魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
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自然保護隊保護区域森の中にて
「鈴木さ~ん!どこですか?鈴木さ~ん!!」
今森の中で陸飛を探しているのはキャロ・ル・ルシエと言うピンク髪の少女。彼女もこの部隊に配属されたばかりだが召喚魔術師としてや鳥獣使役の腕はかなりの物と上の人からは評価されている。しかし、そんな彼女もこの部隊に来て一つ手を焼いていることがあるのだ。それが陸飛である。彼女より後に入ってきた陸飛はいきなりサボリまくっていた。よって陸飛とコンビを組まされているキャロはこうして陸飛を探す事が多々あるのだ。
「鈴木さ~ん!どこ……あ、いた!?」
ようやく陸飛を見つけたキャロはすぐに陸飛に駆け寄る。しかし、当の本人は大きなキノコのベットで眠っていて近づいても起きる気配がない。
「もう、こんな所にいたんですか?てか起きてくださいよ!!」
キャロは陸飛をゆするが……
「うむむ~……キャロっち何か用……zzz…………」
起きてもまたすぐ寝てしまう。そんな陸飛にキャロはキレ気味だった。
「フリード……お願い…………」
フリードとはいつもキャロと一緒にいる竜の事だ。こうやって陸飛が起きない時はいつもフリードに任せている。
「キュクルー!」
キャロにお願いされたフリードは、ボッと言う音と共に口から小さい火炎弾を陸飛に放った。当然寝ている陸飛は避けることは出来ずその火炎弾をまともに受けるしかない。
「ブホッ!?あちっ、あちっ!?あ……お、おはようキャロっち…………」
ようやく起きた陸飛だが目の前にキャロがいた事で少し固まった。何故ならキャロが満面の笑みで陸飛を見ていたからである。
「おはようじゃないです、仕事をサボって何こんな所で寝ているんですか?いつもいつも私がどれだけ探してると思ってるんですか?」
笑顔で静かに怒っているキャロは今まで色んな人に怒られている陸飛ですら怖いようだった。
「およよ~?そんなに怒ってると可愛い顔が台無しだよ?」
しかし、それでも反省はしない、それが陸飛。
「だ、誰の所為ですか!!!(今可愛いって言われた////)」
可愛いと言われた事に満更でもないキャロは完全に誤魔化されていた。
「さぁ~行きますよ鈴木さん、今日は植物の調査なんですから。」
フニャフニャ~っと起き上がりキャロと一緒に仕事に行こうとした陸飛だったが突然後ろの方でした爆発音のような音に足を止めた。その音に気づいたのはキャロも同じで、音のした方へ振り向くとその方向へ走り出す。
「ちょっ、キャロっち!?」
「あの音は多分密猟者です!鈴木さんは戦えないんですからここに居てください!」
走りながら陸飛にそう言うと音のした方へ消えていった。一人残された陸飛は頭を軽くかきながらキャロが消えていった方を眺めている。
「はぁ~、君が怪我をしたら心配する人がいるだろうに…………」
そう言うと陸飛はその方向に歩き出した。
◇
~キャロサイド~
私は鈴木さんを置いて音のした方へ走っている。ここでの狩猟は禁止されてるはずなのに……そう思いながら。もしただの勘違いならそれでいい。でもそうじゃないなら止めないと、私が止めないと。しかし、勘違いであってっと願いながら走る私の思いは目の前に現れた血だらけで倒れている大型鳥獣を見て無残にも砕け散った。近くには密猟者であろう男が4人いて、倒れた鳥獣を眺めている。
「貴方達ここで何してるんですか!!!ここでの狩猟は禁止されている筈ですよ!!」
私の声に気付いた男達は私の方へと近づいてきた。
「何だお前、誰だ?」
男の一人が私に誰かと尋ねる。まるで反省している気配がない。
「私は管理局自然保護隊キャロ・ル・ルシエです!ここでの狩猟は禁止されています。今すぐ武装を解除して投降してください。」
私がそう言うと男達は笑い出した。私は何で笑われているのか全く分からなかった。
「嬢ちゃんみたいな子供が管理局?しかも何を言うかと思えば投降しろ?フフフ、するわけないだろうが!!せっかく仕留めたんだ!後はトドメを刺して金にするだけだ。」
男の一言を私は許せなかった。お金のためにここの生き物を殺す、そんな事していい訳がない。
「気に入らなそうな顔をしているがお嬢ちゃん如きに何ができる?子供は大人しく帰りな!」
男は完全に私を舐めていた。私だって少しは戦える、こんな事黙って見過ごせない。
「フリー「遅いんだよ!!!」きゃっ!?」
私が何かするのに気付いた男の一人が私を蹴り飛ばし、私は吹っ飛ばされ後ろの木に叩き付けられた。
「キュクルー!!!」
私が蹴り飛ばされたのを見たフリードは男達に火炎弾を放つ、しかしそれも魔法で防がれ、男達はフリードに魔力弾を放った。そんなに遅くないフリードだが、四方からの攻撃であった為にフリードは避けられなかった。堕とされ私の前まで吹き飛ばされたフリードを私は急いで抱える。
「フリードしっかりして!?」
ぐったりしたまま動かなくなったフリードを見て私は怖くなった。早くフリードを治療しないと……でも男達はそんな事お構いなしに私を囲む。
「ついでだ、嬢ちゃんも連れて行こう。きっと高く売れるだろうよ。」
「たす……けて…………」
恐怖で怖がる私に男の手が迫る。私は耐えきれずに涙目になり始めていた。そしてその瞬間私の頭に私を助けてくれた人が浮かんだ。私を救ってくれた暖かい手の持ち主を。助けになんて来ないと分かっていても縋らずにはいられなかった。
「フェイトさん…………」
そう呟きながら目を瞑った私は覚悟したが、男の手はいつまで経っても私に届かない。恐る恐る目を開けて私は驚いた。
「え……鈴木……さん?」
いつの間にか私と男達の間に入った鈴木さんが私に伸ばしていた男の手を掴んでいた。かなりの力で掴んでいるのか男の顔は苦痛に歪んでいる。
「ぐっ!?何だてめぇは!!!いい加減離し……グフッ!?」
離せと言いかけた男を鈴木さんは蹴り飛ばす。しかし、男が吹き飛んだ距離があり得なかった。ただ蹴っただけの筈なのに100メートルは吹き飛んでいる。それを見て私も他の男も固まっていた。何故なら飛ばされた距離もそうだが一撃で蹴り飛ばされた男は倒れたまま動かなくなりぐったりしているからだ。
「こ、この野郎!!ふざけやがって!!!」
他の男達は我に返ると一斉に鈴木さんに向かって魔力弾を放った。しかも1人に付一個や二個ではない、1人十発以上はあろう数だ。鈴木さんは魔力が殆どないと聞いている、このままじゃ大怪我をしかねない。そんな事を思っていると男達は鈴木さんに向かいそれを放ってしまった。
「鈴木さん逃げてください!?」
しかし、私がそう叫んでも鈴木さんはその場を動こうとしない。もう一度叫ぼうと思ったが、その時鈴木さんは突然胸ポケットからボールペンを取り出し始めた。そんな物で何をするのかと思っていたら、カチッと言う芯が出た音がした瞬間、男達が放った魔力弾が全て弾けた。一瞬何が起こったのかわからなかった。でも男の一人がもう一度魔力弾を放ったが為に私も含めそこにいる全員が鈴木さんが何をしたのか理解した。ボールペンの芯がでる方を下にして握りこむように持っているそれで魔力弾を全て叩き落としたのだ。私はそれでも訳がわからなかった、たかがボールペンの強度で魔力弾を全て叩き落とせるだろうか……かと言ってボールペンを魔力で強化した形跡もない。それ以前にあの魔力弾の雨を一発も被弾せずに残らず叩き落とした……私は鈴木さんはやる気がなくて、いい加減でどうしようもない人だと思っていた。でも今目の前にいる鈴木さんは別人にしか見えない。雰囲気もいつもと違う。それについ見惚れてしまうほどに今の鈴木さんはカッコ良かった。
「あやや?キャロっち大丈夫?怪我はない?」
私が呆けているといつの間にか戦闘は終わっていて、男達は全員気絶し倒れている。そして鈴木さんはいつものやる気のない雰囲気に戻っていた。さっきの鈴木さんの変わりようは何だったのか、私にはわからない……でもこれだけはわかった。この人はいい人だ。どんなにいい加減でも、やる気がなくてもいい人なんだ。とても心の優しい人。でなければ私を助けになんか来ない。ここに倒れている男達を殆ど怪我なく気絶させたりなんてしない。
「助けてくれてありがとうございます。私は大丈夫です。私よりフリードが…………」
そう言う私に鈴木さんは大丈夫と言い、私とフリードを抱えて隊舎まで走り出した。この後鈴木さんのおかげでフリードは助かり、男達は連絡を受けて来てくれた局員達に逮捕された。でもこの晩の事だ、私は鈴木さんの認識をもう一つ改めることになったのは……この日の深夜私はトイレに起きた。私が寝泊まりしている部屋はトイレが付いていないので隊舎の共用トイレまで行くしかない。そこまでの道は暗いので1人で行くには怖い、でも漏らすわけにはいかないので行くほかない。しかし、トイレまでの途中隊舎の事務所を通った時のことだ。明かりがついていた。自然保護隊は私を含め4人しかいない……皆寝ている筈だし、こんな時間に仕事をしている人はいない筈だ。私は不思議に思いながらもこっそり事務所を覗いた。でもそこには信じられない人が仕事をしていた。それは鈴木さんだ。
いつもサボっているのにこんな時間に仕事をしているなんて私は信じられなかった……しかも鈴木さんの雰囲気はいつものいい加減な感じではなく、私を助けてくれた時の様なキリッとした雰囲気だ。こうして見るとこの雰囲気の時の鈴木さんは、やっぱりカッコいいお兄さんに見えてしまう。いつもとギャップが激しいからだろうか?それから暫く見ていたが、トイレに行くのを忘れていたので取り敢えずトイレに行った。しかし、戻ってきても鈴木さんはまだ仕事をしている。どうしてこんな時間に仕事をしているんだろう?私がそんな事を考えていると鈴木さんがこっちに気づいてしまった。
「誰だ?そこにいるのは?」
別にコソコソしたいわけでも無いので潔く出て行った。
「何だ、キャロか。どうしたんだ、こんな時間に?」
いつもの雰囲気どころじゃなかった……完全に別人だ。いつもなら変なとぼけ口調の後に私の事をキャロっちって呼ぶのに今は呼び捨てだ。別にそう呼ばれるのは嫌じゃないけど、急に違う人と話してるみたいで私は何て言ったらいいかわからなくなり黙り込んでしまう。そうやって私がオロオロしていると鈴木さんは頭を撫でてくれた。そうして貰ったら何だかとても暖かい気持ちになりついそれに浸ってしまう。
「さぁ〜キャロ、もう遅いし、残りの時間はしっかり寝ないと明日がキツイぞ?」
鈴木さんはそう言うが、それじゃ鈴木さんは?いつ寝るの?そう思った。と言うかまだこんな時間に仕事をしている理由を聞いていない。
「あ、あの……何で鈴木さん、こんな時間に仕事してるんですか?」
私がそう尋ねると何故かいい笑顔で答えてくれた。
「これは俺の日課みたいなもんだよ。」
日課?それを聞いたら急に鈴木さんが心配になった。ここに来る前は知らないけど、少なくても私と仕事をするようになってからは仕事は、毎朝6:00には保護区域の見回りから始まる。そして今は午前3:00、仮に今から寝るとしても3時間しか寝ていない。毎回サボって寝ている時間を含めても4時間。
あれ?だから昼間はサボって寝ているんじゃ…………
ん?でも待って?今まで鈴木さんが朝遅刻したことはない筈……たまに私が早く来ても1時間前には事務所にいる。私の勝手な推測だけど……昼ご飯とかを抜いて、サボりの1時間以外休んでない?だとしたら…………
「鈴木さん、いつも何時に寝てるんですか?」
私は少し真剣な顔で尋ねる。もし本当ならやめさせなきゃ。
「ん?どうしたんだよ急に「答えてください!!!」…………」
少し大声になちゃったけどこれは、しょうがないと思う。
「もしかして……寝てないとか言わないですよね?」
中々答えてくれないので私が強引に話す。
「ま、まさか、そんなわけないだろ?ちゃんと寝て「昼間のサボってる時にですか?」…………」
少し驚いた顔になってる鈴木さんを見て私は半分確信した。
「やっぱりそうなんですね?」
私がそう言っても鈴木さんは何も言わない……マズそうな顔をして頭をかいている。私はこれで本当の鈴木さんが分かってしまった。私が鈴木さんの事をいい加減だと思っていたのは全部そう思わされていたって事だ。最近……他の保護隊の人達が書類業務が楽になったって言ってたけど。全部鈴木さんのお陰だ。私は嘱託自然保護官アシスタントとして雇われているから書類関係はやってない……だからどれくらい大変かは分からない。でもこんな事続けるのは良くないのは子供の私にもわかる。
「どうしてこんな事しているんですか?こんな無茶して鈴木さんに何の得があるんですか?」
私は鈴木さんが分からなかった……こんなの身体を壊すだけだ。皆が楽になって鈴木さんだけが大変な思いをしている。こんなの絶対おかしい。そう思っていた時だった……鈴木さんはまた私の頭を撫でながらやっと話してくれた。
「キャロ?世の中には知っちゃいけない事もあるんだよ。だから今日の事は忘れてもう寝てくれないか?」
鈴木さんは優しく話してくれたが私は納得できなかった。
「何ですかそれ!?そんなもっともな事言って誤魔化さないでください!!!」
私は撫でてくれてる鈴木さんの手を弾いて大声で怒鳴った。私はもう我慢できなかった。私はきっと涙目になっていると思う。
「キャロ、これ以上は知っちゃいけない事だ。頼むよ、忘れなくてもいいからキャロの胸の中だけに留めておいてくれないか?」
そう言われてそれ以上何も言えなかった。でもだったら私は……
「わかりました……この事は私の中で留めておきます。その代わり私と友達になってください!仕事の同僚とかじゃなく友達に!!」
関わることはできなくても友達として支えるくらいは……
「友……達?ぷっ…….あっはははは……」
「な、何で笑うんですか!?」
大笑いされて私は少しふくれた。でもすぐに鈴木さんはニコニコしながら......。
「悪い悪い、いいよ!俺でいいなら。」
「本当ですか!?じゃ、よろしくお願いします、陸飛さん!!」
改まり過ぎな気もするけど……了承してくれたのは嬉しかった。
「ああ、よろしくキャロ。」
「じゃ〜私はもう寝ます。でも程々にしてくださいね?おやすみなさい!」
そう言う私に陸飛さんはちゃんと返してくれた。しかし次の日……事務所に陸飛さんはいなくて、その日の朝はいくら待っても陸飛さんは来なかった。
でもその後すぐに知った……陸飛さんは異動になったと…………
次回もよろしくお願いします。