魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜。

ではよろしくお願いします。



第30話《抵抗》

〜ヴィヴィオサイド〜

 

「ほら、飴。……ん?ヴィヴィオどうした? いらないのか?」

 

「いらない…………」

 

ヴィヴィオ達がいる六課が襲われる少し前、ヴィヴィオはいつも通りお兄さんの所に来ていた。けどそれは飴が欲しいわけでもお兄さんに会いに来ただけでもない。

 

「事務のお兄さん……どこも行かない?」

 

嫌な夢を見た、お兄さんに会えなくなる。六課のみんなになのはママ達に会えなくなる、そんな嫌な夢を見た。ヴィヴィオは不安になってお兄さんの所に来た。そんなだからお兄さんの顔が見れてヴィヴィオは安心した。

 

「本当にどうしたんだ?……フフ、なぁ〜ヴィヴィオ?ほら、この間ヴィヴィオがくれたお守り。俺大事に持ってるんだぞ?だから俺はどこにも行かない。これ貰って凄く嬉しかった、それにいつも俺の所に遊びに来てくれるヴィヴィオが大好きだから……俺はどこにも行かない。いつも通りヴィヴィオに飴あげるからさ。そんな顔するな。」

 

そう言ってお兄さんはヴィヴィオの頭を撫でる。凄く嬉しかった、だけどヴィヴィオは素直になれなくて……お兄さんの前では自分を偽ってしまう。

 

「ヴィ、ヴィヴィオ嫌いだもん!?ヴィヴィオはお兄さん嫌いだもん!」

 

頭を撫でられながらそう言ってしまう。けどお兄さんはやめないで撫でてくれる、笑いながら。そんなお兄さんだからヴィヴィオは飴が欲しいと言ってお兄さんの所にくる。本当はただ会いに来てるだけなのに。

 

「っ!?」

 

「え……何?」

 

そんな時だった突然ヴィヴィオ達のいる所が揺れたのは、ヴィヴィオは何が起きているのか理解できなかったけど。お兄さんは物凄く焦った顔をしている。そしてヴィヴィオを抱きかかえるとヴィヴィオをどこかに連れて走り出した。

 

「お兄さんどうしたの?どこ行くの?」

 

「ん?ちょっとお腹減っただけだ。大丈夫だから一緒に食堂行こうな。」

 

お腹が減っただけ、大丈夫……そんな事を言って私に笑いかけるお兄さん。けどお兄さんはかなり焦った様子で走っている。それを見ているとヴィヴィオは不安になった。だって……お兄さんが焦ることなんて滅多にないから。

 

「あ、鈴木三等陸士!?ご無事で、良かったです。それにヴィヴィオも。」

 

「すいませんヴィヴィオをお願いします。」

 

しばらく走って着いた場所にはシャーリーさんや食堂のおばさん達が集まっていた。ヴィヴィオはみんながいて安心したけど、お兄さんがどこかに行くという。それを聞いてヴィヴィオは怖くなった、夢を思い出したからだ。お兄さんがどこかに行ってしまう、もう会えなくなってしまう。

 

「お兄さん!?いや、ヴィヴィオと一緒にいて!どこかに行ったら嫌だ!?」

 

「ヴィヴィオ……大丈夫だ。俺は戻ってくるから、他のみんなをここに集めてくるだけだ。だから必ずもどってくる……約束だ!」

 

そう言いお兄さんはヴィヴィオに小指を差し出す。ヴィヴィオは嫌だった、けど……お兄さんを困らせるのも嫌だった。だからヴィヴィオはお兄さんの小指に自分の小指を合わせる。つまり指切り。

 

「約束……だよ?」

 

「ああ、約束だ!」

 

 

 

 

〜シャマルサイド〜

 

「IS……ツインブレイズ!」

 

私とザフィーラは今六課の外でガジェットと敵2人と交戦中でかなり苦戦していた。ザフィーラは二本の刀のような武器を持つ敵に攻撃を受け堕とされてしまい、無事ではあるけどかなり消耗している。勿論私も限界近い。

 

「くっ……」

 

私はもう敵を睨む事しかできない。そして敵のもう一人が私達にトドメを刺そうと私達に向かって手をかざす。

 

「さよなら。」

 

敵がそう言い緑色の光線が放たれやられたと思ったその時、目を閉じた私は身体がふわりと浮いたような不思議な感覚に襲われた。

 

「「な!?」」

 

敵が驚いている声が耳から伝わってくる。私は思わず閉じてしまった目を開け状況を確認する。すると私とザフィーラは抱えられていた。それにより敵の攻撃を受けずに済んだのだ。そして私達を助けてくれたのは私のよく知る人物。

 

「陸飛君…………」

 

「酷い有様ですね?貴方達が苦戦するとは……珍しい。まぁ……無事で良かったですよ。」

 

正直助かったとは思っている……けど陸飛君を戦わせるのは危険だ。極式はもう撃てない上にもう万全な身体ではない。だけど私もザフィーラも戦える状態じゃない、援護も……できない。

 

「お前……僕の邪魔をするな。ISレイストっが!?」

 

敵が攻撃を放とうとした瞬間、目の前の陸飛君が消えたと同時に敵の悲鳴が聞こえ、その方向を見る。すると陸飛君がそいつを蹴り飛ばしていた。避ける避けないの問題ではない、何が起きてるかさえも私では捉えなれなかった。

 

「オットー!?」

 

そして陸飛君は蹴り飛ばした敵の所へと近づきそいつを見下ろすように立つ。蹴り飛ばされた敵は相当なダメージを受けたのか立ち上がって来ない。

 

「くっ……お前は……なんだ。」

 

「何って人間だ。はぁ……にしてもやってくれたな?どう言うつもりか知らないがお前達……っ!?」

 

陸飛君が敵と話している最中、陸飛君が何かを見つけたかのように驚いていた。その驚きようは今まで見たことがないぐらいの顔で私もつられてそっちを見る。

 

「フハハ、陸飛……久しぶりだな?8年……いや、9年ぶりか?」

 

「グラン……少尉…………」

 

グラン少尉……それは前にリンディ統括官に聞いていた人物。又の名をワーク・エスケーパー。けどおかしい……ワーク・エスケーパーはもう死んでいるはずだ。私も驚きで開いた口がふさがらない。しかしその時、さらに動揺すべき出来事が起きた。前に逃した召喚師とその召喚虫がヴィヴィオを抱えて六課から出てきたからだ。

 

「な!?ルーちゃん……ヴィヴィオをどうする気だ?」

 

「連れて行く。陸兄は邪魔しないで、そしたら傷つけないで済む。」

 

絶望的な状況だ……敵が少なくても5人。対してこちらは戦えるのが陸飛君ただ一人……このままじゃ……陸飛君が殺される。

 

「おい、嬢ちゃん?悪いが陸飛は私の獲物だ。お前はさっさと行け。それとすまないが陸飛はここで殺す。」

 

「え……どうして……別に殺す必要なんてない!?ちょっと動かなくするだけで、陸兄を殺す必要なんて……やめて!?」

 

何故か敵が言い合いをし始めた、そう言えば召喚師は陸飛君と知り合いだって聞いている。もしかしたらチャンスかもしれない。この隙にヴィヴィオを助けられる、そう思った矢先の事だ、私の目の前にモニターが開かれた。そこには陸飛君が映し出されどうやら音声も入っている。

 

「残念だが無理だ、これから陸飛は管理局員全員が見ている前で嬲り殺しにする。」

 

「そんな…………」

 

 

私もそれを聞いて背筋が凍る気持ちだった。相手は確実に陸飛君を殺しに来ている。しかも私達やヴィヴィオを人質にでも取られたら確実にアウト、陸飛君はきっと黙って殺される道を選ぶ。それだけは何としても……そう思った時、さっきまでいた陸飛君がいなくなっていた。驚いて周りを見渡すと陸飛君は召喚師の召喚虫からヴィヴィオを取り返し相手の召喚虫をぶっ飛ばした後だった。

 

「ガリュー!?……陸兄…………」

 

「ルーちゃん、君が困っている分には俺はいくらでも力を貸す。だがルーちゃんが俺の大切な物を奪うと言うのなら……俺も容赦はしない。全力で叩かせて貰う。」

 

そう言い、陸飛君はヴィヴィオを抱えながらボールペンを向けた。そこにいる敵全員に…………

 

 

 

 

〜チンクサイド〜

 

「陸さん……そんな…………」

 

私はチンクと言う戦闘機人。今タイプゼロと思われる捕獲対象と戦闘をしている。しかしその途中、突然タイプゼロの前にモニターが開きそれを見たタイプゼロが驚愕の表情をしている。恐らくあいつが動き出したにだろう。計画の一つにある男の暗殺が含まれている。

 

「これも貴方達の……陸さんに何をする気?」

 

「陸さん?それはこの男の事か?」

 

私はそう言ってモニターに映っている男を指差す。こいつの状況から察するに間違えなくこの男の事だろう。まぁ……こいつも捕獲する事だし言ってしまっても良いだろう。それで動揺してくれれば捕獲しやすい。そう……私は思った……だが…………

 

「この男は暗殺対象だ、もうすぐ死ぬ。」

 

それは間違いだった。言ってはならない言葉だったようだ。まさか……ここまで変わるものだとは…………

 

「陸さんを……殺す?え……何それ…………」

 

「よし、今が……っ!?」

 

うまく動揺してくれたそう思った、しかし結果私がやったのは……こいつの力を倍増させただけだった。私は急いでその場から離れるように離脱する。何故ならタイプゼロが突然さっきとは比べ物にならないスピードで突っ込んできたからだ。そして私がいた場所は大きなクレーターができ、これをまともに受けていたらと思うと恐ろしくなった。

 

「……おい……もう一度言ってみろ……誰を殺すって?陸さんを……陸さんを殺すって……そう言ったのかぁぁぁぁあああああ!!!」

 

「な!?ぐっ、がぁぁあああああ!?」

 

とてつもない咆哮と共に私が張ったはずのハードシェルをも破壊し私は殴り飛ばされた。だがこんな事あるはずがない。ただの拳が……ある程度の……施設爆破程度の爆発にすら耐えられる強度を誇る筈のハードシェルのバリアを破壊するなど。

 

「何故……ただの拳でこんな事が…………」

 

私はつい口に漏らす、今起こっている事に。それを信じられないが故に……

 

「何故?そんなの決まってる……この拳は陸さんへの愛……私が陸さんをどれだけ愛してるかと言う証。だからそんな私の愛が……その程度のバリア如きで防げる訳がない!だって……私の陸さんへの愛は本物だから!!!」

 

戦闘中だと言うのに突然自分の愛を語り出したタイプゼロ。しかし確かに私は感じた……この男への愛を。だから私は間違っていた……これ程の愛があるならば動揺するどころか、より強い力が得られる事を私は今知った。なら……私だけでは勝てない。

 

「ノーヴェ、ウェンディちょっとこっちを手伝え。もう一機のタイプゼロ、ファーストの方と戦闘中だ。」

 

私は通信モニターを開きノーヴェとウェンディに協力を頼む。今のこいつを私一人で倒すのは無理がある。なら、私一人でその愛が砕けないのなら三人で砕いてくれる……その愛を。

 

 

 

 

〜ヴィヴィオサイド〜

 

「うっ……ん?お兄……さん?」

 

「ん?おお、ヴィヴィオ気がついたか?でも……もうちょい待ってな?今取り込み中なんだ。」

 

ヴィヴィオが目を覚ますとお兄さんが私を抱えて四人の人に取り囲まれていた。みんな怖い顔をしてお兄さんを見ている。どうしてこんな事になっているのかヴィヴィオには分からなかった。けどお兄さんは約束を守ってくれた。戻ってくるって……ヴィヴィオの所に戻って来るって。

 

「陸兄、その子を渡して?お願い。」

 

紫色の綺麗な髪をした子がヴィヴィオを渡すようにお兄さんに言った、けどお兄さんはヴィヴィオを抱える手を強くしその力加減がヴィヴィオを渡さないと言ってるようにヴィヴィオに伝わってきた。

 

「ルーちゃん、それはできない相談だ。この子は俺が預かった大切な子だ。ルーちゃん達にくれてやる訳にはいかない。」

 

どうやら狙いはヴィヴィオらしい。ならお兄さんは私を守ってくれている。嬉しかったけどこのままじゃお兄さんが怪我をする。そんな所はヴィヴィオは見たくなかった。でもどうする事もできない。ヴィヴィオはここで守られているだけしか。

 

「陸飛……お前は変わらないな?一人の為に全員を敵に回す。かつて私にそうしてくれたように。だが……お前には死んでもらわなければならない。私の復讐の為に、管理局を潰す為にな?」

 

「管理局を潰す?あんた……何言ってんだ?一体どうしちまったんだよ!あんたはそんな人じゃなかっただろう!?俺と目指した理想は、夢は!?一体どこに消えたんだ!!!」

 

今まで見たことないくらい悲しい顔でお兄さんは目の前の白髪のおじさんに叫ぶ。お兄さんはこの人と知り合いのようだ。それなのにこの人はお兄さんを殺すと言っている。ヴィヴィオは怖くなった、不安になった。お兄さんが殺される、いなくなっちゃう……今日見た夢のように。

 

「隙だらけ、IS……ツインブレイズ!!」

 

突然お兄さんの後ろに赤く光る棒を持ったお姉さんが現れその棒を振り被る。ヴィヴィオは思わずお兄さんを掴む力を強くする。突然の事でヴィヴィオは声が出ない。

 

「ペン技近式……三の型……《空》!!!」

 

お兄さんに棒が当たる寸前お兄さんは振り向き持っているボールペンを下から真上に振り上げた。そしてお姉さんの赤い棒二本に当てる。するとお姉さんがそのまま真上にぶっ飛んだ。

 

「な!?馬鹿な!?」

 

「ペン技遠式……三の型……《貫》!!!」

 

さらに真上にぶっ飛んだお姉さんに向けてお兄さんがボールペンを放った。お姉さんも赤い棒でそれを防ごうとしたがボールペンはその棒を破壊しお姉さんの肩を貫通する。

 

「ぐっ……こんな…………」

 

お姉さんはそのまま地面に叩きつけられ動かなくなった。でも死んではいないようだ。

 

「陸飛よ、そのペン技……なるほど。残念だ。一流だったお前が二流に成り下がったか。何があったか知らんが……無様だな。」

 

「…………」

 

お兄さんはおじさんにそう言われたが何もう言わずにおじさんを睨んでいた。けどおじさんもすぐに怖い顔をしてボールペンを出し始める。ヴィヴィオは思ったこの二人はどこか似ている。動き方も使う武器も。そしてヴィヴィオがそう思ったのも束の間、お兄さん達が言った一言でこの激戦はじまった。

 

「行くぞ?馬鹿弟子。」

 

「遠慮しますよ、師匠。」

 

 




次回もよろしくお願いします。

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