けいおんにもう一人部員がいたら   作:アキゾノ

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更新遅くなってしまい申し訳ないです。
安定して更新できるようになりたい。

また短くて申し訳ないです。
よろしくお願いします!


第52話

Side 澪

 

 

2年生になった。

たった1学年、校舎が一階から二階に変わっただけなのになんだか知らないところに来てしまったかのような気がする。

クラス替えが行われて、律とも唯ともムギとも離れてしまったとわかったときは目の前が真っ白になった。

他の三人は一緒のクラスなのに・・・なんで私だけ・・・。

誰も知り合いがいないクラスで、私は一人席に座りボーっとしてた。

ど、どうしよう。

すると後ろから声をかけられた。

和だ。

どうやら同じクラスになれたみたい。

唯の親友で、私たち軽音部の心強き味方の和。

最近はなんだか元気がないように思えるけど、新学期ということもあってやはり惚れ惚れするくらい気を張りなおしてた。

和ともっと話したかったけどその時、大きな音がしてみればどうやら転んでしまった人がいるようだ。

きっと私なら赤面してどうしたらいいのかわからくなってしまうんだろうなぁ、とぼんやり思っていたらその子はいつまでたっても起き上がらなかった。

どうしたんだろう・・・手を貸したほうがいいのかな・・・そしたら知り合いになれるかもしれないしと席を立とうとしたら、すでに女の子は助け起こされていた。

そして2,3話して先生が来て席に着いたその子は、なんていうか・・・すごく懐かしい気がした。

最近、ふとした時に思うこの感情を、その子から感じた。

名前はなんていうんだろうか。

見たことのないその女の子は、何故かほっとけない存在のように思えた。

隣を見れば、和は落ち着かないようなそんな顔をしていた。

 

 

HRが始まり、自己紹介の時間がとられ、一人ひとりその役目を終えていく。

次に立ったのは先ほどの女の子だ。

・・・やっぱり見たことはない・・・はずだ。

 

湯宮千乃と名乗ったその女の子はどうやら病気らしく、迷惑をかけてしまうかもしれないといった。

白い肌と、先ほど転んでしまったということ・・・そのことが彼女が病気なんだと理解させられた。

でも、すごいと思った。

普通こんな大勢のそれもほとんど知らない人たちの中でいきなりそんなことが言えるなんて。

強い女の子だと思った・・・同時にその強さを私は間近で見てきていた・・・とそんなことを思った。

本当に最近、記憶にないような体験の夢を見る。

深夜に詩を書くのはもうやめようかなぁ・・・。

 

またその女の子は隣の女の子、たしか若王子いちごさんと言った女の子と少し話して、席に座った。

内容まではわからなかったけど、もしかしてあの2人は友達同士なのかな。

私も仲良くなれるかな。

 

 

 

 

 

 

 

今日はHRだけで、午前中に学校は終わった。

私は相棒のエリザベスを背負い部室へと向かうことにした。

決して、知り合いが出来なかったから逃げるわけではない。

 

「澪、今日も部活?」

 

「あぁ、本格的にボーカルの練習もしなきゃだし・・・はやくプロになりたいから」

 

「・・・そう、ね。あなたたちなら、次は合格をもらえると思うわ」

 

「ありがとう。和も生徒会、頑張って」

 

「えぇ。あ、律に伝言をお願いしたいんだけど」

 

「うん、なぁに?」

 

「新入部員勧誘会でステージ使いたいなら今日までに報告するようにって」

 

「わかった。伝えとく」

 

そう言って私は教室を後にする。

その時、湯宮さんが席を立ち、ゆっくり何かを確認するように歩いていくのが見えた。

なぜ、その光景に私は胸がこんなにも苦しく締め付けられるのだろう。

 

 

 

 

 

 

「後輩がほしい!」

 

部室で練習していた私たちは、休憩をとるために各々が飲み物やタオルで汗を拭いている。

そんな時に唯が言った。

 

「私たち軽音部にも後輩がほしい!」

 

「いや、一回言えばわかるよ・・・」

 

「唯ちゃん、急にどうしたの?」

 

「だって私たちもう二年生なんだよ!?先輩になったんだよ!?」

 

「だから後輩がほしいってか?威張りたいだけか!」

 

「ちがうよ~」

 

「でも、今後輩が入ってきてもあまり相手できないんじゃないかな・・・私たちもプロになるための練習があるんだし・・・」

 

「澪の言う通りだ」

 

「でもでも」

 

「私たちは早くプロにならなくちゃなんだし、現実的に考えて厳しいと思うの。楽器に触れたことのない子だったらなおさら」

 

「でもぉ・・・」

 

唯にしては珍しく、という気はないけれど食い下がってくる。

何か理由でもあるのかな。

 

「唯がそこまで言うなんて珍しいな・・・なんかあるのか?」

 

「・・・笑わない?」

 

「・・・自信はないな!」

 

「バカ律はほっといて、聞かせてくれるか?」

 

「うん・・・最近ね、何か忘れてる気がするの。何を忘れてるのかはわからないんだけど・・・大切なことを忘れてる気がするの」

 

その言葉に私はドキッとした。

だって私も思ってたことだから。

 

「絶対に、忘れちゃいけないことだったのに・・・それでね、夢を見るの。

顔は見えないんだけど、女の子と一緒に音楽をやる夢でね、いつか後輩ができたときに、一緒にやさしくいろいろ教えてあげようねって・・・」

 

「夢って・・・」

 

律がそう言う、けれどその声に笑いはない。

 

「夢の中のその女の子は、すごく優しい子で、大切なものをたくさんもらったの。

夢だけど・・・夢に思えなくて。

でも、その女の子の夢を見るとき、最後は決まって泣いてるの。私も・・・泣いてるの」

 

それを、ただの夢だと笑うことはできなかった。

私の見る夢も似たようなものだったから。

律とムギ、私と唯。

その軽音部にもう一人女の子がいた、という夢。

夜遅くにいろいろな歌詞や詩を書いてるからそういう幻想的な夢を見るのだと思っていた。

きっとそうに違いないと思ってる。

 

だって、じゃないと現実的にありえない。

記憶が消えた、なんてことはあり得ないのだから。

ホラーは苦手だ。

 

「・・・で、その夢の中の女の子との約束のために後輩を入れたいって?」

 

「・・・うん」

 

「はぁ・・・唯らしいな」

 

「みんなは、そんな夢は見ない、の?」

 

「・・・・見たよ」

 

律がそう言った。

なんとなくわかってたけど。

 

「私も見たわ・・・なんで私たちがプロになりたいのか・・・きっとその理由もその子絡みなんでしょうね。」

 

「あーもう!なんだかわかんねーけど、その女の子はなにもんなんだ!神様かなんかか!?」

 

「夢で見た光景は、経験したことないはずなのになんだかすごく懐かしいもんね」

 

「う~・・・しゃーない!後輩、探すか!」

 

「いいの!?」

 

「全員が似たような夢を見てるなら、これはきっとそうしなさいって神様の思し召しだ」

 

「ありがとうりっちゃん!」

 

「そうと決まれば、さっそくビラ作って配ろうぜ!」

 

「着ぐるみもあるよ!」

 

「その前に和に新入部員歓迎会体育館の使用許可もらわなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 梓

 

 

「ジャズ研・・・思ってたのとちょっと違ってたなぁ」

 

体育館での入学式が終わり、各教室でのHRで軽く自己紹介をして、解散となり私は一人クラブを見て回った。

この桜が丘高校には音楽系のクラブは全部で3つある、らしい。

一つはジャズ研。

二つ目は合唱部。

この二つは他校からも有名で、数々のコンクールやイベントで結果を残してきたクラブとのこと。

私としてはジャズ研に入るつもりだったのだけれど・・・乗り気になれなかった。

決してレベルが低いというわけではないのだけど。

どうしても比べてしまう。

あの人たちの音楽と。

HTTの音楽と。

結局、入部するかどうかは決められなかった。

残りの一つ。

湯宮お姉さんの言ってた軽音部。

実を言うとこの学校に入る前は軽音部があるなんて知らなかった。

湯宮お姉さんに勧められなかったらきっと知らないままで終わってたかもしれない。

でも、残念なことに軽音部の部室を除いても誰もいなかった。

荷物もなかったことから、前情報がなかったら軽音部が存在してたこともやはり疑ってしまうくらいだった。

でも湯宮お姉さんが嘘をつくとは到底思えなかったので、きっと今日はたまたま休みだったんだろう・・・そうに違いない。

 

幸い、明日は新入部員歓迎会で出し物が体育館で行われるはずなので、その時に軽音部も見れるはず!

・・・湯宮お姉さんは何か部活に入ってるのかな・・・もしよかったら明日、一緒に行ってくれないかな。

あの綺麗で優しい声で、梓って呼んでくれないかなぁ・・

あれ、そういえば私って自己紹介してたっけ?

それに、湯宮お姉さんの声・・・あの人の声に似てる気がする・・・まさか、ね。

 




神様「あずにゃん、百合属性の可能性が微レ存」

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