武装機甲士Alternative   作:謎の食通

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後々加筆するかもしれません。


第八話

1998年1月朝鮮半島

 

 

アジア戦線は悪化する一方だった。中国共産党政府は、遂に大陸を追われ、台湾に避難する羽目になった。

これを受け、国連は朝鮮半島からの離脱を決定。

 

国連軍と大東亜連合軍、そして日本帝国軍らが共同で行う朝鮮半島撤退作戦「光州作戦」が開始された。

 

 

 

 

『BETA群さらに出現!』

 

 

BETA、彼らの最大の武器は物量だ。一度に旅団規模は当たり前、時によっては師団規模のBETAが人類にその牙を剥いて来るのだ。

 

 

「うろたえるな。左翼の部隊はBETAに斬り込み撹乱せよ。右翼の部隊は左翼の部隊を援護射撃。そして中央は両翼をサポートせよ!」

 

 

BETAの増援に対し、日本帝国陸軍の指揮官、彩峰 萩閣中将はすぐさま命令を下し、迎撃体勢を整える。

 

 

『『了解!』』

 

 

そして彼の命令を受けた帝国軍は覇気の篭った返事をする。彩峰中将は人望のある将であり、その部下たちは彼の下で戦える事を誇りに思っているのだ。

 

 

「はい、こちら日本帝国軍移動指揮所・・・なんですって!?わかりました」

 

 

だが、彼の元に届いた一報が状況に波紋を起こす。

 

 

「どうした?」

 

「閣下。大東亜連合軍が救援要請を打診してきました」

 

「救援要請だと?」

 

 

オペレーターは彩峰中将に通信を報告する。それを聞いた彩峰中将は片眉を動かし、続きを促す。

 

 

「はっ!一部の住人が避難を拒んでいます!大東亜連合軍は避難救助の為、救援を要請してきました。どういたしましょうか?」

 

 

それは避難民が取り残されているという情報だった。故郷を離れる事を拒んだ人々を守る為大東亜連合軍は防衛線を構築しているが、戦況は押される一方。このままでは、孤立し分断、そして避難民ごと全滅するのは容易に想像できた。

 

 

「・・・・・・」

 

 

彩峰中将は、目を細めモニターを見ている。状況を見定めようとしているのだ。そして、自分の取るべき行動を思案している。

 

 

「閣下、このままでは大東亜連合軍は孤立してしまいます」

 

「・・・わかった!第三中隊を救援に向かわせろ!責任は私が取る」

 

 

副官が意見を言ってきたことにより彩峰中将は覚悟を決める。そして、戦線から部隊を抽出し、大東亜連合軍の元に向かわせた。

 

 

(この選択出来れば間違いと思いたくは無いが・・・)

 

 

だが、彩峰 萩閣の心には不安が、いや、最悪な想定が胸に潜んでいた。自分の選択が祖国を追い詰めるのでは無いかと・・・。

 

 

 

***

 

 

 

大東亜連合軍による住民の避難は順調と言えず、遂には強硬手段を持って住民を退去させるも時既に遅く、もはや目の前と言える所までBETAが迫りつつあった。

 

 

『BETA、距離3000!数は旅団規模です』

 

「くそ!救援はまだか!」

 

『今帝国軍の第三中隊がそちらに向かっています!後、20分ほどで合流するそうです』

 

「それでは間に合わん!」

 

 

そして、頼みの帝国軍も道中のBETAにより、未だ目的に到着していなかった。

大東亜連合軍は、もはや甚大な被害が発生するの防げない事を覚悟した。

 

だが、そんな彼らの覚悟を嘲笑うように無数の光条がBETAの群れを貫いた。

 

 

「なっ!?」

 

 

光が通り過ぎた後には、綺麗な丸い穴があいたBETAが無数に存在していた。何処からともなく飛んで来た光、それに驚いていた大東亜連合軍は、ある事に気付いた。目の前に見たことの無い戦術機が存在しているのだ。

 

それは30mクラスで戦術機の中でも大型クラスの大きさ。だが、戦術機と比べて遥かに異彩を放つのがその外見だ。戦術機は装甲の厚さより機動性を追及した兵器。にも関わらず目の前の機体は全体的に刺々しく重厚な装甲を持つ機体だった。

 

それも当然だろう。

何せソレは戦術機ではない。それは此処とは異なる世界で対異星人戦闘用アーマードモジュール・グランゾンと呼ばれた存在だったのだ。

 

 

「へえ、あれがBETAですか。めっちゃグロイですねえ。デモン・ゴーレムなんて目じゃないですよ」

 

 

グランゾンのコクピットでチカは初めて見るBETAに感嘆の声を出す。その醜悪な見た目に関わらず比較的に精神が安定しているのは、かつて邪教と関わりを持っていたのと無関係では無いだろう。

 

そんなチカを横目にシュウはその眉目を歪める。

 

 

(カバラ・プログラムどころかロジックサーキットにも違和感が・・・やはり、継ぎ接ぎ状態を誤魔化すのにも限界があるようですね)

 

 

先程のBETAを貫いた光条、ワームスマッシャーは、ワームホールを発生させて全包囲攻撃及び複数の目標も攻撃可能で、最大65536の目標を同時に攻撃が可能と言われている。

しかし、現状ではその本来の力を発揮できないでいる。

 

このグランゾンは複数の世界のグランゾンが一つとなった存在だ。

純バルマー技術のα、純ゲスト技術の旧シリーズ、そしてバルマーとゲスト技術のハイブリット、OG。これらが一つになれば純粋な強化になると思えるかもしれない。

だが、そもそもグランゾンは操縦者を選ぶピーキーな機体、それが継ぎ接ぎ状態になって安定した状態になる訳が無い。

 

 

「まあ、この程度の戦闘には問題ありませんね。さて、さっさと終わらせるとしますか」

 

 

そう言うとシュウはグランゾンをBETAの群れに向かわせる。

 

ワームスマッシャーにより一度に数十体のBETAが貫かれ、猛スピードでグランゾンに迫る突撃級をグランワームソードでその甲殻ごと切り捨てた。

 

まさに鎧袖一触。

しかも、BETAは高性能なコンピューターに惹かれる習性を持つ。故にグランゾンに群がってくるのは、必然だろう。

その有様は、飛んで火に入る夏の虫としか表現しようが無かった。

 

 

「な、なんだ・・・あの戦術機は・・・」

 

 

大東亜連合軍は、グランゾンの圧倒的な力に目が離せなかった。

 

そして、帝国陸軍が現れたのは、そんな時だった。

 

 

「こ、これは一体・・・」

 

 

現場に到着した帝国軍もただ唖然とするしかなかっただろう。彼らが見たモノは無数のBETAの死骸と、それを生み出した蒼い魔神なのだから。

 

 

「おや。今頃到着ですか」

 

 

最後のBETAを倒したシュウは帝国軍が来た事に気付き、彼らに話しかける。

 

 

「これは、あの蒼い戦術機の衛士か!?一体、お前は・・・何者なんだ?」

 

「ふっ・・・私の正体を問い質すなど、そのような悠長な事をしている時間があるのですか?」

 

「・・・なんだと?」

 

 

グランゾンに対し誰何した帝国軍人はシュウの言葉に眉を顰める。だが、彼の不快な気分も次のシュウの言葉で吹き飛んだ。

 

 

「あなた方が戦線を離脱した事で国連軍司令部は混乱しています。このままでは壊滅も時間の問題でしょう。そうなれば責任を取るのは貴方方、日本帝国、しいては彩峰中将閣下となるのですよ」

 

「・・・!」

 

 

突如離脱した帝国陸軍により国連司令部は混乱、戦線の一部に至ってはBETAに喰い破られている所すら存在する。そして、この現状を生み出したのが日本帝国なのは紛れも無い事実だった。

このまま、ここで時間を浪費すれば、状況が悪化するのは火を見るよりも明らかだ。

 

 

「さて、次があるので私は失礼させてもらいますよ」

 

「なっ!まっ・・・」

 

 

シュウもまだ用事があるのか、彼らとの会話を打ち切る。そんなシュウを止めようとするが、その暇は無かった。

 

 

「は、速い!」

 

「なんてスピードだ・・・」

 

 

グランゾンは超スピードで戦域を離脱していった。通常の戦術機がせいぜい時速数百キロしか出せないのに比べ、グランゾンは音速を余裕で超え、超音速で去っていったからだ。

 

そしてしばらくはグランゾンにあっけに取られていた彼らだが、我に返ると行動を開始した。

 

避難民を助ける為に、そして戦線に戻る為に・・・。

 

 

***

 

 

 

一方、飛び去っていったグランゾンは、戦場そのものは離脱しておらず、未だにその機体を戦場に置いていた。

 

 

「ご主人様、次は地上の10時方向です」

 

 

チカはレーダーでBETAの反応を確認し、シュウに報告している。珍しくレーダー監視員の仕事が出来ているようだ。

 

 

「なるほど・・・。ならばワームスマッシャーで数を減らしますか」

 

 

シュウはチカにそう言うとグランゾンの前にワームホールを展開し、ビームを時空穴に向けて撃ち出す。BETAは、数を減らすも、全てが撃破された訳でなく、グランゾンに肉薄するものもいた。

 

もっともグランゾンの歪曲フィールドを突破出来るモノは居なかったが。

 

 

「でも、ご主人様。今のグランゾンで大丈夫ですかね」

 

 

しかし、チカは今のグランゾンに一抹の不安があるようだ。何せブラックホール技術の塊だ。継ぎ接ぎ状態の今のグランゾンでは暴走する可能性が無いとは言い切れない。もっとも暴走してもシュウの魔術で被害は最小限に抑えられるのは確定事項だ。

 

 

「戦闘自体は問題ありませんよ。・・・本来の力を発揮出来ませんがね」

 

 

シュウの言うとおり今の地上での戦闘レベルなら問題ない。だが、ブラックホールクラスターを始め、多くの機能が不全状態になっているのも事実だった。

 

 

「ラ・ギアスの工房で作っているパーツで何とかなると良いんですか・・・」

 

 

チカはラ・ギアスで作っているグランゾンのパーツで何とかならないかと主人に問う。

 

シュウが今の彼となって10年余り。

その間、彼らはラ・ギアスでの活動拠点作りに力を入れていた。それも当然だろう、当時の彼らではグランゾンを整備する施設を得ることが出来なかったからだ。

故に、月日をシュウは足場固めに尽力したのだ。エリック・ワンへ優先しての技術提供もその行動の一環だ。

 

 

「腕の立つ錬金術師である彼らが作った物ならある程度は問題無いでしょう。それに今回の戦闘データがパーツの精度をより高めてくれるでしょう」

 

「なるほど・・・さすがご主人様!唯では転ばない!よっ、世界一!」

 

「・・・ふぅ・・・戦況はどうですか?チカ」

 

 

お調子者のチカに呆れながらもシュウは戦況を彼に聞く。

 

 

「BETAがグランゾンに向かって来ていますから、国連軍も何とか体勢を立て直せたみたいですね。帝国軍も順繰り戦線に復帰してますし、私たちはそろそろお暇する時間じゃないですかね?」

 

 

チカの言うとおりグランゾンが誘蛾灯の役目をすることにより、国連軍への圧力は下がり、何とか態勢を立て直しつつあったのだ。

 

 

「そうですか。・・・おや?」

 

 

シュウの卓越した感覚がレーダーを見ずともこの戦域に接近する気配を察知した。ソレを見てチカは彼らから発せられる識別反応を確認する。

 

 

「あれは、帝国陸軍ですね」

 

「・・・どうやら、時間のようですね」

 

「閣下!例の蒼い戦術機が!」

 

「奴に構うな!我らは我らの任務を果たすまでだ!」

 

(蒼い戦術機・・・彼のおかげで最悪の事態は防げた。しかし、だからといって私の処罰は免れないだろうな)

 

 

その部隊は彩峰中将自身が率いる部隊だった。指揮官である彼が態々前線に出てきたのは、この状況を招いた自責の念からだろうか。

 

BETAと戦っていたグランゾンがこちらを見ていることに気付きながらも、彩峰中将たちはBETAに相対する。

そんな時、彩峰中将はある事に気付いた。

 

 

(通信だと?)

 

 

自分の機体に機密回線で通信が入ってきたのだ。

 

 

『彩峰中将、これは貸しにしておきますよ』

 

「なっ、お前は・・・」

 

 

帝国の機密回線を使ってきた主、それが目の前のグランゾンだと彼は本能的に察した。

 

そして、言う事だけを一方的に言ったグランゾンは再び戦場を離れていった。

 

 

(借りか・・・高くつきそうだな)

 

 

飛び去っていくグランゾンを見送るしか、彩峰には出来なかった。だが、彼は戦術機にある行動を取らせた。

 

それは敬礼であった。

 

 

 

***

 

 

光州作戦は、トラブルもあったが、国連軍司令部は健在だった。

無論、だからと言って彩峰中将のした事が無くなる訳では無いが、正直それどころでは無かった。

 

突如、戦場に現れた蒼い戦術機。

光学兵器を装備し、何らかの物理障壁を展開することが可能であり、更には重装甲にも拘らず驚異的な機動性。

 

どれも無視しえぬモノだ。この情報を受けて、世界は動き出す。彼の望むように・・・。

 

 

「これで手札を一つ、いえ二つは手に入れることが出来ました。さて、チカ。予定通り行きますよ」

 

 

そして、シュウはそんな世界の様相を予定通りと流し、次なる目的地に向かう。

 

 

「了解です。ラ・ギアスへのゲートを展開します!」

 

 

チカがパネルを操作し、ゲート展開機能を起動させる。

 

 

(しばらくは静観させて貰いましょうか。後、数ヶ月もしたらラ・ギアスの情勢も動き出す事ですしね)

 

 

目指すは、シュウの生まれ故郷ラ・ギアス。

 

 

「さて・・・この世界でどうなるのでしょうね、マサキ」

 

 

時代は徐々に動き始めた。そして、未来を見定める為にシュウ・シラカワは往く。地下世界(ラ・ギアス)へ・・・。




やっとこそ魔装機神原作に入れそうです。

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