バカとテストと召喚獣~すべてを知った僕となにも知らない君~ 作:唐笠
場面がいきなりとんでますが、次回で補足します。
明久SIDE
「ありがとう…姫路さん……」
暗闇の中、目の前にいる僕はそっと呟く。
当然だが、僕の目の前に僕がいるなんてあり得る筈がない。
夢…?
だけど、それにしてははっきりとし過ぎている気がする……
「お礼を言うのはこちらの方です吉井君♪」
そう言って、いつもの明るい笑みを浮かべる姫路さん。
だけど、その瞳が映しているのは僕ではない。僕の目の前にいる僕だ。
「あっ!危ない!姫路さん!?」
なんの前触れもなく突然叫びだすもう一人の僕。
そして、さっきまでの笑顔が嘘のように力なく倒れる姫路さん。
「………………………………」
僕じゃない僕はなにも言葉を発さないでいる。
状況がのみ込めていないのか、それとも悟ってしまっているのか…
もう…助からないと……
「嘘…だよね……」
頭ではわかっている…
だけど、傍に行かずにはいられなかった。
もう、二度と失わないと…
誰よりも大切な君を失わないと誓ったあの想いを嘘にしたくなかったから……
僕から離れてゆく君を見たくなんかなかったから………
「………………………………」
背中を支えるように抱き抱えたその身体を微かにだが温もりが残っていた。
まだ…死んでいない……
僕はそこに一縷の希望を見いだすと助けを呼ぼうと辺りを見回す。
………………………………
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誰もなにもなかった…
闇の中にいるのは僕と姫路さんの二人だけ……
いや、正確には僕は二人いるから三人である。
だけど、もう一人の僕はただ茫然と立ち尽くしているだけで動く素振りすらみせない。
ダメだ。
あいつは使い物にならない。
僕がやらないといけないんだ。
そう考え、僕はズボンのポケットから携帯を取り出す。
「とにかくまずは救急車を呼ばないと!」
震える手でボタンを押していく。
ツーツーツーツー
無情にも響く話し中の合図音。
すぐに電話をきると、すぐさまリダイアルをする。
ツーツーツーツー
まただ…
僕は若干の焦りを覚えながらも再度リダイアルを選択する。
ツーツーツーツー
もう一回!
ツーツーツーツー
まだだ!
ツーツーツーツー
どうしてでてくれないんだ!
ツーツーツーツー
早くしないと姫路さんが!
ツーツーツーツー
段々と冷たくなってきているんだ!
ツーツーツーツー
早く!
ガチャ
やっと誰かがでてくれた。
よかった…
これで姫路さんは……
「もしもし、警察ですが何かご用でしょうか?」
……………………………
僕はバカだったんだ……
救急と警察の番号を間違えるだなんて…
本当に…バカだったんだ……
「どうされましたか!?」