武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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渇望巨人の改変版とかD×Uとか書きたいが、共通の壁にぶつかってしまっている。日常モノというかラブコメが難しい・・・!
自分の好きなシチュエーションで書こうとするとシナリオの面白もが下がるから、困った困った。


おかげで、シラカワ博士ばっかり書いている今日この頃。


第三十一話

マサキたちに災禍が降りかかる少し前、マサキ達の後を追う者たちが居た。飛行機と呼ぶには大型の機体。その上にのる紫の機体。そして、それらに並行して飛ぶ蒼い機体。ウイングガストにヒュッケバイン、そしてグランゾンだ。飛行していると言っても高度はそこまで高くない。戦術機の匍匐飛行より若干高い程度だ。

 

「純夏、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。凄乃皇の時よりは動かしにくいけど戦術機よりは動かしやすいから」

「そうか。なら、良いんだけどよ」

 

衛士強化服と比べて厚手のパイロットスーツを着た白銀武は、ウイングガストに搭乗している純夏を心配する。

その様子をシュウは観察しながら、安堵する。

 

(脳波制御装置は、問題なく稼働しているようですね)

 

グルンガストの操縦補助装置として搭載されているシステム、本来ならT-Linkシステムを搭載したかったが、この世界の念動力者とのマッチングを行うためのデータが不足していたのだ。

 

「さて、そろそろ追いつく頃ですが・・・」

 

道中、BETAを片付けながら、彼らは魔装機神を追っていた。武たちの実戦テストを兼ねてある目的の為に向かっているのだ。エネルギーフィールドと歪曲フィールドを搭載した彼らをBETAは阻むことが出来ず、順調といえた。エネルギーの関係上、純夏は戦闘してはいないが。

 

「っ!?シュウさん、あれ!」

 

武が気付く。目の前で戦闘が行われてることを。もっともシュウは、その卓越した魔力によりすでに知覚していたのだが。

 

「ようやくですか。・・・?これは・・・」

 

彼の五感以外の何かが異変を悟る。

 

「ご主人様、センサーに反応です!地下からです!・・・チカだけに」

「チカちゃん・・・あんまし面白くないよ?ってそうじゃなくて!」

 

くだらない冗談を言うチカに呆れつつも、今目の前の事を思い出して純夏は慌てる。

 

「BETAの増援ですか・・・。武、純夏、周辺の警戒をお願いします」

「了解!」

 

ヒュッケバインがウイングガストから軽やかに飛び降り、着地する。そして、ウイングガストは機体をグルンと回転させ、ガスっと変形を完成させる。超闘士グルンガストだ。

 

「さて・・・では、久しぶりにこの武装を使うとしますか」

 

グランゾンは、胸部の装甲板を展開する。胸部から銃口らしきモノが見える。ワームスマッシャーやディストリオンブレイクの為のエネルギー砲はここから撃つのだ。だが、今回使う武器はそれらではない。

グランゾンの目の前に闇が現れる。両手を掲げ、手から紫電が奔り、黒い球体はますます大きくなっている。周辺の空間が歪み、微弱な衝撃波が何度も放たれる。マイクロブラックホールだ。

目の前の重力球の大きさに反し、マイクロブラックホールはシュヴァルツシルト半径が量子サイズだ。だが、その大きさだけで十分な威力は発揮できる。そして、目の前の重力球の大きさはそれを制御するための特殊な重力場が視覚化しているのだ。

シュウは、グランゾンに重力球を掴ませる。腕部の重力制御装置により掴まれた球をグランゾンは振りかぶる。

 

「ブラックホールクラスター、発射」

 

操縦桿についているボタンとロジカルサーキットにカラバプログラムを介し、マイクロブラックホールは解き放たれる。最大出力に比べれば規模は小さい。だが、地下から湧こうとしているBETAを殲滅するには十分だ。

突然の事態に硬直する魔装機神たち、だがその攻撃が重力を使ったものだと悟るとサイバスターが辺りを見渡しながら叫ぶ。

 

「シュウ、居るんだろ!出てこいっ!!」

「やれやれ、相変わらず騒々しい人ですね」

 

シュウの呟きに気付いたのか。サイバスターはグランゾンが居る方向に顔を向ける。そして、体勢を重力の魔神に向けるとディスカッターを構えた。

 

「あれがグランゾン、シュウ・シラカワか・・・」

 

ヤンロンも話に聞いていたグランゾンが目の前に現れた事で気を張り詰める。だが、シュウはそんな彼らの様子よりも地面にいる人物の方が気になるようだ。

 

「・・・どうやら、少し遅かったみたいですね」

「遅かっただと?」

 

シュウの口から言葉が零れる。その眼差しはテュッティ、正確には彼女の腕の中で眠りについたリカルドだったモノに向けられている。

 

「ええ。私はあなた方を止めに来たのですよ」

「止めに来た?どういうことだ?」

 

ヤンロンは、シュウの言葉を聞き、更に情報を聞き出そうと問いかけるが、シュウはそれに待ったをかける。

 

「説明するにしても、まずは彼らの保護が先にするべきだと思いますよ。ここは敵地ですからね」

 

グランゾンが指し示した所を見て、眉を顰めるマサキ達。

 

「っ!リカルド・・・テュッティ・・・」

「今のままでは、下手をしたら彼らはBETAに喰われることになりますよ」

「てめぇっ・・・!ちっ、わかったぜ。・・・ヤンロン!」

「ああ、そうだな。どのみち、このままではいられない」

 

シュウの言葉にイラつきながらもマサキはシュウの提案を受け入れる。実際何時、再びBETAが襲ってくるかわからない。リカルドもそのせいで命を散らしたからだ。

 

「テュッティ、聞こえるか!僕たちはここから一時的に撤退することにする。君もリカルドを連れて、ガッデスに乗るんだ」

 

ヤンロンの言葉に俯きながら無言で首を縦に振るテュッティ。彼女はリカルドを抱えながら、ゆっくりだがガッデスに向かう。

 

「さて、ザムジードの方は私の方で運搬しましょう。武、純夏、手伝ってください」

 

その様子を見届けたシュウは、操縦者の居なくなったザムジードの運搬の為に自分の仲間に手伝ってもらうことにした。グランゾンに気を取られていたマサキたちだが、ザムジードに近づく紫と言う派手な色と青い50mの鋼の勇者の姿には注意を払わざるおえない。

 

「あれは・・・魔装機じゃ、無いよな」

「でも、地上の兵器にもあんなのはニャかったよ」

 

如何にもメカらしい無骨でありながらも勇壮なその姿を見て、考察するマサキと猫。機械らしい見た目だが地上のどの戦術機とも似つかない、それらはグランゾンと同じくシュウが用意したものなのかと疑う。

 

「では、空間転移を行います。グランゾンの周囲に集まって下さい」

 

疑念を深める魔装機神隊に対して、シュウは移動方法を述べる。その移動方法は普通の手段ではなかった。

 

「転移術だと!それは、強力な術者でなければ使えないはず!」

 

ラ・ギアスの流通は、転送ハイウェイと言うゲート同士による都市間ワープが民間レベルで広まっている。だが、これは前もって座標と専用の設備があってこそ出来るものだ。

ヤンロンが言ったように個人で転移術、しかも魔装機クラスの巨大な物体を転移させるのは並大抵の術者では不可能なのだ。

 

「ふっ・・・私の魔力とグランゾンの力を持ってすれば造作もない事です」

 

しかし、シュウ自身が王族ゆえの優れた魔力の資質を持つ事と、グランゾンのコアがα世界線のモノである故、まさに造作もなかった。グランゾンに搭載されている対消滅エンジンと歪曲フィールドを応用することで雷王星まで転移した事もあるのだ。

グランゾンを中心とした空間が歪み、目的地までの座標とつながる。周りの風景がコーヒーに浮かぶ描かれたクリームが崩れるが如く歪んでいる。だが、数分もしないうちに歪みは収まっていく。

 

「さて、ここらへんならば少しは落ち着いて話せるでしょう」

「ここは、いったい・・・」

 

そこは、先ほどとは異なる場所。トロイア州によくある山岳地帯に居た筈の彼らは現在平野と呼べる草原地帯に居た。

 

「マサキ、ここはフェイル殿下の居る本陣の近くよ」

「本当か?」

「うん。GPSで調べてみたところ間違いにゃいぜ」

 

方向音痴のマサキから生まれたシロとクロ、シュウとチカと比べると正反対な彼らは、すぐに現在地を割り出していた。

 

「そうか。・・・テュッティ、大丈夫か?」

「ええ、なんとか・・・」

 

まだ、リカルドを失った悲しみを抱えているがテュッティもある程度は落ち着いたようだ。シュウの転移術による衝撃がある程度緩和したらしい。

 

「まず、私があなた方に接触した理由は簡単です。今のあなた方ではBETAが出現した遺跡には到達できません」

「なんだと、てめえ!」

「やめろ、マサキ。・・・それは、どういう理由だ、シュウ」

 

シュウの言葉に舐められていると感じたマサキは、感情は爆発させる。唯でさえ気に喰わない男なのにリカルドの件もあり、マサキの精神はささくれ立っていたのだ。

そんなマサキを抑えつつもヤンロンは、先を促す。ヤンロンもイラついてはいたがマサキよりは冷静だったので、情報収集の方を優先したのだ。

 

「あなた方は不思議に思ったことはありませんか?あの大量のBETAが何処から現れたのか?」

「どこからって・・・トロイアの遺跡のゲートから来たっていうから、地上だろ?」

「では、地上のどこか、わかりますか?」

「いや・・・」

 

言葉に詰まるマサキ。BETAがゲートを通って、地上から来たのは、推測できていたが、地上の何処からかは、不明だったからだ。マサキが詰まったのを見て、シュウは間髪入れず、説明する。

 

「ラ・ギアスは、チベットと同じ周期で一日を刻む。こう言えばわかりますね?」

「チベットだぁ?それがどうし・・・いや、まてよ」

 

マサキはシュウの話がいきなり飛躍したのに眉を顰めるが、ふと気づく。チベット、それは数十年前からある言葉で呼ばれている。

 

「チベットったらカシュガルがある場所じゃない!」

「オリジナルハイヴ・・・全ての元凶・・・そして、僕の母国の罪の象徴・・・!」

 

H01オリジナルハイヴ、西チベットと呼ばれる地域にあるカシュガルに落下したBETAの降着ユニットよって作られた地球初のハイヴだ。ここから今の地上の惨劇は始まった。

そして、ヤンロンはその名を聞いて苦虫を噛みつぶす。降着ユニットが落下した時、中国はBETAの技術を独占するため、他国の干渉を拒否、その結果BETAの物量の前に敗走を重ね、自国どころか、ユーラシアの大半の国の国土がBETAに侵されることになったのだ。自身の故郷が犯した罪、それはヤンロンにとっても嫌な思い出だ。

 

「地上には、バミューダ海域やカリフォルニア沖、小笠原沖、チベット上空、アルジェリア上空などラ・ギアスとのゲートが繋がりやすい所があります。マサキ、貴方が以前、日本に現れたのもそれが原因の一つでしょうね」

「なるほど、あの時のは、そういう事か」

 

かつて、マサキが日本領海に出現した理由は、これだ。バミューダトライアングルなどの様々な飛行機や船舶が行方不明になっている地域、そこはラ・ギアスとのゲートが繋がりやすくなっているのだ。

 

「そして、今度はチベットとラ・ギアスが繋がったという事か」

「少々違いますね」

「どういうこと?クリストフ」

 

ヤンロンがシュウの説明から予想をするが、実際は違う。ヤンロンの先走りを否定したシュウにテュッティが問いかける。ちなみに彼女はクリストフ・グラン・マクソードとしての彼と面識があるのでクリストフと呼ぶのだ。

 

「チベットには、地上とラ・ギアスの接点の一つである恒久的なゲートが存在するのですよ」

「な!?」

 

シュウの言葉にマサキは思わず、声を上げる。

 

「無論、BETAによりチベットが制圧された時には、ゲートは閉じられ封印されていたのですが・・・」

「なんらかの原因でゲートが開いたと言う事か」

「だけど、なんでチベットにそんなものが・・・」

 

チベットの地下には理想郷がある。アガルタ、シャンバラなど様々だ。それは、ラ・ギアスなどの繋がりが深いからだろう。アガルタなど殆どラ・ギアスと大差ない設定だ。

 

「それは、チベットの地域の特性と言うしかありませんね。もっともそれがラーブァナ帝国の跳梁を招くことになったのですが」

「ラーブァナ?」

 

シュウの答えはマサキの疑問に満足のいく回答ではなかったが、別の薀蓄に気を留める。

 

「昔、ラ・ギアスに存在していた国よ。確か昔地上を侵略した事があったとか」

「ラーヴァナ・・・確か、インドにおける魔王の一人にそのような名前が存在していたな」

 

召喚された地上人の中では一番長くラ・ギアスに住んでいるテュッティは、いろんな意味で悪名高いラーブァナの事は聞き及んでいた。何せラ・ギアスにおける最大規模のテロ組織の名前がラーブァナの継承者だからだ。

ヤンロンの方は地上における伝承を思い浮かべた。ヴィシュヌの化身であるラーマと敵対した羅刹、地上ではそう語られている。

 

「他にも、地上における理想郷やヒンズー教の最高神にその名残が見られますね」

(理想郷はともかく、最高神に?)

 

テュッティは、ふとシュウの言葉に疑問を覚える。ラ・ギアスにおいては人間の創始した宗教はほぼ消滅しており、精霊信仰が一般的だ。故に神に名残があると言われ疑問を持ったのだ。

 

「・・・話が脱線しすぎましたね。要するに私が言いたいことは今、トロイアを攻める事はオリジナルハイヴを攻めるのと同じようなことだと言いたいのです」

「オリジナルハイヴを攻略・・・」

 

カシュガルハイヴからラ・ギアスのゲートは、そう離れていない。ハイヴの中のBETAの数はフェイズ4の時点で25万、そしてオリジナルハイヴはフェイズ6だ。最少で見積もっても35万だ。ただ、フェイズ6の地上構造物の大きさがフェイズ4の3倍以上の大きさの為、実際にはもっと多いと予想できる。

 

「そして、いかに魔装機神と言えど、数の絶対数が足りません。少なくともポゼッションクラスの火力が無ければ、不可能ですね」

「・・・確かに友軍も無しにあのオリジナルハイヴを攻めるのは無謀か」

 

強大な力を持つ魔装機神、その欠点はプラーナの消耗が激しい事だ。いかに強力な力もプラーナが尽きれば意味がないからだ。

 

「そういうことです。さて、そろそろフェイルたちが気付く頃ですね」

 

チラリとレーダーを見ながらシュウはグランゾンを動かす。グランゾンがマサキ達に背を向けたの慌てて引き止める。

 

「っ、待て!シュウ、どこに行く!」

「私はこれから地上で例の計画を掌握しなければなりません。これ以上あなた方の相手をしているほど暇ではないのですよ」

「掌握だと?てめえ、一体何を・・・」

「では、私はこれで失礼します。いきますよ、武、純夏」

 

ヒュッケバインとグルンガストは、グランゾンに向かって頷くと、地面の頸木から解き放たれる。

 

「待ちやがれっ!」

 

言いたい事だけを言って去ろうとするシュウ・シラカワ一行を追う為にサイバスターは飛翔するが・・・。

 

「待ちなさい、マサキ!先にフェイル殿下に事を報告するのが先よ」

 

テュッティの声で踏みとどまるように空中で止まる。事の次第を報告する必要があるし、何よりもリカルドとザムジードを収容しなければならない。その事はマサキも承知していた。

 

「・・・いや、俺はシュウを追う」

「マサキ、そんな勝手は・・・」

 

だが、マサキは、シュウを追うことを決意するテュッティは咎めようとするが、それはヤンロンに止められた。

 

「いや、マサキの行動は正しい。どのみち、しばらく我々は身動きが取れなくなる」

 

リカルドの戦死、作戦の失敗、新たに態勢を立て直す必要がある。しばらくは、攻勢に出る事は出来ないだろう。

 

「ならば、あのシュウと言う男・・・放っておいては危険だ。王族でありながらテロを行い、地上や今回の事でマサキや我々を助けたが、善意ではあるまい。それに先ほどの言葉・・・何かを仕出かそうとしている」

「ヤンロン・・・」

 

サイバスターをも倒しうる力を持つ、グランゾン。そして、それを作り上げ、魔装機神の開発にすら関与したシュウの頭脳、それはどれも野放しにするには危険すぎる。更には、これから何かを行うと宣言したのだ。これを放置することで危ないとヤンロンは判断した。

 

「行け、マサキ、地上へ!そして、シュウの目論見を暴くんだ」

 

故にマサキを促す。蒼き魔神を追え、と。

 

「言われるまでもねえっ!行くぜっ!!」

 

サイバスターは空高く飛び上がる、サイバスターは光に包まれ、その光は大きな鳥の形になる。地上とラ・ギアスの次元トンネルを開いているのだ。

 

「頼むぞ・・・」

「マサキ・・・」

 

ヤンロンとテュッティが見送る中、光の鳥は空高く空高く羽ばたき、その姿を薄めていった。

 

だが、これこそがシュウがラングランで起こした騒乱の理由だということをこの時は知る由もなかった。

 




ちなみにマブラヴ作品の候補として版権キャラじゃなくてオリ主投入モノもいくつか考えたこともあります。
ガンダムのコロニー国家とかディバインクルセイダーズとかで。



つか、赤き星の主従もマブラヴ編はサクッと終わらすべきかねえ。

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