前回の騒動のあと…蓮太郎と優磨は我堂が居るテントの前に来た。
「む、来たか」
我堂の隣には和服に身を包んだ恐らく彼のイニシエーターが鎮座する。
「どうなんだよ。戦況は……」
「良くはないな。少なくともあの遠距離狙撃型のガストレアのお陰で士気も低い」
「それだが恐らく鉄砲魚の因子だ」
「成程…だが今回呼んだのはそれについてだ」
「ん?」
「里見 蓮太郎リーダー及び牙城 優磨……お前たちを処罰せねばならん」
「あ?」
優磨は唖然とした。
「今日の戦いではお前たち二人は遅れて登場し更にその直後に敵は撤退した……用は良いとこだけ頂いた状態だ」
「おいおい、俺たちだって好きで遅れた訳じゃないんだぞ」
「言い訳は聞かん。だが本来なら首でも撥ね飛ばすがチャンスをやろう」
「チャンス?」
「そうだ……お前たちは誰にも言うこと無く二人であの遠距離狙撃型ガストレアを撃ち取ってこい!」
用は死に場所やる的な事を言われただけだ。どう考えても返り討ちなのだが東京エリアを救った英雄の死はさぞや良い士気の向上になるだろう。
「あ?ふざけんのも大概にしろ!」
蓮太郎は我堂に掴み掛かろうとするがその前に隣のイニシエーターに吹き飛ばされた。
「止めろ朝霞!」
「止めときな蓮太郎……」
我堂は朝霞と呼ばれたイニシエーター止め、優磨は蓮太郎をキャッチしつつ止めた。
「上等だ……きっちりぶっ殺して帰ってきたらてめぇの髭全部素手で引き抜いて頭と同じくツルツルにしてやるよタコ野郎」
「ふん、やれるものならやってみろ」
「ああ」
そして蓮太郎を連れて出ていこうとすると、
「あと待て……」
「何だよまだ様か?」
「俺は剥げているんじゃない。剃っているんだ。所謂スキンヘッド。決して生え際の後退が進みすぎていっそのこと剃ってしまった方が間抜けにならんとか思っておらんからな」
「………………ああ、そうかい」
優磨は何処か同情めいた顔をしてから出ていった…
「……カツラ買うか……」
「無理して若作りしなくても……」
「いや、あの二人の頭を見ていたら若い頃の俺もあんな感じだったと思っただけだ…」
我堂は少し悄気てしまった。
「んで?何の話だったんだ?」
「厳重注意だったよ。遅刻したからな」
優磨たちは半分嘘…もう半分は本当の会話を続ける。
「ほら、さっさと寝ようぜ?明日も激戦になるかもしれないんだ」
優磨がいうと全員頷きそれぞれの就寝用のテントに潜り込んだ。
優磨には春が右腕、夏世が左腕、夏が上に乗って寝ていた。物凄く暑いがまるで明日……誰にも告げずに命懸けのたった二人の特攻にいくことに気づいているかと思ったが本能敵的にだろう。
とは言えここまで纏わり着かれると眠れないのでそっと離れて外に出ると煙草を咥える。
「ほら」
火が目の前に出された。
「悪いな……菫」
「人生最後の一服になるかもしれないんだしね」
やはり気づいていたか……と優磨は笑う。
「君の嘘は分かりやすい。少なくとも私はわかるよ。あの三人だって気づいていたんじゃないかな?それこそ本能的に深層心理が働いたんだ。だから君にくっついていた…」
かもしれないな……と優磨は煙を吸い込むと吐き出す。夜闇の中に紫煙が溶けていった。
「死ぬなよ……」
「……ああ」
そう言って夜は更けていった。
明け方…蓮太郎はXD拳銃にサイレンサーを取り付け更にバラニウム性のナイフを持つ。
「ふぁぁああ~」
優磨もデザートイーグルにマガジンを持てるだけ持ち最後に軽く体を動かす。
「行くか」
「はい」
そして誰にも告げること無く二人は姿を消した…
ガサ…と不気味に葉を踏んだ音が響く。
「思ったより樹を食われてるな…」
「これは…」
蓮太郎は見ると眉を寄せる…
「これはコカだ」
「コカっていうとあの麻薬とかのか?」
「ああ…何でコカだけこんな重点的に取られてるんだ?」
すると何かが飛びかかってきた。
『っ!』
優磨は素早く高周波ブレードを出すと切り裂く。
「不味いぞ蓮太郎……」
「ああ……」
周りにはガストレアが二人を囲んでいた。
それを見た蓮太郎はXD拳銃を抜いて撃てるようにする。
「やるしかないか……」
「ああ……」
二人は構える。
「ギャア!」
ガストレアが飛び掛かってきた。
「ちぃ!」
蓮太郎は眉間を撃ち抜く。
「おらぁ!」
優磨は更に飛び掛かって来たガストレアを次々切り裂き…吹き飛ばしていく。
「数!だけ!は!多!い!」
!の度に飛び掛かってきたガストレアを撃ち抜き続け蓮太郎は弾をリロードし更に撃つ。
「全くだな…」
優磨は腰を落とすと…
「
スラスターで高速回転しそのまま切り飛ばしていく。
「くそ……何体居やがる……」
「幾らなんでも多すぎだろ」
かれこれもう三十体ほど倒したところで二人は息が上がり始める。
(仕方ねぇ……
すると突然、
「伏せたまえ」
『え?』
優磨と蓮太郎は咄嗟に伏せる。
「ホームレス……リーパァアアアアアアアアアア!!!!」
鎌状に放たれた斥力フィールドがガストレアの命をまるで死神の鎌の様に刈り取る。たった一撃で周囲のガストレアを全滅させた恐ろしい技……こんな技を使うのは一人だし目の前には……
「パパァ…こいつら延珠と夏を連れていたやつだよ」
「ああ、知ってるよ」
シルクハットにふざけた仮面…更に燕尾服の腰にはスパンキングソドミーとサイキックゴスペルと言う趣味の悪いマシンピストルと化したベレッタ……
更に横には小太刀を合計4本持った十歳くらいの少女…
「蛭子……」
「影胤……」
「久し振りだね
その後急いでその場を離れ……今何故か男三人と少女一人が雑炊を食っていた。
「そろそろ銃を下ろしてくれないかね?食いづらいんだが?」
「そうだぜ蓮太郎……今は食うことに集中しな」
「だが優磨さん!こいつは……」
「そんなもん脅しにもなりゃしないのはお前が一番知ってるだろ?」
「……」
影胤の斥力フィールドは対物ライフルも通さない……確かに効かない。
「それに本当に俺達に攻撃する気があるながらさっき無警告で技を放っていた筈だ。少なくとも今は戦う気はないんだろ?」
今は……の部分が強調されているものの優磨は特別警戒していない。
「はっはっは。流石に
「知っていたか……」
「情報は何にも勝る武器だ。まあ関係のない話だったがね。それで?何でこんなところにいるんだい?」
「ちょっとそこまでガストレアを倒しに行けと禿げタコに言われてね」
「……パパァ、この人頭大丈夫?」
「少しパパも心配だよ」
「喧嘩売ってるのか?」
優磨のコメカミが引き攣る。だが直ぐに平静に戻り、
「まああれだ。遠距離狙撃型のガストレアが出てな…それを倒しにな」
「そう言えば丁度この奥に変わったガストレアが居たよ」
『っ!』
二人は影胤を見る。恐らくそれが…
「よし行くか」
「ああ」
「そうだね、行くよ小比奈」
「うん」
そう言って四人は歩きだし……
『……ってお前らも来るのかよ!』
「別に問題はあるまい?」
「何が目的だ……」
「別に普通に興味があるだけだよ」
「だってパパがいくって言うから」
『…………』
勝手にしろ…と呟きつつ優磨と蓮太郎の二人は肩が重くなったような感覚の中歩きだした…
今度日曜日辺りに報告があります。
実は十二月辺りから前々から画策していた計画を実行します。詳しくは活動報告までお待ちください。