藍原延珠が転生(と言う名のやり直し)をして里見蓮太郎の正妻になる為に色々と頑張るお話 作:安全第一
連続更新デース
(´・Д・)≡○)´д`ノ)ノ <デュクシッ☆
───ウルキオラ・シファー……?
『そうだ』
反芻した延珠の声にウルキオラはそう応えた。そう言えば此処は何処なのだろうと疑問に思っていた。
───ここはどこなのだ?
『……此処は何処にでも有って何処にでも無い空間。生と死の狭間の世界。つまり何も無い虚無の世界だ』
───???
延珠には少し難しかったのかも知れない。頭にクエスチョンマークが現れている。
『貴様には天国と地獄の間と言えば良く解るだろう』
───それなら妾にも解るかも。
ようやく理解した延珠。だが死んだ筈の自分が何故此処にいるのか解らない。
『……貴様の魂を此処に呼び寄せたのは他でもないこの俺だ』
───じゃあ、ウルキオラは神様なのか?
『……強ち間違ってはいない。だが、神では無く死神の方だが』
───えっ
『……しかし、貴様を地獄に送ろうなどというつもりは毛頭無い』
───そ、そうか。なら、何で妾を此処に?
『……貴様の心からの願望を叶える為に』
───!
延珠はウルキオラの言ったその言葉の意味が直ぐに解った。何故ならそう願ったのは他でもない延珠自身だからだ。
恐る恐るウルキオラに再び訊く。奪われ、全てを失った彼女の希望がもう一度蘇るという希望を抱いて。
───わ、妾は、もう一度やり直せるのか……? 蓮太郎ともう一度会えるのか?
『ああ』
───……っ!
延珠の頬から雫が流れ落ちる。肉体など無い筈なのに、勝手に零れ落ちる。悲しかったからでは無い、嬉しさの余りに。
今ここに、藍原延珠の希望は蘇った。唯一の希望として、最後の希望として。
『……だが、このままでは到底不可能だ』
しかしその蘇った希望を前にはしゃぎそうになった延珠をウルキオラかそう言い、制す。
───な、何で……!?
『それは貴様が一番良く知っている事だ』
───……!
『……貴様が死ぬ直前に誰に何を言われたのかもう忘れたのか?』
───そうだ……。妾は、蛭子影胤に弱いと指摘されて、それで……。
記憶が蘇って来る。蛭子影胤によって蓮太郎を殺され、何も出来なくなった自分に弱いと指摘されたその記憶を。
───悔しい。
───悔しい。
───悔しい!
延珠は己の脆弱さに歯噛みし、己の心中を吐露しながら後悔する。もっと自分が強ければ、蓮太郎を護れるだけの強さが有れば、蓮太郎を支えられるだけの心の強さが有ればと。
『……それをこの俺が徹底的に鍛え上げてやろう』
───!!
ウルキオラの言葉に延珠は驚愕する。どうしようもない自分を鍛えてくれると言ってくれた。
『……俺は虚無を司る死の形。凡ゆる戦争に身を置いて来た。そして幾度と無く勝利を掴んで来た。その俺の培った技術の全てを貴様に叩き込んでやろう』
───……。
勘の鋭い延珠ならば解る。目の前にいる死神は自分とは別次元の存在だと言うことを。恐らく世界に敵対しようともその圧倒的な力で勝利をもぎ取れる程に強いのだと。
『……それとも、このままの状態で転生させ再び己の無力さを味わうのか?』
───っ! 嫌だ!
延珠は直ぐに否定した。このまま蘇っても結果は変わらないのだと言う事実は既に承知済みであった。
延珠は懇願する。
───ウルキオラ! 妾を、徹底的に鍛えてくれ! ううん、鍛えて下さい! お願いします!
『……良いだろう。その願望、聞き届けた』
バキン
───世界が変貌する。
「こ、此処は……」
『此処は
硝子細工の様に出来ていた虚無の世界は砕け散り、その本性を現す。
天には芸術的な美しさを持つ欠けた月が、周囲の世界は無駄の無い白と黒の色彩が支配していた。
ふと自分自身を見ると、先程まで霊体だった己の身体に肉体が構成されていた。本当は霊体を実体化させただけなのだが、それは置いておこう。
『……そして、貴様を強くする為の世界だ』
「!」
その言葉を聞き、延珠の表情は引き締まる。どのように強化するのかは解らないが、気を緩めてはいけないと本能が警告している。
『……内容によっては、地獄すら生温いものも有る。油断すれば里見蓮太郎とは二度と会えないと思え』
「っ! はいっ!」
ウルキオラの言葉に、延珠は気迫の籠った返事をする。それを見たウルキオラは無表情だったが、どこか満足そうにしていた。
『……ならば、開始する。先ず基本の中の基本、基礎の中の基礎を徹底的に鍛えて上げる。これらを一週間以内に会得しろ』
「はい!」
こうして始まる、地獄の様な修行が。だが、どれほど辛くても延珠は決して弱音を吐かなかった。里見蓮太郎という最愛のパートナーに再び会う為に。
ねえ、蓮太郎。
妾、とっても強くなるから。
強くなって来るから。
だから待ってて。
今度こそ貴方の全てを支える為に強くなる。
今度こそ貴方の最愛の人になってみせる。
今度こそ貴方を死なせない。
だから決別する。今までの自分自身に。
さようなら『妾』
そしてよろしくね、『私』
教育実習は中々大変です。
でも慣れて来るととても楽しいです。