武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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遂にこの作品もランキングに乗るようになりました。
そしてスパロボVの発表、ヤマトが登場とか今からワクワクしています。


ですが・・・今はそれよりもエクセ姐さん(中の人)の冥福を祈りたい。
ムーンデュエラーズが遺作とか悲しすぐるでしょう?


第二十七話

落ち着いた雰囲気の部屋の中に壁掛け時計の針が進む音が響く。三人の人間(と一羽)がいるのに静寂の中に刻の音が響くのは、気まずさからだろうか。現に少年少女の服は多少乱れていた。

 

「それで落ち着きましたか?」

「は、はい・・・」

 

シュウが眉一つ動かさず問いかけると武はどもりながら返事をする。純夏は、武の隣で頬を染めながら目線を落としていた。

 

「倒れたと聞きましたが体調は大丈夫ですか」

「あ、はい。問題ないです」

「わたしも大丈夫です」

 

体調を心配するシュウの言葉にどことなくばつが悪そうに返事をする思春期少年少女。

 

「なるほど・・・それと貴方たちに伝えなければならないことがあります」

「・・・なんですか?」

 

身構える武と純夏。彼らの様子を注意深く観察しながらシュウは言葉を紡ぐ。

 

「気をしっかり持ってくださいね。貴女方の故郷、横浜にG弾が投下されました」

「そんな・・・!?」

「G弾が・・・それで町は、俺たちの故郷はどうなったんですか!?」

 

シュウが告げた悲報に顔を青ざめる。その様子をいっそ冷酷と言っていいほど冷静に言葉を続ける。

 

「・・・横浜ハイヴの構造体は吹き飛び、重力波が周辺の構造物を吹き飛ばしましたから無事だった家屋も吹き飛ばされていましたね」

「くそっ!やっぱり、こうなるのかよ・・・」

「武ちゃん・・・」

 

武は、遣る瀬無さから自身の膝に拳を落とす。純夏は、武の腕に自身の腕を絡めて、気遣うように武の顔を見つめる。

 

「・・・ところで聞きたい事があるのですが」

「何でしょうか?」

 

そして、そんな二人に質問をする。シュウ・シラカワ、彼の眼はまるで真実を明らかにしようとする探偵の様な眼差しだった。

 

「何故、最高軍事機密の筈のG弾の存在を一般人でしかないはずの貴方がたが知っているのですかね?」

 

その言葉に、武と純夏の体は硬直する。顔は血の気が引き、冷や汗すら浮かんでいる。シュウの言葉の意味に彼らは気付いたのだ。この世界では自分たちはただの一般人でしかない。そして、この頃はまだG弾の存在は公のモノにはなっていなかったという事を・・・。

 

「別に問題ありませんよ。白銀少尉に鑑少尉。貴方がたの事情は理解していますからね」

 

だが、シュウの言葉で焦りは警戒へと変わる。

 

「それは・・・どういう・・・」

 

本来、知りえぬ別の世界の自分たちの素性、それを目の前の青年は知っていると述べたのだ。

武と純夏にとって、シュウ・シラカワとは、異世界人であり天才と呼べる人物、それだけでしかなかった。あえて付け足すなら身内には意外と優しいところだが、今、彼の印象に怪しさと言う項目が付け加えられた。

 

「端的に言いますと私も貴方がたと同じ身の上ですよ」

「私達と?」

「まさか・・・因果導体!?」

「因果導体ではありませんよ。それに貴方がたも既に因果導体ではありませんからね」

 

自分たちの経験からシュウの正体を予測した武、しかし、それはシュウに否定された。それどころか、自分の事を因果導体のままだと思い込んでいた武には寝耳に水だった。

 

「因果導体じゃない?でも、シュウさんは平行世界の人間なんだろ?」

「正確には平行世界の記憶を持つ人間ですよ。私も、貴方がたもね」

 

因果導体とは、接続された平行世界間の因果を相互的にやり取りを媒介する存在のことだ。今の彼らは記憶を受け取っただけの存在で平行世界との情報をやり取りする事は出来ない。

 

「平行世界の記憶・・・?」

「G弾による次元交錯線の歪曲、それにより平行世界から記憶を受け取る事になったのですよ」

 

シュウが幼少の頃、平行世界の虚憶を得た時、地上では丁度、G弾のプロトタイプの運用が行われていたのだ。そして、今回の明星作戦のG弾による、次元交錯線の歪み、更には鳴海孝之の突然の頭痛、これらがその答えを導き出したのだ。

 

「そんな事が・・・でも、因果導体でもないのにどうして」

「それを言うならたった一人の思念とG元素だけで平行世界から人間を呼び出すのもおかしな事だと思いますがね」

「知っているんですか、シュウさん」

「まあ、前の世界で地上を調べる際に調べましたからね」

 

それを知ったとき、さすがのシュウも驚きを隠せなかった。たった一人の思念が平行世界から人を召喚したのだから。

 

「前の世界にもいたんですか!?」

「ええ。もっともラ・ギアスを中心として活動していたので地上には極力関わっていませんでしたが」

 

BETAの存在する世界にラ・ギアスが存在した可能性の世界も確かに存在した。だが・・・。

 

(何せ、この世界にはビアン博士が居ませんでしたからね。彼の思想に触れなかった私にとって母の故郷という意味しかありませんでした)

 

ビアン博士の自らを礎にしてでも地球を守る。その思想にシュウは惹かれたのだ。アイドネウス島での最終決戦ではビアンが言い出さなければ、彼と運命を共にするつもりですらあったのだ。

それに比べ、BETA世界の地上は、ビアンというカリスマが居ない。それゆえに世界は一つにまとまらず、同族同士でその身を食い合っていた。確かに、国家を運営するにあたって、戦後を見据え、面従背反は当然の事だろう。

だが、それも世界の危機の前には俗物でしかないのも事実だった。

だからこそ、シュウにとって地上世界になんら魅力も感じず、母ミサキの母国にだけ、ほんの少しの関心があるだけだったのだ。

 

「クリストフさま!大変です!」

「・・・何事ですか?」

 

シュウが前の世界に思いを寄せていると激しい足音が聞こえ、更には勢いよく扉が開かれた。部屋に入ってきたのは表向きこの屋敷の家政婦として配属されているシュウの部下、正確にはクレインの部下だ。

彼女は肩で息をしながら、ノックもせずに入室してきた。そのあまりにも慌ただしい様子にシュウは何かが起きたことを悟った。シュテドニアスの宣戦布告か?ヴォルクルス教団のテロか?否・・・。

 

「はぁ・・・はぁ・・・っ!トロイア州周辺に化け物の大群が出現。ラングランとシュテドニアスに向けて侵攻を開始しました!」

 

ラ・ギアスに地上の動乱が舞い降りたのだ。

 

 

***

 

 

 

ラングラン新暦4957年 神聖ラングラン王国・シュテドニアス連合国の国境付近

 

 

国境を警備しているシュテドニアスの警備兵たちは、任務をこなしつつ談笑していた。

 

「最近、ここも騒がしくなってきたよなあ・・・」

「そうだな。噂じゃ近々ラングランと戦争になるんじゃないかと噂だからなあ」

「まったくラングランが魔装機神なんてモノを作らなければ、こんな事にはならなかったのによ」

 

世界を滅ぼす魔神に対抗するため作られた魔装機、だが他の国から見たら唯の軍拡でしかない。そして、魔装機神の性能は他国の警戒心を煽る事、必然だった。特に長年の敵国であるシュテドニアス連合国は特に・・・。

 

「所詮、大国様は自分の事しか考えてないんだろうよ」

「・・・ん?確か、この前、ウチと技術交流があったと思ったんだが、それはどうなったんだ?」

「ああ、超魔装機計画とか言う奴か?さあな、お流れになったんじゃ・・・ん?」

 

警備兵の一人がモニターが知らせてくる通知に気付いた。

 

「どうした?」

「いや、国際チャンネルに通信が・・・」

 

相方に答えながらボタンを押すと、スピーカーは悲鳴を伝えだした。

 

『こちら、ラ・・・ラン国・・・備隊、現・・・が隊は未知・・・物の大群の襲撃を受け・・・いる!至急、救援を!!・・・うわぁぁぁぁぁぁ!?』

 

叫び声を最後にノイズだけになった。さっきまで談笑していた空気は完全に死に、警備兵たちは沈黙に支配された。

 

「・・・これはラングランの救援信号?」

「おい、戦争が始まるかもしれないって言っても、まだうち等は宣戦布告してないぞ?」

 

ラングランからの救援信号が出た。それはすなわち、この情勢だとシュテドニアス連合国の宣戦布告に他ならないはずだ。だが、政府から宣戦布告が出されたとも、軍司令部から開戦を決めた等の知らせはまったく受けていなかった。

 

「ううむ、わからん。・・・ぬ、あれは何だ?」

 

視線をラングラン側に向けると大量の土ぼこりが舞っていた。それは動物の群れが走る時に発生するときに起きるそれと似ているが、あまりにも規模が大きすぎる。

疑問に思い、望遠モードで発生源を見た、彼らは後悔した。

 

「な、何だ、あの化け物の群れは!?」

「もしかしてラングランはあいつらの襲撃を受けたのか!」

 

見る者に生物的嫌悪を与える化け物の大群、数は軽く千を超えていた。それが今シュテドニアス連合国に向けて進撃しているのだ。

彼らは知る由もなかったが、この化け物は地上では、こう呼ばれている。

 

≪Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race≫

BETA、と・・・。


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