「……酷い目にあったな。まったく、何奴も此奴も魔術師同士の誇りある戦いの邪魔をしよって」
本拠地である冬木ハイアットホテルに戻って来たケイネスは紅茶を飲みながら愚痴を零す。さすがは天才と呼ばれるだけあって隠匿魔術の技術が高く、何とか警察が帰るまで隠れている事が出来た。ただ、その間夜風に晒され続け風邪気味になってしまったが。
「大丈夫ですか? ケイネスさん。今、甘酒作っていますので」
「まったく、ロードエルメロイともあろう者が無様ね」
ケイネスの婚約者であるソラウは膝の上にウサコッツを乗せ、絵本を手にしながらケイネスに声を掛ける。ケイネスは悔しそうにしながらもヴァンプが差し出した甘酒を飲み始めた。
「……ふん。まぁ、セイバーを楽に倒せそうだと分かっただけでも収穫はあった。あの忌々しい狙撃手のような者が居る事も分かった事だしな」
狙撃手が居ると知ってたなら、それなりの対策が出来る。ケイネスは不意打ちで頭を打ち抜かれる心配が減ったと安堵した。
「……その狙撃手だが、男の方の手に令呪らしきものがあったぞ。あの状況で生きているかは分からんが」
切嗣は令呪を使って霊体になれないセイバーとアイリスフォールを逃がし、自分達は海に飛び込んで逃げようとした。その際、ルゴル14が切嗣達の足を撃ち抜くが生死は不明だ。
そして、その話を聞いたケイネスは顎に手を添えて考え込む。
(あの女は偽のマスターか? それとも同盟を組んでいるのか。それならもう一体のサーヴァントは何故居なかった? 考えられるのは直接戦闘より支援に特化した能力か。アサシンやキャスター辺りであろうな。その場合、私自らアインツベルンの本拠地に乗り込むのは危険か?)
ケイネスは切嗣と似た勘違いをした後、ルゴル14の方を見る。聞いた話では戦場で長い事過ごしたという。サーヴァントを所詮は使い魔と蔑むケイネスだが、役に立つと分かっているもの全てを使わないほど浅慮ではない。
「おい、ルゴル14とやら。戦争経験のある貴様なら、私をどう攻めるか申してみよ」
「……そうだな。魔術工房の事はよく分からんが、破壊すべき重要拠点と考えれば良いんだろ? なら、下の階から爆弾で吹き飛ばす。または食事に毒を仕込む」
「いや、流石に誇りある魔術師……いや、それなら狙撃などせぬな」
ケイネスは暫し思案すると地図を取り出した。
「ソラウ、拠点を移動するぞ」
「……こうして幸せに暮らしましたとさ。あら? ケイネス、何か言ったかしら?」
「あのランサーが呼び出した獣人、かなりの強さでした。また戦ってみたいものです」
拠点に戻たセイバーは昨日のアーマータイガーとの戦いを思い出して目を輝かせる。それを離れて聞いていた切嗣が不快そうに見ていた。
(……騎士王様は呑気なもんだな。そんなに殺し合いを楽しみたいのか。それより、あのランサーの宝具は厄介だ。セイバークラスのサーヴァントを呼び出すなんて。やはりマスター狙いしかないか。だが、あのアーチャーが厄介だな。舞弥の足がしばらく使えない以上、サポートはあまり期待できない。早く敵マスターを探し出さなければ)
「……アイリ。今日も街に出てくれ。他のサーヴァントにも君とセイバーが一緒にいる姿を見せる必要がある。倉庫に弾痕が残っているだろうから警察も警戒しているだろうし、流石に昼間から狙撃はしないだろうしね」
「ええ、分かったわ。それより切嗣。本当にセイバーとは話をしないつもりなの?」
「僕に道具と話す趣味はないよ」
「さぁさぁ、皆さん寄っといでっ! 聞けば馬券がピタリと当たるっ! 馬券予想屋だよっ!」
その頃、場外馬券投票所では勝手に商売をしている両津とウェイバーの姿があった。両津が資金調達と言って少ない持ち金をギャンブルで使い果たし、資金調達の為に金を集めているのだ。ウェイバーの未熟な暗示で何とか警備員は気付いておらず、客は少しながら集まっている。
「おい見ろ坊主っ! 結構儲かったぞっ! よ~し! これを次のレースに全部つぎ込んで……」
「いい加減にしろ、バカバカバカぁ~!」
「……はぁ」
トランセイザーは何度目か分からない溜息を吐く。単独行動スキルの為に魔力枯渇で消滅はしないが、宿無し生活は女子中学生には堪える様だ。片手には拾ったお金で買った紅茶のペットボトルが握られており、それを飲む為に実体化した彼女を通行人が奇異な物を見る目で見る。
「おい、貴様英霊だな」
「ええ、そうよ。あ、結構格好良いかも」
マスコットポジションの三十代派遣社員(時給制)に病気とまで言われた悪癖がでたトランセイザーは目の前の男に見惚れる。なお、トランセイザーの声は貝類の名前の妻を持つ婿養子の同僚の声と同じ。そう、オッサンの声だ。
「きょ、今日の所は引かせて貰うっ! 今度会ったら、この音速のソニックが仕留めてやるから覚悟しろっ!」
そのままソニックは去って行き、トランセイザーだけがその場に残された。
「……なんで帰ったのかしら?」
自分が気持ち悪いからだと分からなかったトランセイザーが首を傾げていると、再び近づいてくる影があった。
「……サーヴァント? 随分妙な格好ですね。確か、特撮ヒーローでしたか? 聖杯からの知識で少しは知っています」
セイバーはあまりに異質な格好に戸惑い、トランセイザーはセイバーとアイリスフィールに見蕩れる。
「あ、綺麗な人達ねぇ。え~と、貴女もサーヴァントで良いのかしら?」
「ああ、そうだ。私はセイバーのクラスを得て現界した」
「私はキャスターよ」
「嘘を付けっ! 貴様の何処か
「す、好きでこんな格好になったんじゃないわよっ! 私だって本当はヒラヒラの衣装を身に纏って踊るように戦いたかったわよぉ! 男の子じゃなくって女の子の憧れの魔法少女になりたかったのよぉ!」
もう一度言うがトランセイザーの声は十七号と十八号を吸収した人造人間と同じ声だ。泣き叫ぶとトランセイザーにセイバーが動揺した時、別の声が聞こえてきた。
「何やってるっチ。トランセイザー! アイツは敵っチよ! さっさと構える、ぐはぁっ!」
出てきたのは尻尾が星型の謎の生物。その愛くるしい姿にセイバーは見とれ、トランセイザーは殴り掛かった。
「おい、チーポ。元を正せばアンタがっ!」
「痛い痛い。トランスナックル痛い」
「だからヒーローっぽい名前付けるんじゃないわよぉ! あ~も~、やったるわっ!」
「その粋だっチよ! ほら、一般人が巻き込まれない様に空間固定ッチ!」
その瞬間、周囲の時が停まった。
「なっ!? これは……」
「さぁ、行くわよっ! 超空転神トランセイザーが相手をしちゃうんだからっ!」
トランセイザーはライトセイバーを抜くとセイバーに切り掛る。セイバーは剣を横にして振り下ろされた其れを防ぐが少し押し切られ、トランセイザーは剣の合わさった部分を支点にしてクルリと回る。セイバーが咄嗟に伏せると結んでいた金髪のリボンから先が地面に落ちた。
「……強い」
「……あれ? これ結構いけるかも」
その言葉にセイバーは視線を強め、距離を取ると剣を大上段に構える。剣に暴風が集まりだし、セイバーはそのまま剣を振り下ろした。
「
「きゃっ!?」
放たれた暴風は地面を削りながらトランセイザーに衝突し吹き飛ばす。土煙が舞う中、アイリスフィールはセイバーに近付いていった。
「セイバー、、まだ生きてるわ」
「ですが、直撃しましたから無傷では済まないでしょう」
セイバーがトランセイザーが居るであろう場所を油断なく見つめる中、土煙が晴れ、
「
「こんなに愛らしい僕まで殺す気っチかっ!」
クラス キャスター
真名 トランセイザー(篠原心愛)
マスター 雨生 龍之介
性別・身長・体重 女性 ? ?
属性 秩序・善
力 A++ 耐久 A+ 敏捷 A+ 魔力 D 運 A++ 宝具 A++
保有スキル
ギャグ補正 A
どんな目に遭ってもギャグで済むスキル。このランクなら本当なら即死するダメージを受けても””死ぬかと思った”で済む。
主人公補正 B
一つの物語の最重要人物の証。世界を味方に付けた様な都合の良い事が優先して起こりやすい。また同ランクの直感・仕切り直し・戦闘続行・守護騎士・心眼(偽)・勇猛・嵐の航海者の効果も併せ持つ特殊スキル。
単独行動 ex
マスターの魔力供給無しでいくらでも現界でき、宝具も単独で使える。
道具作成・陣地作成 F
能力的に無理。部屋の模様替えや学生の下手な工作レベル
変身 A++
スーツを二段階に変化させて能力を強化させる。変身する事で使用可能な宝具有り
宝具
見た目は愛玩動物(チーポ)
ランク A+
対?宝具
レンジ ?
最大捕捉 ?
トランセイザーの相棒的存在の派遣社員。語尾の~チは世界観だけでも望むようにやってやれとの上司命令。空間固定や空間移動。変身などの多彩な能力を持っていおり、疑い深さ故の鋭い観察眼も併せ持つ
マルチディメンションスプレッダー
ランク A+
対人宝具
レンジ
最大捕捉
十徳ナイフ状の柄から武器を召還
マジカルプリフィアスターライト
ランク A++
対魔幻獣宝具
レンジ ?
対象 ?
トランセイザーの必殺技。一段階目は腹部からビームを放つ。変身を重ねる事で強化。
宝具 トランチアーズ
ランク A+
対魔幻獣宝具
レンジ?
最大捕捉 ?
トランセイザーのサポート要員であるトランチアーズを召還。三人は単独行動Bを保有
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