魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

すいません、大変遅くなりました。

ではよろしくお願いします。


第34話《刻まれた愛の形》

 

〜スバルサイド〜

 

「ギン姉もう止めてよ!?こんな事しても陸飛さん喜ばないよ!」

 

「……陸……飛さん?……誰……それ……うっ……何……頭が…………」

 

敵との戦闘が始まり私はギン姉と対峙した。他のみんなもそれぞれの戦いが始まる。どうやらギン姉は陸飛さんの記憶がないようだった。恐らく洗脳された時に消されたか封印されてるかだろうとは思う。しかしここでギン姉に変化が見られた。私が陸飛さんの名前を出した後、ギン姉との何回かの打ち合いがあったがそれをしている間ギン姉は何かを呟きながら私と戦闘をしていた。何を言っているのかは声が小さくて分からない。でもギン姉の顔は時間が経つにつれどんどん泣きそうな顔で歪んでいく。さっきまであんなに無表情だったのにどうしたのだろうと私は思った。もしかしたら洗脳が解け始めている?そう……期待も持ち始める。

 

「……ん……さん……くさん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……陸さん……」

 

「ギン……姉?」

 

最初は小さかったギン姉の呟きは段々大きくなりもう何を言っているのかは明らかだった。それは陸飛さんの名前だ。確実にギン姉は記憶を操作されていた筈なのに陸飛さんの名前を聞いた途端陸飛さんの事は思い出したようだ。けど名前は口で言っているがまだそれが誰なのかは分かってない……勿論私達の事も。それにだからと言ってまだ洗脳が解けた訳でもない、陸飛さんの名前を呟きながら私に攻撃を絶えず仕掛けてきているのがその証拠だ。

 

「ギン姉頑張って、もう少しだよ!頑張って陸飛さんの事思い出して!」

 

「陸さん……は……もういない……あ゛、あ゛あ゛……い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁああああああああ!!!」

 

「ギンっがは!?」

 

突然ギン姉のスピードが桁違いに上がった……私は捉えきれずにギン姉の拳をまともに腹に喰らう。その拳は一撃にも関わらず信じられない程硬くて……重くて……私の意思は一瞬で砕かれた。そして朦朧とする意識の中、ギン姉が私にトドメを刺そうとするのが見える。拳を大きく振りかぶり、私に振り下ろす。

 

「ギン……姉」

 

私は薄れる意識の中心の何処かで諦めて始めていた……ギン姉を救ううことを……しかしそんな時だった、心強い声が聞こえたのは。

 

《右拳を突き出して!右回転で蹴り!》

 

「ぐっ!?」

 

私が意識を失う直前マッハキャリバーの声が聞こえ私は反射的に言われた通り体を動かし、右拳でギン姉の拳にぶつける様に防ぎその後回転しながら右足で回し蹴りを放つ。ギン姉には防がれたが取り敢えず距離はひらいた。そして私は失いかけた意識を取り戻して行く。

 

「マッハ……キャリバー?」

《しっかりしなさい!貴方が救わないで誰が彼女を救うのですか!!もう少しです、私も貴方もまだ動けます!ここで諦める理由はありません、貴方が教えてくれた私の生まれた理由!貴方の憧れる強さ!嘘にしないで下さい!》

 

マッハキャリバーの言う通りだ……私は何を諦めているのだろう。そう思う直す。目の前にはギン姉がいる、涙を流しながら私に拳を構えるギン姉がいる。目の前で私の大事な家族が悲しんでいるのだ。だから絶対に諦めるわけにはいかない。それを私は自分の相棒に気づかせて貰った。

 

「ありがとうマッハキャリバー……それじゃ、行くよ?」

《はい、相棒!》

 

そう言い、私は右手を上げ構える。ギン姉もそれに合わせ中腰になり私の動きに備えるように身構えた。今ギン姉は半分洗脳が解けている筈だ、なら…………

 

「フルドライブ!!!」

 

《フルドライブ!》

 

私はマッハキャリバーにそう告げた、すると私の足に青い羽が出現する。

 

「ギア……エクセリオン!」

 

その瞬間私はギン姉とぶつかりあった。全力での攻撃、それはどちらかが怪我をしてもおかしくない攻撃だ。でもギン姉を救う為にはそうする覚悟も必要……私はそれを相棒に教えて貰った。

 

「うおぉぉぉぉおおおおおおお!!!」

 

互いの攻撃は拮抗しシールドで止まっている。しかし少しずつギン姉の回転しながら突き進む拳は私のシールドに食い込んで行き私のシールドを砕いた。でも私もそれを交わしながらギン姉のシールドに指を食い込ませる。

 

「一撃ぃぃ必倒ぉぉぉおおお!!!」

「っ!?」

 

「ディバインバスタぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

私はシールドに突き入れた指を真横に裂くようにして砕きギン姉の前に魔力スフィアを形成する。そしてそこへ真横に動かした右腕を叩き込んだ。ギン姉は私の砲撃に呑まれそのまま吹き飛ぶ。

 

「ギン姉!?」

 

倒れこんだギン姉は動かない。私は急いで駆け寄った、そしてギン姉は私の顔を見るなり「スバル……」と呟く。私は洗脳が解けギン姉が戻って来た、そう思った……しかしそれは間違いだった。

 

「がっ!?ギン……姉…………」

 

「対象捕獲……これより行動不能にし回収します」

 

私のディバインバスターをまともに受けて何故ここまで動けるのか……ギン姉は油断していた私の首を掴むと上へ持ち上げる。大技を放ったばかりで私はギン姉に抵抗できなかった。思いっきり首を締め上げられ息が出来ず頭がぼーっとしてきた私は掴んでいたギン姉の腕から力が抜け始めダラリと両手が垂れ下がる。

 

「対象の行動不能を確認これより……っが!?」

 

突然私はギン姉から解放され誰かに抱えられる。何故解放されたか……それは今私を抱えている人がギン姉を蹴り飛ばしたからだ。そして蹴り飛ばされたギン姉は大きなダメージを受けたようでゆっくりとフラフラしながら立ち上がる。私は助けてくれた人が誰だか確認しようとしたがその人はベタにも古臭いフードを着ていて顔が確認できない。

 

「あ、あの……助けてくれてありがとうございます。それで……貴方は?」

 

「…………」

 

私がそう言ったがその人は何も言わない。私をゆっくりおろすと何を思ったのかギン姉の方へ歩いて行った。しかし私は急いでそれを止める。今のギン姉に近づくのは自殺行為だ。でもその人は止まらない。私の制止を振り切りギン姉の前に立つ。

 

「邪魔者は……排除します!」

「ぐっ!?」

 

言わんこっちゃない……そう思った。その人はギン姉の拳をまともに腹に受けたのだ。だが、その人はまだ何事もないようにその場に立っている。私が一撃で意識を持っていかれた一撃を受けて耐えるなんて大したものだと私は驚く。

 

「そんなものか?」

 

「?」

「お前の拳はそんなものかと聞いてるんだ。ギンガ……お前が俺に向けていた拳はそんなに弱くなかったぞ?全然伝わらないよ、お前のいつも言ってる愛が」

 

やっと喋り始めたと思ったら訳の分からない事をその人は言い出した。ギン姉も何故か驚いた顔をしてその人のお腹に拳叩き込んだまま固まっている。一体この人は何者なのだろうか……でも声は何処かで聞いた事がある気がする。

 

「お前は……誰だ。何故……この感覚は……なんだ……知ってる。この感覚……この撃ち込みやすい頑丈な手応え。分からない……痛い……頭が割れそう……痛い……頭が、胸が……これはなんだ、なんだぁぁぁぁああああ!?」

 

「グフっ!?」

 

ギン姉が左手で頭を抱えながら右手で再度目の前の人に拳を叩き込む。ギン姉はもう錯乱状態で叫びながらその後もう一発拳を放った。しかしその人はそれを避けるわけでも防ぐわけでもなくただ受ける。その状況は第三者の私から見れば異様な光景だ。

 

「もっとだ……」

「え……」

 

「もっとだ!もっと俺を殴れ!!そんな拳じゃ俺は振り向かないぞギンガ!お前の拳には愛がある!思い出せ!俺を殴って思い出せ!さぁ殴れ、殴れギンガぁぁぁぁああああああああっごふ!?」

 

その人の叫びを引き金にギン姉が拳を何度も腹に叩き込み始める。とう目でみて大丈夫なのかと言うくらい……ボコボコに殴られている。しかしその人は倒れない。なんど撃ち込まれても何処を殴られようが倒れない。もはやその根性には尊敬の念すら覚える。でも私はこの時この人に対してある疑念を持った。この人……Mなんじゃないだろうか……と。

 

「がっ!?ごふっ!?あがっ!?ぐっ!?おごっ!?」

 

何度も何度も殴られ、とうとうその人は血まで吐き出し始めた。でもここでギン姉にさらに変化が見られた。顔は涙でぐちゃぐちゃに崩れ、拳の威力は少しずつ増してきている。あれ以上どうしたら威力が上がるのか……ギン姉には驚かされる。しかしそうなると殴られているこの人が心配だ。血を吐き出し始めたということは少なからず内臓はダメージを受けている筈だ。いくらこの人が頑丈だろうがいくら鍛えて様が同じ所を何度も殴られていればいつかは限界が来る。ましてや戦闘機人である私達の拳だ。しかも加減なんてされていない。下手をすれば死んでしまう可能性だってある。

 

「うっ……ひぐっ……そんな……こんな事って……うっ、ううっ…………」

 

「ぐふっ!?ごふっ!?……ギ、ギンガ?おおっと!?何だよもう戻ったのか?もう少しかかると思ったのにな?まぁ良かったか……フフ、お帰りギンガ」

 

驚いた……ギン姉が突然拳のラッシュをやめた。その人はただ殴られていただけなのにギン姉の洗脳を完全に解いた様だった。そして何故かギン姉はその人に抱きついて泣きながら何かを言っている。何を言ってるのかはここからでは聞こえない。でも私は安心した。ギン姉が帰って来たからだ。

 

「良かった……ギン姉…………」

 

 

 

 

〜ギンガサイド〜

 

「よ゛がった……うっ……無事で……ひぐっ……ごめ゛んな゛ざい……こんなに傷つけ゛で……ごめ゛ん゛な゛ざい゛……あ」

 

「何を今更、お前に殴られるのはいつもの事だからな?何とも思ってないよ」

 

私は抱きしめられた。子供のように泣きじゃくりながら。でもそうされると私は一気に落ち着き始めた。大好きな人の温もりと匂い。もう戻らないと思っていた人が今目の前に帰ってきた。その喜びで私の目からは涙が止まらない、泣き続ける。そんな私をこの人はしっかりと抱きしめてくれる、力を少し強くし私が落ち着くように気遣ってくれる。そして久しぶりに感じるこの人の優しさは私の闇に堕ちていた心に光を灯す。

 

「助けてくれて……ありがとうございます。聞こえましたよ?暗闇の中……確かに聞こえました、貴方の声が。凄く暖かい……」

 

「そっか……なら戻ってきた甲斐があったよ。」

 

私が洗脳されスバルと戦っている時、スバルの声が聞こえないわけじゃなかった。確かに届いてはいた、スバルが言った陸さんの名前を引き金にして……でも私は完全に戻る事は出来なかった。それどころか時間が経つにつれスバルの声も聞こなくなり、もう少しでこの手で取り返しのつかない事をする所だった。けどそんな時聞こえた、この人の力強い……殴れという声が。そして殴る度にこの人が誰なのかやこの人の思い出が……この人と過ごした日々が全て蘇った。暗い闇の底で上から光を灯されるように私は救われた。闇から引っ張りあげて貰った。この人に…………

 

「やっぱり私には貴方しかいません。貴方のいない世の中なんて考えられない。だから……もう何処にも行かないでください。ずっと私と一緒にいて貴方を殴らせて下さい!」

 

「プロポーズされたのかと思ったら結局殴りたいだけじゃねぇか!?お前には殴らない選択肢はないのか!?」

 

「そんな選択肢はないです、貴方を殴る日々が私の愛の形です」

 

そう言うと何故か残念な子を見るような顔で私を見ている。さらに片手で頭まで抱え始める始末だ、私は何かおかしな事を言っているのだろうか?

 

「はぁ〜、出来れば殴らないで欲しんだけどなぁ?普通に接してくれよ普通に」

 

「何言ってるんですか?さっき言ったじゃないですか、もっと殴れって。それって殴られたいって事ですよね?」

「ちげぇぇよ!?それじゃ俺はただのMだろうが!?」

 

「あの〜?そろそろ貴方が誰か教えて欲しんですけど?」

 

私達が話しているといつの間にかスバルがすぐ近くまで来ておりそんな事を聞いてくる。と言うかまだ誰か分かってないようだ。確かにフードは被っているが声で分かると思うのだがスバルは分からない様だった。

 

「ああ、悪い悪い。ほらこれ取れば分かるだろ?」

「え……え?ええ!?」

 

フードを取ったことで今まで分からなかった顔が露わになった。それを見たスバルは驚き口をパクパクさせて固まっている。

 

「それじゃ〜ちょっくら行って来るわ。ケジメつけないといけないからさ」

 

そう言い何処かへ行こうとこの人は歩き始める。

 

「あ、待って!」

「ん?」

 

しかし私はそれを止める。私が待つように言うとこの人は簡単に止まってくれた。これから行くのは止めない。でもこの人には言うことがある。まだ言ってないことがある。

 

「お帰りなさい陸さん!」

 

「……ああ、ただいまギンガ」

 




次回もよろしくお願いします。

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