魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
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〜はやてサイド〜
「な、これはっ!? ぐあっ!? 」
「お兄さん? お兄さんどうしたの!? 何も見えないよ!? 」
ワークエスケーパーの技で辺りが白く光りに包まれた瞬間、鈴木君の苦しむ声が聞こえた。同時にヴィヴィオがそれを聞きうろたえている。でもあまりにも強い光だった為にどうなったか確認する事が出来ない。しかしそれも一時の事だった、光は段々と収まっていき二人は元の位置から動かずにそこにいた。けど鈴木君だけ膝をつき肩からは攻撃を受けたのか血が吹き出している。
「ぐっ……今のは斬撃か……それも光の…………」
「フフフ、その通りだ。ペン技近式零の型《白光》それは白の魔力ををボールペンに灯しそれを光の斬撃にして飛ばす技。これがペン技最強にして究極の奥義だ。おっと、これを見極めようなんて思わぬ事だ。この斬撃の速度はその名の通り光の速度。いかにお前といえど光の速度で動く事など出来はしない筈だ」
「なんやそれ……そないなもんどうやって躱せばいいんや? 鈴木君は防御魔法なんて使えんのやで!? 」
ワークエスケーパーの言う通り、光の速度で動ける人間など存在しない。という事は鈴木君はこの攻撃を防ぐ手段がないという事。しかし鈴木君の顔は諦めてなどいない。今は無表情で光のない死んだような瞳やけどあれは諦めた顔なんかじゃない。
「これで最後だ! ペン技近式……零の型……《白光》!!! 」
「リッ君!? 」
「お兄さん!? 」
「…………」
再び辺りは光に呑まれる。でも今度は鈴木君の声は聞こえなかった。まさかそのままやられてしまったんじゃないか?と私達は不安になる。光の速度で斬撃を飛ばされたのだ避けられる訳がない、普通に考えれば死を覚悟する。しかし光が晴れ鈴木君の安否を確認した時そこにいる全員は驚愕した。
「なっ!? 」
「あ!お兄さん!! 」
「陸ちゃん! 」
何故なら鈴木君が無傷でそこに立っていたからだ。鈴木君はどうやったか分からないがワークエスケーパーの攻撃を防いだらしい。その証拠に鈴木君の前の床はボコボコに割れ穴が空いている。
「くっ……馬鹿な……一体何をしたんだ!? 」
「相殺した」
「な……に? 馬鹿な!? 相殺だと!? まさかお前にはこの攻撃が見えたと言うのか? しかもお前は光の速度で動けるだと? ふざけるな!? そんな事ある訳がない!!! 」
ワークエスケーパーの言う通り、そんな事が出来たのならもう完全に人間を疑うレベルだ。そんなものはチート以外の何物でもない。
「あんたの言う通りだ。光の速度で動ける人間など存在しない。俺がやったのはあんたが技を放つ瞬間、あんたの斬撃が来る場所を予測しそこへ俺の得物を持っていったに過ぎない。あんた肩の動きを見ればそれくらい造作もないことだからな? 」
「「「それもそれでおかしい(ですです)から!? 」」」
鈴木君が助かったのは良かったけど鈴木君があまりにも簡単そうにワークエスケーパーの技を防げた訳を言ったもんで私達はツッコンでしまった。ワークエスケーパーは悔しそうに震え鈴木君を睨みつけている。しかし自分の奥義が簡単に攻略されたのだこうなるのは必然。
「おのぉぉれぇぇ……図にのるなぁぁぁああああああああ!!! 」
「っ!? ぐっ!? 」
とうとうワークエスケーパーはキレた。さっきの技を大量に鈴木君に放つ。もう周りは見えずただ私達は光のの所為でただ目を瞑るしかない。そしてやっと攻撃が収まり光も収まってきた。しかし光が晴れた瞬間私達は悲鳴をあげた。鈴木君が今の攻撃をどれだけ受けたのかは分からないが鈴木君はさっきいた位置から後ろの壁までぶっ飛ばされていた。さらにその身体は所々切り裂かれて、その場は血だらけだ。
「うっ……」
「フフフ、まさかこんなに大量に放てるとは思っていなかっただろう? 陸飛よ、やはりお前は私に殺されるしか道はないようだな? さぁ〜今度こそ……っ!? なんの真似だ? そこをどけクソガキ、邪魔だ」
「うっ……ぐすっ……い、嫌だもん!!! こ、これ以上お兄さん傷つけないで!? 」
「ヴィヴィオ!? ダメ、早く逃げて!? 」
私達が目を離した隙にヴィヴィオが鈴木君とワークエスケーパーの間に割って入り、鈴木君の前で手を広げて立ちはだかる。なのはちゃんがヴィヴィオに向かって叫ぶがヴィヴィオは涙目になりながらもワークエスケーパーから目を逸らそうとしない。まっすぐ強い瞳でワークエスケーパーを睨んでいた。
「いい度胸だクソガキ。お前は初めからそうだったな? お兄さん、お兄さんとうるさいばかりで。所詮お前には何も出来んのだクソガキ!!! 」
「っ!? きゃっ!? 」
「いや!? そんな……ヴィヴィオ…………」
ヴィヴィオはワークエスケーパーに思いっきり蹴り飛ばされた。そしてもうピクリとも動かない。なのはちゃんは身体にガタがき始めている為ヴィヴィオの所に行く事も出来ない。私も私でなのはちゃんと交代してリンさんを抱えている為に動く事が出来ない。そしてワークエスケーパーは鈴木君を後回しにしヴィヴィオに近づいていく。
「お前の所為で全ての計画に狂いが出た。本当に邪魔なガキだ。最初に片付けてやる」
「うっ……あ……お兄……さ……ん……ヴィヴィオ……ヴィヴィオ……お兄……さんの」
「死ね……クソガはっ!? ぐっ……まだ動けるのか……陸飛ぉぉぉ……」
「お兄……さん? 」
ヴィヴィオがやられる前に鈴木君が間に合った。ボロボロのヴィヴィオを抱え近くの壁の側までヴィヴィオを運ぶ。そして再びワークエスケーパーの方へと歩き出した。しかし、なにかおかしい。鈴木君は俯き顔がよく見えない。でもその手に握られたボールペンはギシギシと軋み鈴木君の力の入れ具合がここにいる私達にも伝わって来る。
「誰に手を出した……あの子はもう関係ないだろう? なのに何故手を出した…………」
「関係ないだと? 何を馬鹿な、あのクソガキは私の邪魔ばかりして来たんだ。これ以上邪魔をされたらかなわん、だから先に殺そうと思っただけの事だが? それの何が悪っ!?…………」
その瞬間鈴木君が顔を上げた。その顔はこれ以上ないくらい怒りで歪んでいる。こんなに怒った鈴木君を見るのは初めてだ。ティアナの時もここまでは怒ってなかった。ヴィヴィオが傷つけられた事で鈴木君の触れてはいけない物に触れたのは間違いない。
「今殺すって……言ったのか? あの子を殺すと……自分達の都合拐い、自分達の都合で傷つけ……挙げ句の果てには殺すだと? ……てぇぇぇめぇぇぇはぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
「がはっ!?」
鈴木君が雄叫びと共にワークエスケーパーを殴り飛ばした。そしてそのまま後ろの壁にめり込んでいる。しかしすぐに壁から脱出し構えを取る。
「ちっ……ペン技遠式……三の型……《緑貫》!!!」
「2ペン流ペン技……双式……四の型……《双閃》!!!」
「なっ!? ぐわぁぁぁぁあああああああ!? 」
ワークエスケーパーが緑色のボールペンを放つが鈴木君は両手に持ったボールペンをそれぞれ肩の位置でクロスするように構えるとそれを一気に目の前をクロスさせるように放つ。するとそれが斬撃となりバッテンマークのような斬撃がワークエスケーパーのボールペンを呑み込みワークエスケーパーをも呑み込む。しかしあの怪我だ、もう消耗も激しいようで息が切れ始めている。そんな時、私達の上の方でドガァァンと封鎖された入り口が壊される音がした。
「お待たせしました! 」
「助けに来ました! 」
それはスバルとティアナで私達の救助に駆けつけてくれたらしい。もう時間がないのは確かだ。もうすぐこのゆりかごは消滅する。私は鈴木君を呼んだ。しかし鈴木君から返ってきた答えはとんでもない答えだった。
「行って下さい。俺はまだ行くわけにはいきません」
「な、何言ってんのや!? もう時間がないんや!? お願いやから私達と一緒に……っ!?」
私は言葉を途中で詰まらせ大きく目を見開いた。まだワークエスケーパーはピンピンしていたのだ。これでは簡単には逃がしてもらえない。だから鈴木君は逃げろという。自分が足止めをするつもりらしい。
「ヴィヴィオをお願いします、なのは隊長。ヴィヴィオを幸せにしてあげて下さい。」
「待ってよ!? リッ君はどうするの!? まさかこのままゆりかごと消える気じゃ!? 」
「陸ちゃん何を考えてますですですか!? 」
私達がいくら叫んだところで鈴木君がそれ以上何か答える事はなかった。でも私達は必死に止める。しかしワークエスケーパーがそれを邪魔するかのように私達に向け攻撃を放とうとした。しかもその攻撃は躱すのがほぼ不可能なペン技の究極奥義。さらには魔力の込め方がさっきと比べ物にならない程濃い。どうやら最大出力の攻撃を放つようだ。
「ペン技近式……零の型……」
「っ!?させるか!!2ペン流ペン技……極式……双極の型……」
ワークエスケーパーが構えを取る一瞬の隙を見計らい、鈴木君はワークエスケーパーと私達の間に割って入る。そして鈴木君は決して聞き逃せない単語を口にし構えを取り始めた。
「陸ちゃんダメです!? やめて下さいですですよ!? 嫌だ!? 陸ちゃぁぁぁぁあああああん!? 」
「《白光》!!! 」
「《双極砲刃》!!! 」
強烈な光が私達の方へと向かい放たれた。しかしその瞬間鈴木君がボールペンを放つ、そのボールペンは斬撃を纏いボールペンの周りが何やら歪んでいた。そしてその攻撃はワークエスケーパーが放った光を全て吸収しまっすぐワークエスケーパーへと突き進む。同時に攻撃を放った為ワークエスケーパーは避ける事が出来ないようで顔を驚愕でそめていた。
「馬鹿なぁぁぁぁああああああああああ!? 」
「うおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!」
攻撃は見事にワークエスケーパーを射抜いた。瞬間その場は弾けワークエスケーパーは倒れ伏せる。しかし同時に鈴木君が倒れ、ピクリとも動かなくなった。
◇
〜リンサイド〜
「陸……ちゃん? あはは……冗談ですですよね? ぐっ……起きて……下さいですですよ」
僕は痛む身体を動かし目の前に倒れた陸ちゃんの側に寄った。そして陸ちゃんを仰向けにし、状態を確認する。しかしダメだった、見ただけで分かる。胸が上下していない。つまりは息をしていないのだ。なのりんもそれに気づき急いで陸ちゃんの胸に手を乗せその後耳を押し付けて心音を確認する。けどなのりんの顔から完全に止まっていると分かってしまった。幸いヴィヴィオちゃんは気絶していてこの光景は見ていない。
「どうして……使ったですですか……こうなる事ぐらい……うっ……ひぐっ……わがっでだ筈……でずでずよ? ……り゛ぐち゛ゃん……うわぁぁぁあああああああああああぁぁぁ……い゛や゛だぁぁぁぁ……」
「リッ……ぐん゛…………」
僕達は泣いていたがいつまでもここにいるわけにはいかない。最初は陸ちゃんも連れて行こうとした、でもこの状態で陸ちゃんを抱えていくのは不可能という事が分かり僕達は陸ちゃんの遺体を持ち帰らずにそのまま見捨てる道を選んだ。幸いワークエスケーパーは今の一撃で倒れ立ち上がってこない。結果的に陸ちゃんと相打ちになったのだ。そして僕達はゆりかごを後にした。でもここで問題が起きた。上昇する筈のゆりかごは上昇せずにそのまま逆に下に下がり始めていたのだ。当初、ゆりかごが宇宙空間に出たところでゆりかごを複数のアルカンシェルで撃墜し消滅させる作戦だった。しかし地上にいるゆりかごに向けアルカンシェルを放つなど出来るわけもなく、このままでは手の施しようがない。しかもゆりかごは地面を関係なく破壊しながら突き進んでいた。
「私達はどうしたらいいですか……陸ちゃん…………」
◇
〜グランサイド〜
「ぐっ……うっ……ん?……ちっ」
私は陸飛の一撃でやられたと思ってた。だが私は何故か意識を取り戻し生きている。そして向こうの方では陸飛が倒れていた。私は陸飛に近づき眺める。
「死んだのか陸飛……馬鹿弟子が……死ぬと分かって撃ちおったな? しかも無意識かでも加減しおって。諦めたんじゃなかったのか? 殺しておけばよかったのだ陸飛……私はもう助けられる人間ではない。助けてもらう価値などないのだ。フハハハ……はぁ……何をやっておるのだ私は……陸飛、本当は分かっていたのだよ。私が間違っている事ぐらい……だが私は認めたくなかったのだ。自分が間違っていると。お前が命を賭して放った一撃……確かに私に届いたぞ? お前の勝ちだ陸飛。認めよう、私が間違っていた……ぐっ……うお゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! はぁ……はぁ……はぁ……ごふっ!? 」
私は陸飛の側でしゃがみ自分の胸に手を突き入れ、ある物を取り出した。そう……リンカーコアだ。だが無理やりにでも抜き取った為、胸には穴が開き、吐血をする始末。
「師匠より先に死ぬ事など私は許さんぞ陸飛。まぁ……弟子を殺そうとした私が言うことじゃないがな? ……フフフ。最後に私に見せて見ろ。お前の守るという覚悟と信念を。そして私達が目指した理想の管理局……その未来を私に見せてくれ。さらばだ陸飛……ふぬんっ!!! 」
私はその瞬間自分で先程取り出したリンカーコアを陸飛の胸に押し入れ、意識を手放した。
次回もよろしくお願いします。