武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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デュエラーズをプレイ中なんだが、サイバスターの動力源ちょとこれsyれにならんしょこれは?


第二十九話

ラングラン王国による反攻の準備が整いつつある最中、シュウ一行は情勢の推移を見守っていた。壁掛けテレビは、放送されている番組を映していない。映っているのは、ラングラン王国、正確にはトロイア州を取り巻く戦況分析図だ。

 

「なるほど、ラングランは防衛線の再構築を完了したようですね」

 

シュウは、映し出された情報を口から零す。

ここで状況の整理をしよう。

トロイア州から現れたBETAは、周囲に向かって進行を開始した。東と南、ラングランとシュテドニアスの国土を侵食していった。トロイア州の東部は山岳部が多く、BETAは平野である南部方面を中心に進軍していた。その結果、ラングランの領土を飛び越え、シュテドニアスの国境までその勢力を拡大したのだ。

この時期、ラ・ギアスの主力魔装機はD級魔装機であるルジャノール改などだ。制式量産型であるC級魔装機は、まだ全部隊に行き渡っている訳では無い。更に、BETAの奇襲、事前情報の欠如などさまざまな理由により地上よりも遥かに上回る技術力を持つにも拘らず、エオルド大陸の東部とナザン大陸の北部はBETAの支配権となってしまったのだ。

 

「それと同時にシュテドニアスとの対BETA協定が結ばれるとの話も聞きます。超魔装機の共同開発で得た繋がりがこれに大きな働きを掛けているかと・・・」

 

ナザン大陸でのラングランの支配領域は、カタラミーフィ州を残すのみとなったが、シュテドニアスとはまだ地続きでもある。故にある程度はシュテドニアスとの繋がりが残っていた。この一大事では永年の敵国とも共同しなければならないのは皮肉だろう。むろん、地上に比べればましだが。

 

「へえ、地上と違って、ちゃんと協力するんですねえ」

「わがラングランは地上人を召喚しているからBETAの脅威については、他国よりも知っているからな。ここで独自路線を突き進んで自滅するよりは将来の禍根が少なくなるからな」

 

ラングランは、召喚した地上人からBETAの脅威を知っていた。よって魔装機には、地上に行かざるをえない場合やBETAがラ・ギアスに現れた場合に備えてレーザー対策を魔装機に施していた。装甲表層に展開されるプラーナの結界装甲にレーザー減衰効果を持たせている。予算に糸目を付けねば光学兵器を吸収し、結界装甲のエネルギー代わりにする事も可能なのだ。無効化、減衰化は楽な部類だろう。もっとも、それはC級魔装機以上の話だが。

 

「それに、前線の指揮官はフェイルです。彼なら保守的な政治家を黙らせる事も可能でしょう」

「しかし、気になる点が一つあるのですが・・・。クリストフ様、BETAの長距離砲撃ですが地上に比べて性能が違いませんか?」

 

ラングランを取り巻く状況は決して良くは無い。だが、地上よりは遥かにマシだろう。

だが、クレインはこの状況に違和感を感じていた。

 

「ふむ、そうですね。武、良いですか?」

「なんですか?」

 

シュウは、武と純夏にもこの情報分析に同席させていた。

 

「クレインの疑問について、貴方は理解していますか?ヒントはレーザー属種です」

「えっ?」

 

武は突然、シュウに話題を振られて、驚いたが自分がこの場に参加するのは、かつての現役衛士だった記憶を買われてオブザーバーとして参加しているのだ。思考を切り替えて、シュウの問について考えた。

 

(えーと、クレインさんの疑問は、BETAの能力が地上と違うことだよな。シュウさんによるとレーザー属種らしいけど、別に映像を見る限りインターバルも変わり無いし、威力も変わってないからなあ。それに射程も・・・射程?)

 

モニターの映像には、レーザー属種に撃ち落されるミサイルや十数秒で溶かされるルジャノール改の姿があった。しかし、後方の部隊へのレーザー照射は殆ど見られなかったのだ。

 

「・・・あ!?地平線が無いのにレーザーが照射されていない!」

 

武は、シュウから指示されたデータを見て気付いた。ラ・ギアスは地球内部に存在する球状の世界である。すなわち、直進するレーザーの射角の範囲は地上の比ではない。

 

「その通りです。ラ・ギアスでは光線級の射程は、理論上の射程距離である200kmを出すことが本来なら可能です」

「確かに・・・それじゃあ艦砲射撃とかBETAを盾にするとか、かなり難しくなるよな」

「ですが実際には、そこまでの障害となっておりません。何らかの原因で索敵範囲が狭まっているのか、もしくはレーザーが減衰しているかのどちらかですね」

 

シュウの説明した通り、BETAによる超長距離射撃は行われていない。だからといって物量の差や対空迎撃能力が失われた訳では無い。

 

「クリストフ様はどうお考えで?」

「調和の結界か、精霊の存在か、このどれかが影響を与えている可能性が高いと思っています。もしくは、地下世界という特殊な環境がBETAを混乱させている可能性もありますがね」

 

話の流れが戦況分析からBETAの生態研究に移りつつある時、少年は声を上げた。BETAがラ・ギアスに現れてから思ってきた事が武にはあったのだ。

 

「・・・シュウさん!」

「武?なんですか?」

 

シュウは武の方を振り向く。武の眼には光が宿っていた。その目に見覚えがあった。それはホワイトベース隊やαナンバーズが持っていた光、戦うことを決意した目だ。

 

「俺を・・・俺を前線に出してください!」

 

武が宣言する。その横で純夏をギュッと武の左腕を抱きしめていた。

 

「白銀くん、いきなり何を言っているのかね?いかに地上人と言えど、君はクリストフ様の庇護下にある。そのような事は・・・」

「いえ、構いませんよ」

「シュウさん!」「クリストフさま!?」

 

武をたしなめようとしたクレインの言葉がシュウにより遮られる。武は喜びを、クレインは驚きを込めつつ、シュウの名を呼んだ。

 

「武、純夏を連れて地下格納庫に付いて来なさい。クレインとチカは情報解析を続けてください」

 

そういうとシュウは踵を返し、部屋を出た。シュウの突然の動きに武たちは一瞬呆然としたが、すぐにシュウの後を追った。ちなみにクレインは情報整理の為残った。

シュウは、書斎へと足を進めると迷わず、ある本棚に向かい、仕掛けを起動させる。

 

「うお、書棚の裏が!?すげえ、まるで秘密基地みたいだ!」

 

本棚が左右に動き、本棚の裏に隠れていたエレベーターの扉が露わになる。その如何にもな秘密基地風なギミックに武は眼を輝かせる。武少年、15歳である。

 

「入りますよ」

 

シュウと武に純夏はエレベーターの中に乗り込んだ。エレベーターの中は、俗にいう近未来的なイメージで作られていて、格式のある屋敷とのギャップが凄かった。そのギャップこそが更に秘密基地らしさを演出して、更に武の眼を輝かせる。いくら平行世界の記憶を受け取っても彼はまだ少年なのだ。

 

「この家にこんなモノがあるなんて・・・」

「私の用意した拠点のいくつかには、このような隠し格納庫が存在していますよ」

 

エレベーターは音や振動が少なく、すみやかに目的地に到着した。武と純夏は、エレベーターを降りるとその大きな地下空間を見渡した。

 

「ここが地下格納庫・・・あれは、あの時の!」

 

武たちが見つけたのは。シュウの愛機グランゾンだ。グランゾンは現在メンテナンスを行っている最中だった。しばしの間、グランゾンに注目していた二人だが、シュウに促される。

 

「来てください、あなた方に見せたいのはこちらです」

 

そういってシュウは、グランゾンが置かれている場所よりも奥の方に向かう。そこには、二つの影があった。

 

「これって・・・」

 

武は、それらの足元からソレを見上げる。

 

(カバーの掛かったガレージが二つ・・・一つは普通の戦術機くらいの大きさだ。けど、もう片方は違う!あれだと、戦術機の二倍はあるぞ)

カバーで正体が隠された機体が二機。しかし、戦術機が18mから30mの大きさなのに対し、片割れの方は50mクラスの大きさだった。

 

「これが貴方たちに用意した機体です」

 

シュウが取り出した端末を操作すると、隠されたヴェールの中身が明らかになった。

それは鋼の巨人だ。シャープなイメージを持つ紫色の機体。斯衛軍の頂点の機体色は、高貴を意味する紫。だが、この機体の色は、闇や重力を連想させる。ツインアイとフェイスガードが人を想起させ、そのブレードアンテナが兜を連想させる。

もう一つは鋼鉄の巨人だ。青と黄色をベースとした派手な色、50mにもわたる巨大な体躯。巨大な胴体をガッチリと支える細長い脚に力強さを感じさせる剛腕、先ほどの紫の機体はまだ戦術機に近いが、この機体はどちらかと言うと凄乃皇を連想させた。

 

「これは・・・魔装機じゃないよね?」

 

純夏は、この機体が魔装機の類じゃない事に気付く。一般的な少女だった純夏はロボットにそこまで詳しくは無い。だが、そんな彼女でも目の前の二機が魔装機では無い事に気付く。むしろ、戦術機の方が近いだろう。

 

「ああ。けど、戦術機とも違う。どちらかというとバルジャーノンとかに似てる気が・・・」

(バルジャーノン・・・ああ、あれですか。確かに、ある意味共通点はありますね)

 

武は、目の前の機体、特に紫色のツインアイの機体は、懐かしのバルジャーノンにどことなく似てると感じた。武のその言葉を聞いたシュウは、新西暦の知識を思い出した。

バーニングPT、新西暦で稼働しているアーケードゲームと言う似たような存在がある。バルジャーノンと同じく筐体型の対戦ロボットゲームだ。

 

(確かに、武はアドバンスドチルドレンに近い・・・いえ、そのものですね。世界は違えど、こう言う所は似るものですね)

 

アドバンスドチルドレンとは、近年のコンピューターゲームの発達などにより生まれた、大した訓練や投薬措置などを必要とせずとも機動兵器を操縦できる才能を持つ子供たちの事だ。武は、いやBETAが居ない世界の武もまたアドバンスドチルドレンと呼ばれる存在と言える。戦術機の適正値が過去最高なのもそれを証明しているだろう。

 

「さて、話を戻しましょう。以前、貴方に用意すると言った機体がこのヒュッケバインです」

 

そういってシュウが指し示したのは、紫の機体だった。

 

「これが俺の機体・・・でも、これって魔装機じゃないですよね?」

「私は一言も魔装機を用意するとは言っていませんよ」

「えっ・・・あぁー!でも、それって詐欺じゃないですか!」

 

かつて、シュウは武に機体を用意すると言った事がある。ただし、用意する機体の種類については言及していなかった。それを思い出した武は騙されたと文句を言う。

 

「ふっ、別にそのような事は気にする必要はありませんよ。この機体は、普通の量産型魔装機には無い力を持っていますからね」

「普通の魔装機には無い力?」

 

不満げな顔をする武の隣で純夏は、首を傾げる。魔装機は魔法などのそれこそ特別な力を使える。その魔装機に無い力とは何なのか?

 

「ええ。ヒュッケバインにはブラックホールエンジンが搭載されています」

「・・・は?はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

その答えを聞いた武は絶叫した・・・が。

 

「ねえねえ、武ちゃん。ぶらっくほーるって何?」

 

純夏の言葉でこけた。

 

「何だ、純夏。そんなことも知らないのか?ブラックホールっていうのはな。えーと・・・し、死んだ星だったような気がする・・・」

「武ちゃん、それじゃあわからないよ」

 

武は純夏の質問に答えようとするが、そもそも前の世界での彼の最終学歴は高校中退みたいなものである。故に正確な説明は出来なかった。故にシュウが代わりに説明しようとするが。

 

「正確に太陽の30倍以上の質量の恒星が超新星爆発を起こすことで誕生する天体の事です。光さえ脱出することの出来ないほどの質量を持っています。ブラックホールエンジンとはそれらの現象を動力とした装置です。ですので、実際には、ブラックホールそのものを搭載している訳ではありません」

「・・・武ちゃん、わかる?」

「い、いや・・・多少その手のゲームやってたから何となくわかる程度・・・かな?」

 

もっとも専門的過ぎて逆に理解できなかったようだ。説明するのがめんどk・・・もとい時間の無駄なので分かりやすい動力源を使っている方を説明することにした。

 

「ちなみにグルンガストはプラズマジェネレーターすなわち核融合炉を搭載しています」

「核融合炉!?」

「か、核って放射線とか爆発とか大丈夫なんですか?」

「細かい理論は省きますが核融合炉はメルトダウンを起こしたりしませんよ。さて、機体の技術的な質問はここまでにしましょう」

 

シュウは話を切り上げる。一番大切なことを目の前の彼らからまだ聞いていないからだ。

 

「さて、改めて聞きましょう。貴方たちはBETAと戦う覚悟は出来ていますか?」

 

少年と少女は、お互いの顔を見合わせる。それだけで彼らは意思を通わせ、目の前の青年に自分たちの答えを告げる。

 

「――はい!」

 

 

 


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