ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第32話

「トリヒュドラヒジン?」

「ええ、しかも相当量のが検出されました」

 

由美の報告に全員が眉を寄せた。

 

「蓮太郎。そのトリ何とかとは何だ?」

「トリヒュドラヒジンだ。昔ガストレアウィルスの侵食抑えるっていわれた薬だ。まあ一時的だったんだけどな」

「でもあれ……確かもう一つ効果があって強い催眠状態に落とすって」

「その通りだよ木更ちゃん。まあお陰でレイプ薬の意味合いが今は強いね。ちなみに今でも裏ルートのアダルトビデオ何かそういうのもあるよ」

「あんまり聞きたい話じゃねぇな」

 

玉樹が気分悪そうにいった。

 

【まあそう言うのは需要がある限り無くならん奴や。でも何でガストレアからそんなもん出てきたん?】

「分かりません」

「どちらにせよ殴り込むしかないな」

 

蓮太郎は立ち上がる。

 

「行くのかい?」

「ああ」

「なら私たちは君たちが帰ってきたらすぐに行えるように最後の仕上げの準備をしておこう」

 

菫、木更、由美、榧、新一、風深、玉樹、弓月達は待機組……そして、

 

「行くぜ」

『おお!』

 

蓮太郎、延珠、火垂、 夏、春、夏世、翠は攻撃組に入る。

 

「さて、行ってくる」

 

蓮太郎達は出ていく。

 

「大丈夫でしょうか……」

「まあ危険だね。でもまあ……信じるしかないだろう」

「そう……ですね」

 

木更は蓮太郎達が出ていったドアを見つめていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

蓮太郎はモノリスの近くに来る。

 

「でもなんかある?」

「………ああ!」

 

春が声をあげた。

 

「どうした?」

「これを……」

 

皆が春が指差すマンホールを見ると、

 

『ああ!!!!』

 

そこには羽根の模様が彫ってあった。

 

「そこでこれか……」

 

蓮太郎は鍵を取り出すと穴に差し込み……ガチャリという音と共に開けた。

 

「いくぞ」

 

蓮太郎が飛び降りると皆も続いた……

 

 

 

 

 

「暗いな……」

 

延珠が呟く。

 

「そうだな」

「同感です」

「うん……」

 

蓮太郎、夏世、翠も同意するが……

 

「そう?」

「特に気になりませんけど?」

 

目が良かったり暗闇に慣れてるモデルの夏と春は何ともないと言った顔だ。

 

「ん?」

 

すると光が見えた。

 

「あれは……」

 

そこを見ると何かの研究室らしくかなり広い。

 

「なんだここ……」

 

入ってみるが一体何の……

 

『っ!』

 

次の瞬間耳をつんざくような鳴き声が響く。

 

「何だ一体……」

 

蓮太郎達は身構えながら先に進む……そして、

 

『なっ……』

 

蓮太郎達は息を飲んだ。

背中から変な汗が出る……口がカラカラになる……目が見ることを拒否する……

 

「何……これ……」

 

夏が喉の奥からやっと声を出した……

 

目の前にあるのは大量の檻……中にガストレアが入れられたと言う注釈がはいるが……

しかもこの檻……バラニウムで出来ている。普通ガストレアはバラニウムに囲まれれば衰弱死するはずなのだ。なのにピンピンしている。

 

「そう言うことかよ……」

 

羽根の模様があるガストレアもここから出てきた一体だったのだ。

五翔会の目的は……

 

「分かったみたいですね」

『っ!』

 

声の方を向くと悠河がいた。

 

「ああ、五翔会の目的は……バラニウムに耐性を持つガストレアを作り出すこと」

「正解です」

「だが何故だ!」

 

ガストレアに対してはステージⅤを除きバラニウムが有効……そのお陰で人類は生き長らえたといっても過言ではない。だがその安全神話が崩れてしまえば五翔会の人間だって危険なはずだ。

 

「その為のトリヒュドラヒジンだよ」

「まさか……」

「そう、トリヒュドラヒジンには一種の麻薬のような効果がある。それを使うことで耐性ガストレアを従わせるのさ」

「何故そこまでする!」

 

蓮太郎には分からなかった。何故そこまでする必要があるのだろうか。

 

「バラニウム……この金属が後どれくらいこの地球に埋蔵されているのかわかるかい?何と世界中のバラニウムを集めてにガストレアの殲滅には圧倒的に足りない。ならば毒を以て毒を制すればいい」

「ようはガストレアにガストレアをぶつけるって訳か……だがそれで終わりじゃねえだろ?」

「流石だ。そうだよ……ガストレアが消えた後には今度は脅威になってもらう。今度は世界中に耐性ガストレア牙を剥く。だが従わない国だけだ」

「そうやってお山の大将になる気か?」

 

蓮太郎は腰を落とすと義眼を解放する。

 

「そんなことはさせねぇ……五翔会だろうがなんだろうが関係ねぇ……俺がそんなもんぶち抜いてやる!」

「やってみなよ!」

 

蓮太郎と悠河は疾走……そして、

 

焔火扇(ほむらかせん)!!!!」

 

カートリッジが排出され推進力を味方に拳を突き出す。

 

超振動デバイス(ヴァイロ・オーケストレーション)!!!!」

『っ!』

 

凄まじい轟音と共に両者が吹っ飛ぶ。

 

「じゃあ俺はお前らチビの相手と行こうか」

『っ!』

 

夏たちは力を解放しながら振り替える。そこには金髪にピアスで体つきは貧相でもないが決して恵まれてるとも言えない普通のチンピラ……だがもっとも気になったのは両腕が真っ黒なの事だ。日焼けしてるとかそういうのではない。純粋に黒い……バラニウムの義手であることは一目で分かった。

 

「五翔会 三枚羽根 ケルベロスこと北沢(きたざわ) (はじめ)だ。わりぃが……死んでもらうぜ」

「くっ!」

 

夏たちも臨戦態勢を取る。

 

遂に最終決戦の幕が上がった。

 

 

 

 

「うぉおおお!」

 

夏と延珠と碧が疾走。後ろには春と夏世と火垂が援護する。普通であればこれで一蹴だ……あくまで普通であればだが……

 

「うぉら!」

 

北沢は地面を思いきり殴る。その際に地面に亀裂が走り夏達は足を取られる。

そこを一気に間合いを詰め、

 

「ふん!」

 

北沢の腕からカートリッジが排出。蓮太郎の義手を上回る推進力を味方に延珠に拳を撃ち込む。どれくらい上かと言うとカートリッジ一発で蓮太郎のカートリッジ三発分の威力を持っていた。

 

「がっ!」

「延珠!」

 

更に延珠が吹っ飛んだ先には春達がいた。

 

「くっ!」

 

春達は咄嗟にキャッチしたが……

 

「馬鹿な奴等だ」

「っ!」

 

北沢の右ストレートで春の肋骨が折られた。

 

「二人」

 

更にカートリッジを排出させ夏世を壁にめり込ませた。

 

「三人」

 

最後に火垂の腕を折りながら上へ打ち上げた。

 

「こんのぉおおおおお!!!!!!!!」

 

夏は地面から足を無理矢理引き抜き疾走。翠もそれに続く。

 

「はぁ!」

 

翠の爪が迫る……だが、

 

「ん?」

 

簡単に捕まれ引っ張られると……

 

「おら!」

「ぐっ!」

 

バランスが崩れたところにボディnを穿つパンチが翠を倒す。

 

「らぁ!」

 

そこに夏が来るが夏の拳に合わせカートリッジを排出……そしてクロスカウンターをぶちこんだ。

 

「がふ……」

 

夏は膝をつく。

 

「わりぃが……俺はお前のプロモーターの牙城 優磨ですら殺したんだぜ?お前なんざに負けるかよ」

 

背を向けながら北沢は言った。本当は違うがそういった方が夏悔しがると思っていったのだが……それは失敗だった。

 

「そう……か……」

「ん?」

 

夏は立ち上がる。この中で唯一モデル・シャコである夏はかなり打たれ強かった。

 

「なら余計に負けられない……お前は僕が倒す!!!!」

 

夏は瞳を更に赤熱させる。

 

「やってみろよ!」

 

北沢は走り出す。

北沢の義手はカートリッジ一発で二回パンチ力を上昇させられる。

更に上昇させられる力は蓮太郎のおよそ三倍……

だが夏は恐れることなく優磨直伝のボクシングスタイルを取る。

 

「おっらぁ!」

 

北沢の拳が迫る。

だが、

 

「はぁ!」

 

それを横に跳んで夏は避けると肝臓打ち(レバーブロウ)を打つ。

 

「ぐっ!」

 

北沢は裏拳で夏を追うが後ろに跳んで躱してもう一度詰めて肝臓打ち(レバーブロウ)……

 

「てめ!」

 

カートリッジを炸裂させて北沢の拳の打ち下ろし……も躱して肝臓打ち(レバーブロウ)!!!!

 

「くっ!」

 

北沢は怯んで頭を下げる……そこに……

 

「ドォオオオオオリャアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

渾身の右ストレート……メキャ!っと言う音と共に北沢は吹っ飛んだ。

 

「ぐぼっふ!!!!」

 

北沢は吹っ飛び周りの機械を蹴散らす。

今のは優磨に習った技術だ。

 

ボクシングにおいて実は重量級でもないとそんなに一発KO勝ちはない。夏のように軽量な体の選手はひたすら相手の一撃を躱して肝臓打ち(レバーブロウ)が鉄則だ。

無論そのような試合は観客は盛り上がらないし劇的な展開もない。ひたすらボディ打って点数あげて判定勝ちも多い。

鮮やかさはない。派手さもない。だが同時に確実性がある。故に優磨は夏のパンチ力を活かせるボクシングを教えていた。

 

「ウォオオオオ!!!!!!!!」

 

止めの一撃を撃ち込むべく疾走し……突然の横からの衝撃に夏は吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を戻そう。

 

「ウォオオオオ!!!!」

「ハァアアアア!!!!」

 

蓮太郎と悠河の戦いはひたすら乱打戦へとなっていた。無論互いの一撃はギリギリで躱している。だが精神力をゴリゴリ削られていくのを蓮太郎は感じていた。

 

「ウォオ!」

 

蓮太郎の蹴りあげを悠河は躱す。

 

「はぁ!」

 

そこからカウンターキックを狙うが蓮太郎の義眼がそれを捕らえ躱す。

二人の義眼は秒単位で演算速度を上げていった。だが……時間と共に蓮太郎が押され始めた。

 

「ハハハ!そんな低スペックの義眼を着けられたことを恨むんだね!」

「恨むか!この目は先生が俺に両目で世界を見るために着けたんだ!」

 

感謝こそすれ……恨む理由は微塵もない!

 

「そうかい……ならこれで終わりだ!超振動デバイス(ヴァイロ・オーケストレーション)!!!!」

「舐めんな!!!!雲嶺毘湖鯉鮒(うねびこりゅう)!!!!全弾撃発(アンリミテッドバースト)ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

悠河の拳と蓮太郎の義手が再度ぶつかり合う……

 

 

 

 

 

「かはっ!」

 

蓮太郎は転がりながら肺にたまった空気を吐き出す。

 

「はぁ……はぁ……」

 

周りを見渡す。悠河もどこかに吹っ飛んだらしい。

 

「っ!」

 

すると延珠達を見つけた。

 

「大丈夫か!」

 

駆け寄ると皆はボロボロだが何とか息はある。

だが、

 

「う……しろ…」

「っ!」

 

背後から北沢の襲撃を受ける。

 

「ぐっ!」

 

咄嗟に義足のカートリッジを排出し地面を蹴って躱す。

だが、その先には北沢と同じ顔をした脚が義足の男……

 

「がふっ!」

 

そいつも脚のカートリッジを排出し蓮太郎を蹴り飛ばす。

 

「里見さん伏せて!」

 

夏世に引き倒されると縦断がすぐ前を通過した。

 

「何だと……」

 

遠くに見えるが狙撃狙したのも北沢と同じ顔をした男……

 

「じゃあ改めて……五翔会 三枚羽根 北沢 一だ」

「同じく……北沢 次郎。向こうにいるのは三郎」

「三人揃ってケルベロスって訳だ。因みに俺は義手、次郎は義足で三郎は義眼だ」

「すいません……」

「謝んな夏世……」

 

蓮太郎は構える。何とかしてこいつらも倒さねば全滅する。

 

「オォオオオオオ!!!!」

 

蓮太郎は腕にカートリッジ補充しながら走り出す。

 

「焔火扇!三点撃(バースト)!!!!」

「よ!」

 

だが蓮太郎の一撃はカートリッジ一個使用されただけで止められた。

 

「残念だったなぁ!!!!」

 

次郎の回し蹴りに吹っ飛ばされる。

 

「ごふっ!ごふっ!」

 

蓮太郎は転げ周りながらも狙撃を避ける。

 

「くそ!」

 

蓮太郎は立ち上がる。

 

「っ!蓮太郎!!!!」

「え?」

 

蓮太郎は後ろを振り替える……そこには拳銃を構える悠河がいた。

この距離なら外れることはない。

 

「すみませんねぇ……任務成功第一ですから」

「……………」

 

走馬灯が流れていく……ああ、死ぬんだとぼんやり思った。

 

「さよなら……」

「っ!」

 

だが次の瞬間蓮太郎の前に何かが立ちふさがり後ろに崩れた。

 

「火垂!」

 

蓮太郎が抱き止める。

 

「何で……」

「体が勝手に動いたんです……ほっといてください」

「大丈夫だ。すぐに……」

「それは無理だ」

 

悠河の言葉に蓮太郎は睨み付ける。

 

「最近はモデルが判明してないイニシエーターもいるし案外イニシエーターはバラニウム弾でも死なないことがある。だからこれさ」

 

悠河が見せた黒い弾頭の銃弾。一見は蓮太郎達も使うものと似ているが、

 

「濃縮バラニウム弾……イニシエーターに対しても絶大な威力を発揮する弾丸ですよ」

「てめぇホラ吹くのも!」

「多分……合ってます」

「え?」

 

段々火垂の呼吸が浅くなる。

 

「里見さん……私……楽しかった……皆でワイワイ……鬼八さんが居なくなってから初めてそう思えました」

「おい!そんなこと言うなよ」

「きっとあなたは凄い人になれると思います……女の勘ですけどね……」

 

だから……

 

「生きてください」

 

火垂の体から力が抜ける。

 

「火垂……火垂!!!!!!!!」

「ジ・エンドだ」

 

蓮太郎の頭に銃口が押し付けられる。

 

「……」

 

皆が動き出す。だがそれはケルベロスが行く道を塞ぐ。

 

(駄目だ……)

 

夏はその中呆然とした。

もうどうにもならない……蓮太郎は殺されて……自分達も殺されるのだ。

 

(嫌だ……!!!!)

 

心が叫ぶ……魂が咆哮する。

 

「……て……い……」

 

夏の目から涙が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔約束した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が居ないときに危なくなったら呼べ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんなに小さい声でも……例えどんなに遠くにいても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前が心の底から呼べば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に助けに行くから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来る筈無いのは分かってる。だがそれも夏は呼んだ。

大好きで……大切な兄と呼ぶ男を……

 

「優兄……たすけて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せろ」

 

そんな声が聞こえた次の瞬間状況が変わった。




登録数が気付けば100人突破……パンパカパーン!!!!
やったー!
皆さんありがとうございまーす!

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