魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
すいません、遅くなりやした。
ではよろしくお願いします。
〜ヴィヴィオサイド〜
「ヴィヴィオを帰して!?ママ達の所に返してよ!?」
「やっと起きたと思ったら本当にうるさいガキだ!いい加減黙れ!」
ヴィヴィオが目を覚ましたら近くにおじさんがいた。おじさんは腕が壊れているようで自分で何やらカチャカチャ調整している。だからヴィヴィオはおじさんの前に行きヴィヴィオを帰してくれるようお願いする。しかしおじさんはうるさいと言うばかりで聞いてくれない。
「全く……陸飛もこんなうるさいガキの為に命を張ったのか?フン、くだらん」
「お兄さんがどうしたの?ねぇ、お兄さんに何したの!?」
おじさんがお兄さんの事を呟いた、途中で気絶したヴィヴィオはお兄さんがどうなったのか知らない。ヴィヴィオはおじさんの足を掴み必死にお兄さんの事を訪ねる。でもおじさんが教えてくれた事実はヴィヴィオの心を壊すのに十分な事だった。
「陸飛に何をしたかだと?あいつなら俺が殺してやった。もうこの世にいない」
「お兄さんが……いない?お兄さんが死んじゃ……った?……ヴィヴィオ……もうお兄さんと会えないの?」
ヴィヴィオはおじさんが言った事を信じられずにただその場に立ち尽くしていた。おじさんが言った事は嘘だ、そんな事信じられない……ヴィヴィオがそう思っているとおじさんがヴィヴィオの前にモニターを開く。するとそこに映っていたのはヴィヴィオを守って血だらけになりもう立つのもやっとな様子のお兄さんだった。そしておじさんに胸を貫かれ後ろの海に沈むお兄さんの最後の映像……それを見せられヴィヴィオの心は一瞬で黒く染まった。本当にもうお兄さんと会えない、ヴィヴィオが本当は大好きだったお兄さんはもうこの世にいない。
「嫌だ……いや……だよ……うっ……ひぐっ……うっ、うっ……うわぁぁぁぁぁああああああああああん!?お兄さぁぁぁぁあああああん!!!」
「たくっ、本当にうるさいガキだ!?おい、さっさと始めろ!!!」
◇
〜なのはサイド〜
「そんな……ヴィヴィオ…………」
六課の本部をアースラに移して数日、それは突然だった。リッ君が殺されたあの時のように……私達の前にモニターが開かれ、そこに映っていたのは大きな椅子に座らされ泣き叫んでいるヴィヴィオの姿だった。ヴィヴィオは泣きながら私やフェイトちゃんそして……リッ君に助けを求めている。胸が張り裂けそうだった。ヴィヴィオには守ってあげるなんて言って……リッ君には別れる前にリッ君に言える最後の言葉だったのに……酷い事を言ってしまった。私は愚かだ、ここ数日で色々な事を間違えている。最近何も上手くいかない。
「やだぁぁぁ!?ママぁぁぁああ!?お兄さぁぁぁぁん!?」
ヴィヴィオの悲鳴がしっかりと私の耳へ聞き漏らさずに入ってくる。落ち込んでいる場合じゃない。ヴィヴィオを助けないと……じゃないと……ヴィヴィオとの約束を破ってしまう。そして命懸けでヴィヴィオを守ろうとしてくれたリッ君に顔向けできない。だから……必ずヴィヴィオを助け出す!
「待っててヴィヴィオ、絶対にヴィヴィオの所に行くから!」
◇
〜ティアナサイド〜
「スバル、あんた大丈夫?そんなに落ち込んで……あんたらしくもない、シャキッとしなさい!ギンガさんが敵の手に堕ちたのは確かに残念だけど……それでもあんたがそんなんじゃギンガさん助けられないわよ!!」
柄にもなくスバルが自分の部屋で落ち込んでいた、もうすぐ出動なのに……スバルがこんなだと私達も調子が出ない。でもまぁ……スバルが落ち込む気持ちも分からんでもない。自分の家族が捕まって敵になったんのだ、落ち込まないわけがない。
「違うの、そうじゃなくてねティア……その……陸飛さんの隣にあったギン姉の部屋を覗いたんだ。そしたらさ……陸飛さんの写真が部屋中に貼ってあってね?それ見てたら……なんかギン姉が怖くなってきちゃって…………」
「え?」
私はそれを聞いて何を言っているんだろうと思った。陸飛さんの写真が部屋中に貼ってある?それではまるでストーカーか何かだ。ギンガさんが陸飛さんの事を好きなんて話は一度も聞いたことがない。私が知っているのは陸飛さんがギンガさんに嫌われているという事だ。でもそれは他のみんなも同じだろう。ならそれはスバルの勘違いだ。これもおかしな話だけどストーカーよりは良いかもしれないし。
「スバル?こう言ったら何だけど……それは多分ギンガさんが陸飛さんを嫌いだからターゲットにしていただけ「それだけじゃないだよティア!?」……な、何がよ…………」
「ギン姉のベッドは陸飛さんの写真が入ったシーツだし、陸飛さんの抱き枕まであるんだよ?陸飛さんが嫌いならそんな事するわけない!それにギン姉の部屋に映像データを保存してある端末がいっぱいあった!?しかもそれ全部陸飛さんが映ってる奴!それも休みの日とか仕事中とかトイレとか気持ち悪いくらい細かい所まで全部!これ訴えたら絶対捕まると思う様な映像まであったんだよ?そんな……こんなに異常なくらい陸飛さんが好きなギン姉が陸飛さんが亡くなったのを知ったら……ギン姉……どうなっちゃうか…………」
ダメだ……思考が追いつかない。つまりは……ギンガさんは……陸飛さんが好きだったと言う事。そしてスバルはギンガさんを助けた後の事を心配している。相変わらずスバルは優しい、でも気にする所はそこじゃないと思う……それに今はそんな事を言ってる状況ではない。
「スバル、そんな事は助けてから考えなさい!あんたがそんなんじゃギンガさんにそれを伝える以前にギンガさん助けられないわよ?だから元気だしなさい!」
「ティア……うん!そうだね、余計な事考えるのやめた!今はギン姉を助ける事だけを考えるよ!ティア、ありがとう!」
そう言われ私は少し照れくさかった。だけど私も気を引き締めて行かないと……あいつと約束したんだから!
◇
〜キャロサイド〜
「陸飛さん…………」
「あ、いた!キャロ〜!どうしたの?もうすぐ出動だよ?」
私は出動前に全壊せずに残っていた陸飛さんの部屋で陸飛さんとの思い出に浸っていた。するとエリオ君が私を探していたようで、開いている陸飛さんの部屋に入ってきた。もうすぐ出動なのは分かっている。けどその前に陸飛さんとの思い出を思い出したかった、心に焼き付けておきたかった……これからの戦いの御守りに。
「大丈夫だよエリオ君、すぐ行くから…………」
この何年間で色々な事があった……行き場の無くなった私をフェイトさんが救ってくれて。初めての部隊で陸飛さんと出会って……最初はイライラして、この人は何でこんなにやる気がないんだろう?って思ったのも今じゃいい思い出で……でも陸飛さんは実はすごく優しくて本当は誰よりもやる気があって。それで急にいなくなったと思ったら……六課に陸飛さんがいて……凄く嬉しくて。陸飛さんと毎日を過ごしているうちに毎日が凄く楽しくて幸せで、いつまでもこんな日常が続けばいいのに……そう思ってた…………
「そう……ならいいけど。あれ、キャロ?それ……陸飛さんの?」
「うん……陸飛さんが書類整理してる時によく使ってたボールペン。すごく使い込んであってこれだけボロボロなんだよ?きっとこれ陸飛さんのお気に入りだったんだと……お゛も゛う゛」
なのに…………
「キャ……ロ?」
ヴィヴィオを助けるまで……ギンガさんを助けるまで……泣かないと決めた筈だった。でも私の目からは涙が溢れ出る、もうすぐ出動なのに……我慢できなかった。近くでフリードとエリオ君が心配そうに私を見ている。陸飛さんの部屋に来て、陸飛さんの机にあったこのボロボロのボールペンを見ていたら……色々思い出してしまった。初めて陸飛さんにあったあの日から陸飛さんが殺された日までの陸飛さんとの思い出……決して戻る事のない日常を…………
「り゛ぐどざん……り゛ぐ……うっ、うっ……り゛ぐどざん……り゛ぐどざん…………」
陸飛さんの名前を泣きながら呼び続ける……もう会えない大好きな人の名前を…………。エリオ君が私の背中に手を添えて慰めてくれる、でも私は少しの間涙を止める事が出来なかった。陸飛さんが亡くなってから我慢していた反動が、ここに来て出てしまったからだ。
「ありがとうエリオ君、もう大丈夫。行こ?ヴィヴィオを助けに!」
「うん!みんなで力を合わせればきっと大丈夫、行こう!」
◇
〜リンサイド〜
「それじゃリンディさん行って来るですですよ?」
「ええ、気をつけてね?あ!そうだわ、リンちゃん?貴方の枷を外すわ、私が貴方にしてあげられる事はこれだけだもの」
「そんな事ないですよ、これだけでも十分ですです!」
六課が出動すると連絡が入り、僕も現場に出る為にリンディさんの所を訪れた。そこでリンディさんが僕についている重力リミッターを外してくれると言ってくれた。これで僕は筆箱時代と同等の力が振るえる。
「これでいいわ、リンちゃんの力はこれで100%よ?」
「ありがとうございますですですよ!それじゃ……せいっ!!!」
重力リミッターを解除された僕は30㎝の定規を出し、リンディさんの前で素振りをする様にリンディさんの部屋に置いてあるコップを狙って定規を振り下ろす。その瞬間、僕とコップとの距離が離れている状態でコップが真っ二つに切り裂かれた。リンディさんはそれを見て軽く拍手をしている。
「流石ね?これで私も安心だわ、任せたわよ?リンちゃん、いえ……こう呼んだ方が今はいいのかしら、特殊鎮圧部隊『筆箱』部隊長……瞬殺の物差し!」
「や、やめて下さいですですよ……それは昔の通り名ですです。それにそれ……語呂はいいですですけど、凄くダサいですです」
「あら?そうかしら、私は好きよ?」
そう言ってくれるリンディさんに僕は照れくさくなって頬を少し掻く。そしてそのまますぐリンディさんに背を向け部屋のドアの前に立ち一言リンディさんに告げて部屋を出た。
「じゃ……改めて行って来るですですよ!」
◇
〜はやてサイド〜
「はやて、大丈夫?」
「ん?うん、大丈夫やよ?ちょっと出動前に反省しとこ思ってな」
私は出動前、鈴木君が仕事をしていた六課の事務所へと足を運んだ。しかしそこはもう瓦礫の山でまともに事務所の原型を留めていない。他の何人かも出動の時間まで六課を訪れている。勿論全員私が許可を出した。数十分の僅かな時間だがみんなで気持ちを落ち着けてからのほうがいい。その方が……これからの作戦に全力で臨める。私はここに来て反省する事が幾つかあった、けど一番反省する事は出してはいけない犠牲を出した事……武装局員でもないただの事務局員を死なせてしまった。何も出来ずに……ただ鈴木君が殺されるのを見ているだけしかできんかった。
「フェイトちゃん……フェイトちゃんは大丈夫なんか?鈴木君が死んで…………」
「大丈夫……と言えば嘘になるかな?少しでも気になっていた人だからそりゃ……死んだら悲しいよ。でも……今は悲しんでいられない、命懸けでヴィヴィオやシャマルさん達を守ってくれた陸飛の為に……捕まったヴィヴィオとギンガを助ける為にも!」
「ふふ♪強いな〜フェイトちゃんは……でもそうやね、鈴木君の為にもヴィヴィオ達は助けなあかん。さて、それじゃ〜行こうか?この戦いに決着をつけに!」
これがスカリエッティとの最後の戦いにするんや。必ず逮捕する。そして、ヴィヴィオとギンガを救うんや。それでこの事件が片付いたら時間がかかっても海に沈んだ鈴木君の事探してあげな……
◇
〜すずかサイド〜
「行くの?」
「ああ、ごめん……迷惑かけた」
「別に……そんな事気にしてないけど。怪我まだ治ってないんだよ?」
昨日まで意識を失っていた彼は起きた途端にミッドに戻ると言う。私は止めたがそんな事で言う事を聞いてくれる彼ではない。彼を見つけたのは二日前、どうやって来たのかは分からない。でも私の家の前で血だらけで倒れていた。こんな状態の彼を見たのはあの時……私を助けてくれた時以来だ。どうせまた誰かを守った代償だろうとは思う。
「身体が動ければいい。それに時間がない、ヴィヴィオを助けないと……多分泣いてるだろうからさ。」
彼が言うヴィヴィオと言うのが誰かは私には分からない。でもその言い方から子供なのは大体想像がつく。誰かを助けたいと彼が思えばそれを私が止める事は出来ない。彼の信念は決して曲がらない、折れない。
「いくら言っても君が止まらないのは分かってるから止めないよ。でも約束して欲しいな、その子も……後みんな連れてまた遊びに帰って来るって。それだけ私と約束して?じゃないとここで再起不能にするよ?」
そう言って私は彼に小指を差し出す。彼は少しため息をつき笑った。そして私に小指を重ねる。子供の様な指切りだが彼は真剣にやってくれた。
「それじゃ……行って来るよすずか、ありがとうな。」
「うん!気をつけてね、行ってらっしゃいりっくん!」
次回もよろしくお願いします。