ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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二章 魔弾の狙撃主
第7話


蛭子 影胤の陰謀から早くも一ヶ月…段々暖かくなってきた。

さて優磨はこう言うときは何時も寝ているのだが今日は所用と言うか前回人生初の人間ロケットを体験し(まあ何度も体験してるやつもいないと思うが…)全身の機械が破損。その際に修理費用を出してくれたスポンサー様に今日は顔を出そうと夏と春と新たに加わった夏世を学校に送り出してからアポを取ってやって来たのだ。

 

「あったあった」

 

優磨の目に前に建つのは巨大なビル。名は【北美重工】…元々は小さな下請け工場だったが早く・確実に・丁寧に…の三つを心情に着実に業績を伸ばし今や大手の司馬重工と肩を並べる日本のトップ企業だ。

 

「あの…」

 

優磨は受付嬢に話しかけると、

 

「あら牙城さん。お久し振りです。お元気でしたか?」

「ああ。社長に会いに来たんだけど」 「少し待ってください」

 

優磨はここの会社の人間とは実は顔馴染みだったりする。

 

「はい、分かりました。どうぞ牙城さん」

「おう」

 

優磨が行くと、

 

「先輩…あの人が噂の牙城さんですか?」

 

優磨と親しげに話していた受付嬢の片割れが話しかけてきた。

 

「ええ、あの人が噂の…ね」

 

 

 

 

 

チーン…と言う音と共に社長室がある最上階に優磨は来る。すると、

 

「お久し振りです。牙城さん」

 

目の前に今どき見ることはほとんど…と言うかまず無いであろうメイド服に身を包んだ少女が現れる。

もしかしたらメイド萌えの方々であったら狂喜乱舞したかもしれないが…彼女は大人びた容姿と落ち着いた雰囲気で騙されるがまだ10才である。

 

「久し振りだな。榧ちゃん」

 

彼女の名は藤島(ふじしま) (かや)…恐らく想像がついたと思うが呪われた子供である。実はこの会社の社長は社長業と共に民警もやっておりその社長のプロモーターであり世話役が榧だ。

モデルはアント…つまり蟻だ。そのせいか力が異常に強くリンゴだろうが卵だろうが握りつぶし硬貨ですら曲げて千切る…一度夏と対戦したことがあったが夏のパンチが決まりながらも頬を握ってリタイアさせると言う荒業をしたことから頑丈でもある。

因みに彼女は既に身長が152㎝ある…基本的に10才の女の子の平均が140前後だと言われてるのでそうやって考えると早熟なのか…

 

「牙城さん…こちらです」

 

榧の案内のもと優磨は歩く。

 

「社長は多分社長室です。優磨さんが来ることは伝えてません」

「っておい!それ問題じゃねぇか」

「大丈夫です。社長は今から三時間は用事はなく牙城さん以外来客の予定もありません」

「いやいや。俺アポとったよな?」

「ええ、ですが私が伝えなければ社長は知ることはありません」

「何でわざわざんなことを…」

「だってそっちの方が社長が驚いて楽しいじゃないですか」

「…………」

 

優磨は頭を抱える。忘れていた…こいつは無類のいたずら好き…無表情で礼儀正しくひたすらここの社長に尽くしてる感じがあるが何時も何かしらの方法で驚かせそれを楽しんでいるのだ。

 

「だからと言って種明かしとかしようとしたらぶっ飛ばしますよ」

 

サラリと脅された…怖すぎる。

 

「入りますよ」

 

そう言って社長室に入ると何とそこにはひたすら本…壁にギッチリとつけられた巨大な本棚…そしてそこにはまた本が隙間なく入れられている…更にはそこに収まらずはみ出した本に埋もれる人影…

 

「おーい…」

 

優磨が呼ぶとモゾモゾ動く…

 

「牙城さん。揺すってきてください」

「まじかよ」

優磨はため息を吐きながら近づくと、

 

「起きろよ」

 

揺する…すると何か呻くと顔をあげた…

 

「あ…ええと…」

 

睨まれる…それはもう睨まれる…

とはいえ別に嫌われてるとかではなく純粋に目が悪いのだ。仕方なく優磨が眼鏡をかけてやる。

 

「……ああ…優磨さんこんにちは…」

 

そう言ってまた突っ伏して寝息をたてはじめ…

 

「って!優磨さん!?」

 

跳ね起きた…

 

「久し振りだな。由実ちゃん」

 

 

 

 

 

優磨の顔を見て早々飛び出して行ってしまったため戻ってくるのを待つ間に軽く彼女の紹介をしよう。

彼女は北美(きたみ) 由実(ゆみ)。北美重工の社長にして小さな下請け工場をここまで引き上げた凄腕経営者である。

だが生まれつき目が悪く眼鏡が手放せない。しかし顔立ちは非常に整っており可愛らしくまるで太陽のような笑みと慈母の様な性格…そして何より胸がでかい。本当にでかくそのでかさは木更ですら並ぶと貧乳に見えてくるくらいでかい。うつ伏せになると自分の胸に顔を埋めて寝れるくらいと言えばそのでかさが分かるだろうか…だが背は低く160もない。

性格は先程も書いたが慈母…もしくは菩薩…千手観音…等々形容できるがとにかく穏やかでおとなしく今でも優磨と歩くときは3歩後ろを歩くと来たもので今は絶滅した大和撫子といった風情だ。

因みに序列は4600位。

 

「あ…あのぉ…」

 

そこに戻ってきた。

 

「ああ、お帰り」

 

見てみれば髪を梳かして薄く化粧している。

 

「お…おお…おおおお久し振りです優磨しゃん!じゃなかった優磨さん!」

「うん、取り合えず落ち着け」

 

普段は優秀な社長としてその敏腕を振るっている由実だが基本的に人見知りである。しかも優磨とは特にそれが顕著で今に様に日常会話すらおぼつかない。

なぜか…そんなもん聞くまでもないが一応いっておくと由実は優磨が好きだからである。元々は由実の今は亡き父親が優磨とは友人(大学の先輩だったのだ)で昔から優磨とは顔見知り、更によく優磨は由実の家で由実の父にご飯を貰っておりその時から優しいお兄ちゃんのような存在として接していたが由実から見ればイケメンで優しくて落ち着いた大人の男性…当時一緒にいた同級生の男子は比べれば当たり前だが子供で自分を辛かってくる嫌な存在だった(本当は好きな女子をいじっていただけ) …そのためかずっと将来の夢は優磨お兄ちゃんのお嫁さんを物心ついたときから貫き通しておりある意味では一途な女性なのだ。

 

「風邪とかひいてないか?」

「あ、はい。榧ちゃんのお陰で病気に縁の無い生活を送ってます」

「それは良かった」

とは言え優磨から見れば大学の先輩の娘…手を出そうなどと言う気は全く無いため由実にとって何気に懸案事項だったりする。

 

「そう言えば序列上がったんですよね?凄いです、ステージⅤを倒すなんて」

「あー…うん」

 

ステージⅤを倒した詳細は基本的に伏せてある。無論蓮太郎の義手等のことや優磨の体を世間から隠すためである。新人類創造計画にせよ新世界創造計画にせよ都市伝説として語り継がれるのは良いが本当にあってはならないのだ。

まあ人間ロケットで倒したと言っても普通は信じはしないだろう。

 

「でも人間ロケットはやり過ぎです。もっとご自愛してください」

「はい…」

 

優磨は出されたお茶を口に含みつつ視線を逸らす。

 

「そもそも優磨さんは…」

「おおっと。そろそろ時間だな。またな由実ちゃん」

 

旗色が悪くなった優磨は退散した。

 

「あ!…もう…」

 

由実は寂しそうな顔を浮かべる。

 

「社長!」

 

そこに榧が飛び込んできた。

 

「せっかく二人きりだったのになんですか!?年頃の男女が二人きり…もうちょっとピンクな空間できないんですか!?」

「そ、そんな無理だよ…話すのだっていっぱいいっぱいなのに…」

「…はぁ……もうちょっとアッチを見習ってください」

「ええ!?無理無理絶対無理だよ」

「某スポ根漫画も言ってます。諦めたら…そこで試合終了ですよ…あなたは良いんですか?北美重工の情報収集能力をもって調べたところ牙城さんを狙っているのは今のところ三人…【柊 夏】【柊 春】そしてあの【聖天子様】ですよ!?柊双子でしたら社長が圧倒的大差で勝てると思いますが聖天子様とか金はあるでしょうし極めつけにあの美貌…あの美貌は社長にだってひけは取りません!しかも最近跡継ぎの話だって出ています。良いんですか!?」

「だ、大丈夫だよ…ほら、優磨さん高貴な生まれとかじゃないし…?」

「聖天子様がそう言ったのを気にする方だと思いで?」

「………」

 

寧ろ恋愛は自由論者だろう…

 

「せっかくあなたは聖天子様だろうが目じゃない武器があるんです、それを使っていかないと」

「うぅ…」

 

榧の説教はそれから一時間にも及びその日の仕事に影響が出たらしい…

 

 

 

 

「さて…これからどうするかな…」

 

優磨は北美重工ビルを出たあと次の行き先を考える。菫のところか…だが最近菫の様子が可笑しかった…もしかしたら病気にでもなったか…すると、

 

「ん?」

 

遠くに見たことある背中が見える。ダが可笑しい…まだこの時間は学校のはずだ…しかも少し視線が虚ろ…

 

「ったく…」

 

優磨は予定を決定させる。あの子から事情を聞こう。

 

「延珠ちゃん!」

 

優磨は蓮太郎のプロモーター…藍原 延珠に声をかけた…


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