第四次ギャグキャラ戦争 ただしセイバー除く   作:ケツアゴ

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堕ちていく男と神の死

湾岸倉庫でのメカ対人間という、とても魔術師同士の闘いとは思えない闘いの最中、其れを遠くから観戦している者達が居た。

 

「え~と、アイツらって英霊・・・・・・なんだよな?」

 

「ええ、其れで間違いないようです。しかし少々厄介な宝具のようですね」

 

 遠くから双眼鏡を使ってライダーの操るメカを眺めていたウェイバーは、本で読んだ内容からの推察とはあまりに掛け離れた戦闘内容に疑問を抱き、隣にいるランサーは冷静に英霊二体戦力を分析する。その手には中華マンが詰まった袋が抱えられていた。

 

 

 

 何故この様な場所に中華マンを持って来ているのか。それは一時間程前に遡る。夕食後、二人を孫だと暗示で思い込んでいるグレン・マッケンジーは偵察の為に出掛けようとしている二人に気付いた。

 

「おや、何処かに出かけるのかな?」

 

「う、うん。少し姉さんと街を見に行こうって話になって」

 

「うむ。姉弟仲が良いことだ。ああ、二人はバイクの免許を持っていたかな? マーサに年だからと乗るのを辞めさせられていたが、整備だけはちゃんとしているのが裏に置いて有るんだが」

 

「ええ、私が持っていますのでお借りします」

 

 ランサーはグレンからキーを受け取るとバイクを取りに行く。昔の英雄であるランサーがバイクの免許など持っているはずがないが、彼女は英霊が持つスキルの一つである『騎乗』をBランクで持っており、バイク程度なら乗る事が出来た。なお、本当はランサーには与えられないスキルなのだが彼女自身が元々持っており、もし与えられる”セイバー”ならばAランクになっていただろう。

 

 

 

「では、しっかり掴まっていて下さいマスター」

 

「あ、ああ……」

 

 ウェイバーはバイクの免許など持っているはずがないので後ろに乗る事になり、当然の様に運転するランサーにしがみつく形になる。ウェイバーが真っ赤になりながらランサーの腰に手を回して体を密着させていると、絹の様な金髪が彼の鼻を擽った。

 

(……いい匂いだな……って、何を考えているんだ僕はっ!?)

 

「どうかしましたか?」

 

「な、何でもないっ!」

 

 直ぐに我に帰ったウェイバーは怪訝そうな顔をするランサーを誤魔化す。ランサーも納得はしていないようだが特に追求する事でもないと判断したのかそれ以上何も言わなかった。そして其の儘走っていた時、二人はT字路で信号に引っ掛かった。

 

「ちぇ、ついてないな」

 

「仕方有りませんよ、マスター。……おや?」

 

 ランサーがバックミラーで後ろを見ると小学生程度の少女が何かに追われる様に走っていた。少女はそのまま走り去って行き、ランサーは少々気になったものの信号が変わったので進む予定だった右に進む。そして少女が居た場所からランサー達の姿が見えなくなった頃、無数の蟲を引き連れた雁夜が少女の後を追うように走ってきた。

 

 

 

 

 

「こらこら、駄目じゃないか。君は桜ちゃんを救う為に必要な命なんだから。君は今まで幸せに暮らしてきたんだろう? だったら、もう死んでも良いじゃないか」

 

 それは塾帰りの事。偶々何時も一緒に帰る友人が風邪で休んでいたので一人で帰っていた少女は気紛れで何時も通らない道を選び、その途中で雁夜に出会った。フードを被ったその顔の半分は壊死しており背後に無数の蟲が蠢く姿は少女に恐怖を与えるのには十分だろう。そして少女に気付いた雁夜は不気味な笑みを浮かべながら少女に襲いかかって来た。

 

「い、嫌。誰か助けて……」

 

 袋小路に追い詰められた少女は助けを求めて声を上げ防犯ブザーを鳴らすが誰に耳にも届いていないようかのように助けはやって来ない。ゆっくりと迫って来る雁夜から逃げようと少女が後ずさった時、誰かにぶつかった。

 

「おやおや、気を付けなければなりませんよ? これはお仕置きをしなければなりませんなぁ」

 

 少女が最後に見たのは魚のような不気味な目をした男が自分に向かって手を伸ばす姿だった……。

 

 

 

 

「あれ? どうしたんだよ、ランサー」

 

「燃料が切れそうです」

 

 途中で進路変更をしたランサーはそのままガソリンスタンドへと向かう。この頃はまだセルフではなくフルサービスの為に機械などが苦手なウェイバーでも問題はなかった。店員がガソリンを入れている中、暇を持て余した二人はすぐ隣のコンビニに目をやった。

 

「中華マン100円均一ですか……」

 

「あんだけ食べたのにまだ食べたいのかよ?」

 

 ランサーは魔力供給の為と言って大量の食事を摂取する。ウェイバーも自分の魔力が少ないのは分かっているので文句は言えず、グレンやマーサも孫娘(だと思っている)ランサーの食欲旺盛っぷりに喜んでいた。

 

「いえ、此方の世界の知識は聖杯から得ていますが味は分かりませんから気になりまして。……この国の食事は美味ですから。ガウェインなど山盛りのマッシュポテトを喜々として差し出して来てました……」

 

「ああ、英国の飯は少しな。……余り金無いから五個までだぞ」

 

「本当ですか!」

 

 ランサーは召喚時からずっと見せていたクールな雰囲気から一変して嬉しそうな顔になる。もっとも、食事時にはいつも見せていたのだが。

 

 

 

 

 

「このカレーマンとやらは中々の味ですね。祖国にはない味でした」

 

 そして英霊同士の戦いを感知した二人は遠くからアサシンとライダーの戦いを観戦していた。その英雄同士の戦いとは思えない内容にウェイバーが戸惑う中、突如ランサーが何かに反応した。

 

「マスター!」

 

「うわっ!?」

 

 ランサーはウェイバーを抱き締めると物陰に隠れる。鎧越しにセイバーの体温が伝わり耳元に息がかかった。突然の事にウェイバーが赤面する中、宙を舞った中華マンの袋を銃弾が貫いた。銃弾は地面に減り込み煙を上げる。

 

「……どうやら銃で狙われているようです。下手をすれば三つ巴の闘いをしながら狙撃を気にしなければなりません此処は・・・・・・」

 

 一旦退きましょう。ランサーがそう言おうとした時、宙を舞った中華マンの袋は運悪く口を下にして地面に落ちる。こぼれ落ちた中華マン達は汚れた地面の上でベチャベチャと潰れた。其れを見たランサーの体は微かに震え出す。

 

 

「くっ! 店先で食べるのはマナー違反だからと直ぐに食べないのが災いしたか!! 食べ物の恨みは恐ろしいと言う事を思い知らせて……」

 

「わー止めろ馬鹿っ! 帰りにまた五個…いや、十個買ってやるからっ!」

 

 ランサーの手はアホ毛に伸び、ウェイバーは直感で其れが大変拙いと感じ財布の中身を気にせず止めに掛かる。それが幸いしたのかランサーの手が止まった。

 

「……分かりました。此処は戦略的撤退と行きましょう。全力で飛ばしますので、その帰りに魔力供給をしても問題ではありませんね!」

 

 あくまで食べ物に釣られたわけではないと言い訳をしつつ食べ物の恨みを押さえ込んだランサーは地面に落ちた中華マンに一瞬だけ未練がましい視線を送るとウェイバーを抱えてバイクの隠し場所まで向かっていく。途中、何度かウェイバー狙いの狙撃があったが全て直感で避けたランサーはバイクの場所まで無事到着した。

 

 

 

 

『切嗣、どうしますか?』

 

『追跡を……いや、少々拙い事態になった。何だ、あの梅干のゆるキャラもどきは……。舞弥、アサシンにこう伝えてくれ……。この場を切り抜けたら今日付けた下着を与える、と』

 

『……了解しました』

 

 

 

 

 

 そして数時間後、戦いを終えたケイネスは魔術で姿を誤魔化しつつホテルに帰還した。ソラウは疲れたらしくソファーに座り込み、ケイネスはワインを飲もうと栓を開ける。すると中からドクロマークの物体が飛び出してきた。そしてバネでボトルの中とつながっている為にピョンピョン揺れ動くその物体から、自転車に乗っている時に聞いた例の声が響いてきた。

 

 

『吾輩は泥棒の神様”ドクロベェ”。さあ、控えるだべ~!』

 

「「「ははぁ~!」」」

 

 何故かプライドの高い二人でさえその声には逆らえず跪いていた。

 

「で、ドクロベェ様。何の用なのかしら~?」

 

『オメェらに他の陣営の事を少し教えてやるべぇ~。セイバーのマスターだが、どうやら監督役がマスターになってるべぇ~! それと遠坂と監督役の息子もグルだから、まぁ気を付けるべぇ~! んじゃま、また負けたらママより怖いお仕置きが待っているから覚悟しておくべぇ~!』

 

 その言葉と共にドクロマークの物体はワイングラスごと爆発し、三人はワインまみれになった。

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「あ、すみません。中華マンは全部売り切れました。明日またお越し下さい」

 

「神は…死んだ……」

 

 この後、菓子パンの買いあさりでウェイバーの財布も半死半生になった。

 

 




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