ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

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第28話

木更に会った次の日……蓮太郎は護送されていた。一応蓮太郎の名誉のために言うがまだ刑務所へ行くのではない。だが何処に向かってるのかも教えてくれない。聞いても黙って待ての一点張りだ。

 

「ん?」

 

すると見慣れた建物に入った。

 

(って!ここ聖居じゃねぇか!!!!!)

 

蓮太郎の驚きを他所に入っていった。

 

 

 

 

 

「お久し振りです。里見さん」

「ああ」

 

聖天子と蓮太郎は向かい会う。さっき護衛の人は今出されたので蓮太郎と聖天子の二人だけだ。そう言えば何気に優磨無しで二人きりと言うのは初めてだ。

そう思うと寂しさが込み上げてきた。いや、ここで暗くなってもしょうがない。蓮太郎が急遽ここに連れ出されたのは恐らく暗号を解いた夏たちは気づいてると信じる。そして絶対逃げ出すのだ。泣くのはその後でも良い。

 

「で?何のようだ?」

「はい……里見さん。貴方には民警を自主的に辞めていただきます」

「っ!」

 

民警をやめる……それは延珠との別れを意味していた。

だが、

 

「ホラよ」

 

蓮太郎はパスケースごと投げる。民警辞めたからと言っても恐らく延珠には夏たちが一緒に居るだろう。木更や菫も居るのだし大丈夫だとおもう。

 

「随分あっさり渡すのですね」

「まぁな……」

 

蓮太郎は聖天子をみる。特に変わった様子はない。優磨が死んだと聞いたときは聖天子ももっと取り乱してると思ったが一応上に立つものとしてしっかりしてるのか……もしかしたら……

 

(まさか……)

 

蓮太郎は頭に浮かんだ仮説を証明するため動く。

 

「俺は無実だ。それ直ぐに返してもらうから大事に保管しててくれ」

「証拠はあるのですか?私のところには貴方が犯罪者という証拠が出てきたと聞きましたが?」

「これから探すさ……だけど怪しいと思わないのか?俺が捕まったのと同時刻に優磨さんが殺されたんだぞ?可笑しいだろ」

「え?」

 

聖天子は一瞬蓮太郎が何を言ったのか分からなかった。

 

(やはりな……)

「優磨さんが……死んだ?」

「ああ……犯人はわからないが確かに殺されたよ」

「そんな……」

「あの菊之丞(ジジイ)らしいぜ」

 

大方優磨の死だけは隠したんだろう。残念ながら蓮太郎にバラされたが……

 

「本当なのですか?」

「ああ」

 

聖天子は体が震えていた。

 

「俺はいくぜ」

「貴方は何ともないんですか?」

「……」

 

立ち上がろうとしたが蓮太郎は聖天子を再度見る。

 

「腸煮え繰り返りそうだよ。だけど落ち込んでたって仕方ねぇ……」

 

それから蓮太郎は、俺は……と続ける。

 

「犯人見つけるのが先だと思うぜ?」

 

そう言ってから蓮太郎は外に出て手錠を着けられて行った。

 

「……菊之丞さん」

「なんでしょうか?」

 

聖天子が呼ぶと菊之丞が入ってきた。

 

「貴方は……知っていたのでしょう」

「ええ……時を見て言うつもりでした」

 

そう思っていたのは本当だ。時とタイミングを見て言うつもりだった。

 

「何故ですか?」

「……あんたが壊れると思ったからです」

「え?」

「貴方は……牙城 優磨をどう思っておられましたか?」

「………………」

 

それは今までも幾度となく問われてきた。今までははぐらかして来たが……そう言う時ではないと分かっている。

 

「お慕い…していました。一人の男性として……愛していました……」

「ええ……分かっていました……だからこそ……言えなかった。分かって欲しいとは申しません」

「……犯人は?」

「目下調べています。ですが証拠を一つも残しておらず……」

「一つもですか?」

「はい。残っていたのは牙城 優磨の腕一本」

聖天子は俯くと再度顔をあげた。

 

「何か分かったら今度は教えてください」

「わかりました」

 

そう言ってから菊之丞は出ていった。

 

「腕一本残して死体はない……そう聞いたら何か生きてるような気がするのは……私の希望ですか?」

 

誰に言ったわけでもなく聖天子はそう呟いた。

そして最後に、

 

「里見さん……お願いします」

 

蓮太郎が何か企んでると分かっていたため聖天子は祈った。

 

 

 

 

 

 

 

蓮太郎は来た道を車で戻っていた。

 

「来たよ」

 

夏・春・夏世・翠・延珠と言うチームイニシエーターは影から車が来るのを見ていた。

 

「よし……行こ…え?」

 

夏達が車に襲いかかろうとした瞬間別の何かが飛び出していった。かなりのスピード出していた車は避けたが激しく横転した。

 

「やば!」

 

夏達は車に駆け寄る。いつの間にか飛び出した何か居なくなっていた。

 

「蓮太郎!」

 

延珠が叫ぶと横転した車のドアが上空に向かって吹っ飛んだ。

 

「ごほ!随分な出迎えだな」

 

蓮太郎は這い出てきた。

 

「蓮太郎!」

 

延珠が蓮太郎に抱きつく。

 

「怪我はないか?」

「たん瘤はできた」

 

大きな怪我はないだろう。

 

「とにかく此処は危険です。移動しましょう」

 

夏世が言うと全員は頷いて移動を開始した。

 

 

 

「こちらダークストーカー……予想外が起きました」

【どうした?】

「車が横転して里見 蓮太郎が脱走……その際に複数名をつれています」

【ちっ……まあ良い。行き先が分かったら教えろ。丁度良いから全員始末する】

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

櫃間 篤郎は携帯をしまう。本来なら車を襲撃して蓮太郎を始末する算段だった。なのに逃走されるとは……

 

「くそ……」

 

悪態をつきながら櫃間はある建物に入る。今日は愛すべき木更に会いに来たのだ。

もう夕方だが別に大丈夫だろう。蓮太郎は捕まえた……ティナも居ない。延珠も時間の問題。さぞ落ち込んでいるだろう。抱き締めてキスのひとつでもしてやろう。とドアを開けた。

だが、

 

「え?」

「あら櫃間さん」

 

そこには木更と由実と榧が掃除をしていた。

 

「な、何してるんだい?」

「ほら、皆が戻ってきたときに汚いと嫌じゃないですか」

 

櫃間はずっこけそうになった。木更はまだ帰ってくると思っている。

 

「そ、そうだね。何か手伝おうか?」

「いえ、大丈夫です。もう終わるので」

 

するとドンッと榧とぶつかった。後ろを向いたままだったため気付かなかったのだろう。

 

「失礼しました」

「イや、大丈夫だ」

 

櫃間は内心渋い顔をした。由実と榧の二人がいては木更に近づくこともできない。

 

「それで……何かご用ですか?」

「あ、いや……少し近くに寄ったから大丈夫かと思ってね」

「大丈夫ですよ。私がしっかりしないと里見くんたちが帰ってきたときに困ります」

「そ、そうだね。アハハハハハ……じゃあ邪魔みたいだから僕は帰るよ」

「あ、はい。では」

「あ、その前に……見合いの返事ですが……」

「まだ保留させてください。里見くんたちが帰ってくるまで行けませんから」

「そうか。じゃあね」

 

櫃間は出ていった後八つ当たりかわりに壁を蹴って足の指の骨にヒビをいれたのは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い待たせた」

 

蓮太郎はホテルのロビーの隣のカフェというかラウンジみたいになってる場所に来る。

今の蓮太郎は見慣れた高校の制服に身を包み髪を鋤かして拘置所に居たときは剃れなかった髭も剃ってきた。

 

「で?最初はどうする?」

「まずは現場にいけって」

「あ~……」

 

夏に言われ蓮太郎は成程と頷く。現場百辺と良く言うものだ。

 

「よし、行くか」

「そう言うわけに行かないんだけど」

『っ!』

 

蓮太郎達は声の主のほうをみる。そこには蓮太郎と然程差はないと思われる年格好の男がいた。

 

「初めまして、五翔会所属三枚羽の巳継 悠河です」

「五翔会?」

 

蓮太郎は初めて聞く名前に首をかしげた。

 

「まあどうでも良いことですよ……貴方は……いや、貴方達はここで死ぬ!そう、牙城 優磨のようにね」

『っ!』

 

全員驚愕し、蓮太郎は全身の血が沸騰した気がした。

 

「そうかよ……てめぇか!」

 

蓮太郎は義眼を起動……幾何学的な模様が走ると演算を開始……そのまま疾走した。

 

 

 

 

陰禅(いんぜん)黒天風(こくてんふう)!!!!!」

 

鋭い回し蹴りが悠河を襲う……だが、

 

「遅いんですよ」

「っ!」

 

継の瞬間悠河の両目にも同じ幾何学的な模様が走ると、演算を開始。蓮太郎の回し蹴りを躱すと逆にカウンター気味のキックが入る。

 

「ぐっ!」

「蓮太郎!」

 

それをみた延珠が瞳を赤熱。強靭な足腰から放たれた飛び蹴りが悠河を狙う。だがそれを簡単に見切られ躱される。

 

「ウォオオオオオ!」

 

夏も瞳を赤熱すると素早いラッシュを打つ。

 

「甘いね」

「っ!」

 

逆にクロスカウンターを決められ夏は吹っ飛ぶ。

 

「ちぃ!」

 

蓮太郎の拳が悠河を吹っ飛ばす。

 

 

「なっ!」

 

悠河は少し驚いた顔をするが直ぐに冷静さを取り戻す。

 

陰禅(いんぜん)玄明窩(げんめいか)!!!!!」

 

すばやいニ連続蹴りを悠河は伏せて躱すと蓮太郎の顎に狙いをつける。

 

「残念でしたね……スペックが違うんですよ!君と僕では見ている時間(せかい)が違うんです!」

 

だがそこに突如鋭い爪が悠河を狙った。

 

「っ!」

 

流石に後ろにとんで躱す。

翠はあと少しだったのに……と言う顔だ。

 

「流石に複数人はめんどくさいなぁ」

「油断してんじゃ……ねぇよ!」

 

蓮太郎は拳を突き出す。

 

「油断?違うよ」

 

悠河はパシッと簡単に止めて……

 

「余裕って奴だよ」

 

トンっと拳が添えられた次の瞬間蓮太郎の体をバラバラにするような振動が走り血を吐く。

 

「蓮太郎!」

「っるさいな」

 

悠河は延珠に狙いをつけようとした瞬間……

 

「やっぱり油断してんじゃねぇか」

「え?」

三陀玉麒麟(さんだたまきりん)!!!!!!!!!!」

 

顎に掌底を打ち込まれ悠河は脳震盪を起こされる。

 

「馬鹿な……」

 

口から血を吐きながら立ち上がった蓮太郎は深く腰を落とし、

 

「天童式戦闘術一の型八番 焔火扇(ほむらかせん)!!!三点撃(バースト)!」

 

ガシャンと言う音と共にカートリッジが排出……凄まじい推進力を生み出し悠河は蓮太郎のパンチで吹っ飛ぶ。

 

「うぐ……がは!」

 

蓮太郎は更に血を吐いた。

 

「大丈夫ですか?」

 

夏世が来た。

 

「内臓にダメージが入ったのかもしれません。取り合えずここは……」

 

逃げましょう……と言おうとした瞬間銃声と共に窓に亀裂が走った。

 

「おとなしく出てこい!里見 蓮太郎!!!!!」

「ち、この声はおっさんじゃねぇか」

「知り合い?」

「ああ、ヤクザも仏に見える位強面で俺の取り調べもやったくそ刑事だよ」

 

だが防弾ガラスで助かった。あと少しで蜂の巣だ。

 

「とにかく上だ。此処に居ても追い付かれる」

 

蓮太郎の言葉に頷くと全員で階段を上がっていく。

背後でガラスが砕けた音がした……

 

 

 

 

「くっ……」

 

背後からマシンガンで撃たれる。遠慮も何もあったものじゃない。

 

「うりゃ!」

 

それをみた延珠が銃弾を躱しながら跳躍……銃を蹴りあげるとハイキックで意識を刈り取った。

 

「いたぞ!」

 

すると今度は窓を突き破って入ってきた。

 

「邪魔を……」

 

その方には夏が向かい打ち……

 

「すんな!!!!!」

 

入って来た窓が殴り飛ばした。

 

「ん?」

 

すると銃を落としていた。

 

「ベレッタか……」

 

この銃には嫌な思い出がある……変な仮面をつけた狂言野郎が使っていた……だが無いよりは良いだろう。

そう自分に言い聞かせホルスターにしまい再度上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、お前大丈夫か!?」

「おい多田島。お前の顔を近づけたら彼がショック死するよ」

「どういう意味だよ如月!」

「つ……」

 

悠河は目を覚ました。

 

「お前名前は?」

「あ、巳継 悠河です。民警なのですが暴れてた男を捕まえようとしたら返り討ちに会いました」

「ちっ!」

 

多田島が舌打ちする。

 

「とにかく後を追いたまえ」

『櫃間警視……』

 

多田島と如月は眉を寄せる。

どうも二人はこの男が好きになれない。現にこの事件だって重役出勤だし何よりここまで出てくる立場の人間じゃない。だが警察は階級社会……上の命令には聞かなくてはならない。

 

「了解……」

 

二人は上に向かう。

 

「何をしているダークストーカー」

 

誰も居なくなったところで話し始める。

 

「流石に人数がいましたし何より里見 蓮太郎の瞬間的な爆発は驚異的です」

「言い訳は良い……確実に仕留めろ」

 

もっと強い絶望を与えねば木更はこちらに転がらないだろう。

 

「分かってますよ」

 

悠河は少し足をふらつかせながら出ようとし、

 

「そう言えば何で足を怪我してんですか?」

「うるさい!さっさと行け!」

 

悠河は訝しんでから行った。

 

(くそ!)

 

櫃間は内心地団駄を踏んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

蓮太郎達はドア開ける。

 

「で?どうするんですか?」

「………………」

「あの……里見さん?」

 

夏世が再度聞く。

 

「わりぃ……なんも考えてなかった」

『ええ!?』

「と、取り合えず逃げてれば良い手が思い付くかと思ったんだが全く思い付かなかった」

「どうするんですか!?来てますよ」

「……………」

 

蓮太郎は下を見る。

 

「…………ギリギリだな」

「どうするきだ?蓮太郎」

「飛ぶぞ」

『………は?』

 

延珠達は唖然とした。

 

「ここから飛び降りるぞ」

『………ええええええ!!!!!』

 

驚愕するのも束の間で蓮太郎は延珠達を抱き上げると……

 

「祈れ……さすれば道は開かれん……って言葉知ってるか?」

「ま、待つのだ蓮太郎!流石にこの高さは妾達でも助からん!」

「そ、そうだよ!」

「此処にいるよかましだ!!!!!」

『いいぃいいいいいいやぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!』

 

蓮太郎達は空に身を投げ出すと重力に乗っとり落下……

 

(後はタイミングだ……)

 

そして蓮太郎は先程人工皮膚が剥がれ露出した腕を握ると集中……今だ!

 

焔火扇(ほむらかせん)!!!!!三点撃(バースト)!!!!!」

 

蓮太郎の拳が壁と激突……凄まじい量の火花を散らしながらガクン!と減速し壁にぶら下がる。

 

「これをもう一回くらいやれば下に降りられるだろ」

『む、むちゃくちゃだ……』

 

優磨ならやるかもしれないが他にも居たとは……しかも身近に……

だがそこに……

 

「っ!蓮太郎!」

 

夏は瞳を赤熱させると跳んできた弾丸を殴って弾く。

 

「くそ!誰だ!?」

「分かりませんけど急ぎましょう!」

「ちっ!」

 

蓮太郎は腕を引き抜きながら再度降りようとする。だが足のほうを撃たれた。

 

「うぉ!」

 

義足の方で助かった。だが、相当な距離がある。ティナ並みの狙撃能力だ。

 

「ん?」

 

ティナ並みの狙撃能力?まさか……

だが迷ってる暇はない。素早く壁から手を引き抜くと今度は足の人工皮膚が剥がれていき、

 

「天童式戦闘術 ニの型十六番!隠禅(いんぜん)黒天風(こくてんふう)!!!!!」

 

ドゴン!と言う音と共に蓮太郎達は壁から離れていく。

 

「え?そっち!?」

「壁に突き刺さりながら行く予定だったけど残念ながら警察が来ちまったからな!」

 

跳んだ先には川が見える。

 

「これで……どうだ!」

 

水の上に着水するときは高所から落ちると高さによってはコンクリートに匹敵する固さになる……だがそれは水の上に普通に落ちた場合だ。実は普通であれば無理だが斜めから……しかもかなりの早さで石で水切りするように落ちる……いや、滑り込むように水に入ると痛いが死なないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ…はぁ……」

『げほ!げほ!』

 

全員体を引きずるように這い上がる。あの後思ったより川の流れが早く半ば流されるように来た……だが何とか包囲網を越えただろう。

 

「く……」

 

だが蓮太郎達は疲労のため力尽き寝てしまう。

 

「………………………」

 

それを遠くから見つめる視線に蓮太郎達は気づくことは無かった。




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