ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第29話

「う……」

 

蓮太郎はボンヤリと目を覚ます。

 

「つまり私はアンタたちが言う里見 蓮太郎は銃を盗まれてその銃で鬼八は殺されてたから里見 蓮太郎は犯人じゃないと言うご都合主義を信じろって?」

「何だと!お前は妾の蓮太郎を疑うのか!?」

「延珠さん。ストップです。話が進みません。そうですね、確かに貴女の言う通り無茶苦茶ですが逆に信用できませんか?私が貴女を騙そうと思ったらもっとマシな嘘をつきます」

「……………」

 

静かになった。

 

「話は終わったか?」

 

蓮太郎は体を起こす。

 

「蓮太郎!!!!!」

 

延珠は体に飛び付いてきた。

 

「もう3日も寝ていたのだぞ?」

「3日!?」

 

蓮太郎は頭を抱えた。

 

「疲労半分、後は傷でしょうね。外傷はありませんが恐らく内臓に傷を負った可能性があります。まるで中国拳法の発勁のように振動を中に通したんでしょう」

 

夏世はナースのように説明してくれた。すると、蓮太郎の視界に初めて見る少女……いや、正確に言うと生で見るのが初めてなだけで顔自体は初めてじゃない。

 

「お前は……確か鬼八の……」

「そうよ。貴方が殺した水原 鬼八のイニシエーター、紅露 火垂よ」

 

そういった次の瞬間蓮太郎の眉間に銃が突き付けられた。

 

『ちょ!』

 

延珠達が止めようとするが、それを蓮太郎が制する。

 

「言い訳はしないの?」

「ふざけんな。やってもいない罪の言い訳なんざする必要ねぇだろ」

『……………』

 

一瞬静寂が包み……スッと銃が離された。

 

「嘘じゃ……無いみたいね」

 

銃を仕舞いながら言う。

 

「だけど完全に信用した訳じゃないのよ?」

「別に良いさ」

 

蓮太郎は首をコキリと鳴らしながら立ち上がる。

 

「で?そう言えば夏と春は?」

「ああ、あの二人なら……」

 

そこに帰ってきた。

 

「ただいま~」

「どうだった?」

「バッチリ」

 

翠は夏から携帯を受け取る。

 

「水原 鬼八の携帯の最後の履歴にあった駿見って人の住所も調べてきたよ」

「どうやったんだ?」

 

蓮太郎が聞くと、春が携帯を出した。

 

「出発する前に菫さんが渡してくれたんです。盗聴完全防備、更に水に浸そうが手榴弾爆破させようが対物ライフルブッ放そうが傷1つ着かないと言う代物です。そしてこれ使って菫さん連絡取ったんです。そしたら同じ医者同士顔は知っててハッキングとか色々やって調べてくれました。木更さんに電話かけます?」

「あの人何でもありだな……まあそれは遠慮しとく」

 

声を聞いたら会いたくなるからな……

と一人思っていると、

 

「……ガブ!」

「いってぇえええええええええ!!!!!」

 

延珠に噛みつかれた。噛むのは風深だけで十分である。

 

 

 

 

「で?そのムグ…駿見ってハグ…言う奴にング心当たりは?」

「食べながら話さないで。その人は私の検査とかしてくれる人よ。此処のところ休んでるって聞いてたけど……」

「ふむ……何か言ってませんでしたか?」

「……そう言えば鬼八と何か話してたわ……よく覚えてないけど。その後からね。私に対して妙によそよそしくなって一人で動き出したのは……」

 

蓮太郎はパンを飲み込むと、一気にスープを飲み込んで立ち上がる。

 

「先ずはそこだな……」

「はいどうぞ……」

 

翠は蓮太郎に銃を渡す。

 

「ベレッタか……本当に良い思い出がないな」

 

変な仮面の男が頭によぎり悪寒が走った。

 

「じゃあ行くの?」

「ああ」

 

他の皆もそれぞれ装備を揃え、出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!クソォオオオオオ!!!!!」

 

櫃間はダンダン地面を踏んで骨にヒビを入れていたことを思いだし痛み余りに飛び上がった。

 

「櫃間さん……(頭は)大丈夫ですか?」

「うるさい!!!!!お前がきっちり始末しとかないからだ!」

「仕方ないじゃないですか。あのときまだ脳味噌揺れてて狙撃なんて高等技術成功させられる状況じゃないんですから」

「言い訳はきかん!!!!!」

 

こうなってるのは一時間前……

 

 

「ふ~ふ~ふふ~ん♪」

 

櫃間は有頂天だった。蓮太郎は生死不明……

つ・ま・り……木更は今度こそ落ち込んでいるはずである。

ここは婚約者になる予定の身としては元気付けてやるのが筋……我ながらかっこよすぎる。

と、思いながら事務所に来ると……

 

「じゃあ行きましょうか」

 

バン!っとドアが急に開き、

 

「ぶべ!」

 

櫃間は後ろに倒れた。

 

「あ、すいません」

「確か君は……この間の……」

 

榧は櫃間に頭を下げたがその拍子に背中の荷物が落ち……

 

「ぎぇええええ!!!!!!!!!!」

 

因みにモデル・アントの榧は軽々と持っていたが事務所にあった書類や物の総重量百キロ近い物が櫃間の上に降って櫃間の悲鳴が近所に響いた。

 

「なんの騒ぎ!?」

 

木更が顔を出した。

 

「ひ、櫃間さん?」

「だ、大丈夫だ……」

 

櫃間は痛みに耐えながら木更に見栄を張るため強がる。

 

「そうですか。なら良いです」

「すいません。木更さん」

「良いのよ」

 

木更は優しく笑いかけた。

 

「あ、ああ~木更さん……1つお話が……」

「え?」

「昨日……里見君が……」

「ああ、逃げたんですよね?さっき手紙が来ましたよ」

「そうそう逃げて……え?」

「ほら……」

 

木更が出すと、心配するな~みたいなことを書いた紙を見せられた。

 

「筆跡的にも間違いなく里見くんですよ」

「い、いつこの紙が?」

「今朝事務所にありまして。多分ドアの隙間に入れたんですよ」

「証拠として……頂いても?」

「ええ、蓮太郎君の無実は信じていますけどだからといって隠しだてするようなものではないですし」

 

櫃間は手紙を懐に入れた。

 

「で、ですがこれから何か用事でも?」

「あ、由美さんと一緒にパジャマパーティです。今から楽しみで楽しみで」

「そろそろ行きませんか?」

「あ、そうね。では櫃間さん。また」

「あ、うん……」

 

木更と榧は行った後……

 

「~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

櫃間は声にならない奇声あげ壁をぶん殴りその結果手の骨が砕けて飛び上がった。

 

そして時間を戻し、

 

「とにかく殺せ!絶対だぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!ハミングバード!分かったな!?今は、駿見とか言う医者のところに来るはずだ!民警を向かわせたしいざとなったらケルベロスも出す!!!!!」

【あーはいはい】

 

通信が切れると悠河はギブス付きの手と足……更に目の回りに付いたアオタン付きの櫃間を見て笑い櫃間は悠河を睨み付けた。

 

 

とある部屋では……

 

「うわ~嫌だ嫌だ」

「まさか警察の人間につけておけば警察の動きも分かるだろうとつけた盗聴器でこんなことがわかるとは……」

「でもこの人頭大丈夫ですかね」

【世も末っちゅうやつやな~】

 

謎の四人は機械を囲んで呟いた……そこ

 

「なにやってんですか?悪人ごっこですか?」

 

榧と木更が入ると菫、風深、由美と新一が振り替える。

 

「ちょっとね。さて、聞いたことないコードネームが出てきた……」

「大丈夫でしょうか……」

「残念だが私たちはまだ派手に動けない。ここ里見君たちで凌いで貰うしかないね。なぁに、相手が何者だろうと死ぬような人間じゃないよ」

 

菫はケラケラ笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、結構普通だな……」

 

その頃蓮太郎達は調べていたマンション前にいた。

 

「とにかく入りましょう」

「よし……」

 

蓮太郎はドアを叩く。だが返事はない。

 

「居ないのか……?」

「う……!」

 

翠が顔をしかめた。

 

「どうかしたのか?」

 

延珠が翠の顔を覗き混む。

 

「何かが腐敗した臭いです」

『っ!』

 

全員が顔を引き締める。

 

「ん?」

 

ドアの鍵が空いている。

 

「いくぞ……」

 

蓮太郎が銃を抜きながらドアを開ける。それと共に異常なまでに冷えた空気と何かが腐敗した臭いが鼻孔を突いた。

 

「くそ……」

 

蓮太郎達は入っていく。そしてその奥には……

 

「駿見医師か?」

「服装から考えるに……恐らく」

 

蓮太郎が確認を取ると火垂が頷いた。

 

「酷い……」

 

春の言葉に全員がうなずく。

駿見の顔は変形するまで殴られたり蹴られており手足の爪は剥がされている。完全に拷問自体を楽しんでるやつの手口だ。

 

「………………」

 

蓮太郎は近くにあったタオルケットで駿見の遺体を見えなくすると、

 

「何かあるかもしれない……探そう」

 

蓮太郎の言葉に皆は静かに頷いた。

 

 

 

 

「これは……ただの書類か」

 

皆で捜索するが駄目だ……ない。

 

「はぁ……」

 

春は歩き回りながら探す。パソコンも見たが完全に初期化されており書類も紙くず同然のものばかり……

だが、

 

「ん?」

 

春は通った場所をもう一度通る。

 

「これって……夏!」

「なぁに?」

「ここ殴って」

「え?」

 

夏は春が指差した場所を見て驚く。

 

「でも下の人に迷惑が……」

「良いから!」

「わ、分かったよ」

 

夏は渋々力を解放……そして、

 

「ウッラァ!」

 

床を殴った……

 

「何してんだ!」

 

蓮太郎たちも驚いて来た……だがそこには……

 

「なんだこのデータチップ……」

 

拾い上げる。ケースに入れられたそれは隠すようにあった。

 

「見てみるぞ」

 

蓮太郎は自分の携帯にそのチップを入れて読み込む……そこにはガストレア写真があった。

 

「これって……」

「知ってるのか?」

 

火垂が頷く。

 

「鬼八さんと三週間位前に倒したやつよ」

「じゃあ関係なし……かなぁ……」

「いや、これを見ろ」

 

夏の考えを否定して蓮太郎は指を指す。

 

「この星形に羽根の紋章はなんだ?」

「捕まえたときに気になってはいたけど……そう言えばなんなのかしら……」

「これはどこに運び込まれた?」

「確か……」

「あれ?」

 

春が周りを見渡す。

 

「どうした?」

「住民が……居ません」

「え?」

 

春は床を殴ったため人が来ないかどうか能力を解放しコウモリの音響察知を使い見ていたのだが……誰もいないのだ。

 

「どう言うことだ?」

「分かりません……あ、来ました!三人です……一人は大柄で男だと思いますが……後の二人は……子供?」

「分からないけどヤバそうだね。蓮太郎!逃げよう!」

「ああ!」

 

蓮太郎素早く携帯をしまい外に出た。

そこで……

 

「よう、ボーイ」

「……ち…てめえかよ……」

 

蓮太郎達の前には金髪のガタイ良い男と……和服に双刀と言う出で立ちの少女……更に男と同じ金髪にどこか迷った顔をした少女……忘れもしない……アジュバンド以来会わなかったが、

 

「玉樹……!」

「よう、逃亡犯 里見 蓮太郎」




ちょっと?いやかなりフライング気味だけど玉樹たち登場……でも、これで良いのだ。

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