武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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コレは旧第四話と内容がほぼ同一ですのでご注意を。


第五話

西暦1997年アメリカ合衆国

 

 

 

この年、欧米においてダイダロス計画成功 NASAがイカロスⅠの信号を受信、蛇遣い座バーナード星系に地球型系外惑星を発見したのだ。

これを受けてアメリカはユーラシア各国の主張に配慮し、系外惑星への避難を加えた次期オルタネイティヴ計画修正案を国連に提出した、そしてオルタネイティヴ5予備計画が米国案に確定したのだ。

 

それによりラグランジュ・ポイントでの巨大宇宙船計画が始まり、アメリカの第五計画は動き始めた。

 

そんなアメリカの中で今はまだ小さな、だが決して無視し得ない変化が起き始めていた。

 

 

「おい何読んでんだ?」

 

 

某企業の研究室の一室に白衣姿の男が入ってきた。彼は、元から部屋の中に居た同僚が何らかの雑誌を読んでいたのに気付き、何を読んでいるか尋ねた。

 

 

「ん?ああ・・・ほら、これさ」

 

 

彼の同僚が彼に見せたのは科学雑誌だった。

 

 

「科学雑誌か・・・。最近は例の奴ばっかだろ?」

 

「そうだな。突如として現れた天才科学者。若いし、10以上もの論文を提出している、通称メタ・ネクシャリストさ」

 

 

その科学雑誌に掲載されている論文はたった一人の人物によって書かれたものが多かった。その人物は突如として現われ、画期的な論文をいくつも書いている。内容は機械工学や生体工学、他には合成食品についてなんてものまで存在している。

そして、あまりにも多彩で多くの論文を書いている彼は、総合科学技術者(メタ・ネクシャリスト)と呼ばれているのだ。

 

 

「調子はどうだ?」

 

 

そんな世間を騒がしている科学者の話題に盛り上がっている彼らに声が掛けられた。彼らは、声がする方に振り向くとたいそう驚いた。

 

 

「しゃ、社長!?」

 

 

声を掛けてきたのは、自分が勤めている会社のTOPだったのだから。

 

 

「つい先日渡した資料はどうだ?」

 

 

驚いている彼らの様子を無視して社長は話しかけて来た。その様は早く結果が知りたくてたまらないという顔をしていた。

 

 

「例のですか。それなら凄いですよ。性能が前と同じにもかかわらずコストがかなり削減できました」

 

「これで量産の際の問題も解決したも同然ですよ!」

 

 

職員たちは話していくうちに次第に興奮していく。彼らは新型戦術機の量産化に携わっていた。だが、新型のコストは馬鹿高く、議会からも疑問視され開発は遅れに遅れていた。そんな最中に突如として沸いてきた新技術によりコストダウンに成功、完成は目前となったのだ。

 

 

「そうか。では、頑張ってくれたまえ」

 

その言葉に満足したのか、ロックウィード・マーディン社の社長はその部屋を出る。自分にこの技術を提供した人物の事を思い出しながら・・・。

 

(シュウ・シラカワか・・・)

 

 

 

***

 

 

 

その頃、シュウ・シラカワは街の中を散策していた。もっとも余計なおまけが彼の後ろにたくさん居たが。

 

 

「ご主人様ー。まーた、黒服連中が徘徊してますよー」

 

 

シュウが地上に出てから一年間、シュウはさまざまな技術を各方面に提供していた。その結果、彼は多くの人間に狙われる事になってしまった。自らの陣営に引き込もうとする者、排除する事でライバルに技術が渡らないように企む者、それぞれの欲望を胸に抱いた人間たちがシュウに接触しようと工作員を用いているのだ。

 

 

「わかっていますよ。いつものように対処します」

 

 

もっとも、追われ慣れているシュウ・シラカワにとって、彼らを撒くのは容易かった。

 

シュウは、目の前の小路に入り込む。その後に続くように黒服の男たちも後を追う。だが、彼らはそこで驚くべきモノを見る。いや、正確には見ることが出来なくて驚いたのだ。

 

 

「なっ!?いない!」

 

 

小路に入ったはずのシュウ・シラカワの姿が影も形も無かったのだ。

 

 

「馬鹿な!この先に入ったはずだぞ!」

 

「探せ!近くにいるはずだ!」

 

 

黒服の男たちは付近に散らばる。自分たちのターゲットを捕捉するために。だが、そんな彼らを冷ややかな目で見るモノ達が居た。

 

 

「・・・この世界でも追われる身になるんですね」

 

 

黒服たちの目の前(・・・)にいるシュウの肩に止まっているチカがそんな言葉を零した。

シュウは魔術を使い、彼らの目を誤魔化していたのだ。そして超能力者でもましてや魔術師ですらない彼らには、その偽装を見破る事は出来なかったのだ。

 

 

「もう慣れましたよ」

 

 

シュウはチカの言葉、どうでもないことのように返す。

 

 

「そりゃあマサキにあれほど追いかけられたら、いい加減慣れますよね」

 

 

そもそもシュウは前の世界で指名手配にされていた。軍は言うに及ばず、ヴォルクルス教団、ディバインクルセイダース残党、力の探求者たち、そしてマサキ・アンドーに追われたことのあるシュウにとって、この程度の事は屁でもないのだ。

 

 

「そういうことです。・・・あまり愉快な事ではありませんが」

 

 

もっとも、シュウ自身は流石に嫌気が差しているようだが。

 

 

「それにしてもご主人様。こんなに技術ばら撒いても大丈夫なんですか?」

 

 

地上に出てきたシュウ・シラカワは自身の持つ知識を地上世界に提供している。その中には核融合炉すらも含まれているのだ。

故にそれらのオーバーテクノロジーを狙う者たちが現われ、シュウを追跡しているのは当然の理だった。

 

 

「仕方がありませんよ。今の地球の技術は低すぎます。それに私が地上で影響力を持つには必要な行動ですからね。調べた所この世界にはビアン博士は存在しないようですからね」

 

 

シュウが技術をばら撒く理由。それは、かつての自分が居た世界に比べ200年以上前の科学技術しか持たない世界に対するテコ入れである。現状では、彼本来の論文は世間に出すことが出来ない状態だ。

 

そして、もう一つの理由はこの世界における影響力の確保だ。かつて、反動勢力すらも纏め上げたビアン・ゾルダークが存在しない此処では、シュウ自身が行動する必要があるのだ。

 

すなわち科学技術の放出は自身の価値を知らしめると共に影響力を確保するのが目的なのだ。

 

 

「けどマサキとかは普通にいましたよね?」

 

 

無論、シュウは地上での任務もちゃんと遂行していた。その結果がマサキ・アンドーの存在の確認だった。しかしチカにとって己の主人の尊敬する人物が存在しないのにマサキが存在することが疑問のようだ。

 

 

「マサキの場合は私が存在する限り存在するらしいですよ、迷惑な話ですがね」

 

 

しかし、シュウは虚憶から得た知識でその理由を知っていたので、これは当然の結果だと思っていた。それゆえ、チカのような疑問は持たなかった。

 

 

「ほほー・・・あれ?というとウェンディ大勝利?それともご主人様・・・」

 

 

もっとも、自分の使い魔(ファミリア)の言った言葉は、無視し得ないモノだったが。

 

 

「・・・今日は焼き鳥な気分ですね。フライドチキンも捨てがたいですが」

 

 

彼は気付いた。自分が主人の(ショーモナイ)地雷を踏んでしまった事を・・・。

ちなみにシュウは女性への関心が薄いが、だからといって同性愛者では無い(サフィーネ談)

 

 

「な、なんでもありません!私は何も言っておりません!!」

 

「結構。では、行きますよ」

 

 

慌てて否定するチカを見て、溜飲を下げたのかシュウはこれ以上追求する事を止めた。

そして、シュウは目的に向かって再び歩き始めたのだった。肩の上で露骨に安堵しているチカを乗せながら。

 

 

 

***

 

 

 

あの後も自分たちを追う工作員を撒きながら、シュウは目的地にたどり着いた。

 

それは何処にでもあるような一軒家だった。シュウはポケットから鍵を取り出して、その家の中に入る。そして、そのまま奥に行くと目的の人物が机の上のコンピューターの前でうなっている姿を発見した。

 

 

「おー、シーちゃん。帰っとったのか」

 

 

コンピューターに向かい合っていた白衣姿の老人は気配に気付いたのか後ろを振り向いた。そして、シュウの顔を見ると破顔しながら話しかけた。

 

 

「・・・シーちゃんは止めてください。ワン博士」

 

 

老人の名前は、エリック・ワン。別の世界でシュウと共にグランゾンを作り上げた人物である。この世界の彼は、シュウの学会での発表の時に違和感を感じ、そこからシュウと繋がりを持つことになったのだ。そして今ではシュウの協力者であり、シュウの地上での活動に手を貸している。余談だがシュウの下宿先の大家でもある。

 

 

「ホッホッホ、まあエエでないかの」

 

 

エリック・ワンの見た目は小柄で妖怪爺の渾名で呼ばれてもおかしくない。

 

 

「まったく・・・貴方と話していると調子が狂いますよ」

 

 

そして、エリック・ワンの掴みどころの無い性格は、シュウすらも対処に難儀させている。

 

 

「それよりも例の件はどうなりましたか?」

 

 

シュウは話の流れを変える為に以前エリック・ワンに頼んでいた事の進展状況を聞く。

 

 

「それなら知り合いに当たって何とかなったでの」

 

 

好々爺のように朗らかに笑いながら、うまく行っている事を説明する。胡散臭い見た目な割には、善人で有能な人物ではあるのだ。

 

 

「そうですか・・・感謝しますよ、ワン博士」

 

 

シュウはエリック・ワンに礼を言う。色々と疲れる人物だが、案外シュウもこの人物の事を気に入っているのだ。

 

 

「何、気にする必要はないでの。ワシも色々学ばせてもらっておるからの」

 

 

シュウはエリック・ワンにもまた自身の持つ知識を提供している。だが他とは違うのは、テスラ・ドライブなどの新西暦においても最先端の技術が含まれていることだ。

 

エリック・ワンは、科学者としては非常に優秀でありシュウが認める科学者である。そして、人並みの良識を持っていることを知っているシュウは彼になら教えられると判断したのだ。

 

 

「そういえば、今度しばらく出かけますので、よろしくお願いしますね」

 

 

ふと、ある事を思い出したシュウはエリック・ワンに外出することを告げる。エリックは話の雰囲気から今までと違いそれなりの長期間出かけることを察した。

 

 

「んむ。何処かに旅行にでも行くのかの?」

 

 

シュウは不敵な笑みを浮かべながら答えた。

 

 

「ええ、ちょっと日本までにね」

 

 

シュウが告げた目的地は日本。母の故郷であり、あまたの世界で多くの因子が集いし地。シュウはそこに向かう。自身の疑念を解き明かす為に、そしてビアンから受け継いだ理想のために・・・。

 




ようやく次辺りでマブラヴキャラと会わせられ・・・ると良いな~。

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