藍原延珠が転生(と言う名のやり直し)をして里見蓮太郎の正妻になる為に色々と頑張るお話   作:安全第一

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どうもです、安全第一です。

この作品は延珠がれんたろーの為にENJUとなるお話です。

どーぞー


1.終わりと始まり

「里見君、君の負けだ」

 

 

 ───エンドレス・スクリーム

 

 

 光が天に立ち昇る。雲を穿ち、大穴を空け夜空の星を映し出させる。それは不気味な光景だったのかも知れないし神秘的な光景だったのかも知れない。

 

 少なくとも今の状況から言えば不気味な光景だろう。

 

「れ、蓮太郎オオオォォォォォッ!!!」

 

 その光が発せられた場所、フェリーの上では一人の少年の身体がその肉体ごと抉られ血の海を作り出していたのだから。

 

「………」

 

 肉を抉られた少年、里見蓮太郎は血の海に倒れ伏し、その命は風前の灯だった。彼の相棒である藍原延珠が幾ら揺さぶっても反応すらしない。

 

 本来ならこの後、里見蓮太郎は延珠の叫びによって復活し、AGV試験薬による無理矢理な再生で傷を癒し激戦の末、見事強敵である蛭子影胤を倒す物語だった。

 

 だがこの世界の蓮太郎は抉られた範囲が原作の世界よりも広かった。ただそれだけの事が蓮太郎の生死を大きく分けてしまった。

 

 そう、彼の傷は心臓まで抉ってしまっていたのだ。

 

 人間の重要な臓器の一つである心臓を破壊された。つまりそれは彼の完全なる死を意味する。

 

 それ故に、もう動かなかった。

 

 主人公の様に立ち上がる事も、ヒロインの為に立ち上がる事も、強敵を倒す為に立ち上がる事も、世界を救う為に立ち上がる事も。

 

 もう何も出来ない。

 

「れ、んたろ、う……?」

 

 延珠は蓮太郎の顔を見る。いつもは優しく時に厳しく、たまに恥ずかしがり屋な一面も見せた彼女にとって掛け替えのない最愛の人の顔。

 

 その顔は無表情で、冷たくなっていた。

 

「なん、で? 何で、起きないのだ……? ねえ、れんたろー……」

 

 ユサユサと彼をもう一度揺さぶる。だが返事は帰って来ない、来る筈が無い。

 

「妾を一人にしないって言ってたのに……? ねえ、嘘はダメなんだぞ……? 木更もそう言っていたではないか……」

 

 冗談だと、これが冗談なのだと信じたかった。直ぐに起きてくれるって、そして一緒に戦ってくれるって。

 

 

 でも、目の前の出来事は紛れもない現実だった。

 

 

 里見蓮太郎は、もう動かない。

 

 

「そん、な……。嘘だ、嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッッッ!!!!!」

 

「───嘘ではない」

 

「ッ!!」

 

 拒絶したくなる現実を否定しようとも、強敵がそれをさせなかった。

 

「あの一撃で里見君の心臓は確実に抉った。もう生きてはいまいよ」

 

「そんなの! 妾は信じない!」

 

「ならば君の目の前で倒れている彼は誰だ? 君を愛し、君が愛していた里見蓮太郎ではないのかね?」

 

「ぁ……」

 

 そう、延珠の傍で血の海に沈んでいるのは紛れもない彼自身だ。蛭子影胤の言葉に延珠は何も言えなくなった。

 

「彼は死んだ。その事実は曲げられないのだよ。無論、常識を覆すガストレアであろうともね」

 

 影胤が延珠へと歩み寄る。コツコツとその音が大きくなって行く。

 

「現実を、受け止めたまえ」

 

 影胤がサイケデリック・ゴスペルの引き金を引いた。その弾丸は延珠の脚を貫く。

 

「ああ"ぁあぁあ"ああ"ぁぁあ"ぁあああ"ああ"ぁあぁぁぁあ"ぁぁあぁあ"ぁッッッッ!!!!!」

 

 脚から血が吹き出る。その強烈な痛みが脚を中心に全身へと響き渡る。その痛みに延珠は悲鳴を上げた。

 

「里見蓮太郎と対峙して今解った。彼はこの私を倒せる程に強かった事を。弱いなどと先程は失礼な発言をしてしまったが訂正しよう」

 

 仮面の奥から心底笑っている様な笑い声が辺りに響き渡っていく。その視線は一度蓮太郎の方へと向けると、また延珠の方へと戻した。

 

「ならば何故、彼は死んだと思う?」

 

 

 

 ───それは、君が弱かったからだ。

 

 

 

「………ぇ?」

 

 影胤の指摘に延珠は意味が解らないと言った声を上げる。

 

「ヒヒヒッ、どうやら意味が解っていない様だね。ならば分かり易く教えてあげよう」

 

「つまり、君の存在が彼に枷を掛けたのだよ。藍原延珠」

 

「………ぁ」

 

 影胤の言葉に、延珠は思い出す。先程、影胤の銃撃を受けそうになっていた所を蓮太郎によって庇われ、逃れた事を。

 

 そしてAGV試験薬を投与して傷を無理矢理治癒させて、赤い目を光らせて影胤に飛び掛かって行った事を。

 

「君達イニシエーターは力が有る。それは私達人間では到底及ばないだろう。だが、それだけなのだよ」

 

 そう、それだけ。それだけの事なのだ。所詮、力が有るだけの唯の子供、それ以外は全て脆く弱い。

 

「君が通っていた小学校に君が呪われた子どもだと言う情報をリークしたのは他でもない私だ。当然、君は化け物呼ばわりされ忌み嫌われただろう。しかし、辛く苦しかったのは君だけだと思うかい?」

 

「……そんなこと、ない」

 

「そう、君の相棒である里見君も当然辛かったに違いない。彼は苦渋の決断で君をその小学校から離れさせたのだから」

 

 延珠が小学校のクラスとずっと友達でいたい気持ちは彼にも良く解っていた。出来れば和解してそのまま楽しく皆で学校生活を送らせたかった。

 

 だが現実はそう甘くない。

 

 現実は何時だって非情だ。

 

 その非情はやがて残酷な形となり、凶器となり、その者の心を抉る為だけに突き立てられる。

 

「君をこれ以上傷付けさせない為に、踏み潰されない為に、踏みにじられない為に、壊されない為に、彼は自分自身より君の事を第一に考え支えてきた」

 

 

 

 ───その結果がこれだ。

 

 

 

「あ、あぁぁあぁあ……」

 

 壊れて行く。壊されて行く。里見蓮太郎という護ってくれる存在が消えた今、現実が、虚実が、事実が、真実が、残酷な全てが凶器となり彼女に、藍原延珠の心に突き刺さり奥深くへと抉る。

 

「君の傍にはもう誰も居ない」

 

 更にその抉った心の傷に触れ、痛みを増幅させる。

 

「………ぁ……ぁ」

 

 崩壊寸前の心。もう藍原延珠には希望が何一つとして存在しない。もう放っておいてもいずれ死ぬ。存在意義を全て奪われ、失った彼女に出来る事は無い。

 

 止めとしては十分過ぎた。

 

「Good night、藍原延珠」

 

 せめてもの慈悲として、仮面の紳士は彼女の心の臓に向けて拳銃の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねえ、蓮太郎が死んじゃったのは妾の所為なのか?

 

 でもそれは、妾の所為だったのは嘘なんかじゃない。

 

 それは本当なんだ。

 

 現実なんだ。

 

 真実なんだ。

 

 事実なんだ。

 

 

 

 

 

 ……蓮太郎。

 

 ………蓮太郎。

 

 …………蓮太郎。

 

 ……………れんたろー。

 

 ………………れん、たろう。

 

 

 

 

 

 貴方に、会いたいよ。

 

 妾は貴方のフィアンセだから。

 

 でも、妾は貴方の事を知っている様で全然知らなかった。

 

 生きて来たこの短い人生で辛い事や悲しい事、苦しい事や虚しい事、他にも沢山あるけれどいっぱいいっぱい経験した。

 

 だけど、妾よりも先に生まれていた貴方は妾以上に色んな事を経験していたんだと思う。

 

 そう考えると、妾は貴方の事を思いやっていなかったのかも知れない。

 

 蓮太郎の気持ちも知らないで、勝手な事ばかりしていたのかも知れない。

 

 それでも貴方は許してくれた、優しくしてくれた、甘えさせてくれた。

 

 貴方だけが、唯一の心の拠り所だった。

 

 裏返してみれば、貴方がいなければ生きていけないくらい心が脆かった。

 

 でも蓮太郎、貴方は強かった。

 

 どんなに辛い事があってもその心は折れなかった。すごく嬉しかったし、すごくかっこ良かったし、すごく頼もしかった。

 

 だから、妾は貴方に依存していた。

 

 だから迷惑を沢山かけた。

 

 その所為で貴方を死なせてしまった。

 

 だから、妾の所為だ。

 

 ごめんなさい。

 

 

 

 ……。

 

 ………。

 

 …………。

 

 ……………。

 

 

 

 ねえ蓮太郎。もう一度、貴方に会いたいよ。

 

 もう我儘なんて言わないから。

 

 もう貴方に依存なんてしないから。

 

 これからは蓮太郎を支えられる様に頑張るから。

 

 貴方を一人にしないから。

 

 だから、

 

 だから、

 

 だから……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───貴方に、会いたいよぉっ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

『───……良いだろう』

 

 ───……?

 

 延珠がそう思っていると、彼女の目の前の空間が裂け、そこから一人の白い青年が現れた。

 

 全身が白装束に身を包んでおり、胸の光り輝く玉によって彼の全てが神々しく、別次元の存在へと成っている。

 

『……今、貴様の心の叫びを聴いた。その願望を聴いた。……中々に興味深い魂だ』

 

 ───だ、れ……?

 

 

 

『……俺の名はウルキオラ・シファー。虚無を司る死の形であり、唯の【心の探求者】だ』

 

 

 

 延珠の問いに青年、ウルキオラはそう応えた。

 

 

 




知ってるか? 今、作者は大学の教育実習期間中なんだぜ……?

それとここに出てくるウルキオラは心を理解した&崩玉の力を解放しているULQUIORRAさんです。
例えれば一京のスキルを持っている安心院さんの様な存在です。

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