ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第4話

ステージⅤ…本来ガストレアはⅣまでしか進化しない。だが極めて稀に触媒を用いることでⅤまで進化するガストレアが存在する。そしてそれらは十二星座(ゾディアック)と呼ばれその内2体は既に外国の民警でIP序列一位と二位がそれぞれ撃破しており元々十二星座と言われているが欠番が存在するため残り9体居る。

ステージⅤの大きな特徴としては其々特殊能力を持つこと、そしてこれが一番なのだが人間がガストレアへ用いれる最大の武器であるバラニウム…これに対し耐性を持っていることだ。つまり生半可どころか通常では撃破不能…それ故に十年前…人類が敗北した背景にはこの十二星座(ゾディアック)の存在が大きい。

 

 

 

 

「待ってくれ優磨さん…ガストレアは意思を持たない筈だ」

 

蓮太郎は顔を青くしながら言う。

 

「おいおい蓮太郎。それはガセだぜ?アメリカなんかじゃその説は否定されてる」

「だ、だけどどちらにしたってガストレアが人間の意思で動くなんて…」

 

すると優磨がコメカミを掻く。

 

「あ、わりぃ。言い方が悪かったな。べつに七星の遺産は人の意思でガストレアを動かすものじゃない」

「え?でも…」

「考えてみろ、そんなもんがあったらとっくの昔にそれ巡って戦争だ」

「あ…」

「正確に言うとな…【呼び寄せてる】んだよ」

『呼び寄せてる…?』

 

蓮太郎と木更は信じられないといった表情だ。

 

「そうだ…引き付けあってる。まるで磁石のN極とS極のように…いや、もっと深いところだな。ほら、あれだな。虫とか動物にあるだろ?フェルモン?そんなやつがあるのかもな。まあその辺の関係は分からない…でもよ…」

 

優磨は目を細める。

 

「俺から言わせりゃああれだな…まるで子供がオモチャを取り替えそうとしてる感じがあるよ」

『……………』

 

車内に重い空気が流れる。

 

「お分かりいただけたでしょうか…このままではどうなるのかを…」

「ええ…ですが蛭子 影胤は何をしたいんでしょうか…」

 

木更の言葉に蓮太郎は頷く。

 

「だよな…国乗っ取ろうとか…そんなのを考えてるような奴には見えなかったし…」

「まあどちらにせよあいつにはやれない代物ってわけだ」

 

優磨は蓮太郎を見据える。

 

「力…貸してもらうぜ?蓮太郎」

「ああ…」

 

蓮太郎は渡されたジュース一気に飲み干すと頷いた…

 

 

 

 

それから三日後…作戦の決行日だ。

その為蓮太郎と延珠、そして優磨と夏、春はビルの屋上に来ていた。何故ならこの面々はヘリによる上空からの移動となる。無論他の民警も目指しているが徒歩だしヘリの方が圧倒的に早い。

 

「ふむ…けっこう煩いものだな蓮太郎」

「そうだな」

 

ヘリのなかでは蓮太郎と延珠が話していた。

その話を聞きながら優磨は煙草に火を着ける。煙をゆっくり吸い込んでいるとあっという間に危険地帯に入る。

危険地帯とは東京エリアの外…つまりモノリスという壁で覆われた街の外を指しガストレアも多いと言うか巣窟である。

 

「優磨兄様…他の民警は大丈夫でしょうか…」

「あれだけの人数だ…蛭子 影胤相手なら分からないがガストレア相手になら平気だろ」

「あー!腕が鳴るな~…今度はキッチリ小比奈をぶっ飛ばすんだから」

「む…それは妾の仕事だ」

「僕だよ!」

「妾だ!」

「どっちでも良いから怪我だけはすんなよ」

 

すると優磨たちの降下ポイントに差し掛かる。

優磨・夏・春三人と蓮太郎・延珠コンビは敢えて別々のルートから民警と合流する算段だ。

 

「じゃあ行くぞ」

「おー!」

「はい!」

「優磨さん、気を付けてください」

「ああ…あ、そうそう。ほれ」

 

優磨は蓮太郎に薬を渡す。

 

「何ですかこれ…」

「菫からの餞別だ。AGV薬…それ一本でどんな大ケガも瞬時に回復一家に一本の薬だ」

「す、すげぇ…」

「まあ五分の一でガストレア化するけどな」

「ダメじゃないですか!!!」

「だぁかぁら、最後にどうしようもなくなったら使えってことだよ。あいつなりにお前の事気にいってんだぜ?」

「そうは思えませんけど…」

 

素直じゃないからな~あいつも…等と言ったことがバレたら解剖されかねないため心に仕舞っておきつつ優磨は夏と春抱える。

 

「じゃあまた後でな」

 

そう言って優磨は飛び降りる。

凄まじい風圧が掛かるがそれを気に求めず脚のスラスターを起動し減速する。更に両の手の平から何かが起動し空間が僅かに歪む。これは簡易的な重力制御装置でこれを使って飛んだりするのは無理だが高所からの落下の際に安全に降りるため使える。

それを使って静かに着地すると、優磨は靴を脱ぎ裸足になる。

 

無音走り(スニーキングダッシュ)…起動」

 

これは名前の通り脚の裏から衝撃を完全に吸収し音を起てずに走る。

更に目には最適且つ最短ルートが写っておりそれを使って目的地を目指す。

 

「速い速い~」

「ダメだよ夏、静かにしないと」

「はーい」

 

春に注意され唇を夏は尖らす。

 

「後一時間も走れば着くぞ…」

 

優磨がそう言った次の瞬間、ズン!っと地面が揺れる。

 

「え?」

 

夏は咄嗟に何が起きたのかわからず声を漏らした。春も同様で目を見開いている。

 

「ちっ…どこぞの馬鹿が爆弾使いやがったな…」

「と言うことは…」

 

春が呟いた瞬間草むらから何かが飛び出す。

 

「ウリャア!!!」

 

それを使って双眼を深紅へと変えた夏がバラニウム性のグローブを使いぶん殴る。

 

「不味いな…ガストレアが目を覚ました…」

 

優磨は周りを見渡す。数は今は多くないが徐々に増えていっている。このままでは危険だ。

 

「夏!春!強引にこの包囲網から突破する!」

「分かった!」

「はい!」

 

二人の了承を得るが早いか優磨は腕のスラスターを起動し袖を破りながら地面をぶん殴る。

 

烈震(れっしん)!!!!!!」

 

凄まじい砂煙が舞う。夏と春は既に目を積むって耳を塞いでいる。

それから優磨は脚のスラスターを起動し空高く跳ぶと包囲網から脱出しあっという間に逃げ出した。

 

 

 

 

「ここまで逃げれば大丈夫だろ」

 

優磨は一度夏と春を下ろすと一息吐く。心肺機能を強化してるとは言え10歳児を二人抱えて猛ダッシュはキツかったようだ。

 

「大丈夫?優兄」

「ああ…っ!」

 

優磨は素早く腰から銃を抜く。

 

「誰だ!?」

 

優磨が言うとゆっくり出てきた…ワンピースとスパッツという出で立ち…この顔は見たことがある。

 

「たしかお前伊熊 将監の…」

「貴方は将監さんに喧嘩を売っていた人ですね」

 

そう言ってショットガンを下ろす。

 

「始めまして。千寿(せんじゅ) 夏世(かよ)と申します」

「牙城 優磨だ」

「柊 夏だよ」

「柊 春です」

 

一応形式上名乗ると、

 

「さっきの爆発音はお前か?」

「はい、咄嗟だったので…」

「まあいいさ…」

 

優磨は夏世を見る。

 

「で?何人殺った」

「っ!

 

夏世は驚いたような顔になる。

 

「何で…?」

「お前自分が思ってるより血の臭いするぞ」

 

優磨が言うと夏世は俯く。

 

「二人です…」

「伊熊からの命令か?」

「報酬を分けたくないとの事で…」

「あの単細胞が考えそうなことだ」

 

優磨はため息を吐くと夏世を見る。

 

「で?どうだよ…殺しの気分は…」

「…辛い…です…まだなれません…でもその内…あぐぅ!」

 

慣れる…と言おうとした次の瞬間ゴン!っと夏世の頭に優磨の鉄拳が落ちた。

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ!!!」

 

優磨の怒りに満ちた目に後ろにいた夏と春も竦み上がる。

 

「慣れるんじゃねぇ…慣れちまったときはな…人間辞めたときだ」

「良いんですよ、私は人間じゃ」

「アホ…お前は人間だ…俺から見れば10歳の人生酸いも甘いも知らねぇガキだよ」

「………」

 

優磨を夏世は呆然と見る。

 

「よし、ここで一度休憩しよう。エネルギー使い果たしちまった」

 

優磨の機械のエネルギー本来余りエネルギーという概念はない。普通に動かすだけであれば脳から発せられた電気信号通りに動くだけであり日常生活には支障はない。だが今回は重力制御に加えスラスターも連続しように長時間の使用も重なった。

そのため補給がいるのだ。

因みにエネルギーはカロリーで接種した食料の吸収しその際に生じたカロリーをエネルギーに変換する。

 

「わーい!」

「じゃあシート敷きますね。あ、夏世さんもどうぞ」

「え?あ、はい」

 

春が夏世を座らせるとバックを開けてお弁当を出す。

 

「はい、夏世ちゃん」

 

夏が夏世にサンドウィッチを渡す。

 

「………ええと…随分個性的な形のサンドウィッチですね…」

「う……」

 

優磨は視線をそらす。確かに優磨お手製のサンドウィッチは具は普通の物だが半面切った際に形が寄れてるし、具が飛び出てるしハッキリ言って下手くそだ。

 

「え~、でもこれ大分形保ってるよ?」

「うんうん。優磨兄様は見た目は凄いけど味事態は多分大丈夫だから」

「多分…ですか…」

 

夏世は恐る恐る口に入れる。

 

「ど、どうだ?」

「味濃いです…」

「そ、そうか…」

「でも……」

 

夏世は少し笑うと、

 

「美味しいです」

「そ、そうか!」

 

優磨は嬉しそうに頬を揺るませる。

 

「これでもうちょっと腕が上がってくれればな~」

「優磨兄様、蓮太郎さんに弟子入りしたらどうですか?」

「精進します…」

 

優磨は項垂れた。

それを見た夏世は笑う。

 

「変わってますね。牙城さんって」

「そうか?今話に出た蓮太郎何ゲイでロリコンでオカマバーのストリッパーだぞ」

「それは変は変でも変態という部類ですよね」

 

 

 

「ハックション!!!」

「大丈夫か?蓮太郎」

「あ…ああ…」

(何か俺も知らないところでトンでもないガセを撒かれてるような…)

 

 

 

 

「そう言えば夏世ってモデルは何なんだ?僕は蝦蛄だよ」

「私はバットです」

「ドルフィンです」

「イルカか…」

 

優磨は軽く片付けをしながら聴く。

 

「はい、なので戦闘向きではないんですかその分頭がいいんです。IQ200あります」

「それはすげぇな。俺も大学時代にやったことあったけど面倒臭いしふざけてやったら猿と同じくらいのIQ出てさ~」

 

因みに余談だが菫もやっておりその際のIQ値は測定不可能と出ている。

 

「それはどうかと思いますが子供のはIQが高めに出ますし…」

 

すると夏世の通信機に連絡が入る。

 

「あ、将監さん」

「お前何してやがる。あの男の居場所が分かったぞ」

『っ!』

 

優磨たちは黙っておく。

 

「明け方奇襲を掛ける。場所はメールするから急いできやがれ」

 

そう言って一方的に切ってしまう。

 

「じゃあ行くかぁ」

「よぅし」

「準備オーケーです」

 

優磨たちも立ち上がる。

 

「行くんですか?」

「ああ」

 

優磨は携帯を出すと電話を掛ける。

 

「おう蓮太郎か。集合地点変更だ。見つけたってよ。蛭子 影胤が…」

「本当か!?」

「ああ…今場所はメールする」

 

それから電話を切ると、

 

「んじゃ、行くぞ」

 

優磨の言葉に頷く伝えられた場所に向かって歩き出した。

 


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