第四次ギャグキャラ戦争 ただしセイバー除く   作:ケツアゴ

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仕切り直しの第一話

 冬木市の外れにある小さなクラブで一人の魔術師が盛大に溜息を吐いていた。彼の名はマーク。奇しくも本名が同じだという彼が呼び出した英霊こそが溜息の原因だ。

 

「がっはっはっはっはっ! 酒だ! 酒持って来いっ!」

 

「……いい加減にしろ、アサシン。悪目立ちしすぎだ」

 

「なぁに、他の英霊なんて私に掛かればチョチョイのチョイだっ! う~しっ! もう一件行くぞっ!」

 

「まだ飲む気かっ!?」

 

 折角用意した聖遺物は運んでいる途中で車ごと崖下に落ちて行き、仕方なく何もなしで召喚したら出てきたのは目の前の問題だらけのアサシン。アサシンだというのに気配遮断はお粗末。そして何故かカリスマのランクが異様に高く自信家。そして名乗っているミスターサタンなどという名前は聞いた事が無い。

 

(まあ、願いが”孫を後継者にしたかった”だから私の願いの邪魔にはならんが……)

 

 とりあえず宝具が評価規格外のEXという事に期待する事にしたマークはサタンと共に飲み明かした後で裏路地を通る。そして宿泊先である町外れの安マンションが見えてきた所で足が止まった。

 

「……アサシン」

 

「ああ、分かっている。私に任せておけ」

 

 サタンはマントを上に放り投げ拳を構える。二人の目の前にはコンビニ袋を持った少女と赤い外套を身に付けた英霊が立っていた。

 

「下がっていろ、マスター」

 

「は、はい! 頑張って下さい!」

 

 英霊、アーチャーはマスターである桜を下がらせると双剣を手元に出現させる。油断なくサタンを見つめるアーチャーだったが心の中では動揺していた。

 

(……やれやれ、どういう事だ? ランサーとの対決も起きていないし、私を呼び出したのは凛ではなく桜。そして目の前にいる英霊には見覚えがない。私の知っている聖杯戦争とは大分違うようだな……)

 

「さあ! 何処からでも掛かってこいっ! このサタン様が相手になってやるっ!」

 

「おい、馬鹿っ! 真名をバラすなっ!」

 

 サタンはアーチャーに先手を譲るつもりなのかかかって来ようとしない。その構えは確かに格闘家としては一流の様だが英霊には遠く及ばない。アーチャーは自信の裏に宝具があると察し桜に視線を送る。マスターの権限でサタンのステータスを見た桜は目を疑った。

 

「その人、力と敏捷がD+で魔力はEですが……嘘っ!? 宝具と耐久がEXで運が……(測定不能)!?」

 

「がっはっはっはっはっはっ! 私の強さに恐れをなしたのなら今すぐ降参するのだなっ! そうすれば命だけは助けてやらん事もないぞ?」

 

「……いや、私には聖杯に託す願いなどないがマスターの為にも必要なのでな。貴様の鉄壁の防御、崩させて貰うっ! マスター、令呪だっ! 敵を全力で撃ち抜けと命じてくれっ!」

 

「はい! 令呪を持って命じる。敵を全力で撃ち抜いてください!」

 

 マスターに与えられるたった三回の命令権。それを消費する事で自らの英霊の動きを抑制し、時に奇跡的な力を発揮する。そして今は桜の命令によってアーチャーの宝具の威力が大幅に上昇していた。

 

I am the bone of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)偽・螺旋剣(カラドボルク)

 

 ドリルの様な刀身を持つ剣が弓によって打ち出されサタンへと迫る。呆然としていたサタンの顔面に其れが見事命中し、衝撃によって土煙が立ち込めアーチャーの視界を遮った。

 

「……流石に今のを受けて無事では済むまい」

 

 令呪を受けて底上げされた威力を持って放った宝具は無防備な所、しかも急所である顔に命中した。これで倒せてはいなくても重症は負わせた。アーチャーはそう確信していた。

 

 

「ひぇ~! 痛いよ~! 死んじゃうよ~!」

 

「なっ!?」

 

 土煙が晴れ、鼻血を垂らしながら転げまわっているだけ(・・)のサタンの姿を見るまでは……。

 

「引くぞマスターっ!」

 

 アーチャーは桜を抱えると即座に退却する。鼻を押さえて立ち上がったサタンはその姿を見て勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

「が~っはっはっはっはっはっ! 私の実力に恐れをなして逃げていったぞっ!」

 

「……まあ、実力…なのか?」

 

 そうしてほうが精神衛生上良いと感じたマークは一人納得する事にした。確かにサタンは攻撃を受けて転げまわっていただけだろう。だが、相手がアーチャーらしき事を知る事ができ、宝具を見た上に令呪を一個消費させる事が出来た事からして上々と言えるだろう。

 

 

 

「……ふん」

 

 その夜、間桐臓硯は空を見上げ黄昏ていた。彼に変化を齎した、いや、かつての彼に戻らせつつあるライダーもその横で月を眺めていた。

 

 

「お前、なんでこんな酷い事するんだ?」

 

 元々は素質がないと期待していなかった慎二が呼び出した無名の英霊。だが、知名度と魔力部おsクで弱体化しているであろうにも関わらず能力は高く、自分をマスターに鞍替えさせようかと思いながら桜の調節を行っている時の事だった。蟲藏に入ってきたライダーは調整用の虫を宝具で吹き飛ばすと臓硯を睨んで問うてきたのだ。

 

「カカカ、決まっておろう。聖杯を手にする為じゃ。貴様も叶えたい願いが有るから喚ばれたのじゃろう?」

 

「確かにボクにも願いがあるからシンジに喚ばれたんだぞ。でも、こんな酷い事を見過ごしてまでボクは願いを叶えたいとは思えない。ボクの願いは早く目覚めて友達と遊ぶ事なんだ。だけどこんな酷い事を見逃してたらボクは友達と楽しく遊べないぞ」

 

「くだらんな。余りにもくだらん願いだ。儂はな聖杯によって不老不死を手に入れたいんじゃよ」

 

「……それで、その後はどうするんだ?」

 

 ライダーの願いを嗤っていた臓硯はライダーの問いの意味が分からず固まった。

 

「だって、何かやりたい事があるから不老不死になりたいんだろ? ボクにはパプワ島に友達がいて。皆とやりたい事をやってた。でも、お前は一人で永遠に生きてまで何がしたかったんだ?」

 

「……儂がしたかった事、か。……興が冷めた。桜、今日の調整は終わりじゃ。ライダーを連れてさっさと出て行け」

 

 ライダーの言葉を受けて彼には失った理想が徐々に蘇ってきていた。彼の理想は『悪の根絶』。その理想を叶える手段として不老不死を追い求め、何時の間にか手段と目的が逆転していたのだ。もしライダーの言葉がただの言葉だったら鼻で笑われるだけだっただろう。だが、ライダーの持つ宝具の能力の一つである『精神浄化』の影響が徐々に効果を現していた。

 

 そして数日後、”貴様の様な者に本体を寄生させていたら危なっかしい”、と言って桜の心臓に寄生させていた本体を取り出した臓硯は目を閉じる。後ろからは足が生えた巨大なオカマの鯛と巨大なカタツムリに迫られるアーチャーの悲鳴が聞こえて来た。

 




何故か地の文がお案してもセリフのあとにくっつく

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