ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

32 / 42
第30話

「知り合いですか?」

「ああ、よく知ってるよクソッタレ」

 

火垂の言葉に蓮太郎は肯定と共に舌打ちした。

見ての通り……この三人は自分達に差し向けられた敵だろう。だが戦うにせよ逃げるにせよ困難を極める相手なのは間違いない。

 

「犯罪者みてぇな面してっから何時かやるんじゃねぇかと思っていたがまさかこんなに早いとはな」

「待て、俺はやってない」

「じゃあ何で逃げてるのですか?」

「それは……」

 

下手に説明すればこいつらも巻き込むことになる……そう思うと蓮太郎は口を濁らせる。

 

「答えられねぇってことは……捕まえるしかねぇぜ」

「ねぇ!」

 

弓月は蓮太郎を見る。

 

「どうなのよ……」

 

弓月は目が言っていた……違うと言って欲しいと……

 

「……っ……」

 

蓮太郎は拳を握る。

 

「事情があって逃げてる。内容は言えないけどな。だが納得しないんだろ?」

「ああ……」

「じゃあ……!」

 

蓮太郎は後ろに飛ぶ。

それと入れ替わるように夏が前に出た。

 

「損害請求はそっち持ちでね!」

 

夏が廊下をぶん殴り亀裂が入っていく。

 

『なっ!』

 

玉樹たち三人が驚愕してる間に蓮太郎達は走り出す。

 

「シィット!弓月!糸で道を作れ!」

「………あ、うん!」

 

 

 

 

 

「どうするんですか!?」

「逃げるのは無理だ。あいつらの事だ。出入口全部糸で封鎖してる可能性がある。ならいっそのこと広い場所で迎え撃つ。その方が玉樹の妹の糸も幾分マシだ。後、あのチップのデータ送っとけ!」

「はい!」

 

蓮太郎達は屋上に出る。運が良いことに周りにはこのマンションより高い建物はない。

これなら狙撃の心配はないだろう。

 

「ここがお前らの墓場で良いのか?」

 

玉樹達も追い付いてきた。

 

「ああ?ここで死ぬわけないだろ」

 

蓮太郎は腰を落とすと義眼を解放……更に人工皮膚が剥がれていく。

 

「本気か?」

「ああ、ここで止まれないんだよ」

 

蓮太郎にあわせて夏達も力を解放しそれに併せ瞳が灼熱する。

 

「仕方ねぇな」

 

玉樹のメリケンサック型のチェーンソーが音を出す。

 

「弓月!覚悟決めろ……行くぞ、朝霞」

 

二人は頷く。

 

「そう言えばちゃんと名乗ってなかったな。元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊【新人類創造計画】所属・里見 蓮太郎……これより敵を排除する!」

 

蓮太郎は足のカートリッジを炸裂させながら疾走した。

 

 

 

 

陰禅(いんぜん)黒天風(こくてんふう)!!!!!」

 

玉樹の顔に蓮太郎のハイキックが決まった……ように見えた。

 

「朝霞!」

 

蓮太郎は驚く。朝霞のカートリッジ一個使用した黒天風を双刀で受け止めたのだ。

 

「残念でしたね。行きますよ」

 

朝霞の双刀が蓮太郎の襲う。

 

「くっ!」

「甘いぞ!」

 

蓮太郎の頭の上を延珠が通過……コンクリートの塊も簡単に砕く飛び蹴りが朝霞を吹っ飛ばす。だが、

 

「甘いのはそっち!」

「しまった……」

 

延珠が弓月の糸で拘束された。

そこに、

 

「うるぅうううらあああああ!!!!!!!!!!」

 

夏が疾走……

 

「くっ!」

 

弓月が糸を出すが夏はそれをギリギリで躱しながら距離を詰める。

 

「見えてんの!?」

「当たり前でしょ!!!!!」

 

だがその前に夏の足元に穴が開いた。

 

「くっ!」

 

玉樹はマテバ拳銃を夏から蓮太郎に向けながら蓮太郎と距離を詰める。

 

「おら!」

 

チェーンソーが蓮太郎を襲う。

 

「駄目!」

 

だがその間に翠の爪が入り玉樹の動きを止める。更に、

 

「らぁ!」

 

蓮太郎はカートリッジを炸裂させて加速させたパンチで玉樹をぶん殴る。

 

「ご!」

 

玉樹は吹っ飛ぶ。

 

「はぁ!」

 

入れ違いに朝霞が来たが、

 

「この!」

「うりゃ!」

 

延珠と夏のダブルコンボで沈めた。

最後は……

 

「もう辞めようぜ。玉樹の妹……もう勝負はついた。幾らお前でもこの人数に勝てないだろ」

「………………………じゃあ、聞かせなさいよ……あんた今何やってんの?」

「それは言えない。お前たちを巻き込むからな。だが……俺はやってな……」

「そんなこと聞いてない!!!!!!!!!!」

「え?」

 

蓮太郎は困惑した。

 

「アタシがどれだけ驚いたと思ってんのよ……いきなり殺人犯に成ってるしいきなり警察の人間来て捕まえろって言われるしどれだけ……嫌々此処に来たと思ってんのよ」

「お前……」

 

だが次の瞬間ヘリが屋上まで上昇してきた。

 

「え?」

 

パン!っと一発の銃声……それと共に眉間を撃ち抜かれた火垂峩後ろに倒れた。

 

『っ!』

 

振り替えるとぬいぐるみを抱えた少女が笑う。

 

「死んじゃえ」

 

次の瞬間ヘリから更に狙撃銃が発射された。

 

「弓月!!!!!」

 

蓮太郎は脚のカートリッジ炸裂させて弓月に近づくとそのまま覆い被さる。

 

「蓮太郎!!!!!」

 

延珠が叫ぶ。

 

「ごほ!」

 

蓮太郎血を吐いた……ジワリ……と背中に血が広がる。

 

「え?え?」

 

弓月は驚愕と事態の把握ができてなかった。

 

「すまん……俺はお前たちを巻き込みたくなかった。だけどお前にそんな思いさせてたんだな……悪かったよ……」

 

蓮太郎がそう言っているとヘリから銃撃してきた少女が来た。

 

「これが終わったら……全部話す」

 

そう言って蓮太郎は立ち上がる。

 

「大丈夫ですか?」

 

春が心配そうに来た。

 

「急所は外れてるし弾は貫通した……なんとかなるだろ」

 

蓮太郎の視線は既に襲撃者の方に向けられていた。

 

「誰だお前は」

「私はハミングバード……まあ覚えなくてもいいよ」

 

だって……と呟くと、

 

「ここで死ぬから」

 

そういった瞬間何かがハミングバードの隣に落下した。

 

死滅都市の徘徊者(ネクロポリス・ストライダー)……殺っちゃえ」

 

タイヤのような形状のそれは突然刃をだし蓮太郎たちを襲う。

 

「避けろお前ら!!!!!」

 

蓮太郎達は散開する。

 

「行っとくけど幾ら逃げたって何処までも追っていくよ?私が念じれば余裕だもんね」

(念じる?)

 

つまり脳波と言うことか?と夏世は推測した。まるでティナのシェンフィールドだ。

 

「ほらほらぁ!止まったら死ぬよ!!!!!」

「この!」

 

春は跳んで避けながら銃を向けた。だが、別方向からもまた跳んできたため狙うのを中止した。

 

「アハハハハハ!!!!!どうしたの!?それで終わり!?」

「くそ……!」

 

体力だって無限じゃない。何時までも逃げてるわけには行かない。しかも蓮太郎は背中を撃たれているのだ。

 

「これでおわ【パン!】……え?」

 

ハミングバードは唖然としたまま後ろを向いた。

 

「残念でしたね」

 

続けて2、3と銃弾を撃ち込む。

 

「なん……で?」

「私……死なないから」

 

先程撃たれた筈の火垂が言う……

 

(今だ!)

 

蓮太郎はハミングバードと距離を詰める。

 

「しまっ!」

焔火扇(ほむらかせん)!!!!!三点撃(バースト)!!!!!」

 

ハミングバードは吹っ飛ぶとフェンスをぶち破りそのまま屋上から落下していく。

 

「ウォオオオオオオ!!!!!」

 

蓮太郎もそれを追い飛び降りると、

 

轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)!!!!!三点撃(バースト)

「がっ!」

 

だが、ハミングバードは死滅都市の徘徊者(ネクロポリス・ストライダー)を操作し自分の足場の変えるとそれに乗って飛び上がる。

 

「なっ!」

 

形状的に飛べないと思い込んでいた蓮太郎は上下が反対にされ、一気に窮地に陥る。

 

「邪魔なんだよ!!!!!」

 

死滅都市の徘徊者(ネクロポリス・ストライダー)が上から迫る。

だがそれは横からの衝撃で逸れた。

 

「ちっ!」

 

春の狙撃で逸らされハミングバードは舌打ちした。

 

「おいおい、お里が知れ始めたぜ」

「っ!」

 

ハミングバードは一瞬蓮太郎が空に浮かんだのかと思ったが違う……

 

(糸!?)

「助かったぜ……弓月!!!!!」

 

蓮太郎はラストチャンスに全て掛ける。

 

「天道式戦闘術 一の型十五番!!!!!雲嶺毘湖鯉鮒(うねびこりゅう) 三点撃(バースト)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

凄まじい衝撃がハミングバードを打ち上げる。

だがそれでは終わらず蓮太郎は弓月が可視化できるまで太く束ねた糸を使ってハミングバードより高く跳躍……

 

「天道式戦闘術……」

 

蓮太郎は逆さまになる……最後の一撃だ。

 

「二の型十一番!」

 

脚のカートリッジが全て排出され凄まじい運動エネルギーを生む。

 

隠禅(いんぜん)哭汀(こくてい) 全弾撃発(アンリミテッドバースト)!!!!!!!!!!!!!!!」

 

オーバヘッドキックにも似たその一撃はハミングバードを今度こそ屋上から地面まで強制的に叩きつけた。

 

 

 

 

「うぐ……がっ!」

「よう……」

 

糸を伝って蓮太郎が降りるとハミングバードは虫の息だった。まあ当たり前……いや、普通なら死ぬ筈だ。どう言う体しているのだ?

 

「く、くく……まさかここまでとはね……」

「おい……最後に聞かせろ。五翔会とは何だ!何が目的なんだ」

「目的?そんなの知らないね。でも、五翔会が何だかは教えてあげる。五翔会は国境を越え……人種も越えた組織……そしてそこの戦闘員にはある力が授けられる。例えば私のはエイン・ランドが設計したシェンフィールドの進化番……あんたがこの間戦った悠河は室戸 菫の義眼の進化番……他にもあるよ?」

「誰がボスだ?」

「分からないけど……五翔会の人間は羽根の入れ墨がある。この数で決まって最大5枚……5枚羽根は最高幹部って言われてて実質こいつらが動かしてる」

「?」

 

蓮太郎は少し違和感を覚えた。なんでこいつこんなにあっさり答えるんだ?

すると何処かでチチチチと音がする。まさか……

 

「っ!」

「ちっ!バレたか」

 

蓮太郎は後ろに向かって走りだし垣根に飛び込む。

ピピ!っと言う音が響き次の瞬間ハミングバードが抱いていた人形が爆発……ハミングバードを肉片ひとつ残さず消し飛ばした。

 

「くそ……」

 

戦いが終わったと安心すると背中の傷が痛み出す……

 

「……この……」

 

馬鹿体!と渇を入れて立ち上がる。

ここで寝てられるほど暇じゃない筈だ。すると誰かに体を支えられる。一瞬延珠達の誰かかと思ったが、大きい。

 

「よう」

「玉樹……」

「まああれだ。信じてやるよ。俺の妹体張って守ってもらったしな……」

「……」

「その代わり全部話してもらうぜ」

「分かったよ」

「しっかしこれのどこに弓月は惚れ【糞兄貴ィ!!!!!(バキィ!!!!!)】」

「グエラップ!!!!!」

 

玉樹が突然現れた弓月に蹴り飛ばされた。

 

「このボケ!カス!アホ!何言おうとしてんのよ!」

「ゆ、弓月!ごめ!がはっ!」

 

!の度に弓月に蹴り飛ばされた玉樹は白目を剥いている。

 

「蓮太郎!無事か」

 

そこに延珠達も来た。

 

「ああ……」

 

ズキズキ痛みがひどくなってきた。

 

「とにかく何処かで治療するか」

「大丈夫です。既に医者の手配してます」

 

そう言って春は携帯を見せながら言った。

 

「もしかしてあの人か?」

「今の状況で医者の選り好みできませんよ」

「……分かったよ……」

 

それから蓮太郎は火垂を見る。

 

「そう言えばお前頭撃たれたのになんで生きてんだ?」

「それはあとで話しますよ」

「そうか」

 

それから蓮太郎達はあるきだした……




十一月中はアンケート継続中です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。