武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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シュウ覚醒&チカちゃん登場の巻


第一章:幼少
第一話


地下世界ラ・ギアス、ラングラン新暦4942年の事だった。

 

ラングラン王国のマクソード大公邸の一室で彼は目覚めた。そこは身分の高い人物が眠る寝室で豪奢な造りをしていた。その寝室のベッドには、紫の髪で端正な顔付きを持った齢十歳の少年が寝ていたのだった。

 

 

「ここは・・・僕は・・・いえ、私は一体・・・」

 

「クリストフ様、お目覚めになったのですね!?今、カイオン様とミサキ様にお知らせします!」

 

 

少年の眠っていたベットの側に居たメイドの女性は、少年が目覚めた事を確認すると自らの主とその妻、すなわち少年の父と母に報告しに行った。少年は突然昏睡状態に陥ったので少年の周りは焦燥に駆られていたからだ。

 

 

「・・・・なるほど、あの時の三ヶ月前ですか」

 

 

少年は、今の状況、時間、状態を確認すると彼の意思とは関係なく、その唇から言葉を溢す。少年、いや、彼にとってもこのような状況は予想外だった。

 

 

「虚憶が、実憶に・・・その際に観測者とも呼べる上位世界の知識も蘇るとは・・・」

 

 

彼は口元に手を当て考え込む。

 

 

「別の世界の私が憑依した訳ではない・・・ですが、なんらかの要因で平行世界の私の知識が流入してきて、それに触発されたのか、前世とも呼べる知識が蘇ったようですね」

 

 

そう少年は、平行世界の知識と経験をなんらかの原因で得ることになったのだ。それにより彼は見掛けよりも高度な知性を持つに至った。彼は更に思考を深く廻らせていく。

 

 

「観測世界の魂が活性化したことで、虚憶が実憶になったという事ですか。しかし、何故並行世界の記憶が流れ込んだのか・・・。知識によると、その様なイレギュラーを太極が認めるとは思えませんが・・・」

 

 

その様に彼が思考していると、彼が居る寝室のドアが急に開かれ女性が飛び込んでくるかのように入室した。

 

 

「愁!?大丈夫?貴方に何かがあれば、私は・・・」

 

その女性は彼にとって大切だった人物だった。

 

 

「かあ・・・さん・・・」

 

 

女性の名はミサキ・シラカワ。

カイオン・グラン・マクソードの妻にして大公妃である。そして、少年の母だ。

 

少年の名は、クリストフ・グラン・マクソード。

ミサキ・シラカワが少年に名づけた名前は、シュウ・シラカワ。こことは、異なる世界、時間軸で蒼の魔神とも呼ばれる男だった。

 

 

 

***

 

 

 

シュウの母ミサキが目覚めたシュウの見舞いに来て、彼女はシュウにその日一日ずっと付っきりだった。父カイオンは、伝言を部下から伝えさせただけで直接来る事は無かった。そして母ミサキが居なくなった後、シュウは現状に対し再び思考していた。

 

 

「何の因果か、私にはこれから先起きる事象を知ってしまいました。このままでは、母は心を病み、私はヴォルクルスの支配下に置かれる・・・いえ、この場合は死ぬだけですかね?」

 

 

これから三ヶ月後、周囲の無理解と夫の無関心から溜め込んだ孤独感で望郷の念を募らせたミサキ・シラカワが、シュウを生贄にした地上送還の儀式を実行する。

そしてシュウは信頼していた母に裏切られた子の絶望の思いを感じ取った『ヴォルクルス』の思念と契約してしまう。

それにより儀式は失敗。愛息の左胸に刃を突き立ててまで行った地上送還の儀式が不首尾に終わった影響か、ミサキ・シラカワの心と精神はこの時より完全に均衡を崩してしまうのだ。

 

シュウもまた、わずか10歳にしてラングランの王家に仇なすヴォルクルス信徒としての裏の顔を持つことになってしまう。そう、自由を愛するシュウ・シラカワにとって最も忌まわしい枷が着けられてしまうのだ。

 

 

「私が取れる道はただ一つ、未来を変えるしかありません。しかし、時間改変は下手をすれば世界から存在が抹消されてしまいます、そうアサキム・ドーウィンのように」

 

 

前世である観測世界から得た記憶より、シュウは時間改変のリスクがあることを知っていた。誰よりも自由であることを望む彼にとってスティグマを刻まれるのは、遠慮したい所だった。

 

 

「ですが、私自身が時間を越えた訳では無い。更に言うなら私の前世の魂は彼が言っていたアカシャ変動因子の役割を果たす可能性が高いですね。かの混沌の邪神のシナリオを破壊したのは、AIすらない唯の音楽プログラムでしかなかったのですから」

 

 

UXの世界、シュウはその世界の辿った道筋を知識から呼び出した。今、シュウの手元には運命を変えうる手札が幾つか揃っていた。観測者の魂、ラ・ギアス製のコンピューター、そして・・・。

 

 

「とりあえずは、迎えに行くとしますか・・・」

 

 

シュウは隠形の術を使うとマクソード邸を抜け出した。そう、自らの半身を迎える為に・・・。

 

 

 

***

 

 

 

マクソード邸の付近にある森の奥深い場所にソレは居た。闇としか形容出来ない暗い蒼い装甲。全体的に重装甲であり、その姿は見る物を圧倒する。胸の中央には黄色い宝玉のようなパーツが見えている。他にも手甲部分にも黄色の宝玉が存在していた。背面には、縦に長い箱のような大型スラスターがあり、そのスラスターが火を出すとき、相当な速さをたたきだせる事を予想させた。更に両肩はシールドの様に真下に伸びて腕を覆っていた。そして頭部は見る人に刺々しい感覚を覚え、その顔は単純なツインアイ式にも関わらず、恐怖を人々に印象付けるような相貌だった。

 

その蒼い魔神の名は、グランゾン。

 

対異性人用機動兵器として究極ロボシリーズとしてディバインクルセイダーズで開発された機体だ。シュウ・シラカワが基本設計および、OS・特殊装備の開発を行い、自らパイロットも兼ねている愛機である。

 

 

「チカとのラインから存在しているだろう事は推測できましたが・・・。さて、チカ降りてきなさい」

 

 

シュウがグランゾンに向かって呼びかけると胸部のコクピットブロックが開かれ、一羽の青い鳥が飛び出してきた。青い鳥は、シュウに向かって羽ばたき、シュウの肩に止まった。

 

 

「ご、ご主人様がショタに!?これ、サフィーネ様には見せられないですねえ、いろんな意味で」

 

「チカ・・・どこでそのような言葉を覚えてきたんですか?それよりも言う事があると思うのですが?」

 

 

シュウは、青い鳥の彼の言葉に思わず脱力する。

 

青い鳥、チカはシュウのファミリアだった。ファミリアとは主人の深層意識を切り離し作られた使い魔である。チカはシュウの使い魔で、その姿はラングラン王国にしか存在しないといわれているローシェンという小鳥の姿を模している。ちなみにオス。

 

 

「そうでした!ご主人様、何で生きてるんです?ロンド・ベルにやられたんじゃなかったんですか?正直あの時は私も死を覚悟したって言うか心臓が止まりそうになりましたよ!というか死んでたんですけどね」

 

「ふむ・・・ルオゾールが私を蘇生した事については、覚えてますか?」

 

 

シュウはチカに問う。EXやDPと呼ばれる世界線の記憶を覚えているかどうかを。

 

 

「ルオゾール様がですか?いや、そんなことは無かったですけど・・・。というか、あんなワカメにご主人様の蘇生が出来るんですかねえ?それと、その姿はその副作用かナニカですか?」

 

「・・・では、次にビアン博士について知ってる事はありませんか?」

 

 

シュウはチカの言葉を聞くと目を細め、更に質問を重ねる。

 

 

「ビアンって確か、ご主人様が勤める事になった会社というか研究所の所長ですよね?行方不明になったとかご主人様が言ってませんでしたっけ?」

 

「なるほど・・・。では、最後の質問です。グランゾンに試作型縮退砲は搭載されてますね?」

 

 

チカの言葉から自らの半身が何処の世界から来たのか、シュウはだいたい予想がついた。

 

 

「はい、きっちりバッチリ積んでありますよ!状態もいつでも撃てるように万全です!!」

 

「・・・となるとグランゾンはαタイプですか。特異点は存在しないようですね」

 

 

シュウは自分の懸念の一つであるブラックホールエンジンの特異点が存在しない事に安堵する。ゾヴォークの仕掛けた特異点は偶然を誘発する性質を持つ。それは彼にとって忌まわしく且つ厄介なモノだった。

 

 

「あの、それでご主人様・・・?何でショタ化してるんです?変な毒薬でも飲んだんですか?」

 

 

シュウがチカから情報を得ようと聞き出しているとチカの方からシュウに疑問が投げかけられた。チカにとっては、シュウは二十歳を超える青年であり、今のような子供の姿ではなかったからだ。

 

 

「そうですね、それについても教えておく必要がありますか」

 

 

シュウは自分の分身に話した。平行世界の事、前世の事、そして、これからの目的の事を・・・。

 

 

 

***

 

 

 

「なるほど・・・ですが何で私とグランゾンがここに存在しているんですかねえ?」

 

 

チカはシュウの話を聞いて事の推移を知ることが出来たが同時に疑問も出来た。記憶ならば虚憶といった形で得ることが出来る。だが、物質であるグランゾン、そしてシュウの無意識の化身であるはずのチカ、それらがここに存在するのは説明が着かないからだ。

 

 

「おそらく、今回の件には何らかの意思が介在しているでのしょう。・・・私の予想では厄介極まりない代物ですからね」

 

「ご主人様が厄介って・・・一体どんな奴なんです?」

 

 

シュウは自らの境遇の原因の存在にある程度推測できているそうだが、チカは自らの主人の言葉を聞いて不安になる。あのシュウ・シラカワをして厄介と言わしめる存在、不安にならない方が可笑しいだろう。

 

 

「ふっ・・・あえて言うなら神のようなモノとでも言っておきましょうか」

 

 

シュウはそれを『神』に喩える。

 

 

「え~と・・・・ヴォルクルスですかね?」

 

 

神と聞いてチカが思いついたのは三邪神の一柱ヴォルクルスだ。何せ自らの主人と関わりのある神などそれぐらいしか思いつかないからだ。

 

 

「ヴォルクルスですら比べ物になりませんよ。それに敵対する事自体が間違いです。それは天に唾するのと同じですからね」

 

 

そう言うとシュウは天を見上げる。そこにはラ・ギアスの中心に輝く太陽があった。だがシュウが見ているのは太陽では無い。彼が見ている物はもっと先、より深遠な、彼の道筋を縛り付ける物をシュウは見据えていたのだった。

 

 

 




流れが少々強引ですが一応伏線のつもりです。

逆行憑依転生っぽい何か状態ですが、要するに色々知ってるシラカワ博士と言う事で此処は一つ・・・。

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