魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
ではよろしくお願いします。
〜カリムサイド〜
はやてが出て行ってから私は急に不安にかられた。さっきのはやての通信の中に陸君への指示があった、でもその内容は一歩間違えれば陸君が巻き込まれる可能性がある。まぁ〜例え巻き込まれたとしても陸君が遅れをとることはないだろうとは思う。だけど貴方は……誰かが危なくなれば進んで戦場に突っ込んで行く。それで……自分が死んでしまうとしても……私はそれが一番怖いのよ。
「ダメ!やっぱり心配だわ。」
私は不安を抑えきれずに陸君に通信を繋げる。呼び出してから数コールで陸君は出てくれた。
「はい。はぁ……カリムさんですか……教会の騎士殿が俺に何の用でしょうか?」
「……せ、せっかく心配して連絡したのにそんなに嫌う事ないじゃない……それに今更陸君に対して何かしたりはしないわよ。」
陸君は私の顔を見るなりため息をつき嫌そうな顔をする。でもそれは当然で、以前リンディさんに教会の手伝いをお願いした時、陸君が派遣されて来た。陸君にお願いした仕事は主に書類業務だったのだけど、なんと言うか、初めての会った彼は態度がいい加減で……正直どうしてこんな人をって思ったけど、仕事は早くて完璧で実は凄く優しくて……それで私は欲を出してしまったわ。正式な人材として聖王教会に欲しくなってしまった。でもそれは私程度が触れてはいけないタブーだった、だけど当時の私はそれを知らずに仕事を手伝ってくれてる陸君を勧誘し続けた。陸君の仕事の腕は聖王教会としても喉から手が出る程欲しい物だったから。だから条件としては今よりずっといい物を出してるつもりだったけど、陸君には関係ない事で。最後には聖王教会総出で強行手段に出ようとしたけど全員見事に陸君に返り討ち。そして最後はこのセリフ……「事務員を舐めないでください!!!」って……怒られちゃった…………。それでその後、リンディさんに陸君の本当の仕事を教えて貰って……諦めた。でもそれから陸君は私達聖王教会があまり好きじゃなくなったみたいで……手伝いに来て貰っても愛想は良くなくなった。
「嫌ってはいませんが……いえ、やめましょう。で?何のようですか、騎士カリム殿?」
「そのいい草がそもそも嫌ってるようにしか聞こえないんだけど。昔みたいにカリっちって呼んでも「お断りします!」そう……。それで陸君?例え誰かが危なくても戦場に出て行ったらダメよ?貴方は魔法が「すいませんが……どうやらそうも行かなくなりました。」え!?ちょ、ちょっと待ちなさい!!何する気何ですか!?」
私はつい椅子から立ち上がり陸君に怒鳴るがその瞬間通信を切られた。やめてよ……貴方は今の管理局にいなければならない人間なのよ…………
◇
〜はやてサイド〜
私は六課に到着し司令室へと足を運ぶ。そこではグリフィス君が私の代わりに待機してくれていた。けど暫くしてライトニングの二人がちょい苦戦してる時やった、ガジェットの新型が出て来たと思ったら突然ヘリからの通信で妙な声が聞こえてきた。
「は!?何言ってんだ?ダメだ!?それは許可できない!!」
「分かりました。なら自分で開けます!」
その声はヴァイス陸曹と鈴木君や。でもそれはよくわからない会話やった。何かを開ける開けないで揉めてるようだ、しかし次の瞬間私は動かざるを得なくなった。
「おい!?何する気だ鈴木三等陸士!え……お、おい……マジかよ……おい、ロングアーチ!ロングアーチ!!!誰かこの馬鹿を止めてくれ!!!おいやめろ鈴木!!!」
「な、何や!?シャーリー、ヘリの映像を!」
私はシャーリーにヘリの映像を出すようにいい、その映像を見るが何も起きていない。しかし、気のせいかヘリのハッチが少しずつ開いて来てる気がした。私は目を擦りながらそれを見ていたがそれは突然見えた。鈴木君がヘリのハッチを力尽くでこじ開けている姿が……
「何……してるんや?」
そしてヘリのハッチはだんだん開いて行きとうとう一番下まで開く。司令室でそれを見ていたロングアーチの皆は固まっていた。
「ロ、ロングアーチ?鈴木三等陸士の魔力……反応は?」
私は恐る恐るそれを聞くが聞かなきゃ良かったと思う。
「え、え……と。魔力0……反応はありません。ただの……腕力なようです…………」
こんな事あるか?どんな怪力やねん……私は急いで鈴木君へと通信を繋げる問い詰める。
「鈴木三等陸士、何してるんや!?大人しくヘリに戻り!」
「いえ、キャロ達には荷が重そうなのでこれから飛び降りようかと。」
は……い?
何を……言ってるんや?
「何馬鹿なこと言ってるんや!?自分死にたいんか!?あんた飛べないやろ!!」
お願いやからやめて……無謀や、うちの部隊から死人出さんといて。
「ですが……その必要もないようです。あれぐらいならこの距離で十分です。」
え?
「な、何や……その構え。何する……気や?」
鈴木君が妙な構えをとりだす、そしてその右手にはボールペンが握られていた。
「部隊長、今三型のガジェットがいる隣の車両を調べてみてください。そこにもう一体います。」
そう言われシャーリーに調べるように言うと、その話は本当やった。
「部隊長……反応あります……三型がもう一体です。」
どうして分かったんや?こっちでは分からなかったのに……いや、それ以前に何故三型の事を知ってるんや?ううん、今は。
「ロングアーチ、急いでライトニングに連絡を「その必要はありません。」なんやて?どう言うことや……」
ライトニングに連絡をしようと思った所に鈴木君が横槍を入れおった。何考えてるんや?今相手にしてる三型は何とかなるにしてももう一体は知らなければ危険や。
「キャロ達にはあの三型に集中させてあげてください。もう一体は俺が……」
何を馬鹿な……列車から鈴木君の乗ってるヘリまでどんだけ距離が開いてると思ってんねん。ギリギリ姿が見える程度や。魔力も少ししか持たないような人間に何かできる訳が……私はそう思ったが急に鈴木君の顔つきが変わった。かなり集中してるようや。
「ペン技遠式……三の型……」
何や……今の鈴木君から目が離されへん……それに今呟いたのは一体…………
◇
〜なのはサイド〜
何だから通信で司令室が騒がしくなった、だから私はその騒ぎの元凶であるヘリの映像を出す。
「え……あの構えって……」
そしてその映像を見たとき、私は以前鈴木君がやっていたふざけた缶の列の事を思い出した。今鈴木君がやっている構えはまさにその構えだったからだ。でもあの時とは距離も環境も違う、ヘリも列車も動いてる状態でしかもあの時より何十倍も離れている。そんな距離から当たるわけがない。しかし、今鈴木君から目が離せない、無理だと思っていても今まで魔力も使わず腕力だけで信じられない事をやって見せた鈴木君を……そして次の瞬間、キャロ達が戦っている隣の車両が弾けた。
◇
〜はやてサイド〜
「《貫》!!!」
突然鈴木君がそう叫ぶとさっき三型が隠れていた車両が爆発した。その車両は屋根がぶっ飛びそこには残骸になった三型が転がっている。
「これは何かの冗談や……デタラメ過ぎや……ロ、ロングアーチ?」
「…………」
誰も言葉を発さない。
「無事任務完了です!あれ?ロングアーチ?ロングアーチ〜?どうしたですか?」
リインが任務が完了した事を報告してくれてるがこっちはそれどころやない。ただの事務局員がなんて事やらかしてくれたんや……
「鈴木三等陸士、帰ったら説明してもらうで?覚悟しぃや?全「覚悟するのは貴方の方です!!!」く……カリ……ム……」
突然私の所にカリムから通信が開いた。私は怖かった、カリムが怒っているからや。
「今の戦闘全部見させて頂きました。鈴木三等陸士が戦闘に参加してましたね?これは一体どう言うことですか?私は言いましたよね?彼を戦場に引っ張り込んだら許さないと!」
「い、いやこれは何と言いますか……鈴木三等陸士が勝手に「勝手に!?はやて?貴方は現場での状況判断を勝手等と言うのですか?全ては鈴木三等陸士に責任があって自分にはないと?」そ、そうやありませんけど……」
何で私こんなに怒られてるんや……理由もメチャメチャな気が……誰か助けて!?でも私に構わず皆逃げるように司令室から出ていく。皆薄情やな……お願いや……一人にしないで!?
「はやて?そもそも待機中のヘリを鈴木三等陸士が攻撃可能な位置まで接近させておく必要が何処にありました?貴方の管理責任に疑問を感じますが?」
い、いや……そこら辺は完全に安全な場所をヴァイス陸曹に指示してお願いしてあったからで……まさかあの距離で鈴木君が戦闘に参加して来るなんて私には想像の範囲外でして……あれ?私……それで怒られるのおかしくないですか?
「で、でも鈴木三等陸士があそこまで戦闘ができるなんて私は知らんかったですし。あんな技持ってるなんて私は……」
私が涙目になってそう言うとカリムが少しため息をつきいつものカリムの表情に戻る。
「いえ、ごめんなさい。そうね、少し言い過ぎたわ。こんなのただの八つ当たりよね。確かにあれは想定できないわよ。全く、陸君はいつもそうやって……」
何や?今最後に鈴木君の名前を言ったような……
「まぁ〜今回はお咎め無しとします。」
そう言われ私はほっとして胸を撫で下ろす。
「でも!」
「ひっ!?」
ほっとした矢先カリムの表情がまた怖くなった。
「次はありませんよ?もう彼を現場には出さないでください!!!」
「は、は……はい…………」
私は決めた。サボってもええ……もう二度と鈴木君を現場には出さへん。私はもうカリムのこんな顔見とうない。
◇
〜キャロサイド〜
「はい、陸飛さん♪今日の差し入れです♪」
「キャロか、ありがとうな。」
陸飛さんは私に気づくと頭を撫でてくれる。最近は前みたいに私を追い返そうとして来ない。もう諦めたのか、ただ単純に受け入れてくれたのかそれは分からないけど。
「陸飛さん、昨日はありがとうございました。聞きました陸飛さんが手伝ってくれたそうで。」
「ん?何の事かな?」
分かってる癖に陸飛さんはとぼける。でも私はなのはさんから助けてくれた事も聞いてるから知っているし、陸飛さんがこう言う人だと言うことも知っている。
「分からないならいいです♪私が勝手に言いますから……助けてくれてありがとうございます♪」
「……ああ。」
陸飛さんが最後に言った短い返事は私を満足させるのに十分だった。その後陸飛さんと話している最中私はまた意識を落とした。
◇
〜フェイトサイド〜
私は今事務所の前に来ている。深夜なのに電気が着いているからだ。
私は事務所のドアを開けて中を確認した、すると鈴木君が仕事をしている。
「鈴木君?こんな時間に何をしているの?……キャロ!?」
鈴木君が仕事をしているすぐそばでキャロが彼に頭を預けて寝ていた。
「はぁ……本当に仕事のしにくい部隊だ。」
「何を言ってるの?それにどうしてキャロがここで寝てるの?」
彼は訳のわからない事を言ってるけど今はキャロがここにいる方が気になる。
「別に……ただ差し入れをしてくれただけですよ。本当に……頼んでもいないのに優しい子だ。」
そう言う鈴木君の表情は悲しくも嬉しい表情に見えた。そしてその後私はとりあえずキャロを部屋まで運び事務所に戻って来た。理由は勿論鈴木君と話をするためだ。
「で?何が聞きたいんですか?」
「何故こんな時間に仕事を?」
私がそう聞くと彼は少し考えているように黙り込む。言い訳でも考えているんだろうか。
「それが俺の仕事ですから……」
今言われた言葉の意味を私はまるで理解できない。深夜まで残って仕事をするのが仕事?そんな仕事は六課にはない。勿論管理局にもだ。
「どう言うことかな?君の言ってる事……おかしいと思うんだけど。」
私がそう言っても鈴木君の表情が変わることはない。
「それは「それは鈴木君がリンディ統括官の直属の部下で六課の仕事を減らすために派遣された。違うか?鈴木君?」……盗み聞きとは感心しませんよ部隊長。」
突然事務所のドアの方からはやての声が聞こえたと思ったらそこにははやてが背中をドアに預けて立っていた。
◇
〜はやてサイド〜
「確かに盗み聞きは褒められた事やないけどな?黙って仕事をしてるんは褒められた事なんか?」
私は意地悪を言うように鈴木君を問い詰めて行く。
「自分……こうやって仕事してるのがバレないと思っとったんか?まぁ……私も気づいたんは昨日やけど。で?どうなんや?私の推測は当たっとんのか?」
「フフ……5割ですね。」
これで半分かいな……まぁ〜最初から怪しいとは思ってた、でも確信はなかった。でも昨日のカリムの様子を見ても鈴木君はただの事務局員でない事は明白。それにリンディさんの最初の言葉や。真面目……これは明らかに鈴木君の普段のキャラと矛盾しとる。それにあの戦闘能力…………
「はやて?私まだ全然わかんないんだけど……つまり鈴木君は一人で六課の仕事を減らすのが仕事って事?」
「そうや。そして鈴木君はもうそろそろ任務を終えて異動しようとしている。あのキャラは使えないキャラを演じてるだけやろ?いつでも異動しやすいようにする為や。」
この私の推測は当たってる筈や、でなければここまでキャラを変える必要はない。それに今フェイトちゃんに話そうとしたのは恐らく適当にそれらしい理由をつけて大事にする為や。その後は私が異動させれば、君の任務完了って訳や。危ないところやったで?気づくのが遅れたらまんまと君の思惑にハマっとった。
「意外と見てますね、これは困った。まぁ〜でもそろそろ「何を言うても異動はさせへんよ。」!?……なんですって?」
「聞こえなかったんか?鈴木君を異動なんかさせへん。それとも何か問題があるんか?他の部隊に行かなきゃいけない問題が!あんまり無理するのは良くないで?私の推測通りなら自分……もう大分身体にガタ来とるやろ?」
私がそう言うと悔しそうな顔を鈴木君はする。だけどこんなのおかしいで?今日こそ吐いて貰うよ?君の正体を……
「フフ……やられましたよ。これがリンディさんがあなた方を選んだ理由ですか。本当に参った。ここまで情に厚い人達とは……」
何や……思い当たる節でもあるんか?
「どこまで……知りましたか?」
どうやら鈴木君も観念したようやな?他の部隊では知らんけど、私の目は誤魔化せへん。誰も欠ける事なくこの部隊を終える。それが私の…………
「私が分かったのは、君がリンディさんの部下で誰にもバレないように仕事をしていたって事とリインの証言で毎日のように深夜まで仕事をしているって事や。後はそこから何故って事を考えてさっきの答えや。でもまだ全部やない。どうして君一人が無茶をする必要があるんや?それに昼間、君がサボって寝ているのは決まって昼前の1時間だけ。それ以外は仕事をしてるんと違うんか?ましてや六課に常駐やない鈴木君が今ここにいるんと朝が異常早い理由を考えれば鈴木君が家に帰って無いことも明白やで?」
それと……鈴木君の本当の仕事についてや。多分この部隊だけやないやろうな。
「全く……口の軽い妖精さんだ。大体あってますけど……それ以上はお教えできませんね。」
この後に及んで隠すんか?
「鈴木君?今の話本当なの?全然寝てない事とか全然帰ってないって。」
フェイトちゃんがやっと事の重大さに気づいたのか話に加わる。そうや、鈴木君はどう言うわけか部隊の仕事を減らすために自分に負荷をかけ過ぎとる。一体どれだけこんな事を続けたか知らんけど……こんな事続けとったら……死ぬで?
「それは確かに本当ですが、別に慣れてますし何の問題も「ダメ!!!」……何がですか?」
「そんな事をしたらダメだ、身体を壊してまでやる仕事なんておかしいよ!そんな事を続けてもろくな結末にならない!今すぐやめて、お願い!」
そうやな……それをやってろくな結末にならなかった人がうちには一人いるからな。そしてそれに気づけなかった私達も……
「お断りします!」
「強情やな……自分。まぁ〜今日の所は見逃したるけどな?明日からは家に帰って貰うで?ええな?」
そう言っても鈴木君は首を縦には振らない、何かを考えてる。どう言うつもりか知らんけど明日は絶対に帰って貰うで?
「わかりました。では今日は仕事をさせて「帰って!!!」は?」
フェイトちゃんがもう心配モード全開な顔をしとるな。
「今すぐやめて帰って、君が倒れる前に!!!」
まぁ〜確かに理想はそうなんやけど。
「はぁ……わかりましたよ。ではお疲れ様です」
折れたか。とりあえず安心やな。さぁ〜明日からどんな感じになるか不安やけど、もっと知らなあかんな……鈴木君の事を。なんせこれで半分見たいやからな。でもこの選択を後で私もフェイトちゃんも後悔した。何故なら次の日……朝早く訓練の為に外に出たなのはちゃんの報告で知ったんや。鈴木君が帰らないで六課の外で寝ていたと……
次回もよろしくお願いします。