バカとテストと召喚獣~すべてを知った僕となにも知らない君~   作:唐笠

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ここからはにじふぁんで書けなかった箇所になります。

ブランクもあってグタグタですが、お付き合いいただけれれば幸いです


第13話 運命

 

明久SIDE

 

振り分け試験。

それは1つの分岐点であった。

 

この日で全てが決まると言っても過言ではない。

 

そう……

この日が僕の運命の日……

 

僕はこの日を変えなければならない。

そのための今まで。

そのための『僕』なんだ。

 

でも、僕はなにを変えればいい…?

 

いつの間にか僕の横を歩くことが当たり前のようになった君を死なせないようにすること…?

 

僕が『僕』を殺してしまわないようにすること…?

 

それとも…

僕と君との………

 

いや、それはダメだ…

今は目の前に迫っている危機を直視しなければ……

 

大切なのは僕じゃなく君なんだから、僕の事情なんて関係ない。

二の次、いや、それ以下に考えなければいけないんだから僕は……

 

「明久君、今日の振り分け試験頑張りましょうね♪」

 

「う、うん…」

 

曖昧な返事。

努力などしなくても高校生レベルの問題ならば僕にとっては雑作もないことだ。

 

だけど、それは一種の裏切り…

この日のために頑張ってきたみんなへの…君への侮辱に等しい。

 

そんな僕が平気な顔をして、『ここ』にいるという事実。

それは間違いなく、僕が変えてしまった過去であった…

 

 

 

 

~振り分け試験~

 

これでも、当時の僕にとっては難題だったんだろうな…

 

僕の中では当たり前のことを書き込みながら、そう考える。

楽なんてもんじゃない。答えを見ながらやっているに等しかった。

 

『そうやって、お前はわかった気になる。

この世界を知ったつもりでいて楽しいのか?』

 

なにが言いたいんだ…

 

そう、僕の中の『僕』に問いを返す。

 

『お前はなにも解っちゃいないんだよ。

全てを知った気になって、重要なことはなに1つ知らないんだからな』

 

たしかにそうかもしれないね。

だけど、全てを知る必要なんてないんだ。

 

『はんっ、逃げるつもりか?』

 

 

違うよ…

僕は『ここ』に来て気付いたことがあるんだ。

 

知っている景色も角度を変えて見れば違った景色になる。

それはちょっとしたきっかけで変わる景色なんだ…

儚くて、脆い。それでいて、いや、そうであるからこそ大切に思えるんだ。

 

『いくら取り繕うとも、お前のやってることは変わりゃしないよ』

 

そう、僕のやってることは変わらないさ…

だけど、『ここ』にくる前と今では決定的に違うものがひとつある。

 

「姫路さん!」

 

過去で起こった通りに倒れてしまう姫路さんを抱き抱え、見えるはずのない『僕』へと向き直り、一言だけ返す。

 

僕はたしかに『今』を生きているんだ…

 

『ったく、諦めの悪いやつだな…

なら、最後まで生き続けろ。何があっても投げ出すんじゃねぇぞ』

 

それだけを言うと『僕』はすっと消えていったような気がした。

実態があるわけじゃない。

だけど、僕の中の何かが変わったのは確かだったのだ。

 

 

 

 

~保健室~

 

「大丈夫?」

 

「は、はい…」

 

保健室のベットに寝かせた姫路さんは上気させた顔で笑って応える。

姫路さんが無理をしているのはわかっている。

そして、無理をしているのを見透かしてる僕がいること自体も見透かせられてる。

そんな気がしたんだ…

 

おかしいよね…

僕の過ごした過去に、未来の僕を知り得る人なんているはずないのに……

 

なのに…

僕はこの時を愛しく思った。

 

君といられるこの時間。

心配させまいと無理をする君。それを見透かす僕。

そして、そんな僕すらも予想通りといった風に微笑む君。

 

通じ合ったと錯覚さえ起こしそうになる『今』はたしかに僕が手に入れたものだ。

 

「明久君…」

 

「どうしたの?」

 

切れてしまいそうなか細い声。

それで僕の名を呼ぶ姫路さんに僕は耳を傾ける。

 

「家までおんぶしてもらってもいいですか?」

 

「…………うん」

 

一瞬の間をおいての返事。

いつもの僕ならば緊張で取り乱してしまいそうな言葉に僕は頷く。

 

なぜ取り乱さなかったのかわからない…

だけど、僕はどこかでそれを予期していたかのように冷静だった。

 

それに保健室の先生が出払っている今、いつまでもここに留まっている必要はないのだ。

 

「捕まってね」

 

「はい…」

 

ベットの横に屈んだ僕の首回りに姫路さんの腕が回される。

そこから伝わる温もりは僕の護るべきもの。

僕がそう願い、届くあてもなく追いかけたものだった…

 

「じゃあ、いくね」

 

そして、僕は後戻りのできない一歩を踏み出した。

 

 

 

 

~公園~

 

「ちょっと休憩しようか」

 

背中から伝わる姫路さんの鼓動が段々と早くなってきたのを感じた僕は、姫路さんを一度公園のベンチに寝かす。

ここから姫路さんの家までは後10分ほどもあるため、あのままでは姫路さんにとっても辛いだけだろう。

 

「ジュース買ってくるから、ちょっと待っててね」

 

僕の呼び掛けに姫路さんは辛そうにしながらも、こくりと頷いた。

やっぱり熱がある時はスポーツドリンクがいいのかな?

そんなことを考えながら、公園内で自動販売機を探す僕。

 

「たしかこの辺に……」

 

昔の朧気な記憶を頼りに向かった先にはたしかに自動販売機があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、明久」

 

ただし、そこにいるはずのない人物と共に…


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