武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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アンケート作品第二弾


なるべくシラカワ博士っぽくやって行きたいと思います。
とりあえず戦闘あり暗躍あり復讐や自由ありな感じで。


プロローグ

「自由であるとは、自由であるように呪われているという事である」

 

 

ジャン=ポール・サルトル

 

 

 

 

 

 

月面

そこで人造の機神の黄昏が起きた。

 

鋼の救世主と蒼い魔神の戦いは熾烈を極め、遂に風の魔装機神がその刃を魔神に突き立てた。

 

 

「み・・・見事です・・・このネオ・グランゾンをも倒すとは・・・」

 

 

蒼い魔神の操縦席の中で紫色の髪をした妖しげな青年は呟いた。

 

 

「これで、私も悔いはありません・・・戦えるだけ戦いました・・・」

 

 

コクピット内は警報で赤く染まり、青年も頭から血を流していた。

 

 

「全ての者はいつかは滅ぶ・・・今度は私の番であった・・・それだけのことです・・・」

 

 

だが、青年は己の滅びすらも達観していた。いや、ある意味喜んですらいたのかも知れない。

 

 

「これで、私も・・・全ての鎖から解き放たれることが・・・でき・・・まし・・・た・・・」

 

 

そして、蒼い魔神ネオ・グランゾンは爆炎に包まれた。ここ、イージス計画の要である月面送電施設でDC最強の機動兵器グランゾンは、ロンド・ベル隊によって破壊されたのだ。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

宿敵の死を見て、風の魔装機神の操者は何を思ったのか。復讐や使命を達成した喜びだろうか?

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

否。彼の心にあるのは悲しみと哀れみだった。戦いを通して彼は感じていたのだ。

 

 

「シュウ・・・バカな・・・ヤツだったぜ・・・・・・・・・くそっ!!」

 

 

青年がなんらかの意思で自由を奪われていた事を・・・。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

白。圧倒的な白さを保つ空間。目がくらむほどの光で照らされている訳ではない。ただただ白いのだ。

 

その空間には三体の影が存在していた。

 

 

「また駄目でしたか」

 

 

『彼女』は言う。

 

 

「そろそろ、この世界の耐久限界が近いのだがな」

 

 

『彼』は機械的に彼女の言葉への意見を述べる。

 

 

「しかし、どうする?この閉じた世界に干渉するのは容易ではない」

 

 

『彼』は改めて問題提議した。三つの影の真ん中に青い球体が出現した。その球体は地球儀のように見える。

 

 

「その他にも力ずくで対処すると逆に被害が広がりますからね」

 

 

『彼もしくは彼女』は、今までとは別の方法を提議するが同時に問題点も述べた。

 

 

「だがどうする?彼が彼女に到達しない限り環は途切れない」

 

 

『彼』は停滞した現状に苛立っているのか、その機械的な言葉の中に多少の苛立ちを見せた。

 

 

「それなら良い案がある」

 

「ほう・・・どのようなものか?」

 

 

そんな『彼』に対し『彼もしくは彼女』は自らの腹案を語る。

 

 

「今回の世界はあの地下世界が存在している。彼に情報を与えて頑張ってもらおう」

 

「奴か・・・情報を渡す手段はどうする?それに奴自体の危険性もだ。奴は深遠の知識を求める物だぞ」

 

 

しかし『彼もしくは彼女』の提案には名にやら問題があるようだ。『彼』はその問題を懸念する。

 

 

「それなら例の欠陥品を利用させてもらうさ。環を作る原因でもあるけど僕たちにとっても利用できる因子だしね」

 

 

『彼もしくは彼女』は手段を語る。自分たちが頭を痛ませている原因を自分たちも利用しようと言うのだ。

 

 

「しかし・・・」

 

 

ソレに対し『彼』は懸念の声を上げる。

 

 

「大丈夫でしょう、事を成した後は流れるままにすればではないですか。どうせ、あの世界の先は未確定なのですだから」

 

 

だが『彼女』は『彼もしくは彼女』の提案に賛成のようだ。

 

 

「ただ・・・間に合うでしょうか?例え環が崩壊しても圧壊しませんか?」

 

 

しかし『彼女』にも懸念事項はあるようだ。

 

 

「その場合は君の出番だろう?僕は巻き戻すのが仕事さ」

 

 

だがその懸念を一蹴する。『彼もしくは彼女』にとって避けるべき事柄ではあるがいつものことでもあるからだ。

 

 

「ふむ・・・」

 

 

『彼』は今までの意見を総合して思考している。

 

 

「意見は出揃ったようだな。・・・では、一番最初の次元窟が発生したときに事を手配しよう」

 

 

そういいながら『彼』は二人を見渡す。そして彼らは唱和する。

 

 

「「「全ては遍く世界のために」」」

 

 

 

 

***

 

 

 

1987年7月アメリカ合衆国ニューメキシコ州ホワイトサンズ『モーフィアス実験実験場』

 

 

「閣下、もう間も無くです」

 

 

実験場の研究室には科学者だけでは無い。多くの軍人が居た。軍人の中には将官などの軍上層部の人間がおり彼もその一人だ。

 

 

「そろそろか。・・・かつて、ここから西の地で禁断の兵器の実験が行われた。今回のもまた歴史を動かす代物になるだろうな」

 

 

初老にもなろう軍人の彼はかつてこの国で行われた世界最初の反応兵器の実験を想起した。今回の実験もまた時代を一新するだろう新生代の戦略兵器が生まれる、その瞬間なのだから。

 

 

「しかし大丈夫なのかね?使い物になるのかね、例の新兵器とやらは」

 

 

今回の実験で使われる新兵器は本来の人類の科学力では空想の産物でしかない物。それゆえに関係者にも新兵器に不信感を持つ者が居る。

 

 

「問題ありません。全自動シチュー製造機とは訳が違います。爆弾として使用するのならあれを防げる物なんてありません」

 

「ほう・・・して、周辺環境に影響は?」

 

「研究結果によると、ほぼ皆無だそうです。あえて言うなら効果範囲内に存在する生命体は全て死滅する事ぐらいでしょうか」

 

「なるほど・・・」

 

 

科学者は軍人に新兵器の効果を説明する。そして、そのように時間を潰していると遂に運命の刻は来た。

 

 

「みなさま、もうすぐ実験開始です」

 

 

アナウンスが研究室に響くと室内に居る全員が備え付けられたモニターをを見た。そこには白い砂の大地にコンクリートの台座が設置してあった。その台座に新兵器は備え付けられているのだ。

 

そして、ついに実験は開始される。

 

 

「起爆10秒前・・・8、7、6、5、4、3、2、1、臨界突破!」

 

 

台座が闇に包まれた。いや、正確には台座を中心として空間が歪み、光が捻じ曲がったのだ。それにより傍から見ると闇の球体が突然発生したように見えるのだ。

 

新兵器の名は、五次元効果爆弾 Fifth-dimensional effect bomb 通称G弾。

 

G弾とは重力制御機関ムアコック・レヒテ機関の開発からスピンオフした技術の産物だ。

グレイ11の反応を制御せずに暴走させる構造の爆弾であり臨界制御解放後グレイ11の反応消失まで、多重乱数指向重力効果域は拡大を続け、それに伴いML即発超臨界反応境界面も広がり、接触した全ての質量物はナノレベルで壊裂・分解されてしまうのだ。

 

まさに圧倒的な殲滅力を誇る戦略兵器だ。だが科学者たちは気付いていなかった。G弾の影響で時空間にゆがみが発生した事を。爆心地の重力場の異常が発生し、そして時空の歪みは次元交錯線にも乱れが発生したのだった。

 

これらのことにより世界はゆっくりとズレ始める。少しずつ、ゆっくりと・・・。

 

 

 

***

 

 

 

地下世界、それは地球空洞説により存在する世界だ。ただ、物理的に地球の地下に存在するわけでは無く、ゴムボールほどのサイズの空間の中に存在する四次元的・五次元的に歪曲された異世界・・・すなわり異次元世界なのだ。

 

その世界に住む人間は自らが住む世界をこう呼んでいる。

 

ラ・ギアスと・・・。

 

 

 

「ねえ、見なさい。あれが例の地上人との合いの子よ」

 

 

ラ・ギアスにおいて最も国力があり歴史も長い国、ラングラン王国。首都ラングランが存在するラングラン州にその邸宅は存在していた。

 

その邸宅は、見るからに荘厳かつ歴史を感じさせる趣で、この屋敷の持ち主が上流階級の出である事を容易に想像させる。そんな屋敷の中を一人の少年が歩いていた。

 

 

「ああ、あの・・・。まったく栄えある王族の血に地上人ごときが混ざるなんて、ご主人様は何を考えているのかしら」

 

 

その少年を見て、屋敷に使える侍女たちは話の話題にしていた。少年は彼らにとって主君の事もでもあるが、産みの母親である正妻の素性が侍女たちを含めた一部の主義者にとっては面白くないのだ。

 

 

「仕方が無いでしょう。あの方、女に弱いのだから。・・・それにもうあの地上人には飽きているみたいだし良いじゃない」

 

「それもそうね」

 

 

そして、少年の父もまた少年の母への関心を失っており、愛人の下へ通っているありさまだったのだ。

 

 

「・・・・・・」

 

 

少年の名前はクリストフ・グラン・マクソードという。この屋敷は彼の父カイオン・グラン・マクソード大公のモノだ。

 

 

「ふん、飽きない物ですね」

 

 

クリストフは周囲の雑言を受け流していた。一々突っ掛かっても何も意味のない事を知っているからだ。だが、そんなクリストフに異変が襲う。

 

 

(こ、これは・・・!?)

 

 

クリストフは突如頭痛に襲われる。いや、正確には頭に一度に情報が書き込まれているような感覚に襲われたのだ。あまりの情報量に今だ齢10歳のクリストフの脳は処理し切れなかった。

 

 

ヴォルクルスアポカリュプシス母の狂気マサキ・アンドー太極サイバスター魔装機神ぜ・バルマリィ帝国ぜオルート大佐ディバインクルセイダースガンエデンルオゾールビアン博士ダークブレイン特異点ユーゼス・ゴッツォ超機人ラオデキヤエアロゲイターヨーテンナイクストースインスペクターゲッター光子力無限力もう一人の神次元力アカシックレコード虚空の使者スティグマ大罪アサキム精霊巨人族ゼントランディゲストゾヴォークゼゼーナン・・・。

 

 

あまりにも大量な情報、それは幼い彼の精神を圧迫していく。

 

 

「う・・・あ・・・母さん・・・なんで・・・」

 

 

彼は母を呼ぶ。だが、それは自分を愛してくれる母親に助けを求めるのでは無く、母に疑問をぶつけるような声だった。

 

 

「っ・・・・・・・」

 

 

頭痛により膝を突いていた彼は、遂に耐えられなくなり、その意識は暗雲へと飲み込まれてしまった。

その有様を見てさすがの侍女たちも慌てて介抱するためにクリストフに駆け寄った。

 

 

 

篭の中の鳥でありながらも己の自由を誇りにしていた心優しい少年は、今日この日居なくなった。

彼が目覚めた後は何になるか、それは彼らだけが知っている・・・。




作者の戯言

シュウが恋愛感情より家族愛や仲間との絆を重視するのって両親の影響だと私は考えています。狂った母親や守ってくれない父親、普通なら確実に性格ゆがみますよね。っていうか実際歪んでいるし。
後、シュウの数少ない尊敬する人物がゼオルートやビアンな辺り色々邪推できそうですしね。
まあ、ようするに恋愛関係の進展はあまりありません。

あっ、サフィーネとモニカは一応出る予定ではあります。まあバタフライエフェクトとかありますけど。

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