藍原延珠が転生(と言う名のやり直し)をして里見蓮太郎の正妻になる為に色々と頑張るお話   作:安全第一

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どうもです、安全第一です。

三話連続更新でござる。

この話は延珠TUEEEEEと延珠の性格改変の要素が入っております。

それが大嫌いな読者様はお控え下さい。

ちなみに修行で十年経ってますが、魂の実体化をしただけなので見た目はロリです。ただ精神年齢が20歳のお姉さんになってるだけでして……
ですが20歳の姿(おっぱいはD)まで自在に変えられる事が出来ます。


3.出発

 ───十年後。

 

『……上出来だ』

 

「!」

 

 ウルキオラから合格点を貰った。この日までにどれだけ時間が掛かったのか。

 

 十年前からの修行は地獄すら生温いものばかりだった。時にはウルキオラと共に別の世界に渡り、そこに存在する強者と殺し合いをした事も有った。

 

 一対一の殺し合いもあれば、一対多数の戦闘も、一対大多数の殲滅戦すらも有った。極め付けは延珠対全世界などと言う鬼畜過ぎるものまで有った。だが延珠はそれを全て打ち倒して来た。

 

 そして同時に、彼等の心を知ることも出来た。

 

 この十年間、己を見つめ直す時間も有れば、最愛の存在である里見蓮太郎や敗北した相手である蛭子影胤の事を考え直す時間も猶予も有った。

 

 だから考え方が変わった。

 

 蛭子影胤は里見蓮太郎という正義の成れの果てなのだと理解出来た。同情はしないが彼等には彼等なりの正義が有った。その正義を全うする為に必死だったのだと解った。

 

 自分自身の価値観も理解出来た。

 

 藍原延珠は人間だ。だが同時に化け物でもあった。生きていた頃は到底耐えられない現実だったが、この十年間でそれを受け入れるだけの心の余裕が出来た。

 

 

 

 私は人間で、

 

 私は化け物だ。

 

 

 

 別に自虐という訳では無い。そうなのだと言う現実を理解し許容しただけの事だ。そうすると別に何とも思わなくなった。

 

 現に延珠を徹底的に鍛え上げた張本人であるウルキオラも化け物だし、それ以上だ。最早化け物という単語では収まりきれない程に強大なナニカ。それを十年間も共に居れば自分などちっぽけな存在でしかない。自分以上の化け物なんて山ほどいるし、自分以下の化け物も山ほどいる。結局はただそれだけの事なのだ。

 

 十年間の修行の中で、ウルキオラが自分に対して手を抜いたなどと言う事は一切無かった。模擬戦という名の殺し合いの時も常に彼は延珠を殺すつもりで戦っていた。勿論延珠も殺されるつもりは毛頭無いし、殺らなければ殺られる事は理解していたから常に全力を超えた全戦力で迎え撃っていた。

 

 しかし今までまともに延珠の攻撃がウルキオラに直撃した事は無い。それは至極当然であった。

 

 それ故、常に戦術を考え、練り直し、ウルキオラから繰り出される全ての攻撃や迎撃に対応出来る様に己を鍛えた。凡ゆる戦闘を予測し、凡ゆる技術を備え、凡ゆる術を用意し、凡ゆる勝利を予想し、凡ゆる敗北を予想した。

 

 だがウルキオラはどんな状況においても全て対処出来るオールラウンダーであるが故に、同じ手は二度と通じない。それどころか延珠が次に移す行動を先読みし、延珠の戦術を片っ端から壊した事も数知れず。

 

 しかし延珠は諦めなかった。戦術が片っ端から壊されたのならば、頭をフル回転させ壱から新たな戦術を組み立てるまでだと。それが不可能ならば零から再構築するまでだと。

 

 そして今日この時、初めて己の攻撃がウルキオラに直撃した。奇跡の中の奇跡と言っても過言ではないが、今のウルキオラを知っている者達からすれば途轍もない快挙と言っても良い。

 

 とはいえ、ウルキオラ自身は全く効いていない様子だったが。

 

『……合格だ、藍原延珠。もう俺から教える事は何も無い。今日を持ってお前の為の修行は終了する』

 

「……!」

 

 嬉しさの余り、はしゃぎそうになる。勿論、この修行が終わった事による喜びでは無く、やっと里見蓮太郎と会う為にやり直せる喜びに。

 

 だが、調子に乗ってはいけないと己を戒め、自制する。

 

「師匠、今まで本当に有難うございました」

 

 延珠は最大の感謝を込めて頭を小さく下げる。大きく下げてしまってはそこに大きな隙が出来るからだ。

 

『……今のお前ならば凡ゆる障害が立ちはだかっても問題無いだろう』

 

「これも全て師匠のお陰です。私はやっとスタートラインに立てるだけの資格を得たのだと思っています」

 

『……その培った技術を、お前の思うままに振るうが良い。俺から言えることはそれだけだ』

 

「はい」

 

 恐らく師弟の最後の会話。それを噛み締めながら延珠はウルキオラと話していた。

 

『……これより、お前を転生させる。時期はガストレア戦争の最中だ』

 

「ガストレア戦争の真っ只中という事は蓮太郎は6歳ぐらいかな……。でも、幼い蓮太郎も見てみたいな」

 

『……そしてお前に一つ言っておこう』

 

「何ですか?」

 

『お前をその時期に転生させるが、今のお前そのままをそこに転生させる』

 

「つまり赤ちゃんからやり直しじゃないんですね?」

 

『……そうだ。今のお前にその意味は解るな?』

 

「……それは、私を産んでくれた両親は存在しない事になる」

 

『……ああ。つまり藍原の性を持つ者はお前だけだ』

 

「……」

 

 両親が存在しない。それは生前の目的を失う事と同義だ。延珠がIISOに入ったのは両親を探す為だったのだ。その目的を失う事は蓮太郎に再び会う為と力を得た代償と言えた。

 

 だがそれは当然であり、延珠もそれ相応の代償が有ると覚悟していた。だからそこまで大きな衝撃では無かった。

 

「大丈夫です。生きているのかも解らない両親を探す事よりも蓮太郎を支える事の方が有意義ですから」

 

『……なら良いだろう』

 

 ───解空(デスコレール)

 

 延珠の目の前に突如として空間が裂けて行く。その先は暗闇で分からない。

 

『……この空間を渡れば、再びお前の全てをやり直せる』

 

「………」

 

 これを渡れば、あの世界に戻る事が出来る。再び里見蓮太郎を護る事が出来る。自然と延珠の身体が緊張していた。

 

「〜〜〜っ、よし!」

 

 パチン、と両手で自分の頬を叩き、気を引き締め、その足を進める。

 

「行ってきます、師匠」

 

『……ああ』

 

 延珠の足が進み、裂けた空間に入って行く。そしてその身体が空間に全て入った所で、裂け目が閉じて行った。

 

『……お前のような愚直な奴もたまには悪くない』

 

 一人残ったウルキオラはボソリと呟き、その姿を消した。

 

 

 

 その世界には、誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた……」

 

 空間の終着点に着いた延珠はその空間の裂け目の外へ出た。

 

 そして彼女は驚愕する。

 

「……これが、ガストレア戦争……」

 

 延珠の目の前には崩壊した都市。血塗れとなり死んでいる自衛隊員、少数だが通常兵器によって殺されているガストレアが転がっていた。

 

 辺りは火の海と血の海による阿鼻叫喚の地獄絵図となっており、これを地獄以外に例える言葉が無かった。

 

「そしてどこかに蓮太郎が……」

 

 延珠は目を閉じ、全神経を集中させて発動する。

 

 

 ───探査回路(ペスキス)

 

 

 今の延珠は破面の側面を持つ死神の存在となっている。例えれば死神から虚化し、更に帰刃が出来る東仙要と同じ特殊な存在だ。だから破面の能力の一つである探査回路が使えるのだ。

 

 因みに延珠の持つ死神の力や虚の力を含めた破面の力、斬魄刀などは全能の存在であり超越者であるウルキオラによって施されて得たものだ。当然ながら内在闘争といった自分自身との戦争もやり終えている。

 

 延珠の発動した探査回路の範囲は崩壊した都市全体を余裕で包んだ。この都市だけならば誰が誰なのか、何処へ向かっているのか、何をしようとしているのかが把握出来る。

 

 そして見つけた、小さな魂。

 

「……いた!」

 

 間違いなく、彼の魂だ。それを確認した延珠は彼の元へ駆け付ける為に高速移動法、瞬歩でその場から姿を消した。

 

 誰にも視認出来ない速度で駆けて行く延珠。その間に邪魔となっていたガストレア達は刹那の間に屠る。それは全てステージIII以上のガストレア達であり、それが全て一撃で瞬殺されていた。

 

 ガストレアと戦っていた自衛隊員達は急に爆散して絶命した現象に唖然となり、次々に屠られ絶命して行くガストレア達を只々見ていただけだった。

 

「あそこだ!」

 

 瞬歩で駆けて行く中で延珠は視線の先に地に横たわる小さな子どもを見つける。先程、空対空ミサイルが直撃したガストレアがその場所をハードランディングしており、彼はその衝撃で吹き飛ばされていた。

 

 徐々に起き上がろうとしているガストレア。ぐぱあ、と口を大きく開け、蓮太郎を今にも喰らおうとしていた。

 

 

 

 だが彼女がそれを許さない。

 

 

 

 ガストレアに一瞬で肉薄し、得意の蹴りを使うこと無く掌底による打撃でガストレアを爆散させた。

 

「……だれ……?」

 

 肉片が飛び散る中、幼い声が延珠の耳に聴こえて来る。

 

 延珠が踵を返すととても幼い顔立ちの、しかし面影が残っている顔をした子どもがそこにいた。

 

「……蓮太郎」

 

 延珠はそう言い、蓮太郎に近付く。自分の名前を呼ばれた蓮太郎は驚いた表情をしていたが、幼くても蓮太郎はやはり蓮太郎だった。だから延珠は自然と微笑んでいた。

 

 そして倒れている蓮太郎を抱き寄せ、そのまま抱き締める。

 

 

 

 

 

 会いたかった。

 

 

 

 

 

「ただいま、蓮太郎」

 

 抱き締めていた蓮太郎を離し、女神の微笑みで彼を見る。蓮太郎は何を間違ったのか、こう呟いた。

 

「……お母さん……?」

 

「!」

 

 そう呟いた後、蓮太郎は安心したかの様に気を失い、延珠の胸の中で眠りに着いた。そんな彼を延珠は頭を優しく撫でながら苦笑していた。

 

「お母さん、かあ。ふふっ、未来では貴方の相棒なのにね。何だかおかしくなっちゃった」

 

 周りが地獄絵図の中で延珠は蓮太郎と会えた嬉しさに至福を感じていた。

 

 

 

 だが、今は来るべき時では無い。

 

 

 

「そこにいるのは誰だ?」

 

 延珠の後方から老練たる重い声が聴こえて来る。延珠が振り向くと、そこには蓮太郎が世話になる天童木更の祖父、天童菊之丞がそこにいた。

 

 来るべき時まで、この人に預けよう。蓮太郎が独り立ちするその時まで。

 

「……天童菊之丞さん」

 

「!?」

 

「蓮太郎を、頼みます。出来る限り支えてあげて下さい」

 

 蓮太郎をお姫様抱っこした延珠が菊之丞に歩み寄り、蓮太郎をそっと渡した。菊之丞は自分の名を知っていた事に驚愕していたが、何処か蓮太郎と似ているな、と延珠は思った。

 

 蓮太郎を渡した延珠は踵を返し、戦場へと歩いて行く。

 

「待て」

 

 それを菊之丞が引き止めた。延珠は足を止め、顔だけ彼に振り返る。

 

「お前は何者だ」

 

「ふふ、私は人間であり化け物です。そんな事より木更とも仲良くしないと嫌われちゃいますよ」

 

「!」

 

 微笑んでそう言った延珠は菊之丞が驚愕している間に瞬歩でその場から姿を消した。

 

「……希望、か?」

 

 蓮太郎や木更の、と言いかけたがそれは言葉に出さなかった。蓮太郎や木更の事を何故か知っている彼女が何者なのか解らない。つまり不確定要素だからだ。

 

 だが、少なくともあの微笑みはとても優しく、菊之丞の妻の様に包容力のあるものだという事は理解出来た。

 

「……希望であって欲しいものだ。あの少女には」

 

 彼女は人間と言ったが化け物とも言った。だから絶望という可能性も捨てきれない。しかし、菊之丞は希望であって欲しいと心から願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さってと、蓮太郎の為に頑張らなきゃね」

 

 瞬歩で何処かの高層ビルへと移動した延珠はその地獄絵図を眺めていた。

 

 延珠の視線の先にはガストレアの大群が自衛隊へと迫って来ていた。視線を横へ移すと他のガストレアよりも更に大型のガストレアが避難民を襲っている。更に視線を移せば、避難民を襲っている大型ガストレアと同型のガストレアが三体、そして五体の大型ガストレアが先程蓮太郎が居た地点に迫っていた。

 

 先ずはガストレアの大群から一掃する事にしよう。そう考えた延珠は再び瞬歩でその場所へと一瞬で移動する。

 

「君! 危ないぞ!!」

 

 自衛隊の前に現れた延珠に隊員の一人が彼女に向かって叫ぶ。しかし延珠はその声を無視し、左手をガストレアの大群へ向けた。

 

 

 

「破道の八十八、飛竜撃賊震天雷炮」

 

 

 

 そう唱えた延珠の左手から広範囲に渡って強大な爆撃が放出された。

 

『ギシャアアアアァアアァァァアァアァアアァア………』

 

 その爆撃にガストレアの大群は為す術もなく呑み込まれ、全滅する。

 

「次」

 

 すかさず瞬歩で別のポイントへ移動し、避難民を襲う大型ガストレアの前に立ち塞がる。

 

 そのガストレアを前に、延珠は更なる破道を発動させる。

 

 

 

「破道の九十、黒棺」

 

 

 

 唱えた先から黒く巨大な棺が大型ガストレアを覆い、閉じ込めた。

 

 そして黒棺が解かれるとバラバラになったガストレアが現れた。その肉片は塵となり、消えて行った。

 

「次」

 

 再び瞬歩で移動。三体のガストレアの前に現れ、一瞬の内に三体全てを蹴り上げた。

 

 

 

「破道の九十一、千手皎天汰炮」

 

 

 

 蹴り上げ空中に放り出したガストレア三体に向けて凝縮した霊力を集中射出する。その威力は計り知れず、爆雲が天に立ち込める程に強大だった。

 

「次」

 

 更に瞬歩で移動する。蓮太郎がいる位置から約一キロメートル程の所に五体のガストレアが侵攻していた。

 

 延珠は手の平にビー玉程の球体を創り出し、それをガストレア達へ弾き飛ばした。その速度は音速を軽く超え、第三宇宙速度にまで達していた。

 

 ビー玉がガストレア達に着弾する寸前、延珠が唱える。

 

 

 

「破道の九十六、一刀火葬」

 

 

 

 刹那、超巨大な刀の形をした火柱が打ち上がる。その範囲、威力共に先程までの破道の非では無い。五体のガストレアは愚か、その付近にいたガストレア達まで焼き尽くし灰と帰していた。

 

「……よしっ、これで一先ず戦況は膠着状態に持ち込んだかな」

 

 腰に手を当て、探査回路によるリアルタイムの情報を確認しながらそう言う延珠。彼女がこの世界に蘇ってまだ二十分程度しか経っていない。その二十分で戦況をここまで変えた彼女の力は計り知れなかった。

 

「蓮太郎と会うまで後九年かぁ……。長いけど蓮太郎の為だもん、我慢しなきゃ。それに───」

 

 

 

 ───あんなに可愛い蓮太郎を抱き締められたから後十年は戦える!

 

 

 

 やはり、蓮太郎と会えた事が余りにも嬉しかったのだろう。顔が少しにやけてしまっている。この表情を鏡で見たら恥ずかしさの余り布団に潜り込んでしまうのは確定だろう。

 

「でも、蓮太郎がこの頃からとても辛い思いをしていたのは解った。なら、私はそれを支えてあげるだけ」

 

 緩んだ表情を引き締め、再び戦闘モードに切り替えた延珠は瞬歩を使ってその場から姿を消した。

 

 

 

 藍原延珠のやり直しの物語が、此処に始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 藍原延珠

 

 IP序列三位

 

 二つ名は『劫火(ザ・クリムゾン)

 

 IISO最初のイニシエーターにして例外であるプロモーター不在のイニシエーターであり、世界最強の戦力を持つ。

 

 その圧倒的な戦闘能力にて、ゾディアックガストレア二体を撃破。IP序列は彼女の都合上、第三位となっているが、一位、二位のペアとの実力には雲泥の差がある程に強大。

 

 IISOに最初のイニシエーターとして登録された後、世界各国を渡りガストレア達を殲滅。その功績は余りにも大きい。

 

 特にアメリカ合衆国のモノリスに約十万体のガストレアが侵攻するという圧倒的絶望の状況の中、紅い劫火を纏いたった一人で全てを全滅させた事は全世界が認識している偉業である。

 

 

 

 ガストレア総撃破数:五十九万八千四百二十七体

 

 

 




言い忘れていましたが、この作品は殆どテキトーに書いております、ええ。

なので文字数が短かったり長かったりと不安定です。

文字数が長い話の時は作者のインスピレーションが爆発したと、逆に短ければ作者絶不調じゃーん、とそう認識して下さい。

デュクシ☆


追記

すみません、補足説明忘れてました。
破道の九十六・一刀火葬ですが、犠牲破道です。
しかし延珠は炎熱系の破道とは非常に相性が良く、一刀火葬をノーリスクで扱う事が出来る例外の存在です。

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