なるべく早く更新できるよう頑張ります。
キャラの口調に違和感とかありましたらお申し付けください。
Side律
あの歌を聴いてから、私たち3人は本当の仲間になれた気がした。
ギクシャクしてた空気が一蹴されて、澪もムギ(琴吹さんの事をそう呼ぶことにした!)も、もうすっかり打ち解けている。
そして、その原因はもちろん、さっき聞いた歌だ。
本当に不思議な声だった。
普通の声、と思ったら聞いたこともないような声質で幻想的だった。
高音なのか低音なのかもわからなかった。聞いてたのにわからなかったって、じゃあ何を聞いてたんだって話しになるけど、それほど聞き入ってたってことな!
私の頭に浮かんだイメージは、暗い海の中から一人ぼっちで歌っている人魚のような、そんな物悲しさを含んだようなイメージだ。
・・・なんか詩的だな!澪のセンスが移ったのかも・・・。
ただただ、聞き入っていた。
そして声質だけではなく、その歌い方。
命をぶつけてくるようなって言ったら大げさに感じるかも知れないけど、本当にそう感じたんだ。
私は、この声の持ち主とバンドをやりたい。
このボーカルと音楽を作って行きたい、そう思った。
そしてそれは澪もムギも賛成してくれて、声の主を捜すことにした。
不思議な声といったが、声質だけでそういったのではなく、何故こんな時間に、一人で、しかもどこで歌っているのかもわからなかったから、そう表現した。
普通、こんな時間に、アカペラで歌うヤツなんていない。
合唱部、かとも思ったけどそれは違った。
何でかって言うと、合唱部のヤツらも声の主を捜していたからだ。
・・・争奪戦か!?
こうしちゃいられない!
ちまちま捜してたら先を越される!
だから私は大声を上げて捜した。
「今歌ってたやつはどこだー!」
・・・返事はなし。
無言で澪に頭を殴られた。
でも、先を越されたくない気持ちは同じようで、それ以上は何も言わず、あたりを捜す。
たかが一曲歌っただけ。でもそれで、争奪戦が起きてる。
それほどの価値が、あるということ。
絶対に私たち、軽音部のもんだ!
そして、一緒に歌って演奏して、対バンしたりして、偉い人の目に留まって、プロになって、オリコンで1位になったりして、CDもバンバン売れて、ゆくゆくは世界に・・・っは!?
夢か!
えぇい、とにかくまずは捜さにゃあ始まらん!
「絶対に逃がすなー!捕まえろー!高く売れるぞー!」
おっといけない、また妄想もとい未来設計図が漏れてしまった。
けど、結局見つけられなかった。
合唱部も肩を落としてた。
不思議な歌声で、心が癒されて、軽音部の結束が強まって、けど声の主は見つけられなくて。
なんだか、本当に不思議な体験だった。
外もすっかり暗くなっちゃったし、今日はこの辺で帰ろう。
最低でもあと一人、部員がいないと一週間後には廃部になるし・・・なんとしてでも確保だ!!
Side和
びっくりした。
急に人が落ちてくるなんて。
話はいきなり前後するのだけど
入学式の日、HRにて生徒会に興味がある者は職員室に来るようにと、担任の先生がそう仰ったので、放課後に立ち寄った。
本来なら幼馴染の唯と帰る予定だったんだけど、待たせるのも悪いので先に帰ってもらおうとそう言ったのだけど、唯もクラブに興味があるらしく、お互いに用事が終わり次第、連絡を取り合おうということになった。
職員室についた私は、生徒会顧問の教員に話を伺い、生徒会への入部を決めた。
説明会、面接、書類にサイン、少しのアンケートのようなもの、そして桜が丘高校をどのような高校として目指すのか。
最後の質問に、私は。
それらを書ききった私は、すっかり日が暮れてしまった空を見て、携帯へと手を伸ばした。
唯からメールが10分前に来ており、
「校門で待ってまーす v(`ゝω・´)キャピィ」
・・・最近携帯を買ってもらったから、唯は顔文字を多用してくる。
その幼馴染の幼さに少し呆れつつも、疲れた体が軽くなった気がした。
そして階段を下り、下駄箱へ向かう途中。
誰かが上から下りてきたのがわかった。
なんでかって、かなり急いでいたのかバタバタと走っておりてきているからだ。
その足取りもなんだかおぼつかないのか、ところどころでつんのめっているようだ。
危ないな・・・そう思った矢先、ちょうど私が階段を曲がり、更に下へ続く階段へ足を踏み出し、中間地点あたりに着いた時。
その足音の主が私のいる階段に追いついたのか、姿が見えた。
その姿は。
女の子だった。
そう、普通の女の子。
目元が見えるように綺麗に切りそろえられた前髪。
後ろは無造作に放置されているアンバランスさが相まって、目を引いてしまう。
背はそんなに高くは無い。
いたって普通のかわいい女の子。
だけど、その女の子は白かった。
着てる服は、私のと同じ制服で紺のジャケット、髪も深い海のような色なのに。
だけど、肌が病的に白くて。
そしてなによりも、彼女には、色が無いように思えた。
・・・何を言っているか自分でもよくわからないけど、なんていうか・・・人は自分の好みや、今までの人生で得た経験などがそのまま自分のカラーとして、多かれ少なかれ独自の空気、色を醸し出すのだけど。
目の前にいる女の子は、女の子にはそれが感じられなくて。
なんだか、精巧な人形を見ているようだった。
かわいい、美しい、綺麗、美人。
そのどれもが当てはまり、またどれも表現するには合わなく、それゆえに、白色。
人形のような女の子。
その姿を見て私は、息をのんでしまった。
不気味の谷、そんな現象のように不気味だから息をのんだ?
違う。
確かに彼女は人形のようだ。マネキンのようだった。
だけど、彼女から意思を感じる。命を感じる。
当たり前だけど、それが奇跡のようにも感じられて。
どんなものかはわからないけど、力強い意志が。
たった数分前に何かを決意したような意思が。
その矛盾に、私は何かを見た気がした。
見とれて、危ないから走ってはいけない、という注意を口にすることができなかった。
そして案の定、彼女は階段を踏み外した。
とっさに、正面から落ちてくる彼女を抱きとめることができたのは本当に奇跡だ。
抱きかかえる形になってしまい、自然と顔が近くなる。
「大丈夫!?」
そう問いかけるも返事がない。まさか怪我でもしてしまったのではないか。
不安になった。
「・・・えっと。聞こえてる?」
なぜか、ポーっとしている彼女に問いかける。
うっ・・・間近で見ると本当にかわいい。真っ白のキャンバスに描かれた女の子みたい。
同性の私でもなんだかドキドキする。
「・・・あ、えと、だ、大丈夫れす!」
再起動したかのように、返事を返してくれた。
見事に噛んでしまっていた。
あまり、喋るのが得意ではないのかもしれない。
そこで私の頭に、ある想像がよぎった。
私は勉強ができる。自慢でもある。
だけど、それゆえに、考えないでいいことまで考えてしまう。
階段を降りる際のおぼつかない足取り。
病的なまでの白い肌。
色がない。
そして、喋るのが苦手かもしれないということ。
もしかして彼女は、何らかの理由で入院していたのではないか。
そして、退院して、入学。
もちろんこれはあくまでも私の想像にしかすぎず、それを確認することもない。
だけど、もしそんな話が本当だったら。
それこそ私が・・・。
「落ち着いて。ゆっくりでいいから、怪我がないか確認して?」
まだ落ち着かないのか、目の前の女の子にそう言う。
その言葉は逆効果で、むしろ気を使わせてしまったのか慌ててしまっているようだ。
けど、一応の確認は済ませて、ほっと息をついていた。
転んだりしたら、時間がたってから現れてくることがあるのだけれど・・・。
安心させるためにも。
「その分だと特に怪我はないみたいね。」
「コクコク!」
!?
私の言葉に素早く頷く小動物のような彼女。
か、かわいいわね。
思わず。
「・・・っぷ。あははは」
笑ってしまう。
タイプは違えど、なんだか唯のように子供っぽいと言うか、ほっとけないような。
ついつい構ってしまいたくなる。
「あ、ごめんね。なんだか知り合いに似ててつい笑っちゃった」
笑ってしまったことで、萎縮させては申し訳ないと思い、謝るが少女はそれに対して、首を今度は横に振る。
「なら良かった。・・・あなた、確か同じクラスよね?」
・・・うん。よく見るとこの子、同じクラスだった気がする。
HRが終わってもなかなか席から離れず、誰と話すわけでもなく・・・ただ座っていたのを覚えてる。
遠目だったから、気づかなかった。
容姿も、白色という事も。
こんな出会い方ではあったけど、せっかく話す機会もあったので。
あと、私の言葉に驚きあたふたしてる彼女の弁明のためにも。
「自己紹介はなかったから、顔を知らなくても無理ないからそんなに驚かないで。 私、真鍋和。よろしくね」
きっと、この子は優しいのだろう。
いや、自信がないだけか。
私が差し出した手に驚き、また慌てながら手を差し出してきた。
「湯宮・・・千乃です。よ、よろしきゅおねがいしましゅ」
・・・うん、大丈夫よ。噛むなんて大したことじゃないから。
だからその泣きそうな目をやめなさい。
あまり威圧させないように、彼女が喋りやすいようにペースをあわせる。
「よろしく。今日はもう帰るの?よかったら一緒に帰らない?」
きっと、この子は優しい。優しいけど、誰かとコミュニケーションを取るのが苦手なんだろう。
もしくはそういう経験を取れるような場面がなかったのかもしれない。
だけど、それじゃ駄目なの。
昔はどうあれ、今は元気にここにいるんだから。
今は桜が丘高校にいるんだから。
そして、私が生徒会にいる限り、絶対に孤立させない。
私の勘違いだったらそれでいい。
ただ一人でいるのが好きで、そういうお節介はいらないならそれでいい。
だけど、もし踏み出したい一歩があるけど、踏み出せないのなら。
私がその助けになる。
目の前の少女、湯宮さんは目を見開き、心なしか表情が緩んだ気がした。
よかった。
私は間違ってなかった。
けど、返事がなかなか来ない。
待つべきかしら。
いや、少しでも戸惑っているなら私が手を取る。
「会わせたい子もいるの。私の幼馴染なんだけど、きっと仲良くなれると思うわ」
・・・あ、顔がこわばってしまった。
唯がいれば、あのゆるいムードで湯宮さんの緊張も解いてくれると思ったんだけど。
諦めるな私。
私が生徒会に入ったのは何のため?
湯宮さんみたいに、勇気をだそうとしている子の力になるためでしょ?
「無理にとは言わないけれど・・・あなたと友達になりたいの・・・どうかしら?」
私は自分の心を、素直に吐き出した。
打算や、使命ではない。
そんなものでは決してない。
ただ、純粋に、今にも勇気を口にしようとしている小さな少女と友達になりたいと思っただけだ。
「あ、・・・うぇっと・・・その・・・」
頑張れ。否定の言葉でもいい。肯定の言葉なら嬉しい。
けど何よりも、あなたの言葉を聞かせて欲しい。
あなた自身の心を教えて欲しい。
「こ・・・こんな私が・・・友達」
言いかけて止まる。
そして。
「わ、私と・・・友達になってください!!!」
そう、湯宮さんは言った。
凄い。
素直にそう思った。
私は湯宮さんの声を聞きたいとそう願ったけど。
湯宮さんは、はっきりと答えてくれた。
それがどれだけ、勇気のいることか。
瞬間、目を細めてしまった。
あまりにも、湯宮さんが眩しいものに見えたから。
私は嬉しくて、自分でもわかるくらい、凄い笑顔で手を握った。
Side 千乃
今、私は生まれて初めて出来た、と・・・友達と一緒に校門へ向かっています。
真鍋和さん。
はきはきと話し、物腰が丁寧で、どこか余裕があって、同い年のはずなんですけど大人の女性って感じがします。クールビューティーです。
眼鏡も似合っており、噂に聞く美人秘書・・・もしくは敏腕社長の雰囲気が漂っています。
こういう知識は、私が入院して塞ぎ込んでいた時に、とある看護師さんから聞かされてました。
外には楽しいものがいっぱいあるって。
それは、小説だったり漫画だったり映画だったりテレビだったり。
友達のことだったり。
たまによくわからない話も教えてくれました。大人になればわかるからと言って聞かされました。
その後、看護師さんはお医者さんに連行されていくことが多かったです。
その時は、なんでこんな話をするんだろう、私が動けないの知ってるくせにって、ずっと思ってました。
でも、今は、面白いものがいっぱいあるから頑張って治せって。
そう励ましてくれてたのかなって思います。
話がそれてしまいました。
真鍋さんは、校門に友人を待たせているようで。
私たちは靴を履き替えそこに向かっているというわけです。
「あ~、和ちゃん遅いよ~」
そこにいたのはショートボブの明るい茶の髪を持つ女の子でした。
少し間延びした喋り方と、ほっとするような雰囲気の少女でした。
・・・仲良くなれるかな。
「ごめんごめん。」
真鍋さんはそういって、私を紹介してくれる。
「同じクラスの・・・湯宮千乃さん。さっきそこで会って友達になったの」
なんで一瞬、間があったんですか!?
もしかして名前、聞き取れてなかったんでしょうか?
もっとハキハキと喋れるようになりたいです。
「ほんと~!?私、平沢唯っていうの。よろしくね~」
私も友達~!
笑顔で、そういってくれた。
「よ、よろしく!」
人生二人目の友達・・・
よし、噛みませんでした!
この調子で頑張っていきます。
真鍋さんと平沢さんが前を歩き、私がそれについていくように歩く。
「ところで湯宮さんの家ってどのへんなの~?」
・・・そういえばどこでしたっけ。
朝は余裕がなかったので、神様からの手紙をきちんと読んでいませんでした。
たしか、どこかに載ってるって言ってましたよね。
でも今、確かめたりしていたらおかしな人って思われます。
「えっと・・・もうしゅこししゃきにいったとっころでし」
油断するとこれですよ。
真鍋さんは顔がまっかっかになってます。
平沢さんは、?って顔してます。
私もそれを見て、顔まっかっかです。
「ゆ・・・唯っ!・・・っ!ぷ・・・」
あぁ・・・人生初の友達が肩を震わしながら笑いをこらえているのが見えます。
顔から火が出そうな私は、せめてもの抵抗で下を向きます。
「ふ~。唯はクラブ、良い所あったの?」
笑いが収まったのか、真鍋さんは話題を変えようと平沢さんへと話を振る。
「う~ん・・・面白そうなのがいっぱいあってどれにしようか迷っちゃって。和ちゃんは生徒会に入るの?」
「うん。書類とかも提出してきたわ。明日からスタートするの」
「ほぇ~・・・さすが和ちゃん。湯宮さんはクラブとか入るの?」
正直、振らないで欲しかったです。
逃げないって決めた私だけど、今だけは時間を置いて欲しかったです。
けど・・・クラブですか。
音楽に関係するクラブがいいですね。
へたくそですが、歌いたいです。
結構歩いたのか、小さな公園の中を通っている最中で。
子供たちもほとんどいません。
だから少し気が強くなったのか。
「えと、その、音楽系のクラブに・・・入れたら・・・」
最後のほうは聞こえましたでしょうか。
「あら、何か楽器できるの?」
聞こえてたみたいです。
「いえ、その・・・・・・・・・・・歌を・・・」ゴニョゴニョ
何故でしょうか。
さっき噛んだときより顔が赤くなってる気がします。
「へー!湯宮さんすごいねー!私よく音痴って言われるんだー。」
「唯の歌は確かに独特よね」
「ひどいよ~。」
「それにしても歌ね。聞いてみたいわね
将来は歌手か、可愛いしアイドルもいけるわ、きっと」
「今のうちにサインもらっとこ~かな~」
その言葉に私は思い出した。
お父さんとお母さんが、私に言ってくれた、私に夢見てたことを。
「・・・・お父さんとお母さんも・・・そう言ってくれたんです。
私が、歌手かアイドルになるのが、夢だって」
はっきりと、言えました。
この言葉だけは、噛みたくなくて。
「じゃあ決まりだね!湯宮ちゃんはアイドル!」
「歌手のほうがいいんじゃない?声も綺麗だし、可愛いけどアイドルより歌手のほうが歌えるんじゃないかしら」
「じゃあ歌手兼アイドルで!」
「なによそれ」
笑いあう2人は、それでもお父さんのとお母さんの夢、そして私の夢は笑いませんでした。
そのことに、無性に嬉しくなって。
「じゃあ、何か歌いながら帰ろっか~」
無性に、歌いたくなって。
帰り道で、夕方で人気の少ない公園とはいえ外で。
いつもの私なら恥ずかしくてそんなこと、思いもしないんですけど。
だけど今の私の気持ち。
それを伝えたい。
歌いたい。
「なに歌おっか~」
「・・・」
手が震えてます。
逃げない。
そう決めたから。
ふと、手が包まれました。
真鍋さんが、何も言わず手を握ってくれました。
嘘のように私の口が動きます。
「やさしさに包まれたなら」
神様「舌足らずちゃうで」
読んでくださってる方、更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
なんだか急いで投稿したので、もしかしたら結構直して再投稿するかもしれません。
次からこんな事ないように気をつけます。
これからも頑張ります。
読んでくださった方に感謝です。