魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
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〜なのはサイド〜
「それは本当なの二人とも!?」
今……私達隊長陣は今回の事件の犯人であろう次元犯罪者Dr.スカリエッティについての対策会議をしていた。しかしその最中、それとは別に今回集まった隊長陣以外には秘密にすると言う約束ではやてちゃんとフェイトちゃんから極秘の話題が持ち上がった。それは鈴木君の事だ。なんでも鈴木君はただの事務員ではなくリンディさんの直属の部下で実は六課の仕事を減らす為に派遣された局員らしいとの事だった。しかも普段見せているふざけたキャラは演技だと言う。それを聞いて私は凄い罪悪感に襲われた。これまで私はたくさん鈴木君に対して怒鳴ったりフォワードの皆にもやらせたことのないかなりキツイ処罰を与えて来た。でもそれは……彼がしたくてしていた事じゃなかったのだ。にも関わらず私は何も知らないでそれを彼に実行させていた……それも彼がどうせやらないだろうって事まで思って…………
「なのは?どうしたの?なのは!」
「え!?い、いやなんでもないよ。」
ダメだなぁ……心ここに在らず……だね。
「それでなんだけど、鈴木君……どうやら家がないみたいなんだ。」
え……家がない?フェイトちゃんが言った事が私には信じられなかった。鈴木君は六課常駐じゃない、じゃ……今まで六課での仕事の後どうしていたのだろう?この間みたいに外で寝ていたのだろうか?
「皆、ここからが本題や!」
はやてちゃんが机の上を両手で勢い良く叩き、自分に注目させる。
「鈴木君は六課に来て相当無茶してる。あの馬鹿は昼前のサボってる時の1時間以外寝てへん。それ以外は仕事をしてるんや。」
「な、なぁ……はやて?それ冗談だよな?それだと逆に……仕事が手につかなくなりそうじゃねぇ〜か?」
そうだ……ヴィータちゃんの言うとおりそんな事続けられる方が異常だ。それだと鈴木君サボってるどころか私達より遥かに働いている。
「私も正直そう思う、けど鈴木君はそれをやっているんや。その証拠にフェイトちゃんがこの間鈴木君がフラついて倒れたのを見てる。」
「本当……フェイトちゃん?」
私は胸が痛くなるような気持ちを抑えフェイトちゃんに確認を取る。正直聞きたくない。でも聞かなくちゃ、鈴木君の事をもっと。
「うん……最初はキャロ……じゃなくて転んだだけだと思ったんだけど。今考えるとあんな所で転ぶ事なんてあり得ない。」
「そうだな。ましてあいつは化け物地味た身体能力を持っている。それを考えるとそんな所で転ぶのはおかしい。」
フェイトちゃんが言った事にシグナムさんが同意する、そしてそれには私も同感だ。鈴木君の身体能力は異常な程高い、それは今までの事で知らない人はいない。そんな鈴木君が何もない所で転ぶ程、彼の身体にはガタが来ている……そう思わずにはいられない。
「はやてちゃん、今鈴木君は?」
「大丈夫や、鈴木君がいつもやってる夜の仕事はやらせてへん。今リインが私が戻るまで食堂で監視して貰ってる。」
まぁ……それなら安心だけど。でもこれ以上はやらせたらダメだ、そうじゃなきゃ……私と同じように……
「はぁ……あいつには何かあるとは思ってたけどよぉ〜。まさか、こんなとんでもない事だったなんてな……」
その言い草からするとヴィータちゃんは何か思う所があったのかな?
「とにかくや!鈴木君を少し休ませる意味も込めて私は鈴木君をこの部隊の稼働が終わるまで異動はさせへんし、何とかしてこのふざけた仕事を辞めさせようと「た、大変ですぅ!?」……り、リイン?」
はやてちゃんの話を遮りリインが会議室に飛び込んできた。って言うか……鈴木君は?
「り、陸飛さんに逃げられました!?何処にいるかわからないです!?」
ええ……監視の意味ないよ……それ…………
「リイン……頼むわ……ホンマに…………」
「ううっ……ごめんなさいです……」
この後私達は手分けして鈴木君を探しに出た。
◇
〜フェイトサイド〜
会議室から出て暫く探してるが鈴木君は見つかならない。なのは達に聞いて見てもそれは同じだった。何故……逃げたんだろう。何処かで隠れて仕事をしてるんだろうか?そう思って探している私の耳に妙な音が聞こえた、そしてそれは訓練所の方から聞こえてくる。私はもしやと思い訓練所に向かうことにした。すると……
「……やっぱりいた…………」
私が訓練所に着くと彼が腕立て?……をしている姿が見えた。しかしそれは皆がやるような普通の腕立てじゃない、私はそれを見て固まらずにはいられなかった。
「す、鈴木君……何……してるの?」
「ん?テスタロッサ隊長ですか……何をと言われても腕立てですが?」
普通に返されたがそれはどうかと思う。普通の腕立ては両手を地面についてやるものだ。にも関わらず彼は地面にボールペンを二本肩幅に突き刺し、地面から出ているボールペンを握り逆立ちして腕立てをしている。ここまでしてボールペンを使う必要が果たしてあるのだろうか?そう思ったがそれより私は気になった事がある。
「す、鈴木君……服着てると分からないけど、筋肉凄いね?」
今彼は上半身裸になっている為身体の筋肉が露わになっていた。でも自分で言っときながら思うのだが、あれだけ馬鹿力で筋肉が凄くなかったら何か変だと思う。だけどそんなに恐ろしい程ゴリマッチョでない彼はとてもそんな馬鹿力には見えない、服を脱がなければ。
「てっきり……隠れて仕事始めたのかと思ったよ。」
「え?これからやりますけど?「ダメ!!!」冗談ですよ。」
絶対嘘だ……顔が本気だもん。もう……ふふ♪でもなんか今の鈴木君は……ほっとけないなぁ〜。彼が演技してる時は正直彼の事は嫌いだった、どうでもよくて早くいなくなればいいのにって思った事も多々あった。なのに今彼が気になって仕方ない。あ……私は何を考えているんだろう……今凄く顔が熱い……
「どうしました?テスタロッサ隊長、顔が赤いですが?具合でも?」
いつの間にか彼が私の目の前まで近づいて来ていた。私は驚いて熱かった顔をさらに熱くさせる。
「い、いやなんでもない!?なんでもないよ!!そ、それより、鈴木君今自主訓練中でしょ?どう?今から私と模擬戦しないかな?この前の続きって事で!」
私がそう言うと鈴木君は目を丸くしていたが少し笑い頷く。私としても彼とはちゃんと戦って見たいと思っていた。魔法を使わないでシグナムを完封した君と……
「テスタロッサ隊長、模擬戦をするのは構いませんが一つ……お願いがあります。」
突然そんな事を言ってきた鈴木君に私は首を傾げるが取り敢えず聞くことにした。
「リミッターのかかってる状態での構いませんので……本気で来て貰えますか?」
「え?で、でも君……魔法ほとんど使えない筈じゃ「ほとんどじゃなく全くです!」ええ!?なら尚更「問題ありません。」……わ、分かった……でもヤバそうならやめるからね?」
そう言うと彼は満足そうな顔で頷いた。それから私達は少し距離を取り向かい合い、私はバリアジャケットを展開しバルディッシュを構えた。最初はどっちも動かずに相手の隙をうかがう。でもこの時私は驚いていた。ふざけたキャラの鈴木君と戦った時は感じなかったが今ははっきりと感じられる。彼には隙がない。ただの事務員である彼が何故ここまで戦闘慣れしているのかは疑問だが、多分今のうちのフォワード達全員を纏めて相手にしてもフォワード達は歯が立たないだろう。すると彼が動いた。右手に持っているボールペンを私の方へ放つ、でもその速度は私が見切れない物ではない。私はバルディッシュでそれを防ごうとしたが次の瞬間、私に放ったボールペンを鈴木君が私が防ぐ直前にキャッチした。つまり私にボールペンを放った瞬間走りだし、そのボールペンに追いつきそれを掴み直したと言うことだ。そして鈴木君はそのままボールペンを私に振り下ろす。私はなんとか反応しそれを防ぐがその瞬間後ろにぶっ飛ばされた。
「きゃっ!?」
でも私は体勢を立て直し再び鈴木君に向き直る。それにしても本当に馬鹿力だ。私を防御ごとぶっ飛ばすなんて……
「君……武装隊の方が性に合ってるよ?」
私は冗談半分でそんな事を言った。でも彼は集中しているのか表情一つ変えない。
「ふふ……これは本当に本気だしてもいいのかな?バルディッシュ!!」
《イエッサー!》
バルディッシュがカートリッジを二本使い、私は上空に飛ぶ。そして鈴木君から距離を取ると魔法を放つ為の準備に入った。
「……直射型の……砲撃魔法か……。ならここから離れれば……っ!?くっ……バインドか!?」
「今だ!トライデントスマッシャー!!!」
私は魔法陣に向け片手をかざし、その瞬間魔法陣から三ツ又の矛のように三本の砲撃が鈴木君に向かう。しかし三本の砲撃が鈴木君に着弾する直前の事だった。
「フン!!!「な!?」ペン技近式……五の型……《絶》!!!」
驚くべき事に鈴木君はバインドを力尽くで砕き、その後直ぐにボールペンの芯が出る方を砲撃が向かって来る方へ向け両手で支える。どうやら丁度暴風雨の中傘を差して前に進んでる人のような構えで、私の砲撃を迎え撃つ気のようだ。でもそんな事でこの砲撃を防げるとは到底思えない。しかしその予想を毎度のごとく鈴木君は裏切る。私の三本の砲撃が鈴木君の所で結合した時鈴木君の右脚で踏ん張っている地面が大きく沈んだ。そしてその直後私の砲撃は弾かれる。私は驚いた、どう言うわけかボールペンの芯で砲撃が弾かれ攻撃が通っていない。その後私は砲撃をまんまと防がれ地上へと降りた。
「君……凄いね……正直、現役執務官である自信をなくしそうなんだけど?」
「そうでもありませんよ。リミッターがかかってる状態でこの威力……流石は管理局のエースだ。」
そう言いさっき防いだボールペンを私にチラつかせる。そのボールペンはいたる所にヒビが入りもう使い物にならないようだ。でもそのボールペンを見せられた所で私には流石はだと言われてる理由がわからない。だって……それただのボールペンだもん。
「二人共〜!」
私達がまた暫く向かい合っている最中横からはやてが訓練所に入って来た。その横には他の隊長達もいる。
「やっと見つけたわ……ってか何やってんねん!?悪ふざけにしてはやり過ぎやで?さぁ〜もうやめて夕飯でも「ごめんはやて!」フェイトちゃん?」
私ははやての話を途中で止める。
「今……凄くいい所なんだ!邪魔……しないで……」
私は今笑っているだろうか?自分では分からないけど、これは分かった。鈴木君は強い。そして私は今……楽しい。
「バルディッシュ!」
《イエッサー!ザンバーフォーム!》
私はバルディッシュのモードをカートリッジ2発を使い魔力刃で形成された大きな大剣の姿へと変える。
「お、おい!?事務局員相手に本気でやる気かフェイト!?」
ヴィータが何か言っているけど今は聞こえない。私はもっと鈴木君と立ち合いたい。
「最高ですよテスタロッサ隊長。では俺も礼儀でもって……ペン技近式……一の型……」
「な、何……あの構え……あの時と違う…………」
鈴木君が今している構えになのは達は驚いている、初出動の時にやった構えと違うからだ。その構えは右手で芯が出る方を下にして握り込むようにして握り、左の腰の部分に添える。その姿は侍が居合いをする様な格好に見える。そして鈴木君はその格好のまま動く気配がない、どうやらこちらの攻撃を待ってる様だ。
「ふふ♪鈴木君がその気なら私から行くよ!はぁぁぁあああああああああ!!!」
《ソニックムーブ!》
そう言いソニックムーブでザンバーを振りかぶりながら鈴木君の後ろへと移動する。この速度とタイミングなら鈴木君は反応できないだろう。と私はそう思った。スピードだけなら私はかなり自信があったからだ。でもそれは慢心だった。
「《破》!!!」
鈴木君はそう叫ぶとその体勢のまま右回転で私の方に振り向き、その瞬間互いにすれ違う。私はゆっくり鈴木の方に振り向くと鈴木君のもっていたボールペンが木っ端微塵に砕け散った。しかし、その直後私のザンバーも魔力刃の部分が跡形もなく砕け散る。はやて達は空いた口が塞がらない様で固まっていた。そして私もまた驚いたが、鈴木君を見たら笑えてきた、何故なら彼の顔が滅多に見れないと思える程いい笑顔だからだ。
「あれれ、粉々になっちゃったか……はぁ……。リミッターがかかってる事を考えると俺の負けですね。」
彼はそう言うがそれでは私は我慢ならない、だから……
「ううん、それは関係ないよ。最後は私のザンバーも破壊されちゃったし……引き分けだよ、陸飛「へ?」あ!?いや……これはその……そう呼んでもいい……かなぁ?」
私は顔が熱くなるのを感じながらそう彼に尋ねる、何か……そう呼びたい。
「別に構いませんよテスタロッサ隊「フェイト!」はい?」
私だけ名前で呼ぶのはなんかずるいから……私も名前で呼んで欲しい。
「フェイトって呼んでよ!私も……名前で呼ぶんだし。それに敬語も今更いらないよ?今まで散々失礼な事言って来たんだし。」
そう言いったけど凄く気恥ずかしい、何だか心臓がドキドキするし。
「隊長への言葉遣いはちゃんとしないとダメじゃなかったのですか、テスタロッサ隊長?」
「そ、それは……そうだけど……。もう……意地悪…………」
私はそう言い、少しふくれて陸飛を睨むのだった。
次回もよろしくお願いします。