆箱の雰囲気なのかもしれないが。

 

「で? 結局何でそんなににやにやしてるですです? 意地悪しないで教えて下さいですですよぉ〜」

 

「い、いや……意地悪されてるのは私の方なのだが……はぁ〜、まぁ〜いいか。大した事じゃないんだがな? 私の弟子が私の技を全て体得したので喜んでいただけの事。別にやましい理由じゃない」

 

「「「「弟子!? 」」」」

 

僕達はみんな声を荒げて驚く。そんな話、僕達は一度も聞いた事が無かったからだ。そしてなんと明日僕達の部隊に配属されると言う。何故話さなかったのだとみんなに言われ少尉は「忘れてた」などと答えたものだからカナルに暴言を吐かれ心をボロボロにされた。でも次の日、やはり少尉は何事もなかったかのように元通り。さらには昨日話していた新人を連れて隊舎に赴いた。

 

「少尉、その子がそうなんですですかぁぁ〜? 」

 

僕は目を輝かせてその子を見た。また仲間が増える。そう思ったら嬉しかったのだ。けどその子は僕を見ても何も言ってくれない。照れているのかと思ったがそうでもないし、緊張している様子もない。だから僕達が最初に自己紹介した。そしてこの子の反応を待つ。しかし何も言わない。

 

「…………」

 

「はぁ……おい陸飛挨拶くらいしろ。じゃないとここには「おいコラ! 」はぁ〜言わんこっちゃない…………」

 

今日来た新人君に向け明らかな怒気を向け睨んでいる人物が一人。そう……カナルだ。どうやらこの子が挨拶をしないのが気に入らないらしい。僕も他のメンバーも怖くてちびりそうだ。カストなんて震えて腰を抜かしている。

 

「私らが挨拶したのにお前は黙りか? 自己紹介くらいしろよ! じゃないと……新人とは言え、殺すわよ? 」

 

「……できるならやってみればいい」

 

「ス、ストぉぉぉップですですよ!? 二人ともその辺で、ねぇ〜? ……ダ、ダメ……ですです? 」

 

「ちっ! リンが言うならこれぐらいにしてやるわよしょうがないわね」

 

僕が二人の間に入りなんとか止める事に成功した。けど二人は完全に仲が悪くなってしまった様だ。これから先が思いやられる。そしてその後自分の机で何やら本を読んでいる新人に僕は話を振った。何とか仲良くなれないかと思ったからだ。

 

「あ、あの〜? き、君は少尉の弟子なんですですよね? という事は武器はボールペンを使うですですか?……あ、あの〜? 僕の声聞こえてますですですか? それとも……言いたく……ないですです? じゃ、じゃ〜せめて名前だけでも教えて欲しいですですよぉ? …………。……あはは……ダメですか…………」

 

「陸飛」

「え……」

 

「鈴木陸飛」

 

あまりに喋ってくれないので僕が落ち込んでいると単語を答えるように名前を教えてくれた。僕は落ち込んだ状態から一気にテンションが上がった。そして身を乗り出し陸飛君を見ながら目を輝かせる。

 

「陸飛君って言うですですかぁ? 知ってると思いますですですが僕はリン・ストーンて言いますですですよ! リンて呼んでくれていいですですから、これからよろしくお願いしますですです! 」

 

僕がそう言うと陸飛君は立ち上がって何処かに行ってしまった。トイレかなんかだろうか……。すると後ろからカナルが話しかけて来た。しかしまた随分気に入らない顔をしている。

 

「本当に気に入らないわねぇ〜? 裏でボコろうかしら」

 

「そうですかぁ? きっとクールなだけですですよ。陸飛君はクールでカッコいいですですよぉ〜! 」

 

「リン……あんなのが好みなの? 私には分からないわぁ〜」

「え!? ち、違いますです!? べ、別にそう言うんじゃ」

 

僕は顔を熱くして慌てた。そういう風に勘違いされたと思ったからだ。別に陸飛君が好きになったとかそう言うんじゃない。ただああいう雰囲気の男の子はカッコいいなぁ〜と思っただけなのだ。別に他意はない。

 

「おっほん! え〜ちょっとお前達に話がある、てかあれ? 陸飛は? 」

 

「陸飛君なら何処かに行っちゃいましたですですよ? 」

 

「はぁ……あいつは本当に……まぁ〜いい。実はな? 今日限りで俺はこの部隊の責任者をおりる。その代わりこの部隊はストーン、お前が部隊長だ。腕も申し分ない。まとめ役としてはこれ程の適任者はいないと思うからな」

 

「待ってくださいですですよ!? どうして急に辞めちゃうですですか!? 僕には無理ですですよ……」

 

突然の少尉の部隊長辞退と僕の部隊長就任。僕は少しパニックになった。今まで少尉がいたから上手くやってきたのだ、出なければ僕達はここまで仲良くなれてない。少尉と言う存在が僕達の確かな絆を築き上げてくれた。だから今更少尉がいなくなると言うのは寂しい。

 

「いいじゃんリン。私はリンの部隊長就任、異議なんてないわよ? リンなら出来ると思うし。けど……クソ少尉、これだけ聞かせてくれない? 筆箱の部隊長をおりるというのは私達が嫌いになったから? 」

 

「フフ、バンデッド馬鹿な事を言うな。私はお前達を嫌いになどならんさ。私の大事な仲間、いや……筆箱で築いたこの絆は家族と呼んでもいいのかもしれんな。私はお前達を誇りに思ってるよ」

 

「ふ、ふ〜ん。そうなんだぁ〜。ならいいや、さっさと出て行けば……クソ少尉。……ぁ……りが……とぅ…………」

 

カナルは少尉に背中を向けそう言った。冷たいような言い方だったががカナルが最後何かを小さな声で言った。そしてカナルは背中を向けたままわなわなと震えている。悟られないようにしているがカナルは泣いているのだ。この部隊で少尉を慕ってない人はいない。少尉がいなくなるとなれば悲しい。それは僕も同じだ。

 

「少尉、今までありがとうございました。部隊長のお話しっかりと努めて見せますですですよ! 」

 

「ああ、ストーン。よろしく頼む。後……陸飛と仲良くしてやってくれ。あいつはあんなんだが本当のところは仲間思いのいい奴だ。時間が経てばお前達にも分かると思う」

 

そう言って少尉は隊舎を出て行った。しかし僕達……新たなメンバーで迎えた筆箱は少尉の言うように仲良く結束できぬまま雰囲気がガタガタなまま出動の時を迎えてしまう。

 

「それじゃ、ここで別れるですですよ。前衛は陸飛君は僕、他は裏手に回り込み合図が出るまで待機して欲しいですです」

 

「「「了解」」」

 

「…………」

 

ある晩の出動。そして今いるのはとある世界の廃墟だ。そこである過激派が根城にしているとの事だった。僕達の部隊の鉄則は速やかな鎮圧。一応相手に対して降伏は促すが大抵は聞き入れられず全員殺してしまう。僕はそれが嫌だった。拾えるならどんな人の命も拾いたいからだ。悪人だって僕達と等価値の命がある。だから死んで償うのではなく、生きて償ってほしい。それに……僕は任務で人を殺した分だけ罪悪感が蓄積していってる気がした。でも辞める気はない。僕が辞退しても誰かがやらなければならない。それに筆箱のみんなが僕のいない所でいなくなるなんて嫌だから。

 

「ん?……おい、なんか物音がしなかったか? 」

 

「いや、気のせいだろ? っ!? 後ろっが!? 」

「な!? おい、どうした!? 誰だ!? ど、どこに……ひっ!? がはっ!? 」

 

まず見張り二人を僕が気絶させバインドをかける。普通のテロリストが僕の速度についてこれる訳もなく二人は簡単に沈んだ。もう何をされたのかも分かってはいない筈。そして僕達は更に奥へと足を運んだ。するとそこの更に奥の部屋に敵の幹部と思わしき連中が二人、更には部下が30人程集まっている。別に隠密で暗殺をしに来たわけじゃないので僕達はドアを思いっきりわざとらしく大きな音を立てて開けた。当然のことながらそこにいる全員がこちらを振り向く。

 

「なんだ?お前らは……子供が来るところじゃないぞ? 帰りな! 」

 

「僕達は時空管理局特殊鎮圧部隊ですです! 大人しく武装を解除し、両手を頭の上に置いて伏せなさいです! そうすれば命は取りませんですですよ!! 」

 

「管理局だぁ? ちっ、子供に何が出来る! お前ら殺せ!!! 」

 

「また……ですですか…………。三十センチ……定技……」

 

また命をこの手にかけなければならない。そう思ったら心が黒く染まる感じがした。僕は定規を構え突っ込んでくる部下30人を相手に前に出た。

 

「測り斬り……30㎝!!! 」

 

僕は一人ずつ斬り伏せその傷を一人切るたびに1㎝ずつ伸ばしていく。例えこの人数だろうと殺すだけなら5分とかからない。人は儚くも簡単に死ぬ、殺すことが出来る。

 

「な、なんだお前らは!? くっ、おい、に、逃げぐわぁぁぁぁあああああ!? 」

 

「何!? な!?……貴様……あの位置からいつの間にそこに…………」

 

幹部が逃げようとしたが陸飛君がそれをさせない。一人を殺し、無言でもう二人を睨みつける。もう二人は動く事すら出来ないようだ。

 

「29㎝!! 30㎝!!!……はぁ……はぁ……終わりですですよ? どうしますです? 最後のチャンスですです。生きるか、死ぬか……」

 

「ひっ!? こ、殺さないで!? 降伏です、降伏します!! 」

 

「そうですですか……なら貴方達の命はとら「ぐわぁぁぁあああああああああ!? 」え…………」

 

「な、がはっ!?……う……あ…………」

 

相手が降伏しもう殺さないで済むそう思った時だった。陸飛君が二人を殺した。何故……二人に戦う意思はなかった。命乞いをした相手を何の躊躇もなく……僕はこの行為が許せなかった。助かった命を陸飛君は殺したのだ。

 

「どう言うつもりですですか? 彼らはもう降伏しましたですですよ!? なのに何故殺したですですか!!! 答えて下さいですです! 」

 

「今更遅い」

 

「っ!? ……ふざけるな……ですです…………。ぐっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁあああああああ!!! 」

 

僕は陸飛君を思いっきり蹴り飛ばし後ろの壁に叩きつける。そして倒れ込んだところで陸飛君の胸ぐらを掴み座らせた。

 

「人の命をなんだと思ってるですですか!? 何が今更遅いですですか!? 遅すぎることなんてありませんですですよ!!! 諦める事なんて……諦める事なんてなかったですです!!! それを……それをぉぉぁぁぁぁああああああああああああああ!!! 」

 

「っ!? グフっ!? 」

 

生まれて初めて仲間に対してキレた。生まれて初めて仲間を本気で殴りつけている。心が痛い、救えなかった命があった事が……仲間を殴っているという事が……僕が……弱いという事が…………

 

「この!! こぉぉぉのぉぉぉおおおおお……っ!? カ、カナル…………」

 

「リン? らしくないよ? その辺にしときなって。任務は終了だし、もう帰ろ 」

 

「……はいですですよ…………」

 

陸飛君を殴ってる最中カナルに止められた。流石に僕は我に返り馬乗りになっていた状態をやめ、陸飛君の上からおりる。でも僕は内心まだ収まってなどいなかった。そしてこの夜を切っ掛けに僕は陸飛君が嫌いになった…………

 

 




次回もよろしくお願いします。

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