次は、マクゴナガル先生の変身術の授業だ。
授業開始ギリギリになって、ハリーとロン、そしてどういう訳かハーマイオニーまで一緒に駆け込んできた。
ハリーは一番後ろの席に座ったけど、何故かクラスのみんなは、ハリーのことをチラチラ盗み見ていた。
授業が始まった。
マクゴナガル先生が、みんなの前で動物もどき(アニメーガス)の実演をしてくれることになった。
うわー、ラッキー!!
まさかこんなに早く、彼女の変身が見られるなんて!
先生がオホンと咳払いをして目を閉じると、みるみる体が縮む。
そして、トラ猫の姿に変わった。
目の周りにメガネと同じ形の模様がある。
私がパチパチと拍手をすると、すぐ先生は元に戻った。
「おや何故ミス・キサラギ以外、誰も拍手をしないのですか?」
あ、本当だ。
私以外、誰も手を叩いていないぞ!
するとハーマイオニーが、占い学でハリーが死ぬという予言をされたことを話した。
変だな?
ハーマイオニーは私と一緒にマグル学に出ていたはずだ。
なのに、どうして占い学で起きたことを説明できるんだろう?
するとマクゴナガル先生は、占い学のトレローニー先生が最初の授業で生徒の死を予言するのは、毎年の恒例行事なのだと説明した。
それからマクゴナガル先生は言った。
「ポッター、私の見るところ、貴方は健康そのものです。ですから、今日の宿題は免除したり致しませんからそのつもりで。ただし、もし貴方が死んだら、提出しなくても結構」
私とハーマイオニーは、同時に吹き出した。
お昼を食べながら、ロンはまだハリーの死の予言を心配していた。
するとハーマイオニーは、占い学そのものがいい加減だと言い出した。
「レイ、あなたは占い学を取らなくて、正解だわ。あんな不確かなもの、学問とは呼べないわ」
「トレローニー先生は君にまともなオーラがないって言った! 君ったら、たったひとつでも、自分がクズに見えることが気に入らないんだ」
ロンがそう言うと、ハーマイオニーが教科書をガン! とテーブルに叩きつけた。
ハーマイオニーは「占い学なんてクズだ!」とか言って、大広間を出て行ってしまった。
次は魔法生物飼育学で、外での授業だった。
失礼少年マルフォイが、お供のゴリラ(クラッブとゴイルというらしい)といるのが見えた。
どうやら、スリザリンと合同授業になるようだ。
生徒がそろうと、ハグリッドは、みんなを放牧場に連れて行った。
「イッチ番先にやるのは、教科書を開くこった」
ハグリッドの言葉にマルフォイが気取った声で、「どうやって?」と尋ねる。
周りを見れば、みんなはあの怪物本をベルトで縛ったり、スペロテープでグルグル巻きしたり、大きなクリップではさんだりしていた。
そんな中、私、ハリー、ロン、ハーマイオニーの4人だけは、教科書をさっと開いて見せる。
すると、ハグリッドは嬉しそうに「お前さん達、どうやった?」と尋ねた。
私が背表紙を撫でたと答えると、ハグリッドはますます嬉しそうだった。
「そう、撫ぜりゃーよかったんだ」とハグリッドは言った。
放牧場の向こうには、馬と鷲を足したような巨大生物がいた。
「ヒッポグリフだ!美しかろう」
ハグリッドが自慢顔で言った。
確かに、鷲のような貫禄たっぷりな頭や、灰色、栗毛、赤銅色などの毛並みはキレイだよね。
「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らねばなんねえことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは、絶対、侮辱してはなんねぇ」
ハグリッドは、ヒッポグリフについて解説する。
その後、ハリーを指名して、バックビークという名の灰色のヒッポグリフを連れて来た。
ハリーはハグリッドに言われるとおり、バックビークにお辞儀した。
すると、バックビークが、お辞儀を返してきた。
ハグリッドは大喜びで、ハリーにクチバシを撫でさせた。
それから、ハグリッドは、ハリーに背中に乗るように言った。
ハリーがバックビークの背中に飛び乗ると、ハグリッドは勢いよくバックビークの尻を叩く。
すると、4mはありそうな巨大な翼でヒッポグリフは空へ舞い上がった。
ハリーを乗せたバックビークは、辺りを一周すると、ドシンと着地した。
ハリーの成功を見て、私達もヒッポグリフに挑戦だ。
私は赤銅色のヒッポグリフと対面した。
まず、瞬きせず目をじっと見つめる。
それからお辞儀をして、「よろしくお願いします」と挨拶だ。
すると【うむ、良かろう】という声が聞こえた。
驚いて顔を上げると、ヒッポグリフがお辞儀を返しながら言った。
【そなた、拙者の言うことが理解できるとみえる。もしや『鳥語聞き』では?】
「ええ、そうです。でも、まさかヒッポグリフとも話ができるとは思いませんでしたが」
【鳥語聞きの娘よ、拙者のクチバシを撫でるが良い】
などと、 私がヒッポグリフと話していると「ヒィーっ!!」とマルフォイの悲鳴が聞こえた。
【この無礼者!『醜いデカブツの野獣』などと、我を愚弄(ぐろう)しおって!!】
鋭い鉤爪が、マルフォイの腕を切り裂く。
どうやらマルフォイはハグリッドの注意を無視して、バックビークを激怒させたらしい。
ハグリッドは、慌ててバックビークをなだめ、首輪をつける。
私はチッと舌打ちして、マルフォイに駆け寄った。
あの馬鹿!
ハグリッドが「侮辱するな」って注意したのに!
マルフォイの腕には、深い長い裂け目ができていて、赤黒い血がドクドクと流れ出ている。
ありゃりゃ、こりゃ太い静脈を切ったかな?
「僕、死んじゃう。見てよ! あいつ、僕を殺した!」
男のくせにピーピー騒ぐな。
動脈は切ってないんだから、簡単に死ぬわけがない。
「うるさいな。騒ぐと出血が酷くなるよ。Episkey!」
私はマルフォイの腕をガッとつかんで、治療呪文をかけた。
マルフォイは、ギャーギャー泣いてたけど、無視だ。
呪文のおかげで、傷口は浅くなったけど、まだ少し血が出ていた。
一応、包帯も巻いておくか。
私は再び杖を取り出して「Ferula!」と唱えた。
「君はハグリッドがあれだけちゃんと『ヒッポグリフを侮辱するな』って注意したのに、まともに聞いてなかった。そのケガ、はっきり言って自業自得だね」
私はそう言い捨て、ハグリッドにマルフォイを医務室へ連れて行くように頼んだ。
マルフォイは唇を噛み締めて私を睨んでいた。
マルフォイがケガをしたことで、スリザリン生は、ハグリッドをクビにすべきだと騒ぎだした。
「マルフォイは大丈夫かしら?」
さすがにハーマイオニーも心配していた。
するとハリーが校医のマダム・ポンフリーの腕なら、あれぐらいのケガを治すのは楽勝だと言う。
ロンが私に「マルフォイなんか助けることなかったのに!」と言った。
「ああ、アレは条件反射みたいなもんだね。ケガ人をみると、放っとけなくてさ」
私は苦笑いした。
それよりも、むしろハグリッドの方が心配だ……。
というわけで、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ハグリッドの小屋へ様子を見に行くことにしたようだ。