バカとテストと召喚獣~すべてを知った僕となにも知らない君~ 作:唐笠
そう、なんの根拠もなしに信じられるもの。
君とだけしか手に入れられない大切なものなんだ。
「なぁ…
お前らってデキてるのか…?」
僕が姫路さんからクレープをもらっているところを唖然として見ている雄二が言う。
まぁ、たしかに『はい、あーん』はカップルがやるものだから勘違いしても仕方がないだろう…
「って、そんなわけないよ!」
「そ、そうですよ!
私と吉井君はそんなんじゃありません///」
わかっていたことだが、姫路さんに真っ向から否定されるとショックだなぁ…
高望みだってことはわかってるけど、夢を見てみたい気持ちはそう簡単に捨てられるものではないのだ。
「コーヒーと水も置いておきますね」
「っ!?」
雄二が唖然としていたのを気遣った女の子が僕と雄二の前に飲み物を置くが、雄二はなぜだか異様な反応を見せた。
しかし、それから特にこれといったアクションもなく――――
あれから雄二にからかわれながらも何気ない雑談をした僕たちは喫茶店の前に出ていた。
「翔子ちゃん、坂本君、さようなら」
「……また明日」
「また今度四人で集まろうぜ」
「そうだね。じゃあ、また明日ね」
僕たちはそれぞれ二組に歩いて家路につく。
隣を歩く姫路さんは余程楽しかったのか上機嫌であることが見てとれた。
可愛い。それが純粋な感想だ。
勉強もできて性格もいい、そして容姿端麗の姫路さん僕にとって高嶺の花であることはわかっている。
わかっているけど、やらなきゃいけないんだ。
姫路さんを助けられるのは僕だけだから…
僕が姫路さんを助けなきゃ……
おこがましいと思われるかもしれないけど、願うことならいつの日か君と――――
「ほぇ?
私の顔になにかついていますか?」
「な、なんでもないよ///」
僕の視線に気付いたのか、僕を見上げるように尋ねてくる姫路さんに僕は恥ずかしさで目線をそらしながら両手で否定の合図をとる。
「ふふっ、変な吉井君ですね♪」
そう言いながら笑う姫路さんは少し僕の方に近づき、そして――――
ぎゅっ
「えっ!?」
なにかに捕まれた感触を確かめれば、そこには案の定、僕の右手を握っている姫路さんがいた。
「せっかくですから、小学生の時みたい手を繋いで帰りましょ?」
そう言えば、そんなこともあったなぁ…
もう十五年前にもなるのに僕はたしかにその時のことを思い出せた。
「そうだね。繋いで帰ろうか」
そう、たしかあの時も――――
NO SIDE
「なぁ、翔子。あの二人どう思う?」
「……きっと二人ならうまくいくし、幸せになれると思う」
「そうだよ…な。
あいつらなら、幸せになれそうだよな…」
「……なにか悩み事?」
「いや、なんでもないから気にしないでくれ」
(今回はできなかったけど、俺はやらなくちゃいけないんだ…
たとえ、それがあいつらの幸せを壊すことになっても、あいつらのために……)