藍原延珠が転生(と言う名のやり直し)をして里見蓮太郎の正妻になる為に色々と頑張るお話   作:安全第一

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どうもです(・ω・)ノ
一応こちらを更新しまっす。



8.理解と決意

「……」

 

 延珠がガストレアを殲滅したその日の深夜、蓮太郎は自分が住んでいるアパートのベランダで一人月明かりを眺めていた。

 

「……化物、か……」

 

 蓮太郎は静かに呟き、後ろを振り返る。そこには既に就寝している延珠の姿があった。

 

 天使の様な彼女の寝顔は先刻ガストレアを殲滅した姿とはとてもではないが似ても似つかない。

 

 紅い髪が黒く染まった延珠はまるで別人、いや最早別次元の存在と化していた。あれが一体誰なのか蓮太郎は知る由もない。

 

 自覚は無いが、蓮太郎は延珠を愛おしい存在だと認識している。だが、それと同時に恐怖も感じていた。ガストレアを殲滅した出来事以降、蓮太郎は無意識にそう感じてしまっていた。

 

 延珠の姿を見て、恐怖してしまっている自分がいる。

 

(……クソッ)

 

 好意よりも先にその感情が出ている事に気付いた蓮太郎はそのまま俯き、自分を叱責する。

 

(延珠はただガストレアを殲滅しただけだ。それだけなんだ。たけど……)

 

 怖い。IP序列三位という超高位序列者である故に、恐ろしい力を有しているだろうとは思っていた。

 

 だが蓋を開けてみれば、蓮太郎の想像以上の光景を目の当たりにした。

 

 ステージIIIのガストレアによる銃撃の嵐をその身に受け、平然と再生した延珠の持つ限りなく高い不死性。

 

 

 

 即死のダメージを負っても死なない。

 

 頭蓋を破壊されても死なない。

 

 心臓を潰されても死なない。

 

 頸動脈を掻き切られても死なない。

 

 全身の骨をへし折っても死なない。

 

 全身を消し飛ばす一撃を喰らっても死なない。

 

 存在そのものを無に帰しても死なない。

 

 

 

 延珠の持つ不死性とはそういうものだ。吸血鬼アーカードからそれを学んだ彼女は不死性を得る事に成功した。

 

 生も死も、何もかもがペテン。

 

 死を超越し、生をも超越する。それは『超越者』と呼ばれる所以の一つなのだ。延珠を鍛え上げたウルキオラ然り、アーカード然り。その他には『史上最低・最悪の運び屋』と呼ばれる赤屍蔵人などもカテゴライズされる。延珠もその中の一人なのだ。

 

 当然ながら蓮太郎自身はそれを知らない。

 

 ただ延珠も持つ不死性は兎も角、彼女の戦闘能力も別次元の領域なのだろうと予想は付けている。454カスール改造銃による一方的な蹂躙しか見せ付けられていないが、恐らくIP序列百位以内の強者すら敵わないだろう。

 

 延珠が化物と自称するのも間違いでは無い。不死性を持つ時点で既に化物なのだから。

 

(だからなのか、あの時俺にああ言ったのは……)

 

 

 

 ───蓮太郎。今回が初任務という訳だけど、貴方は私の事を『何一つ』知らない。だから貴方は知らなければならない。

 

 ───見せてあげる。『正真正銘の化物』の姿をね。

 

 ───貴方がそれを見てどう思うのか、これからどう決断するのかは貴方次第。何ならペアを解消して貰っても構わない。

 

 ───全ては貴方の意思で決まる。それだけは覚えてて。

 

 

 

 ガストレア殲滅の依頼の際、延珠が蓮太郎にそう言ったのは余計な隠し事はしない為だ。

 

 長い間隠せば隠すほど、それを急に知ってしまった衝撃は大きくなってしまう。下手をすればその絆を壊しなねない。

 

 延珠はそれを見越して蓮太郎に忠告を促した。しかしそれには延珠から蓮太郎へ向けられたある思いがあるからこそできるものだった。

 

 

 それは『信頼』

 

 

 蓮太郎ならば受け入れてくれるだろうと、蓮太郎ならば許してくれるだろうと。延珠は全面的に蓮太郎を信頼していた。

 

 寧ろ蓮太郎を信じて疑わないと言う絶対的な信頼と例えた方が分かるかも知れない。

 

(……延珠は、俺を信じ切っている。疑いの余地が無い程に信じ切っている。だけど何でペアを組んで一週間しか経っていない相手にそこまで信じ切れるんだ……?)

 

 それこそ延珠の秘密なのではないだろうか。しかし蓮太郎には、延珠が化物である事実の方が余程秘密にしておかなければならないものなのでないだろうか、と思ってしまう。

 

 唯、違和感というよりおかしいと思える部分は有った。それは今まで誰ともペアを組んで来なかった筈の超高位序列者であるイニシエーター(延珠)が何処の馬の骨とも知れないプロモーター(蓮太郎)と組むという所だった。

 

 ならば考えられるのは、過去に延珠が蓮太郎に関わっていたという点のみ。だが過去の記憶を遡ってもそれといえるようなものは無かった。それもその筈、数年前の記憶など時が経てば忘れてしまうのだから仕様が無い。

 

 唯一つだけ微かに覚えているのは、ガストレア戦争の際に何処かで母親のような暖かい何かに包まれた感覚だけだった。

 

 それを思い出し、もう一度延珠の方向へと顔を向ける。

 

「……まさか、な」

 

 延珠の寝顔を見て、蓮太郎は苦笑する。延珠に関する書類には、幼い見た目と裏腹に蓮太郎より年上という事実があるし、彼女がガストレア戦争の時期から活動していたと記されていた。もしかするとあの時の感覚が延珠のものだったとしたら、蓮太郎をプロモーターとして選ぶ可能性は有るのかも知れない。まあそれ以上の彼女との接点は無い筈なので消去法として考えたまでだが。

 

「……俺も寝るか」

 

 深夜にもなれば流石に眠気が襲って来る。蓮太郎は延珠の隣に敷いている布団へ潜った。

 そして彼は思う。

 

(……延珠が化物とか、何を隠してるとか考えるのはもうやめだ。考えれば考えるほど訳分からなくなる。なら幾ら考えてもしょうがねえし延珠には延珠の都合が有る筈なんだ。それに詮索なんて野暮な事、俺が上手く出来る訳が無いし……)

 

 蓮太郎は延珠とペアを組んで一週間の出来事を思い出す。

 彼女は蓮太郎と出会ってからかは分からないが、とても生き生きとしていた感じだった。

 笑顔を絶やさず、蓮太郎にいつも接してくれるその姿からはとてもではないが邪な気持ちを抱えているとは思えない。

 

(それに、延珠は延珠だ。まだ一週間しか経ってないけど、こいつはとても優しい奴だってくらい分かる)

 

 蓮太郎と会う前は世界中の呪われた子ども達を支援し、救って来たのだ。延珠を批判する大人もいるが、彼女を高く評価している大人もいる。そんな彼女自身が悪巧みをしている筈もない。

 

(……後、これは俺の勝手な思い込みかも知れねえけど)

 

 延珠に手を伸ばし、綺麗な紅色の髪を伸ばした頭に手を置く。

 

(こいつはずっと一人だったんだ。ずっと支える立場だったから傍に誰も居なかった)

 

 これは延珠とペアを組んで一週間過ごしたから垣間見えた一面だ。

 笑顔を絶やさない彼女だが、悲しい表情を見せる時があった。それは彼女が寝付いた後、蓮太郎が延珠を見て目撃したものだった。

 

 泣いていた。

 

 延珠が何を思って泣いていたのかは分からない。だが自らを化物と自称している時点で一人ぼっちだという事は理解していた。

 

 理解していた筈なのに、蓮太郎は恐怖を覚えてしまった。蓮太郎が自らを叱責したのにはそれが理由だった。

 

 蓮太郎よりも辛い道を歩んでいるだろう彼女を誰が責められようか。

 

「……ごめんな、延珠。お前に対して恐怖感を抱えてた。お前は何も悪くないのにな───……」

 

 その頭を撫でて蓮太郎は謝罪しながら優しく紅い髪を梳いていく。

 

「だから決めた、これからずっとお前を支えてやるって。俺も支えられっぱなしじゃ割に合わねえしな」

 

 この一週間、延珠に世話になりっぱなしだった蓮太郎はどう恩を返すのか分からないでいた。だが今回の任務で彼女の強さを知り、化物という烙印をその小さな背中に背負った辛さを見た蓮太郎はたった今、決意した。

 

 延珠が一人ぼっちにならないように、その傍に居る事を。

 

 もう延珠に対する恐怖は無い。彼女は化物であり、相棒であり、そして一人の女の子なのだ。

 

「お前は俺を守ってくれた。なら俺もお前を守ってやる。絶対に───……」

 

 その言葉の後に眠りに付いた蓮太郎。そして彼の言葉が届いたのか、とても幸せそうな表情で頭に置かれたままの蓮太郎の手を大切そうに抱き締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして夜は明けて行く。

 

 明日の希望に向かって、朝日が顔を出す。

 

 ガストレアに支配され地獄と化した世界でも、夜明けの日の光は優しく彼等を包み込む。

 

 その日の光に希望を持って進む者もいれば、絶望して堕ちていく者もいる。

 

 この世界は希望よりも絶望が覆い包んでいるけども。

 

 少なくとも、朝日の光に包まれながら寄り添い合って寝ている紅い髪の少女とその(かたわ)らに居る少年は、『希望』なのだろう───……

 

 

 




次の更新は問題児の方になりそうです。



安全第一のひとりごと
アニメ『結城友奈は勇者である』を見ているのですが、内容が地味にエグい……
それでもって樹ちゃん一人だけ声を失うとか……
どうか黒沢ともよさんに仕事与えてやってえええぇええぇえええぇえ!!!
あの天使ボイスを聴きたいんや……
ティナの声の人だったしぃ……
ともよさんだけ声の仕事無くなるとか一種のリストラだよ!(錯乱)

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