ブラック・ブレット 双子のイニシエーター   作:ユウジン

25 / 42
第23話

「……よし!」

 

蓮太郎は頬叩く。ここまで来たらやるしかないと自分に喝をいれて歩みを進める。

ある広場の壇上に上がると他の民警たちの視線が蓮太郎に集まる。

 

「新たなリーダーとなった里見 蓮太郎だ!」

 

だが次の瞬間……

 

「うるせぇ!帰れ!」

「俺はてめぇなんざ認めねぇぞ!」

『そうだそうだ!』

 

盛大なブーイングが起きた。

まあそれも当たり前と言うか仕方ないだろう。蓮太郎は若すぎる。

すると一人壇上に上がってきた。

 

「……」

「どうせもう無理なんだよ!リーダーだかなんだか知らねぇがどっか失せ【パン!】……?」

 

男は肩に走った痛みに一瞬疑問を覚え……

 

「ギャアアアアアアア!!!!」

 

撃たれたと気付き痛みに転げ回る。

 

「俺は意見など求めていない」

 

蓮太郎はゾッとするような冷たい声で言った。

 

「う、撃ったぞ……」

「俺を卑下する時間何てない。アルデバランは近いうちにまた来る。そのときは諸君にもまた命を懸けてもらう」

「ふ、ふざけんな!前回ので一気に減っちまったんだぞ!」

「医務室で寝ている奴も使えばいい」

「じょ、冗談だろ……」

「先程医者に聞いたが十分動けるとの事だ」

 

その医者とは菫の事だ。菫に掛かればどんな仮病も簡単に見抜かれる。

 

「決戦は近い……遺書だけでも準備しとくんだな」

 

そう言い残し蓮太郎は壇上から降りた。

 

 

 

「よう、随分悪役になってきたもんだ」

 

優磨達が待ち伏せていた。こうすることは予め聞いていたためあまり驚かない。

 

「俺には纏める才覚はありませんから……仕方ないです」

「ん?」

 

すると目の前に人影……確か、

 

「私は認めません」

「千布 朝霞だったか?」

 

我堂のイニシエーターだった少女は今まで閉じていた瞳を開き赤熱させた。

 

「あなたのやり方は暴君そのものです」

「そうだ。お前のプロモーターだった我堂は優秀なリーダーだったが俺は違う。ならやれるやり方でやるしかない」

「……」

すると朝霞が身を低くする。

 

「ならば私が出来ることは……あなたを否定する事です」

 

そう言って地面が凹むほど強く踏みしめると飛び出す。

だが、

 

「よっと」

「っ!」

 

優磨に簡単に組伏せられた。

 

「やめときな……八つ当たりはみっともないぜ?」

「っ!」

 

朝霞は目を見開く。

 

「我堂との間には確かな絆が有ったんだろう……だがお前のはただの八つ当たりだぜ?」

「く……」

「我堂が死んだのは蓮太郎のせいじゃないし何よりこいつは里見 蓮太郎だ……我堂 長政じゃない」

 

そっと離してやると暴れなかった。

分かっているのだろう。だがこの子もやはり10才の女の子なんだ……

 

「行くぞ」

 

蓮太郎はそう言ってあるきだし優磨達もついていった。

 

 

 

 

 

 

「お帰り~」

「未織?」

「由実さんに頼まれとった奴持ってきたで?」

 

そう言って出したのは……爆弾?

 

「司馬重工と北美重工の合作!EP爆弾~」

 

某猫型ロボットの声真似で指差す。

 

「これはでかい爆発で内部に内蔵された小さな爆弾を爆散、そんでもって小さい爆弾が次々連鎖爆発していくっちゅうしろもんや。気を付けてな?衝撃にメタくそ弱くてしかもその爆発近距離で受けたら牙城さんでも死ぬで?」

「おいおい……」

 

凄まじすぎる……少なくとも対物ライフルより威力は上だと言うことだ。

 

「ただ使い方やけどこれを近くでやっても駄目や。アルデバランの体内にぶちこんで爆発させる……それ以外に方法はない」

「なら俺がそれをやる」

 

蓮太郎が立候補した。

 

「衝撃与えなきゃいいんだろ?」

「そうやね」

「気を付けろよ」

「ああ」

 

蓮太郎はEP爆弾を持つ。

手に汗が滲んだ気がした……

 

「蓮太郎?」

「あ、ああ大丈夫だ」

 

延珠が心配そうに顔を覗き込むと慌てて何でもないように言う。

 

「しかしとんでもねぇ奴と当たったもんだぜ」

 

玉樹はテーブルに足をのせながらぼやいた。

 

「次で終わるさ」

 

優磨の言葉に全員が頷いた……

 

 

次の日……

 

「ふぅ……」

 

優磨は軽く体を動かしていた。

 

「昼間から精が出るな」

「薙沢?」

 

そこにやって来た彰磨に優磨は首をかしげた。

 

「ちょうどいい。少し組手をやってみないか?」

 

そう言って彰磨は構える。

 

「ふ、良いぜ」

 

優磨も拳を握った……そして、

 

『うっらぁ!』

 

二人の拳は交差するが互いの顔にぶつかることはなくギリギリで躱す。

 

「く!」

「ち!」

 

素早く二人は距離を取ると優磨は蹴りを放つ。

 

「しゅ!」

 

だがそれ彰磨は伏せて躱すと、

 

「天童式戦闘術 三陀玉麒麟(さんだまきりん)!!!!」

 

顎に向けた掌打はまともに食らえば脳を揺さぶられただろう。だが、

 

風車(かざぐるま)!!!!」

 

優磨は攻撃に逆らわずまるで風を受けて回る風車のごとくスラスターを使って回転し彰磨にサマーソルトキックを放つ。

 

「ちぃ!」

 

だが彰磨はそれも躱すと転がって距離を取る……そして、

 

「天童式戦闘術 一の型八番!焔火扇!!!!」

「紅蓮!!!!」

 

高速の拳がぶつかり合うと凄まじい音と共に二人とも吹っ飛ぶ。

 

「いっつぅ……」

「流石だな……」

 

彰磨が立ち上がると優磨も立ち上がる。

 

「恐らく今日来るな……」

「まあそうだろうな」

 

優磨は頭を掻くと彰磨が真剣な目で……

 

「お前に頼みがある」

「何だ?」

「俺が……」

 

すると次の瞬間警報が鳴る。

 

『っ!』

「来たぞぉおおおおおお!!!!」

 

遂に最終決戦の幕開けである。

 

 

 

 

 

 

「ウリャア!」

「紅蓮!!!!」

 

夏と優磨がぶん殴ってガストレアを吹っ飛ばす。

 

「蓮太郎は向かったの!?」

「ああ……っ!」

 

飛びかかってきたガストレアを遠くから春が銃撃して落とす。

 

「助かった!」

 

ジェスチャーで感謝を伝えると春も答える。

 

「さてさて……そろそろ爆発しても良い筈なんだが……」

「優磨さん!」

「由実ちゃん?」

 

そこに榧と由実が来た。

 

「大変です!爆弾が……」

「え?」

「爆弾が起爆しないんです!」

「っ!何でだ!」

「多分……不具合が……」

「くそ!」

 

優磨は足のスラスターを起動……一気に加速すると蓮太郎の元に駆け出した。

 

 

 

 

「くそ……」

 

その頃蓮太郎は義手を失っていた……

爆弾が起爆せず自分を犠牲にして外部から衝撃を与えて爆発させる筈がアルデバランのバラニウム侵食液を喰らってしまい義手が溶けたのだ。

 

「ここまで来て……」

 

目の前にはアルデバランが迫っている。ここまでかと諦めた瞬間……

 

「困ってるようだな。里見」

「彰磨…兄?」

 

蓮太郎は目を見開く……

 

「事情は聞いた……後は任せろ」

「ど、どういうことだよ!」

 

だが彰磨は答えず歩を進める。

 

「蓮太郎!……に薙沢?」

「牙城か……そいつを連れてここを離れろ……」

「……死ぬ気か?」

「……俺は天童を破門された……理由は技をアレンジしたからだ」

 

木を内部破裂させた轆轤鹿伏鬼が優磨の脳裏に浮かんだ。

 

「だからこの技は破棄する……俺の死でな」

「やめろ!彰磨兄!!!!」

 

だが彰磨は笑みを返すだけ、

 

「牙城 優磨!お前と言う男に頼みがある」

「……何だ?」

「頼み事は三つ……一つ目はその蓮太郎の事だ……こいつは要領は悪いし顔も世界の不幸を全て背負ったようだ……だが良い奴だし何時かとんでもない事をやってのけてこの世界を変えてくれると信じてる。だから頼む……俺の弟分を……」

「ああ……」

「二つ目は木更だ……あいつは両親を奪い、蓮太郎に大ケガを負わせた原因である天童を憎み……復讐に取り付かれた。今は良い……だが何時かあいつが狂ったとき……止めてくれ……あいつの刀が天童以外にも向いたとき……止めてくれ……」

「分かった……」

「最後に……翠を頼む……あいつと俺は常に互いの孤独を埋めてきた……だが俺が死んだらあいつはまた独りだ。だからあいつを独りにしないでくれ……」

「任せろ……だが薙沢、俺で良いのか?アジュバンドで偶々一緒になっただけだぜ?」

「良いんだ……これでも人を見る目はある……」

「了解だ……後は俺に任せろ」

「ああ……」

 

彰磨は走り出す。

 

「行くなぁああああああああ!!!!」

「行くぞ蓮太郎!」

 

蓮太郎を荷物みたいに担ぎ上げると優磨は彰磨と反対方向に走り出す。

 

「天童式戦闘術……」

「優磨さん!!!!離せぇええええええ!!!!」

 

蓮太郎の声を背に彰磨は跳躍……

 

「一の型三番……」

 

脳裏に浮かぶは走馬灯……楽しいこと……悲しいこと……全部が彰磨の脳裏をかける。

 

(蓮太郎……木更……翠……去らばだ!!!!)

 

轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)!!!!【(かい)】」

 

彰磨の拳がアルデバランと激突……その衝撃はアルデバランの内部を駆け回りそのまま爆弾にも届く……

そして次の瞬間耳を劈く爆音共に爆発した……

 

 

 

 

「はっ!」

 

蓮太郎はベットの上で目を覚ます。

 

「里見くん!」

「里見さん!」

「蓮太郎!」

 

木更、ティナ、延珠……他にも優磨と彰磨を除いたアジュバンドのメンバーが居た。

 

「戦いは!?」

「アルデバランが死んだあと蜘蛛の子を散らすように逃げていったわ……更に代替モノリスも完成して穴も塞いだわ……でも彰磨兄さんは……」

「っ…!」

 

そこに優磨が入ってきた。

 

「目は覚ましたか?」

「っ!てんめぇえええええええ!!!!」

 

蓮太郎は義手がない状態のままベットから飛び降りると優磨を思い切りぶん殴った。

機材を滅茶苦茶にしながら吹っ飛ぶと蓮太郎は優磨に馬乗りになる。

 

「優磨兄!!!!」

 

他の面々も蓮太郎を止めに入ろうとしたが優磨が手で制する。

 

「ラァ!ラァ!ラァ!」

 

ガスッ!と殴る度に音がする。

更にメキャ!っと言う音がした。恐らく拳が砕けたか……

 

「はぁ……はぁ……」

 

蓮太郎は血が滴る手をブラリと下ろす……

 

「言えよ……なんか言い訳してみろよ!」

 

蓮太郎は叫ぶ。

 

「何であのとき見捨てたぁあああああああああああ!!!!」

「……すまん……俺のせいだ」

「っ!……そうだよ……あんたが!」

 

蓮太郎は拳を振り上げるがそこで止まる……その代わり落ちてきたのは涙だった……

 

「分かってんだ……あんたは悪くない……悪いのは俺だ……ごめん……俺が……」

「お前は悪くねぇよ」

 

彰磨は笑って逝った……ならそこに誰が悪いなどと言うのはない……

 

「お互い長生きしようや」

 

彰磨の分まで生きる……そう言葉裏に込められた意味を汲み取った蓮太郎は涙を流しながら頷いた……




結構駆け足で終わらせちゃったかな……
でも大丈夫だ。問題ない。

と言うわけでアジュバンドも終わりました。次回、遂に虐殺事件と言うか木更闇が登場して翠と話してこの章も終わりです!

まあ彰磨は一度表舞台から退場しましたが翠はこれからも出てきます。

さて、次章からは遂に逃亡編……優磨達がどう絡んでいくのか……そして五翔会にいる優磨とは何かしらの因縁がありそうな楓の少し出ます。
では皆さん。また次回で~
ps.活動報告の方でアンケートやってます。出来れば御協力いただけると嬉しいです!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。