武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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なんか、しっくりこない・・・。後日、この話や前に投降した話を修正するかもしれぬ。
まあ、展開事態は変わりませんが。


それよりもほしいものがある。その名は「モチベーション」


第二十五話

横浜ハイヴの黒い光が辺りを飲み込んだ。正確には重力崩壊による次元のゆがみにより光が屈折し、それが黒い光に見えるのだ。

 

「な、なんだよ、これ・・・」

 

鳴海孝之は、現状の理解が追い付かなかった。自らの戦術期の周り、正確にはグランゾンの周囲が黒い光と衝撃波により、BETAや住宅や戦友の残骸達が粉々に粉砕されているのだ。だが、台風の目と言うかのようにグランゾンの周囲だけ無事だった。

 

「これがG弾、貴方がたが使わせまいとしようとしている兵器ですよ。」

 

呆然としている二人組にシュウは淡々と事実を告げる。

 

「じ、G弾?」

「ええ。空間を歪曲し、破砕する、しかもグラビティ・コントロールされた状態ではなく、暴走させることで発生させる意図的な重力災害。専門知識があるなら正気の沙汰を疑う兵器ですよ」

「じゅ、重力災害?」

 

シュウの告げる事実はこの世界ではごく普通の人間である二人には、荒唐無稽と思えない。しかし、周囲の現実がそれを事実だと証明しているから彼らは混乱するしかない。だが、そんな混乱もすぐさま吹き飛んだ。

 

「う、うあああああああああ!?」

「おい!?」

 

突然、孝之が叫びを上げ、頭を抱えた。友の豹変に慎二は驚きつつも彼を心配するが、シュウは冷酷ともいえるほど冷静に彼を、鳴海孝之の身に起きている事象を観察していた。

 

(次元交錯線に揺らぎが・・・そして、彼のこの有様)

 

モニターに目を走らせ、情報を収集しつつ、横目で孝之の不知火を横目に見る。

 

「ふっ、どうやら私の仮説は実証されたようですね」

「仮説だと?」

「ええ。この結果が知りたかったのですよ。それに私の策の起爆装置も兼ねていますからね」

 

シュウの知りたかった事、それはG弾が空間と次元に与える影響だ。虚憶により重力場の異常が起こる事は識っていた。だが、シュウが幼少期に突然、並行世界と前世とも呼べる記憶を手に入れた事、そして、この世界では戦車として造られるはずだったグランゾンがアーマードモジュールとして出現した事、シュウはこれらの事象の原因にG弾を見出したのだ。だからこそ、今回のG弾投下に対し何のアクションも起こさなかったのだ。

 

「あんたは、こうなるって知っていたのか!?」

「はい、その通りですよ」

 

しかし、それは故郷に投下された人の心を無視していた。

 

「知っていて止めなかったのか!お前は!!」

「止めない必要はあっても止める必要はありませんからね。それに生存者も存在しない土地です。何か問題でも?」

 

シュウの冷淡とも呼べる様子が更に慎二の精神を逆なでする。彼を知る人から本当は心優しい人物だと評され、ビアン博士の地球を守るという思想に惹かれたと述べるシュウ=シラカワ。だが、彼はSDF艦隊に対し、貴方方が地球圏を支配する事が地球を守る事に繋がるとも言ったことのある人物なのだ。

 

「ッ!?あんたは俺たちの故郷をなんだと思っているんだ!」

「やれやれ、オルタナティブ・・・二者択一という名を冠した計画に属しているのに小さいことに拘りますね」

「小さいことだと!!」

「日本が汚染されるのは心苦しくはありますが、地球の為には必要なコストですからね。そもそも、私に止める権限はありませんからね」

(今回の件でようやく切欠を得る事が出来ました・・・。もっとも目の前の彼に言っても無駄でしょうがね)

 

そう、今のシュウには地上の組織に対し何の権限も持たない。せいぜい持っているものといえば、アメリカ財界のコネと科学者たちとの繋がりだろうか。普通ならそれだけでも十分なものだがシュウにとっては、まだ足りない。

しかし、それはシュウの目の前にいる若者には関係のないことだ。余談だが、シュウは香月夕呼よりも年下である。

 

「お、お前・・・!!?」

「さて、私も忙しい身の上です。そろそろお暇させていただきます」

 

グランゾンが横浜ハイヴの残骸に背を向け、歪曲フィールドを解除する。

 

「ッ!待て!」

 

UNブルーカラーの不知火が蒼い魔神に向けて銃を構える。無駄な事を、とシュウは思いつつ、彼に告げる。

 

「ふっ、そのような暇がありますかね?」

 

平慎二機の隣で金属音と重厚な音がする。鳴海孝之機だ。不知火が武器を取り落し、膝をついていた。

 

「ッ、考之!」

「ああ、それと鳴海少尉には感謝していると伝えておいてください。」

 

(本来でなら死んで居る筈ですが、あなたも言うなれば主人公ですからね)

前世と呼べる知識は、鳴海孝之が主人公だったと語っていた。そして、その彼の身に起きたG弾起爆時の謎の頭痛、この現象にシュウは心当たりがあったのだ。

もっとも、第三者である慎二では意味不明なことだし、自身の神経を逆なでする事しか言っていないシュウ・シラカワと言う人物は(この時点で、慎二たちは本名は知らない)、不信感を募らせるだけだった。

 

「感謝だと・・・待て!」

 

彼の気が緩んだ瞬間、グランゾンは飛び立った。グランゾンに搭載されているネオ・ドライヴはサイバスター以上の最高速度を叩き出す。小回りの利く風と違い重力は、それよりも早く進んでいた。BETAの残存勢力も何故か撤退を始めており、グランゾンに照射されるレーザーは存在しなかった。

 

「ご主人様・・・どうして、喧嘩を売るような真似をしたんです?」

 

いとも簡単に戦場を離脱したのを確認してからチカは、主人に気になっていたことを聞く。

 

「彼ら、正確には彼女には理解していただく必要がありますからね」

「理解?」

 

シュウは、笑みを浮かべながら己が使い魔に告げる。その笑みは、見るものに戦慄を与える笑みだった。というか主人公がするものじゃなくて、むしろラスボスの笑い方である。

 

「ええ、私を利用しようとすると痛い目に合うという事を、ね」

「・・・痛い目どころじゃない位、酷い事してきたと思うんですが・・・」

 

前の世界では、命をもってその報いを受けさせ、比較的穏やかな今世でも社会的な破滅を受けさせている。社会において、利用し利用されるのは良くある事だ。だから、こそ普通に自分を利用しようと思われても困るという事だ。

 

「何か?」

「いやあ、何でもないですよ!?」

 

己が使い魔と恒例になりつつある漫才モドキをしながら、眼下に浮かぶ艦隊に目を向ける。

 

(あれは、太平洋艦隊・・・。そうですね、そろそろ接触するとしますか)

 

 


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