間桐家の蟲蔵で桜に対して行われる調整。嫌悪感を感じさせる蟲達が桜の体に群がり幼き矮躯と精神を犯し尽くす。そして、その傍で雁夜による悍ましき所業が繰り広げられていた。
「ほら、あの子が見えるかい? 君達と違ってあの子は不幸なんだ。桜ちゃん、今から君の為にこの子達が死んでくれるからね」
雁夜は桜に優しげに話しかけると攫って来た子供達に無数の蟲を嗾ける。翅刃虫と呼ばれる牛骨すら噛み砕く蟲によって子供達は生きたまま食い尽くされ、暫くの間蔵内部に断末魔の叫びが響いた。
「桜ちゃん、オジさんはこれからも頑張るよ」
彼は気付いていない。今の自分こそが忌み嫌っていた魔術師の中でも腐敗した部類に入るという事に。自分を見る桜の目が冷めた物になっている事に。そして、その全てが臓硯とキャスターの目論見通りという事に。
「しかし、子供を集めづらくなって来たな。桜ちゃんを助ける為にももっと人数が居るっていうのに……」
雁夜とキャスターによる児童連続失踪事件の影響で冬木市では外で遊ぶ子供の姿が減って来ている。キャスターなら家の中から攫う事も可能なのだが雁夜はそのような事など知らされておらず、一人でせっせと子供達を攫い集めていた。
「しかし、臓硯殿の思惑通りに行きましたなぁ。これでますます憎き神への冒涜が進みます。……例の約束お忘れなく」
「ああ、分かっているぞ。雁夜めを狂わし桜に更なる絶望を与える代わりに奴が死ねば儂が代わりにマスターなってやろう」
「あの様な半端者がマスターでは勝ち抜けませんからな。それに、少女を助けようとする者を狂わせ魔道に落とすのも神への冒涜になりましょう」
雁夜の姿を水晶玉で観察していた二人は堕ちていく姿を見て嘲笑う。そして雁夜は効率よく子供を集める為に冬木市から外出しようとしていた。
「待っていてくれ葵さん。時臣を殺し、桜ちゃんを取り戻して君達を幸せにするよ」
そして、この決断が彼の運命を大きく左右する事になる。それは決して良い方向ではなく……。
「バーサーカーが消えた?」
「どうも勝手に出掛けたようなのです。……頭が痛い事だ」
時臣が召喚したバーサーカーは狂化のランクが低いからか理性が確かだった。だが、馬鹿だった。人の話を聞かず、もし聞いていても半分も理解できていない。今回も屋敷で待機という命令を忘れて遊びに出かけたようだ。通信先の教会では璃正が話を聞いて呆然とし、時臣は優雅さが崩れていた。
「……とりあえずセイバーを其方に向かわせましょう」
「ああ、頼むよ。流石に英霊なしで襲われれば危ういからね……」
二人は同時に溜息を吐く。もしこの時、偵察に出かけていて不在の綺礼がいれば心の奥から湧き出た悦楽に戸惑っていただろう。
そしてその頃、バーサーカーは昼間から街を出歩いていた。しかも、実体化してだ。筋骨隆々でハゲの異国人は大いに目立つがバーサーカーに気にした様子はない。
「全く、ずっと家の中だもんな。精米洗浄はこれからだっていうのに……」
説明しよう! 精米洗浄とは聖杯戦争の覚え間違いなのである!!
「……それにしても何か食いてぇなぁ。おっ! 肉だっ!」
公園内を歩くバーサーカーは茂みに生えた雑草を見るなり喜んで飛び付く。そしてそのまま地面から引っこ抜いて貪りだした。
説明しよう! 馬鹿には何でも食べ物に見えるのだ!!
「うめー! うめー!」
説明しよう! 馬鹿には味が分からないのだ!!
「なあ、オッサン。さっきから何してんだよ」
そんな時である。赤い髪をした少年を始めとした数人の少年が話し掛けて来た。
「何って、飯食ってんだよ……ゲップ!」
バーサーカーは数本の雑草(精々数十グラム)を食べて満腹になる。なお、バーサーカーは二メートル近い巨漢である。
「……そんなんが飯なの? ったく、ほら、これ分けてやるよ」
それを見て呆れ顔の少年達は余ったお菓子を差し出した。
「しかし、教会に直接乗り込まないんですか?」
ライダーは新しく造り出したメカを操縦しながらケイネスの方を向く。ドクロベエによって監督役の不正を知ったケイネスだが、彼が乗り込む事にしたのは教会ではなく遠坂邸だった。
「貴様の宝具で不正を知ったが、他の陣営を説得して乗り込める訳はなかろう? そして我々だけで乗り込んで証拠がなければ監督役の権限で六陣営から討伐対象として追われるかもしれん。ならば先に御三家の一角を落とすのだ」
「そうですか~? まあ、なら良いんですがね。では、宣戦攻撃と行きましょう。ポチッとな」
ライダーはレーダーでメカが遠坂邸の
「喝ぁ~っ! そのような事でどうするっ!!」
「……は、はぁ」
「返事が小さいっ! ちゃんと声を出さんかっ!!」
セイバーを館に招いた時臣だったが、自分自身は館から出ようとしない事に憤ったセイバーによって正座をさせられていた。道着を着て竹刀を背負ったセイバーは腕組みをしながら時臣に喝を入れる。
「私の願いを言ってみろっ! 新ヒロインルートだと言っただろうっ!」
「いや、聞いていないのだが……。しかも意味が分からないし……」
「何となく察しろっ! それでも弟子二号かっ!」
「弟子になった覚えはないのだが……むっ?」
もう優雅とか忘れ去った時臣の足が痺れてきた時、庭の地面が盛り上がり巨大で熱々の焼き芋が地中から現れた。芋の胴体には鋭い爪が生えた手と髭が生えている。
「遠坂時臣さ~ん、こんにちわ~! 今回のメカは焼き芋をモデルにした”石焼キ
「焼き芋っ!」
セイバーが涎を手で拭った時、メカの胴体から火に包まれた石礫が放たれた。
「ほら、逃げちゃ駄目だろ?」
雁夜は逃げようとした子供を押さえつけるとナイフを振り下ろす。吹き出した血が彼の体にかかるがヘラヘラと笑う雁夜は子供を殺す事に快楽さえ覚え始めていた。
(俺や桜ちゃんがこんなに苦しんでいるんだ。だから、普通の幸せを享受している奴らも不幸になるべきなんだ)
雁夜は自分の行いを正当化しながら悲劇の主人公を気取る。その時、背後から足音が聞こえてきた。
「雁夜君……? 一体こんな所で何を……ひっ!?」
「葵さん? 一体何に怯えているんだい?」
時臣の妻であり雁夜の初恋の人である葵は怯える雁夜の姿を見て嬉しそうに笑う。血塗れでヘラヘラ笑いながら後退る彼女を見て雁夜は首を傾げた。まるで何で怯えられているのかが分からないとでも言いたそうだ。
「……来ないで」
「……困った人だなぁ。これは君達の為にやっているんだ。この子達を殺し、時臣を殺して皆で幸せになる為にさ」
「ひっ!」
葵は悲鳴を上げて逃げて行き、雁夜はそれを見て体をワナワナと震わせる。すねての行為を葵と桜の為だと行って自分を励ましていた彼にってその姿は許せるものではないのだ。
「……そうか。時臣が何か魔術を掛けているんだな。なら、正気に戻してあげないと」
雁夜は蟲を嗾けて葵の動きを止めると肩を掴む。
「さあ、今すぐ助けて……」
「離してっ!」
葵は振り向きざまに雁夜の顔を引っかき彼の頬に血が滲む。この時、雁夜の中で何かが壊れた。
「……そうか。きっと偽物なんだ。じゃないと葵さんが俺を怖がるはずがないっ! 蟲達、この偽物を食い殺せっ!!」
~おまけ~
クラス ライダー
真名 ボヤッキー
マスター ケイネス・ロードエルメロイ・アーチボルト
性別・身長・体重 男性 ? ?
属性 混沌・悪
力 D 耐久 D 敏捷 C 魔力 E 運 A 宝具 EX
クラス別スキル
騎乗 C (A+)
対魔力 D
個別スキル
仕切り直し B
黄金律 C
戦闘続行 A
宝具
逃走用自転車
ランク:B+
種別:対人宝具
レンジ:−
最大補足:-
空も飛べる三人乗りの自転車。下記の宝具で作成したメカに乗っている時に負けた場合自動発動。発動中は気配遮断スキルがA++相当で搭乗者全員に付随される。
ランク:A+
種別:対人宝具
レンジ:−
最大補足:-
自動発動宝具。泥棒の神様であるドクロベェが色々と情報をくれる。ただし、敗走中にはお仕置きが自動発動する。
メカ制作
ランク:EX
種別:対人宝具
レンジ:−
最大補足:-
数々のメカを制作してきた実績が宝具となったもの。数万円~からの制作費から対軍~対城に匹敵するメカを作成。メカは宝具扱いとなり、ランクはA~A++。なおメカを動かすには女一人男二人の搭乗が必須であり、このメカに乗っている時は騎乗がA+となる。
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