魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

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ではよろしくお願いします。


第35話《ひび割れた意地と剥がし人》

〜なのはサイド〜

 

「ヴィヴィオ!? 」

 

「うるさい! お前はママじゃない!!! 」

 

私は他のメンバーとゆりかごに潜入し途中、ガジェットや戦闘機人を退けヴィヴィオがいる場所へと辿り着いた。しかしヴィヴィオは聖王として覚醒し、ヴィヴィオの面影は残っているもののヴィヴィオは大人の姿へと変わってしまった。私が必死に呼びかけるが私の事が分かってない。おそらくさっきからモニターで私達の様子を伺っている戦闘機人による洗脳がある所為だと思う。だから私はヴィヴィオの攻撃を防ぎつつそいつの場所を探す、でも思うようにいかない。ヴィヴィオが絶えず攻撃を仕掛けてくる所為もあり集中し辛いからだ。

 

「お兄さんを返せぇぇぇ!!! 」

 

「ぐっ……ヴィヴィオ……っ!? しまっ、かはっ!? 」

 

ヴィヴィオとの攻防の最中誤算にも乱入者が現れた。ヴィヴィオの攻撃を防ぐ為に展開していたシールドはその乱入者によって破壊されヴィヴィオの拳は私のお腹へと直撃する。あまりの痛みに一瞬意識が飛びかけるが何とか失わずに保てた。しかしこうなってしまうと私は今ピンチと言わざるおえない。二人相手に戦わなければならないのだから。しかも…………

 

「フフ、管理局のエースオブエースが無様な事だ。ペン技遠式……三の型……」

 

「ぐっ……ワークエスケーパー」

 

乱入者とはリッ君を殺したグラン少尉だ。こいつがリッ君より強いならばヴィヴィオを相手にしながらこいつを相手にして勝てる見込みなどない。けど私は諦められない。ヴィヴィオの為に……リッ君の為に。この戦いで傷つく覚悟は出来ている。だから私は……

 

「《緑貫》!!! 」

 

「私は絶対に諦めないぃぐっ、このぉぉぉおおおおおおお!!! 」

「な、何だと!? 」

 

私はシールドを展開し、放たれたボールペンが着弾した瞬間シールドが貫かれる前に展開したシールドごと真横に逸らした。こうした事でボールペンは軌道を外し全く関係のない壁へと直撃する。しかし危なかった、リッ君の技を何度か見ていたから出来たことだ。出なければシールドごと貫かれて今頃私は死んでいる。

 

「なるほど……流石はエースオブエース……と言うわけか。フフ、この技の速度を捉えるなど普通出来ないことなんだがな? 面白い! だがお前に勝ち目などありはしない。何故なら私の技ペン技は本来、暗殺目的に作られた技だ。その証拠に気がつかないのか?お前は既に射抜かれている事に」

 

「一体何を言って……っ!?うっ、ぐっ……あ゛あ゛あ゛!?そ、そんな……いつの間に…………」

 

「ははは! お前がシールドで攻撃を逸らした時だ、まさか急所を狙った攻撃をよもや避けられるとは思っていなかったがな? 」

 

言われてから気づいた、私の右肩には丁度ボールペンサイズの穴が空いている。血は出ているが動かない訳じゃない。でもどういう訳か痛みが強い。穴が空いているのだから痛いのは当たり前なのだがそれでもこの痛みは普通じゃなかった。まるで傷口に焼けた石を押し付けられているような痛み。しかも少しもやわらぐことがない。

 

「はぁ……はぁ……ぐっ……いっ……たい…………」

 

「気に入ったか?それはペン技の特性の一つだ、緑の魔力を纏った我がペン技の傷はその痛みを通常の5倍に引き上げる。これでまともに動けまい。さぁ〜終わりだエースオブエース、フンっ!!」

 

「っ!?ぐがっ!?……あがぁぁぁぁああああああああ!?」

 

右の二の腕、そして左足……それぞれに一本ずつさっきの緑色に輝くボールペンを撃ち込まれ私を想像を超える痛みが襲った。腕と足が千切られたと思うぐらいの激痛にその後の腕と足の感覚がもうない。私はその場に立っていられなくなり崩れ落ちた。

 

「あ゛あ゛……っう……」

 

「いい様だ」

「うっ……や、やめ……うわぁぁぁああああああああああ!?」

 

倒れた私に近づきこいつは射抜いた私の左足を思いっきり踏みつけグリグリと押し付ける。私は戦意を喪失する程の痛みに悶え、動く方の手で頭を抱える。こんな状態では勝つどころかまともに戦う事さえ出来ない。こいつは遊んでいる、私がもう抵抗出来ないのをいい事に。しかし悔しいが私にはもう抗う術がない。ただこいつに苦痛の表情を見せるだけ。

 

「あ゛……あぁ…………」

 

「フフ、さて……そろそろトドメをさしてやろうエースオブエース 」

 

意識が朦朧としてきた私に向けボールペンを構えるワークエスケーパー。このままでは殺される。でも無理だ、指一本動かせない。諦めたくない……ここで負けたくない、そんな私の悔しさは涙となって流れ始める。ここで何も果たせないまま、ヴィヴィオを救う事も出来ずに死んでいいのか。朦朧とする意識の中で私はそれを考える。

 

「まだ……負けて……ない」

 

「ん?フフフ、あっはははは!!何を言うかと思えばくだらん意地だ。根性は認めよう、だがお前は何も出来ない。残念だ、命乞いの一つでもエースオブエースの口から聞きたかったのだがな?お前も陸飛と同じだ……決して諦めない。それは私には出来ない事だった……羨ましいよ。フ、さようならだ……エースオブエース! 」

 

「リッ君……ごめんね」

 

 

 

 

〜フェイトサイド〜

 

私はなのは達と別行動をし、スカリエッティのアジトへと潜入した。しかし異様な程警備が手薄だ、すんなりとスカリエッティの場所へと辿り着く。けどこれは罠だった。私は簡単に捕まりスカリエッティのデバイスにより捕獲され、バルディッシュの刀身であるザンバーも砕かれた。こんな所でもたついている時間はない、一刻も早くなのは達の援護に向かいたい。しかし物事はそう上手くいかない、私は敵であるスカリエッティの言葉に少しずつ惑わされ心を揺さぶられていく。私は弱い、こうも簡単に私の心は揺れる。

 

「「立って下さい! 」」

 

「エリ……オ? キャロ? 」

 

心が折れ始めた私に二人の声が聞こえた。よく見るとモニターからだ。自分達の思いを二人の思いを言葉にし私に伝えてくれる。嬉しかった、これ以上ないくらい頼もしかった。

 

「フェイトさん、立って下さい! それをきっと陸飛さんも望んでます! 」

 

「そうです!僕達の力で陸飛さんの分まで! 」

 

私は何をやっているんだ、そう思った。私は弱い。けど私は一人じゃない。エリオがいる、キャロがいる、なのは達がいる。だから私は頑張れる、強くなれるんだ。私はバルディッシュに指示を出し、フルドライブを起動させスカリエッティの作った赤い糸の檻を切り裂く。

 

「使ってしまっていいのかな? まだこの後の事を考えると……フフ、いささか飛ばしすぎだと思うのだが? 」

 

「私はもう迷わない。ゆりかごは他の仲間達に任せる。私は私のやるべき事を……やる」

「はっはー! 正解だコノヤロー!俺が出るまでもなさそうだが、せっかくだ暴れさせろ 」

 

突然私の言葉に被せ、少し乱暴な言葉が私の後ろから聞こえてきた。そしてわざとやっているんじゃないかというくらい足音がはっきりこちらに近づいてくるのがわかる。スカリエッティもそこにいる戦闘機人二人もそれに驚いている。どうやらスカリエッティの仲間ではなさそうだ。だとすれば管理局の増援かも知れない。しかし、今こっちに手を回せる人材はいない筈だ。だから敵かも味方かも分からない相手に私は警戒した。

 

「誰かね君は? 管理局かな? 」

 

「管理局ぅ? ぷっ、あっはははは!!! やめろよ、そんなくだらない仕事とうの昔に止めたわ! ただよぉ? そんな俺でも友の頼みとあっちゃ〜出てこないわけにはいかないのよ。俺の仲間を好き勝手やってくれた礼だ、覚悟しろよ? このサイコ学者! 」

 

管理局員ではない……でも辞めたという事は元管理局という事になる。という事は誰かが呼んでくれた助っ人?そういう事なら味方の可能性が高い。この状況ならありがたが。この赤い髪、そしてなんだかカフェのマスターをイメージさせる様な服装……この場には相応しくない。完全に浮いている。

 

「ちょっといいかな? 時間がないから率直に聞くよ? 貴方は敵?味方?」

 

「くだらない質問だな? 執務官殿? まぁ〜今回に限っては味方かもしれないぜ? 次は分からねぇ〜けどなぁ?」

 

それはどっちなのだろうか……ダメだ信用できない。時間がないと言っているのに。ならここは「なぁ〜ハラオウン執務官? お前はそこで見てろ」

 

「はあ!? ちょっと何言って!? て言うかなんで名前知って」

 

分からない、この人が分からない。まるで初めてあった時の陸飛みたいだ。しかしそう思った時、目の前のこの人と陸飛が物凄く似ている気がした。雰囲気が同じというか……なんと言えばいいのだろう。

 

「何だね、君が相手をすると言うのか?それは無謀と言うものだよ」

 

「今日はこの名を名乗る事を許可されて来ている。教えてやるよ、お前らが敵に回した相手が誰であるのかをな?元時空管理局、特殊鎮圧部隊『筆箱』、消殺の消しゴム……いざ、参る! 」

 

その瞬間味方かもしれない男はスカリエッティに向い走り出す。何の武器も……デバイスも持たずただ生身で突っ込んでいった。自殺行為だ。それにそんな素直にスカリエッティに攻撃が通るとは思えない。何故ならスカリエッティの近くには戦闘機人が二人もいるのだから。

 

「セッテ、いくぞ! あんな隙だらけの男さっさと片付ける」

 

やはり二人の戦闘機人が彼の邪魔をする。更にはスカリエッティの指が少し動いた。私に仕向けた捕縛用の糸を出すつもりらしい。私は急いで動こうとしたが間に合わず彼は簡単に捕縛された。そして二人の戦闘機人により攻撃が叩き込まれる。しかしその直前信じられない事が起こった。戦闘機人二人の武器や魔力が消失した。しかもスカリエッティの赤い糸も消えている。

 

「一体……何が…………」

 

今の状況をしっかり見ていた私は理解できなかった。私は彼が何かするのを見ていない。動いた様には見えなかった。なのに今敵は武装を解除され、その顔は驚きに満ちている。

 

「何を……した?」

 

「はっはー!言ったはずだぜ?俺は消殺の消しゴム、この世で俺に消せない物はない。それが例え人間であろうともな?いくぜ?スキル……イレイサー」

 

「な!? 」

「《魔力剥がし》!!! 」

 

彼はスカリエッティの懐に素早く入り込むと懐から消しゴムを一つ取り出した。そんな物で何を!? と思ったがボールペンを武器に使う陸飛がいる手前軽視は出来なかった。そしてそれは予想通りの事になる。彼は右手に持った消しゴムでスカリエッティの身体に擦るようにそれを滑らせそれを目にも止まらぬ速さで何度も同じように打ち出し始めた。やられているスカリエッティは別にダメージを受けていないのか微動だにしていない。しかしあれだけ激しくスカリエッティの身体を消しゴムで擦っているのにも関わらず服が揺れているだけでスカリエッティ自身には一切衝撃を与えていない。私はその技術に疑問を感じながらも驚いた。

 

「はぁぁぁぁあああああああああああ!!! ふぅ〜……終わりだ」

 

「クックック……あっははははは!!! 何が終わりなんだ? 私は何のダメージも受けてないぞ? 凄かったのはその手捌きならぬ消しゴム捌きだけか? 滑稽だよ……っ!? な、なんだ……身体が…………」

 

あのラッシュの嵐が収まったと思いきやスカリエッティがバランスを崩しその場に倒れ込んだ。何が起きたのかよく分からなかった。スカリエッティにダメージなど与えられていない。なら何故スカリエッティは倒れたのか。

 

「お前の下に散らばっているのは何だと思う?そいつはただの消しゴムのカスなんかじゃ〜ねぇ〜ぜ? 俺がお前から剥がした魔力のカスだ。言っただろ? 《魔力剥がし》ってな? 」

 

彼はそう説明するがまるで意味が分からない。確かに彼が攻撃しているラッシュの中、スカリエッティの足元には夥しい数の消しゴムのカスが落ちていた。その証拠に彼が持っている消しゴムはすり減ってもうなくなりそうになっている。唯一分かった事と言えば魔力がほぼ空になりスカリエッティが倒れたのだという事だけ。そして突然現れてその場を荒らした赤髪の男はスカリエッティに背を向けると私の方へと歩いて来る。戦闘機人二人は今まで行われた光景に唖然とし固まっていたがすぐにスカリエッティに駆け寄った。

 

「後任せるわ、満足満足」

「え!?突然来て突然丸投げ!?あ、待ってよ!?ええ……行っちゃった…………」

 

彼が誰なのか、一体誰のお願いで来たのか結局分からなかった。でも何故か彼から陸飛と同じ雰囲気を感じた。まさかとは思ったが今はまだ戦える戦闘機人と倒れているスカリエッティを逮捕する事に集中し、私は戦闘を続行した。

 

 

 




次回もよろしくお願いします。

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