第四次ギャグキャラ戦争 ただしセイバー除く   作:ケツアゴ

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今回最後のほうが胸糞展開です ご注意を


戻れぬ男と絶望した少女

「ご協力お願いしまーす!」

 

 セーラー服姿のケイネス一行が逃走用自転車でホテルへと向かう途中、人探しのチラシを配っている者達が居た。気配遮断スキルが発動している為にケイネスには気付かなかったが、通行人が受け取ったチラシには行方不明になった子供搜索に対する情報提供募集について書かれていた。

 

「あらら~、大変ですねマスター。どうします?」

 

「……」

 

 行方不明になった子供は数十名。それが何の痕跡も目撃情報も残さずに消え去るのは余りにも異常。これが魔術師の仕業だと察したケイネスは眉間に皺を寄せて黙り込んだ。

 

 魔術師とは己の研究の為なら人としての倫理など捨て去るもの。だがケイネスはこれほど多くの無関係な子供が巻き込まれる事に対して無関心でいられない程には人間らしさを残していた。不機嫌な表情のまま捨てられたチラシを拾ったケイネスはホテルへと戻ると休息を取る為にベットへと入る。しかし、その手にはチラシが握られたままだった。

 

 

 

『ひかえるだべぇ~!』

 

 その時である。部屋に設置されたテレビに髑髏マークが現れる。三人は慌てて跪いた。

 

「……クソッ! 情報を得る為には跪くしかないとは……」

 

「しょうがないでしょ~。ドクちゃん、直ぐにへそ曲げちゃうんだから」

 

「アンタ達っ! 無駄口叩いてないで黙って聞いてなさいっ!」

 

 すっかりドロ○ジョと化したソラウに言われるがまま二人が黙るとドクロベェが話しだした。

 

『オメェらが気にしている失踪事件だが、キャスターと間桐が犯人だべぇ~。キャスターの宝具は海魔を無限に召喚する本。そしてマスターと共に狂っているから気を付けるべぇ~』

 

 三人は爆発に備えて身構える。だが、今回に限っては爆発が起きなかった。

 

『吾輩も孫が居る身として今回の事件は非常に腹立たしい。容赦せずにぶっ飛ばすべぇ~!!』

 

 

 

 

 

「それじゃあ、今回のメカは”ガキダイショー”よぉ~」

 

 ライダーが屋上に呼び出したのは少年の頭部に鯛を付けた姿をしている。胴体は肥満型で胸元に太い線が入ったオレンジの服を着ていた。

 

「……なんか弱そうだが大丈夫か?」

 

 不安を口にしたケイネスに対しガキダイショーが屈んで睨みつける。

 

『アァン? ケイネスのクセに生意気だぞ!』

 

 

 

 

「……これは少々拙いな」

 

 木の陰から様子を伺っていた綺礼は地面に埋まったアーチャー(バギー)を見ながら呟く。その時、長年の戦闘経験から危険を察した彼が体をずらした時、先程まで彼の足があった場所を縦断が通り過ぎた。銃弾が来た方向を見ると其処には切嗣の部下である舞弥が銃を構えている。その後ろにはアイリスフィールの姿があった。

 

「舞弥さん。切嗣は彼の事を危険視していたわ。まさか切嗣が居ない時に襲撃を受けるなんて。……気を付けて」

 

「了解ですマダム。……もう少しお下がりを」

 

「……仕方がないな。早く済ませるとしよう」

 

 綺礼が二人との戦闘を決めた時、アサシン(横島)達の方でも動きがあった。

 

 

 

 

 

 

「行くぜ、赤っ鼻野郎っ!」

 

「誰の鼻が赤っ鼻だっ! このクソ野郎っ!!」

 

 アサシンはアーチャーが身動きできないからと調子に乗って笑いながら切り掛る。アーチャーは頭から真っ二つにされ、アサシンはガッツポーズを決めて高笑いした。

 

「よっしゃぁあああああっ! まずは一勝っ! この調子なら……はうっ!?」

 

 アサシンは己の願いに一歩近づいたと喜び飛び跳ねる。そして着地と同時に股間に衝撃を受け、鼻水と涙を垂れ流しにしながら転げ回った。痛む股間を押さえながら地面を見ると其処には宙に浮くアーチャーの腕、そして先ほど真っ二つになったはずのアーチャーの頭が宙に浮かんでいた。

 

「しょええええええええっ!? ば、化けもんやぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「おいおい、俺達はそもそも幽霊だろうが、馬鹿野郎。残念だったな。俺には刃物は効かねぇよ。なにせ俺は切っても切れないバラバラ人間だからなっ! んで、さっきの仕返しだっ! ”特性バギー玉”!!」

 

 腰を抜かして這いずりながら逃げ出すアサシンに対しアーチャーは大砲を出現させる。導火線に火が着くと大砲の弾が発射される。アサシンは咄嗟に『守』という文字が書かれた珠を出現させて結界を発動し、そのまま大砲の弾は結界をぶち破ってアインツベルン城の一部を破壊した。

 

「ギャハハハハハ! んなもんでバギー玉が防げるか馬鹿めっ! 次はコッチからハデに行くぜ糞餓鬼っ!」

 

 アーチャーが拳を握り締めて開くと指の間にナイフが出現する。アサシンは迫ってくるナイフを避けようと逃げ回るがバギーのてはその後を置い続け追い詰めていく。だが、ある程度の距離まで追い詰めた時、急に手の動きが止まった。

 

「な、なんやっ!? 勘弁してくれんのかっ!?」

 

「んな訳あるか馬鹿野郎っ! 此処からじゃ届かねぇんだよっ! ……あ」

 

 己の攻撃の射程範囲をうっかり話してしまったアーチャーを見るアサシンは笑みを浮かべると『爆』と書かれた珠を投げつけた。

 

「おっしゃぁぁぁっ! この距離から攻めればワイの勝ちじぁあああっ!」

 

 先程から関西弁が出ているアサシンは手を振りかぶると珠をアーチャーに投げつける。だが、飛距離が足りなかった。珠は丁度二人の中間で止まり、

 

「……へ? どひゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 二人纏めて吹き飛ばした。アサシンは顔面から機に叩きつけられ鼻血を流しながら無様に倒れ、地面に埋まって身動きの取れなかったアーチャーは爆発によって脱出する事が出来た。その体は少々の火傷を負っているようだが大した怪我もなく、怒りに満ちた表情でアサシンを睨んでいる。

 

「……糞餓鬼がぁ。もう絶対許さねぇ! 派手に死にやがれっ!!」

 

 アーチャーの前に大砲が合計五個も出現し全ての砲門がアサシンへと向く。だがアーチャーが導火線に火を付けるよりも早くアサシンの姿が掻き消えた。

 

「ちぃ。令呪での逃走かよ」

 

「……その様だな」

 

 アイリスフィール達も一緒に逃げたらしく血溜りはあるが死体は見えない。アーチャーは仕方なくアインツベルン城を破壊するだけして帰還する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

「……おかしい」

 

 その頃、ケイネスと同様にウェイバーも児童の連続失踪が何処かのマスターの仕業である事に気付いていた。チラシに載っていた行方不明になった時刻に居たであろう場所に印しを付けていくと遠坂邸が中心に有り、一見すると遠坂陣営が犯人のように思える。だが、ウェイバーはその事に疑問を持った。

 

「なあ、ランサー。いくら何でも疑ってくれって言っているみたいじゃないか? あんな派手なパフォーマンスで注目を集めて、今度は家を中心に人攫いなんてさ」

 

「確かに不可解です。……罠でしょうか?」

 

「だとすると……」

 

 ウェイバーは地図を眺めながら頭を働かせる。今持っている情報をフルに働かせ犯人の思考を読み取ろうとした彼は一つの事に気が付いた。

 

「ランサー、多分犯人は間桐だ。失踪なんだけど、遠坂邸の周辺を中心に街中で起きているのに、間桐の屋敷周辺では全く起きていない。……くそっ! 子供ばっかり狙いやがってっ! ランサー! 今すぐ勝負を仕掛けるぞっ!」

 

「ですがマスター。相手の陣地に乗り込むのは危険では? ……私一人で行きます。ですのでマスターは此処で……」

 

 義憤に燃えるウェイバーだったが、ランサーは昨日の事もあり家で待機する様に進言する。それがウェイバーの怒りに触れると想定していたが、向けられた表情は怒りではなかった。

 

「……分かっているよ僕が足手纏いだって事は。でも僕はこの戦いで命を捨てる覚悟で参加したんだ。其れに、こんな事している奴に一言言ってやりたいんだ。……なあ、ランサー。お前に絶対叶えたい願いがあるのは分かっている。でも、僕も黙って見ているわけには行かないんだ。だから、連れて行ってくれ」

 

「どうやら私は貴方を見くびっていたらしいですね。申し訳ありませんマスター。……その素晴らしい勇気と考察力、貴方はもっと自分を認めるべきです」

 

「う、うるさい。さっさと行くぞっ!」

 

 ウェイバーは褒められた事に顔を真っ赤にしながら部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちぃ! 仕事帰りに敵と会うとはなぁっ!」

 

「マスター、下がっていてください」

 

 そして間桐家に向かう途中、二人の前にアーチャーが出現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ちゃん、お土産だよ」

 

「……有難う」

 

 どこかで酒でも飲んできたのか酒臭い雁夜は布に包まれた塊を桜に差し出す。桜が開けると其処には葵の頭部が入っていた。

 

「お母…さん…?」

 

「いいや、違うよ? これは時臣が用意した葵さんの偽物さ。でも、そっくりだからお土産に持って帰ったんだ。嬉しいだろう? 待っていてくれ。早く時臣を殺して聖杯を手にしたら、葵さんと凛ちゃんと桜ちゃんと俺の家族四人で幸せになるんだ」

 

「お父さん…を殺すの…?」

 

「ああ、そうだ。オジさんは君の為に沢山殺して来た。時臣も君の為に殺すんだ。嬉しいだろ? ……返事はどうしたっ!」

 

 雁夜は桜の頬を平手打ちにして床に倒す。そしてそのまま桜の肩を乱暴に掴むとガクガクと揺すりだした。

 

「俺は! お前の為に命を削って、その上人を殺しているんだっ! 少しは感謝したらどうなんだっ!!」

 

「御免…なさい…」

 

「チッ!」

 

 雁夜は桜を突き飛ばすと乱暴な足取りで部屋から出ていく。その様子を眺めていた臓硯は桜に近づくと笑みを浮かべて囁く。

 

 

 

「奴もお前を助けようとしなければ彼処まで落なかったものだがなぁ。それにお前の母親や他の子供も死ななくて良かったものを……」

 

「私の…せい…」

 

 桜の心はより一層闇に沈み、彼女助けようとしていた雁夜の命は今夜尽きる。

 

 




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